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はじめに
人にとって卵は栄養価が高く、愛犬にあげたくなる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
結論からいうと犬に卵を与えることは問題ありません。しかし与え方や他の餌とのバランスに注意する必要があります。
今回の記事では、犬に卵を与える際のメリット・デメリット、与える際の注意点、健康への影響を解説します。
愛犬に卵を与える際はぜひ参考にしてみてください。
犬に卵を与えるメリットとデメリット
犬に卵を与えるとたくさんの栄養を摂ることができます。一方で、卵アレルギーの反応が出るなど、普段と違う様子には注意しなければなりません。メリット・デメリットをきちんと把握したうえで与えるようにしましょう。
卵の栄養価の高さ
卵は食物繊維、ビタミンC以外の栄養素をすべて含む「完全栄養食」と呼ばれる食品です。5大栄養素である炭水化物・脂質・タンパク質・ミネラル・ビタミンのほか「人間の必須アミノ酸9種類」、「犬の必須アミノ酸10種類」を、すべてバランスよく含んでいます。
とくに豊富なのはタンパク質です。筋肉増量、代謝アップ、肥満防止に効果があります。また、ミネラル・ビタミンは被毛や皮膚の健康維持に役立ちます。
必須アミノ酸とは身体が作り出すことのできない物質です。そのため外部から摂取する必要があります。
しかし「必須アミノ酸」は体内で合成できません。卵は、犬の必須アミノ酸10種をすべて含んでおり不足する必須アミノ酸の摂取に適しています。
そのため犬にとって、卵はとても栄養価が高い食べ物です。
必要なアミノ酸やビタミン、ミネラルの摂取
卵が犬にとって栄養価が高い食品であることを解説しました。次に「アミノ酸」や「ビタミン、ミネラル」が犬にどのような影響を与えるか、具体的に解説します。
「アミノ酸」は、タンパク質が犬の体内で分解されることで発生します。筋肉、皮膚、抗体、ホルモンの生成に役立ち、犬の成長や健康維持に必要なものです。
健康維持にはアミノ酸だけではなく「必須アミノ酸」も欠かすことができません。必須アミノ酸は体内で合成されないため、食品から摂取する必要があります。
では、必須アミノ酸が多く含まれる食品はなんでしょうか?「アミノ酸スコア」という指数を目安にすると、参考になります。
以下の表は、食品のアミノ酸スコアをまとめたものです。(注1)
食品 | アミノ酸スコア |
精白米 | 65 |
大豆 | 100 |
卵 | 100 |
牛乳 | 100 |
プロセスチーズ | 91 |
ジャガイモ | 68 |
サトイモ | 84 |
肉類(牛・豚・鶏) | 100 |
魚類 | 100 |
トマト | 48 |
みかん | 50 |
すべての必須アミノ酸が充足されていればスコアは100となり、100に近いほど良質なタンパク質であることになります。
卵は「アミノ酸スコア100」であり、肉や魚と同様に栄養価が高い食品であることがわかります。
さらにミネラル・ビタミンもバランスよく含んでいます。ミネラルには「カルシウム」が含まれているのをご存じですか?おもに骨や歯の形成に役立ちます。
カルシウムは卵の黄身に多く含まれている成分ですが、殻にも含まれており、積極的に摂取することで骨粗しょう症の予防にもなります。
ビタミンは、おもに皮膚、粘膜、被毛の健康維持に効果を発揮します。
- ビタミンA……皮膚、被毛、歯や骨の形成、視力の維持
- ビタミンD……カルシウムを吸収しやすくする、丈夫な歯や骨の形成
- ビタミンK……骨を丈夫にする、出血を止める作用
- ビタミンB群(B1・B2・B7・B12など)……消化を助ける、粘膜・皮膚・神経を正常に保つ、皮膚の保湿、脱毛やフケ防止、毛に艶を出す、筋力低下を防ぐ、タンパク質の合成や赤血球の合成に役立つ
以上のように、卵はアミノ酸、ビタミン、ミネラルの栄養バランスが非常にいい食品です。そのため人間同様、犬にとっての健康維持に適しています。
脂肪のバランスを保つ
5大栄養素での一つ「脂質」は脂肪のバランスを保ってくれます。炭水化物やタンパク質に比べ、グラム当たりのエネルギー量が多く熱源となるため、体温維持に役立ちます。
不足すると繁殖機能が抑制されたり、皮膚がかさかさしたり、免疫力が下がったりするケースがあります。とくに妊娠中は新生子の異常や死亡につながる恐れもあるため、気をつけなければなりません。
だからといって脂質を摂りすぎるのも健康によくありません。糖尿病や肥満、すい炎発症の危険性が高まります。
卵によるアレルギー反応
人間なら赤ちゃんや幼児に多い卵アレルギーですが、犬にとっても卵はアレルギーが起きやすい食品です。
犬のアレルギーは「環境によるアトピー性皮膚炎」、「食物によるアレルギー」の2つに大別できます。
犬がアレルギー反応を起こすとどのような症状が出るでしょうか。おもな症状は以下の通りです。
- くしゃみ
- 咳
- 目の充血、かゆみ
- 呼吸困難、喘鳴(息がゼーゼーしている)
- 鼻水、鼻がムズムズしている
- 皮膚に赤いポツポツがある
ほかにも症状は犬によってさまざま。注意深く観察し、普段と様子が違うようならすぐに受診しましょう。
卵を与える際の注意点
人間の赤ちゃんでは、離乳食期にはじめての食品を与える場合、様子をみながら1さじから始め、なにかあればすぐに受診できるよう平日の午前中に与えるのが基本です。卵は黄身→慣れたら白身の順で与えます。
犬の場合も、初めて卵を与える際にはすぐに動物病院を受診できるよう、あげる時間帯を工夫します。もし、嘔吐や下痢など、普段とことなる症状が一つでもある場合、すぐに受診し早めに症状を和らげてあげましょう。
犬に卵を与える際の注意点
卵の栄養価は犬にとってもプラスになりますが、与え方にいくつか注意点があります。以下の4つの注意点を参考にしながら、慎重に与えていきましょう。以下、詳説します。
- 与える分量の調整
- 生卵と加熱卵の選択
- 衛生面の注意
- 与える頻度の調整
与える分量の調整
卵は栄養価が高い分、カロリーも高い食品です。犬に与える際は分量に注意する必要があります。
1日に与える分量の目安は「1日に必要なカロリーの10%以内」です。計算する際は以下を目安にしてみてください。
- 体重1キロあたり卵5グラムの割合
つまり体重3キロの犬なら卵15グラム程度まで、体重5キロの犬なら卵25グラム程度まで、体重10キロの犬なら卵40〜45グラム程度まで、ということになります。
鶏卵1個の重さは大体Mサイズで50グラムです。小型犬の場合はどうしても余ってしまいますので適した分量だけとりわけ、残りは飼い主が食べる分とすると無駄になりません。スクランブルエッグにするのもおすすめです。
生卵と加熱卵の選択
結論からいいますと加熱卵を選択し、生卵は与えないようにします。とくに生卵の白身が危険です。犬に与える際はしっかりと加熱したゆで卵にしましょう。
生卵の白身には、ビタミンB群の吸収を阻害する「アビジン」という物質が含まれています。ビタミンB群が不足すると皮膚炎、脱毛、ふけが多くなるなどの病気になる可能性があるため、生卵の白身を与えることは避けましょう。
卵はアレルギーになりやすい食品の一つです。卵アレルギーを発症しないためにも、はじめは黄身部分までしっかり加熱したゆで卵をあたえることがおすすめです。
衛生面の注意
卵には、いくつか菌が存在します。代表的な菌は「サルモネラ菌や大腸菌」です。摂取すると嘔吐や下痢など食中毒の症状が出ます。
とくに高温多湿の環境に置かれている卵や、清潔ではない手で卵を触った場合に、サルモネラ菌汚染のリスクがあります。
卵の殻を、カルシウム摂取を目的に与えることは可能です。その場合、殻を念入りに洗いましょう。殻に大腸菌が付着している場合があります(殻は5分以上ゆで、乾燥させて手できめ細かく砕きます)。
前述した「アビジン」も注意しなければなりません。アビジンは熱によって不活化するため、加熱した白身であれば与えても問題ありません。
与える頻度の調整
毎日与えることは避けましょう。卵は高カロリーな食品です。与える頻度は「たまに」くらいがちょうど良いです。
卵は高たんぱくで一見、身体に良さそうです。しかし、毎日ドッグフードのトッピングに与える、おやつに与えるなど頻度が多すぎると体に悪影響です。
いくら身体によくても摂りすぎはよくありません。たまにごほうびとして与える、数日に一回、主食に混ぜるくらいが犬の健康面に良い効果を発揮します。
犬に卵を与える際の代替品
犬に食品を与える場合、栄養バランスを考えましょう。卵以外に代替品で必要な栄養を補うこともできます。犬に適した食材と併せて確認してみてください。
卵以外の栄養源の選択肢
ドッグフード以外の食材で栄養を与えたい場合、卵以外にも与えることのできる食材は多くあります。
たとえば、野菜です。犬の健康維持に効果的な野菜は以下のようなものがあります。
- にんじん
- さつまいも
- かぼちゃ
- きゃべつ
- きゅうり
- アスパラガス
- 枝豆
- レタス
- ブロッコリー
- トマト
キャベツの芯は噛み応えがあり歯ごたえを楽しむ犬もいます。さつまいもやかぼちゃ、アスパラガスも甘くて栄養価が高く、おすすめの食材です。
与える際、人間と同様に「5大栄養素」をもとにバランスを考えましょう。5大栄養素とは「タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル」です。
代替品の栄養価の比較
できれば栄養価の高い食材をバランスよく与えたいと考える飼い主の方も多いでしょう。ここでは卵以外の食材の栄養価を比較します。
食品成分 | エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 食塩相当量 | 重量 |
kcal | g | g | g | g | g | g | |
さつまいも/生 | 126 | 65.6 | 1.2 | 0.2 | 31.9 | 0 | 100 |
さつまいも/蒸し | 131 | 65.6 | 1.2 | 0.2 | 31.9 | 0 | 100 |
アスパラガス/生 | 21 | 92.6 | 2.6 | 0.2 | 3.9 | 0 | 100 |
アスパラガス/ゆで | 25 | 92 | 2.6 | 0.1 | 4.6 | 0 | 100 |
枝豆/生 | 125 | 71.7 | 11.7 | 6.2 | 8.8 | 0 | 100 |
枝豆/ゆで | 118 | 72.1 | 11.5 | 6.1 | 8.9 | 0 | 100 |
かぼちゃ/生 | 41 | 86.7 | 1.6 | 0.1 | 10.9 | 0 | 100 |
かぼちゃ/ゆで | 55 | 84 | 1.9 | 0.1 | 13.3 | 0 | 100 |
キャベツ/生 | 23 | 92.9 | 1.2 | 0.1 | 5.2 | 0 | 100 |
きゅうり/生 | 13 | 95.4 | 1 | 0.1 | 3 | 0 | 100 |
赤色トマト/生 | 20 | 94 | 0.7 | 0.1 | 4.7 | 0 | 100 |
にんじん/生 | 16 | 93.5 | 1.1 | 0.2 | 3.7 | 0.1 | 100 |
ブロッコリー/生 | 37 | 86.2 | 5.4 | 0.6 | 6.6 | 0 | 100 |
ブロッコリー/ゆで | 30 | 89.9 | 3.9 | 0.4 | 5.2 | 0 | 100 |
レタス/生 | 11 | 95.9 | 0.6 | 0.1 | 2.8 | 0 | 100 |
TOTAL | 792 | 1278.1 | 48.2 | 14.8 | 145.4 | 0.1 | 1500 |
犬に適した食材のリスト
上記の他、犬が食べることのできる食材は以下のとおりです。参考にしてみてください。
野菜 | 果物 | 乳製品 | 穀物 | 肉類 | 魚類 | その他 |
アスパラガス えのき 枝豆 オクラ カブ かぼちゃ カリフラワー キャベツ きゅうり ゴーヤ ごぼう 小松菜 さつまいも サトイモ しいたけ しそ じゃがいも 春菊 ズッキーニ セロリ 大根 たけのこ チンゲン菜 豆苗 とうもろこし トマト なす にんじん 白菜 パプリカ ピーマン ブロッコリー ほうれんそう 水菜 三つ葉 もやし モロヘイヤ 山芋 レタス レンコン | いちご オレンジ 柿 キウイ 栗 グレープフルーツ ココナッツ さくらんぼ スイカ 梨 パイナップル バナナ マンゴー みかん メロン 桃 ラ・フランス りんご レモン | チーズ ヨーグルト | うどん エンドウ豆 きなこ 黒豆 玄米 そうめん そば ソラマメ 豆腐 豆乳 納豆 白米 パン | 牛肉 鶏肉 鹿肉 馬肉 豚肉 | あさり あじ うなぎ えび 牡蠣 カツオ カニ 鮭 サバ サンマ シーチキン しらす タイ タラ 煮干し ホタテ ぶり マグロ | オリーブオイル こんぶ 氷 ごま油 卵 はちみつ ひじき のり わかめ |
卵を与えることによる犬の健康への影響
卵を摂取することで犬の健康への影響はどうなのか?健康に良い影響もあればリスクもあります。以下、解説します。
卵の摂取による健康効果
卵は犬にとって必要な栄養素が多く含まれており、健康効果が高い食品です。「完全栄養食」と呼ばれ、少量摂取するだけでエネルギーの補給ができます。
食欲が落ちて元気がなくなってきた老犬や、妊娠期で栄養が多く必要な犬にとって卵は好ましいですが、一方で、アレルギーや与え方に注意が必要です。
卵を与えることによる健康リスク
卵を与えることによる健康リスクに気を付けましょう。
具体的には、アレルギーもちの犬、リンの過剰摂取です。
すでにアレルギーをもっている犬は、卵に対しても反応しやすいため与えることは控えた方が賢明です。どうしても与えたい場合、かかりつけの獣医師と相談のうえ決めましょう。
「リン」は過剰摂取すると腎臓に負担がかかる物質です。卵もリンを多く含みますので、腎臓病の犬には卵は与えないでください。
犬が卵を食べる場合の留意点
犬が卵を食べたあと、どのような反応が出るかしばらく観察しましょう。嘔吐や下痢などの反応がでれば診察が必要になります。その場合、かかりつけの獣医師に卵を継続して与えていいかを相談しましょう。
卵の消化による影響
卵は、消化吸収されやすいタンパク源です。消化する力が弱い子犬や老犬でも、健康であれば与えても問題はありません。
与える際はゆで卵やスクランブルエッグなど加熱したものが望ましいですが、消化されやすいよう細かくして与えることをおすすめします。
与えた後の様子の観察
卵を与えるのが初めての場合は、与えた後に犬の様子を観察しましょう。
身体をかゆがったり、咳をしたり嘔吐をした場合はすぐに与えることを中止し、すぐにかかりつけの獣医師に診察してもらいましょう。
何も問題がない場合でもしばらくは、与えた後の様子をみることが大切です。
異常な症状が出た場合の対処法
異常な症状とは例えば、以下のような症状をいいます。
病気の種類 | 考えられる原因 | 症状 |
脂肪肝、高脂血症 | 卵の与えすぎによるコレステロール過多 | 脂肪肝…食欲低下、黄疸、過度のよだれ、行動変化、嘔吐など 高脂血症…嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛など |
アナフィラキシー | 卵アレルギー | 顔の腫れ、気道の腫れ、じんましん、血圧低下 |
食中毒 | 加熱不足によるサルモネラ菌などの感染 | 嘔吐、下痢、血便 血尿、食欲不振、けいれん、呼吸困難 |
なかでもアナフィラキシーショックや食中毒が起こると命にかかわるため、早期の受診が必要です。
卵を与える際は、与える量に注意し、与えた後の経過観察を徹底しましょう。重篤な症状を引き起こさないよう飼い主が気を配り、適切に与えることが大切です。
まとめ
卵は栄養価が高く、完全食と呼ばれています。
犬にとっても同様で健康に良いですが、リスクもつきものです。
与え方や、与えたあとの経過をしっかり見ることをおこないましょう。問題なければ継続して与えても問題ありません。
愛犬の健康のために新しい食材を与えたい、そんなときは正しい知識をもって判断し、与えることが大切です。