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はじめに
メス犬を迎えたら、理解しておきたいのが犬の生理(ヒート)についてです。
出血をともなうため、生理と呼ばれることもありますが、人間の生理とは周期や出血期間などのメカニズムもちがうため、正しい知識を身につけておく必要があります。
犬のヒートとはどのようなものなのか、注意点などもあわせて解説します。
犬のヒートについて
まずは犬のヒートについて基本的なことを押さえておきましょう。
犬のヒートとは?
犬のヒートとは「発情」という意味で、交配し、妊娠するためにオスを受け入れる状態が整ったときに起きる現象です。
人間の生理との違いは、人間は妊娠が成立しない場合に生理になりますが、犬は妊娠の準備が整うとヒートになります。
ヒートは犬種を問わず、すべての犬に起こります。
最初のヒートは生後6ヵ月から12ヵ月頃を目安にはじまるといわれていますが、成長度合いにより個体差があり、1歳を過ぎてからヒートを迎える犬もいます。
一般的に小型犬の方が発情を迎えるのが早く、大型犬は小型犬にくらべ、最初の発情を迎えるのが遅い傾向があります。
最初のヒートを迎えてからは、避妊手術をしない限り、いくつになっても続くのも、犬のヒートの大きな特徴です。
ヒートのおもな前兆としては、落ち着きがなくなり、いつもと違う声を出して鳴いたり、トイレの回数が増えたりすることがあります。
また、上記の行動のほかに、陰部のあたりを気にしだして良く舐める、陰部が腫れているなどの症状が見受けられたら、ヒートの前兆もしくはヒートが始まったと考えてよいでしょう。
犬のヒートの期間
犬のヒートはほぼ月に一度の周期で起こる人間の生理とは違い、基本的には半年に一度くらい起こります。
しかし、周期には個体差があり、大型犬は次のヒートまでが長い傾向があります。
ヒートは発情の周期に合わせて出血するため、「発情出血」とも言われています。
犬が発情を迎えて出血するのは、「発情前期」と言われる期間で、7日から10日前後といわれていますが、長い犬になると3週間ほど続く場合があります。
この時期は、まだ交配に適しておらず、オス犬を相手にはしませんが、メス犬からオス犬を刺激するようなフェロモン臭を出すようになります。
ちょっかいを出してくるオス犬が近くにいて、飼い主の方が気になるようでしたら近づけないように注意を払ってください。
犬のヒート中の症状
発情前期に出るおもな症状としては以下のようなことがあります。
- 陰部からの出血
- 陰部が赤く膨らむ
- 落ち着きがなくなりイライラしている
- 食欲が増す、あるいは食欲が落ちる
- 頻繁にトイレに行く
このなかでも特に飼い主が気になる点は出血ではないでしょうか。
出血をしているため、床に落ちている血液を舐めながら歩いている犬もいます。
ずっと床を舐めて陰部を気にしているため、必要に応じてオムツやマナーパンツを着用するのもおすすめです。
犬のヒート中に注意すべきこと
ヒート中は外出する際に注意が必要です。
散歩自体は問題ありませんが、よそのオス犬を刺激してしまい近づいてくることがあるので、時間帯や、人通りの少ないコースを選んであげるとよいでしょう。
また、ドッグランなどでは、オスとの交流やトラブルを避けるためヒート中は利用できない場合が多いです。
ペット同伴での旅行なども断られてしまうところがほとんどなので、この時期を外してください。
極力、他の犬との接触は避けて過ごすのが望ましいでしょう。
犬のヒートの期間
犬はヒートを約半年に1回繰り返します。
ヒートには発情周期と呼ばれる段階があり、この周期により、犬の行動も変わってきます。
ここからは犬のヒートの期間や発情周期について解説していきます。
ヒートの周期
ヒートの周期は4つの期間に分類され、発情前期→発情期→発情後期→無発情期期間を繰り返します。
この4つの期間周期には個体差もあり、小型犬に比べ、大型犬はそれぞれやや長いといわれています。
発情前期
発情前期とは無発情期から発情期に移行する時期で、出血が始まるのもこの頃です。
ほかにも、行動に変化が見られ、陰部のあたりを気にしだして、頻繁に舐めるようになったり、おしっこの回数が増えたりしますが、もし「ヒートかな?」と思ったら陰部を見てください。
陰部が通常時よりも明らかに腫れていたらヒートが始まったと考えてよいでしょう。
その際にうっすらと出血も始まっていることもあります。
この時期はまだ発情期に入っていないので、、メスから発せられるフェロモンにオスがよってきても、まだ交尾行動を受け入れることはありません。
期間としては、7日前後ですが、長い場合は3週間ほど続くこともあります。
発情期
出血も少し収まってくると迎えるのが発情期です。
発情期を迎えると、いよいよ妊娠に適した時期に入ります。
この頃の犬の様子としては、発情前期よりも興奮気味になることが多く、出血は徐々に止まりますが、陰部はまだ腫れた状態です。
そして発情前期との大きな違いは、メスの方からオスに積極的に近づき、交尾を許容するようになることです。
発情期が始まり、3日を過ぎたころに排卵が起きるので、排卵日の2日前〜排卵後5日ほどが交配に適しているといわれています。
繁殖をお考えの飼い主はこのタイミングで交尾をさせるとよいでしょう。
逆に、妊娠を望んでいない場合には、オス犬との接触を避けるよう飼い主は気を配らなければなりません。
時間が経過すると、出血の色も薄くなり、陰部の腫れとともに収まってきます。
ここまでの期間は10日間ほどです。
発情後期(発情休止期)
発情期に受胎したメス犬が、妊娠や出産をおこなう時期がこの発情後期です。
この頃には、犬も落ち着きを取り戻し、オス犬が近づいても興味を示さなくなります。
この期間が約2ヵ月続きます。
この時期、注意しておきたいのが、妊娠をしていないのに偽妊娠という状態になってしまう犬がいることです。
犬は妊娠する、しないに関わらず、黄体ホルモンが長期間にわたり分泌されます。
そのため、乳腺が発達し、胸が張り母乳が出ることがあります。
ほかにもぬいぐるみなどを世話しだしたり、守ろうと攻撃的になったりすることがあります。
これは、本能的に起こる母性本能のようなもので、徐々に収まりますが、もし発情期ごとに頻繁に続いた場合の予防方法は、避妊手術となります。
無発情期
すべての発情期が終わり、いわゆる日常の状態に戻っていることを無発情期といいます。
この時期は、発情前の日常生活を送ってもなんら問題はありません。
およそ半年間、この時期が続き、また発情前期に戻っていきます。
犬のヒートの長さ
ヒートの長さは、発情前期から発情後期までおよそ2〜3ヵ月あります。
数年にわたり、繁殖を考えている場合や、避妊手術をしていない犬は、この周期で約半年後に同じような状況になります。
繁殖のつもりがなく、避妊を考えていたが、その最中にヒートになってしまった飼い主さんは、無発情期のうちに避妊を済ませておく必要があります。
ヒートの頻度
ヒートの頻度は、通常、半年に1度、年に2回おとずれます。
つまり、半年に一度は、これまで解説したような対策をとる必要があります。
また、人間のように閉経がないため、高齢になっても犬のヒートはつづきていきます。
犬のヒート中の症状
ヒート中は、日常と違う症状がでる場合があります。
出血などもあり、初めて見る飼い主はすこし驚くかもしれません。
そのためにも、事前にヒートによっておこる症状を把握しておきましょう。
出血量の変化
犬のヒートはそれほど多くの出血はありません。
ぽたぽたと床に垂らす程度や、おむつなどで十分に吸収が可能です。
それでも収まらないほどの出血があった場合などには、膣の炎症や、卵巣の機能不全などの別の要因が考えられるので、動物病院を受診するようにしてください。
高齢犬になっても閉経はなく、ヒートにはなりますが、出血量も少なく、若い頃に比べて発情周期も不規則になります。
行動の変化
ヒート前後とヒート中を比べると犬の行動に多くの変化がみられます。
落ち着きがなくなったり、散歩に行くのを嫌がったりすることもあります。
そのようなときは、無理に散歩に行かずに家で静養させてあげましょう。
また、行動のなかで飼い主がとてもびっくりするのが、ぬいぐるみやクッションに陰部をこすりつけて、マウンティング行動を起こすことがあることです。
理由としては、オスを受け入れる準備が整ったことをアピールしているからです。
食欲の変化
食欲に関しては、食欲がなくなって元気をなくすことがあります。
少しでも食べてもらえるように、トッピングやスープを混ぜておいしい匂いで、刺激してあげると食欲が増し、改善することがあります。
もし、家で対策をとっても食欲が出ないようでしたら、ほかの原因も考えられるので、病院の受診をおすすめします。
健康状態の変化
ヒート中は食欲不振のほかにも、健康状態の変化がみられることがあります。
よく言われるのが寝ている時間が長くなり、ずっと休んでいるといったことです。
やはり、体力的にも、精神的にも、いろいろな変化が起こっているので、飼い主の知らないところでもかなりの消耗をしているはずです。
そのため、普段よりも寝ている時間が増えたりしていますが、静かに休んでいるようであれば問題ありませんので、体力回復に努めさせるためにもそっとしておいてあげましょう。
また、生理後に起こりやすい病気として子宮蓄膿症があります。
発情中の犬の免疫力が一時的に低下した際に、細菌が子宮内に感染することにより起こり、子宮内に膿がたまる病気です。
一見、ヒートと間違えやすいですが、出血の期間が1ヵ月以上続いたり、陰部から膿交じりの血液が出たりと、毎日観察していれば、異変に気付けるでしょう。
また発生時期も、ヒートでの出血後、2~3ヵ月後に起こることが多く、明らかにヒートとは時期も違っているので、この症状がでたら、すぐに動物病院を受診してください。
ヒートのあとなので間違えやすく、放置しがちですが、じつは子宮蓄膿症は命に関わることもある怖い病気なので、異常がみられたらすみやかに動物病院へ連れて行ってください。
犬のヒート中に注意すべきこと
犬がヒートになったら、注意しておきたい点をご紹介します。
交配のリスク
犬が発情期に入ると、自らオスによっていくことがあります。
この際に、繁殖する相手がきちんと決まっていて、そのために近づいていくことは問題ありません。
交配を考えているならば、きちんと決めた相手との交配をするために、うまく飼い主がリードしてあげてください。
他の犬との接触
交配のリスクで、飼い主のリードが必要な理由は、他の犬との接触のリスクがあるからです。
発情期のメス犬は、オスを引き寄せるフェロモンを発しているので、その匂いにつられて、オス犬が寄ってきます。
望んでいない交配がおこなわれないよう、散歩などで外出する際には、人通りの少ないところを散歩する、近くに犬が来たならば、抱き上げるようにするなどしておくことが必要です。
必要なケアの提供
家の中でオスとの多頭飼いをしている場合には、極力接触を避けたほうがよいでしょう。
知らないところでの交配の危険もありますが、オスがメスに刺激されて、吠え続けたり、ときには遠吠えを始めたりすることもあります。
それがずっと続くこともあり、飼い主のストレスになることもあります。
もし、出血により、陰部が汚れてしまっていたら、軽くシャワーで洗ってあげると、感染症の予防につながります。
ただし、トリミングサロンではヒート中のシャンプーなどは断られてしまう事も多いので、軽く自宅で洗ってあげるくらいでとどめておきましょう。
妊娠の可能性に注意
計画的に交配をしているのならば、妊娠の兆候がみられたら、すみやかに動物病院を受診して獣医の判断を仰ぎましょう。
また、妊娠をさせたくない飼い主さんは、とにかくこの時期は外出するときに、他の犬との接触を避け、たくさんの犬が散歩をしている場所では抱き上げて、近くにオス犬を近づけないようにしましょう。
もし、今後も繁殖の予定がないのであれば、避妊手術も1つの選択肢として考えておきましょう。
犬のヒートと発情期の違い
犬のヒートと発情期は同じ意味ととらえられることが多い印象です。
しかし、これまで紹介してきたように、ヒートには発情前期・発情期・発情後期(発情休止期)・無発情期があります。
そのためヒート=発情期ではありません。
あらためて発情期の状態や意味について解説していきます。
発情期とは?
発情期とは、発情周期のなかで交配に適した時期をいいます。
発情前期が終わり、発情期に入ると3日ほどで排卵があり、排卵日の2日前~排卵後5日ほどが妊娠可能期間となります。
発情前期には、オスが寄ってきても相手にしてこなかったメス犬が、積極的にオスを誘うようになります。
メス犬が、オスを誘うようになることが発情前期との大きな違いです。
発情期の症状
発情期の症状としては、陰部が赤く膨らみ前半にはまだ出血も見られますが、このような症状は発情前期からみられます。
発情期特有の症状としては、メス犬から積極的にオスに近づいたり、しっぽを傾けながらオスに体をこすりつける様子などが見受けられるようになります。
発情期の対策
もし希望の交配相手が見つからない場合や、交配する予定はなかったが、ヒートを迎えてしまって避妊手術ができない場合などには、妊娠しないよう対策が必要です。
散歩の際は人通りの少ない場所、時間帯を選ぶ、他の犬がいるときは抱っこをして通過するなどです。
たとえオス犬と離れていても、メスの発するフェロモン臭をオスは数キロ先まで察知できるといわれています。
短い距離であれば、追いかけてきてトラブルになることも考えられるので注意しましょう。
犬のヒートについてのまとめ
メス犬を飼う場合には、避けて通れないのがヒートです。
ヒート=発情期のイメージが強く、ヒートが始まったらすぐに妊娠可能だといわれがちですが、実際には今回ご紹介したように、発情周期というものがあります。
発情期とは、その周期の中の1つであることが、おわかりいただけたのでないでしょうか。
この周期とその対策を正しく理解すると、繁殖をお考えの飼い主さんにとって交配のタイミングを逃すこともなくなります。
また、繁殖をする予定のない場合には、外出時の注意点を守っていただき、注意を払ってもらうことが重要です。
いずれにせよ、メス犬の購入や繁殖を検討している方や、ヒートを迎える飼い主さんは当記事を参考に理解を深めていっていただけますと幸いです。