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【獣医師監修】犬に桃を与えても大丈夫?桃に含まれる犬の健康に良い栄養素や与える際の注意点を解説

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はじめに

旬の味覚を楽しんでいると、大切な愛犬にも食べさせてあげたいと思ったことはありませんか。

今回ご紹介する桃も、甘くてとてもみずみずしい果物で、近くで欲しがる顔をみているとついついおすそ分けしてあげたくなりますよね。

でもそのようなときに「桃は犬に与えても大丈夫なの?」と心配になってしまう飼い主さんも多いでしょう。

せっかくおいしい桃を一緒に楽しんで欲しかったのに、食べたことで体調を崩してしまったら大変です。

そこで今回は桃を犬に与えても大丈夫なのか、桃に含まれる栄養素から与える際の注意点まで疑問に思っている飼い主さんに向けて、くわしく解説いたします。

犬に桃を与えても大丈夫?

桃は犬に与えても大丈夫な果物です。桃全体の約90%を占めるほど水分を多く含み、ビタミンや食物繊維も含まれているため、暑い時期の水分補給や、食欲の落ちている犬の栄養補給に役立ちます。

また、桃の特徴である甘さは犬も大好きなことが多いため、愛犬に与えたらとても喜んでくれるでしょう。

ただし、桃をまるごとそのまま与えることはおすすめしません。

おいしい桃の正しい食べ方を解説していますので、みていきましょう。

桃の果肉は与えても良い

桃の果肉はやわらかく食べやすいため、生のままで与えても問題ありません。ただし、犬の大きさによっては、うまく飲み込めずにのどに詰まらせてしまう可能性があるので、体や口の大きさに合わせたサイズにカットして与えるようにしましょう。

子犬やシニア犬に桃を与える場合には、うまく食べることができないこともあるため、小さくカットするか、少しつぶして食べやすくしてから与えてください。

種と皮は取り除く

桃の果肉は、適度な大きさにカットしてあげれば、犬が食べることに問題はありませんが、種や皮は人間が食べるときと同様に取り除いてあげましょう。

桃は犬にとって、とても安全な食べ物ですが、あくまで果肉を食べることが前提で、まるごと積極的に食べさせて良いというわけではありません。

桃の種と皮についてもう少し詳しくみていきましょう。

種には中毒を起こす成分が含まれている

犬に桃を与える際に、もっとも注意してほしい部位が種です。

桃の種には「アミグダリン」という成分が含まれています。桃の種を噛み砕いてそのまま飲み込んでしまうと、中に含まれていたアミグダリンが腸内で分解され「シアン化水素」を発生させます。このシアン化水素が中毒症状を引き起こすことがあります。

必ず中毒症状が発生するわけではありませんが、摂取量が多いと、食べてしばらくして嘔吐や下痢が始まり、ひどくなるとけいれんや呼吸困難などの症状を引き起こします。

中毒症状がどの程度の量を食べることで発生するのかは、個体差があり一概にはいえません。体の大きさや、年齢によっては、ごく少量でも中毒になる可能性があり、特に子犬やシニア犬は体内の機能が弱いこともあり注意が必要です。

いずれにしても、中毒を予防する観点から、少量でも種を口にさせることはやめておきましょう。

ちなみに、桃の種を噛み砕かない限り、アミグダリンが体内に広がることはありません。

万が一、種を噛み砕いて食べてしまったら、かかりつけの動物病院に連絡して経過観察をするのか、すぐに病院に連れていくのか判断を仰いでください。

種が詰まると腸閉塞になる危険がある

桃の種は噛み砕いて中毒症状が出る可能性があるだけではありません。桃の種は大きいため、万が一愛犬が飲み込んでしまうと喉に詰まらせてしまうケースや、消化管に詰まらせて腸閉塞になってしまうケースがあります。

桃の種を喉や食道に詰まらせてしまうと、呼吸困難になってしまうことがあり、大変危険です。口を開けて舌を引っ張り気道を確保することが有効とされていますが、無理することでかえって愛犬が苦しんでしまうことがあります。

食道に詰まったときも同様で、急な嘔吐などでつらそうにぐったりすることがありますが、有効な応急処置はなく、病院で処置を施してもらう必要があります。

いずれにしろ桃の種を飲み込んで苦しそうな姿を確認したら、中毒が疑われるときと同様に病院で適切な治療を受けてください。

皮は消化されにくいため剥いてから与える

桃の皮は絶対に食べてはいけないものではありませんが、消化に良くないために下痢をしてしまうことがあるので、剥いてから与えたほうがよいでしょう。

ただし、皮の周りにはカテキンなどの栄養素が含まれており、愛犬の健康に役立つものも多いため、可能な限り薄く剥いて与えることをおすすめします。

桃に含まれる犬の健康に良い栄養素

桃は90%が水分といわれており、愛犬の水分補給に役立ちます。また、水分以外にも健康を維持するための栄養素が含まれているので、くわしくご紹介します。

カテキン

カテキンはポリフェノールの一種であり、強い抗酸化作用により、活性酸素を取り除くことで病気の予防や老化防止に役立ちます。

また、殺菌作用や抗菌作用があり、胃腸の調子を整え、虫歯の予防にも効果があります。

コレステロールや血糖値を下げる働きも期待できるため、体重管理にも重要な役割を果たします。

ビタミンC

ビタミンCはコラーゲンの生成をサポートする役割を持っており、歯や骨、毛細血管などの健康維持に役立ちます。

ほかに、解毒作用や鉄分やホルモンの代謝促進などさまざまな面で健康をサポートしてくれる重要な栄養素です。

以前は、犬は自分が持つブドウ糖からビタミンCを生成できるため、別途ビタミンCの摂取は必要ないと考えられていました。しかし、現在では、犬も中高齢期に差し掛かるとビタミンCの生成能力が低下することが判明し、食事などによりビタミンCを補充しないとビタミン欠乏症になるおそれがあるといわれています。

若いうちは問題ありませんが、5歳を過ぎたら積極的にビタミンCを摂取するよう心がけてください。

ビタミンE

ビタミンEはカテキン同様に強い抗酸化作用があり、活性酸素から体を守ってくれます。この働きにより細胞や血管の健康維持、血液の循環をスムーズにする効果が期待できます。

ビタミンEが不足すると、ビタミンE欠乏症となり、筋肉や神経、血液、皮膚など体のさまざまなところにダメージを負うことになります。

ビタミンCとあわせて摂取することで、より効果的な酸化防止効果が望めます。

カリウム

カリウムは、細胞に水を引き込む力である浸透圧の調整や、ナトリウムを排出してくれるため、過剰な塩分の摂取を調節してくれます。

注意点として、カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制し、尿として排泄する働きを促しますが、腎機能に問題がある犬の場合、腎臓に負担がかかるため、過剰摂取にならないよう調整が必要です。

食物繊維

食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があり、桃にはこの2つがバランスよく含まれています。

水溶性食物繊維は、緩やかな糖質の吸収を促進し、血糖値が急上昇するのを抑える役割があり、不溶性には、腸内の水分を多く吸収して、便の量を増やして腸を刺激することで良好な排便を促す役割があります。

特に水溶性の食物繊維である「ペクチン」は、善玉菌を増やす効果があり、お腹が緩く下痢になることが多い子や、便秘がちな場合の体質改善効果が期待できます。

犬に与えて良い量はどれくらい?

犬の健康管理に役立つ桃ですが、主食として利用することはできません。実際に与えてよい量がどれくらいなのか解説します。

一口サイズを数切れ程度が目安

犬に必要な基本的な栄養素は、毎日の食事で「総合栄養食」のドッグフードを食べていれば、1日に必要な栄養摂取は事足ります。

しかし、桃をたくさん食べてもすべての栄養素をカバーすることはできません。桃を与えるときは、1口サイズにカットした桃を数切れ程度にとどめておきましょう。

目安として、愛犬の1日に必要なカロリーの10%にとどめておくのが良いとされています。

おやつに少しだけ与える

桃は健康に役立つ栄養素が豊富に含まれていますが、それだけでは必要な栄養が足りないため、あくまでおやつの1つとして与えてください。

必ずあげなければいけないものではありませんし、たくさん与える必要もありません。例えば夏の暑い時期に、水以外の水分補給として少し食べさせたり、気分転換に甘い味のする桃を与えたりするくらいで構いません。

おいしい桃は、愛犬もいくらでも欲しがることが考えられますが、たくさん食べてしまい、毎日の食事量が減ることは避けましょう。

犬に桃を与える際の注意点

犬にとって、桃の果肉は有害なものはなく与えても問題ありませんが、注意しなければならない点もいくつかあります。

すでにご紹介したように、種や皮を取り除き、果肉だけを1口サイズにカットして与えること以外にも気をつけておきたいポイントについて解説していきます。

与えすぎに気をつける

桃の与え過ぎには気をつけてください。主食ではない桃をたくさん食べることで、ドッグフードの摂取量が減ってしまうのは健康上よくありません。

また、甘い桃の味に慣れてしまうと、偏食になってしまうことがあるので、たまに与える程度にしてください。

カロリーオーバーで肥満の原因に

桃は甘いため、その分糖分が豊富に含まれています。糖分をたくさん摂取すれば人間同様にカロリーオーバーで肥満の原因になってしまいます。

肥満になると、桃が食べられなくなる以外にも、毎日の食事にも制限が課されてしまうことがあります。

肥満になれば、体調にも影響を及ぼして、さまざまな病気の心配をしなければならないため、与え過ぎには注意しましょう。

軟便や下痢を引き起こす可能性

桃は水分や食物繊維が多いため、たくさん食べ過ぎると軟便や下痢を引き起こします。お腹を壊さないためにも、犬に与える場合には適量を、あまり冷やし過ぎず常温で与えるのがよいでしょう。

加工品は与えない

桃に限らずすべてのフルーツを愛犬に与えるときは、加工品は食べさせてはいけません。本来桃に備わっている栄養素以外に、犬の健康を害する成分が含まれていることが多く、食べることで体調を崩してしまう可能性があります。

桃が大好きな愛犬のために、1年を通じて桃を与えたいと思うかもしれません。しかし果物には旬の季節があり、それ以外の季節に桃を食べるとなると、加工品を与えるしかなくなります。

しかし、そのような場合には、加工品を与えるのではなく、別の果物などを与えることを考えてください。桃はあくまでおやつとしての位置づけなので、どうしてもあげなければいけないものではありません。

ほかに与えるものがないときには、無理に与えなくてもかまいません。

缶詰やゼリーには砂糖が多く含まれている

桃の加工品には、缶詰やゼリー、ジュースなどがありますが、これらのほとんどが純粋な桃の味だけではなく、多くの糖分が含まれています。

もともと桃は糖分が多く、加工された桃はさらに砂糖を追加しているため、たいへん甘い味付けになっています。

加工品を口にすると、少量でも糖分の摂りすぎやカロリーオーバーにより肥満につながってしまいます。

肥満は、体重の増加だけでなく心臓や関節などに大きな負担をかけてしまい、食事制限などあらゆる制限が必要になってしまうことがあります。

また、人間が食べることを想定している加工品には、多くの添加物が含まれていることがあり、体の小さい犬が食べてしまうと健康に悪影響を及ぼしてしまう可能性が考えられます。

どうしても桃から摂らなければならない栄養素はないため、生の桃の代わりに加工品を与えるのは避けてください。

アレルギー反応に注意

アレルギーは、体内の免疫機能がタンパク質に対して異常な反応をみせることで発症します。桃にもタンパク質が含まれているため、愛犬の体質によってはアレルギー反応が出る場合があります。

タンパク質の量はそれほど多くはないので、過剰摂取になってしまうことは考えづらく、アレルギーを発症してしまう可能性はあまり高くありませんが、体質には個体差があり、まれに少量のタンパク質でも発症することがあるので注意が必要です。

バラ科の果物にアレルギーがある犬には与えない

桃は、いちごやりんご、さくらんぼなどと同じバラ科の果物です。

バラ科の果物は、比較的アレルギー報告の多い果物です。そのため、過去にほかのバラ科の果物でアレルギーを少しでも発症した経験がある場合には、同じような症状が出てしまう可能性が高いので桃を与えないようにしてください。

初めて与えるときは少量ずつ与えて様子を見る

これまでバラ科の植物を与えたことがない場合や、ほかの果物でアレルギーを発症したことがない場合でも、桃を初めて与えるときは少量ずつ与えてみてください。

最初は小さく刻んだ桃をごく少量食べさせて、状態に変化がないか経過観察をおこないましょう。

アレルギー反応が出るまでには少し時間がかかることがあるので、食べさせてみて問題ないからとすぐに次の分を与えないでください。

経過観察の際に、少しでも様子がおかしくなったらアレルギー症状による異常のおそれもあるので、一度動物病院で診察してもらうことをおすすめします。

食物アレルギーの症状

犬が桃を食べて食物アレルギーを発症すると、皮膚症状や消化器症状がみられることがあります。

皮膚症状では、目や口周り、脇や腰回りなどにかゆみや発疹が出て、掻き続けてしまうことにより皮膚が傷つき赤くなって炎症を起こします。

このような症状は、食物アレルギーを発症した食べ物を食べていればずっと続いてしまい、いつまでたっても改善することなく、さらに悪化していくおそれもあるため、ほかの食べ物を食べても平気だった愛犬が、桃を初めて食べたあとに皮膚を頻繁に気にするしぐさをみせたら、与えるのを中止して様子をみてみましょう。

消化器症状は、アレルギーの対象となる食べ物を摂取した際に、嘔吐や下痢を繰り返し体重減少などを起こします。

皮膚症状と同時に起こることが多いため、桃を食べて、体を掻く仕草を見せて皮膚に炎症を起こしたり、下痢や嘔吐を繰り返したりした場合には、食物アレルギーの可能性があります。

これらの症状が重症化すると、アナフィラキシーショックを起こしてしまう可能性があります。アナフィラキシーショックとは、外から摂取または侵入した物質に体が激しく反応してしまい、全身に過剰なアレルギー反応を起こした状態を指します。

おもな症状は、嘔吐や下痢、発疹などから、呼吸困難や低血圧性のショックを引き起こし、すぐに治療を施さなければ命の危険があります。

ただし、アナフィラキシーショックはごくまれに起こる症状で、少量で様子をみれば過剰に心配する必要はありません。

また、桃は口腔アレルギー症候群を発症しやすい果物といわれており、花粉症を持っている場合に、似た構造のタンパク質を持つ果物を摂取すると、口腔内の粘膜に痛みや腫れがみられることがあります。

もし、愛犬がアレルギー体質で、花粉症を持っていることがあらかじめわかっている場合には、念のため桃の摂取は控えてください。

そして、桃の種に含まれている「アミグダリン」も大量に摂取することで中毒症状を引き起こすおそれがあります。

ただし、こちらは種を噛み砕いて飲み込まない限り、アミグダリンが体内に浸透する心配はいりません。

いずれにしろ、少量の桃を与えて経過観察中に少しでも異変を発見したら、動物病院に連絡して獣医師の指示に従い必要に応じて診察を受けるようにしましょう。

まとめ

桃は甘く水分量も豊富なため、ほとんどの犬が好んで食べてくれるでしょう。愛犬の健康維持に役立つ成分が含まれていて体に悪影響を及ぼす成分も少ないため、安心して食べさせることができます。

与える際の注意点として、主食ではなくあくまでおやつの位置づけで、果肉のみ少量与えるようにしてください。

また、まれにアレルギーを発症することがあるので、初めて与えるときは飼い主さんがしっかりと観察しておきましょう。

気分転換や、ストレス解消などに今回ご紹介した桃はおすすめできるので、機会があれば試してみてはいかがでしょうか。

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