健康

【獣医師監修】犬の息が荒いのは大丈夫?正常時と異常時の違いやよくある原因を詳しく紹介

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はじめに

愛犬の息が荒い時に心配になる方は多いと思います。

犬の呼吸が普段と違う場合、運動後など一時的であれば特に問題ないですが、ストレスや病気などのリスクもあるので普段から呼吸の様子を見ておくことが大切です。

今回は、犬の息が荒い原因について紹介します。

正常時と異常時の違いや考えられる病気、対処法を詳しく解説するので、すぐに愛犬の異変に気づいて対処できるようになりましょう。

犬の息が荒いのは大丈夫?

犬の息遣いが荒くなるのは、必ずしも危険なサインとは限りません。特に運動後や気温が高い日には、犬の体温調節のために呼吸が速くなることが一般的です。

犬は汗腺が限られているため、暑さを感じると呼吸によって熱を放出し、体を冷やします。体温調節目的の荒い息は、犬にとって自然な生理反応であり、異常ではありません。

ただし、呼吸が荒い状態が長時間続いたり、その他の異常が見られたりする場合は注意が必要です。

息が荒くなる原因は他にもあります。例えば、興奮や緊張が犬の呼吸を一時的に早め、周囲の刺激や環境変化によるストレスが影響している可能性もあるのです。

一過性の原因でない場合は、体調不良や病気のサインである場合も考えられます。

犬の呼吸についての基礎知識

次に、犬の呼吸についての基礎知識を紹介します。正常時と異常時の呼吸の違いを紹介するので、愛犬の呼吸が問題ないか判断できるようになりましょう。

正常時の呼吸と呼吸数

犬の正常時の呼吸は穏やかであり、呼吸数も安定しているのが特徴的です。一般的に、健康な成犬の安静時の呼吸数は毎分10〜35回程度が目安とされています。

小型犬や若い犬は呼吸数がやや多くなる傾向があり、大型犬や高齢の犬は少し呼吸数が少ないです。

また、犬種によっても異なるため、正常な呼吸数にはある程度の個体差があります。しかし、基準範囲内に収まっていれば基本的には正常です。

他にも、呼吸音が特に聞こえない静かな状態であるのも正常な呼吸を示しています。犬は人と同様に、安静にしている時は浅い呼吸で空気の出し入れを行うのです。

異常時の呼吸と呼吸数

犬の呼吸が荒くなったり呼吸数が異常に増加したり、または普段と異なる呼吸音が聞こえたりする場合は、体調に問題がある可能性が考えられます。

異常時の呼吸は、毎分35回を超えるケースや特に息が上がるような呼吸、または苦しそうに息を吸い込む様子が見られることが特徴的です。

異常な呼吸数や呼吸音が見られる場合、病気や体調不良の可能性があり、特に心臓や呼吸器の問題が関係しているケースが少なくありません。

また、犬が呼吸困難を示す場合、体が硬直し、異常な姿勢をとって呼吸する場合があります。

ふだんの呼吸数を把握しておく

愛犬の健康管理の一環として、普段から呼吸数を把握しておくことが大切です。安静時の正常な呼吸数を知っておくと、異常が出た時に早く気づくことができます。

犬は日常生活の中で様々な刺激に反応し、呼吸が一時的に速くなるケースがありますが、安静時の呼吸が基準になるため、安静時に測定することが重要です。

たとえば、犬が寝ている時やリラックスしている時に観察し、呼吸数を記録しておくとよいでしょう。

また、犬の体調は日々変化するため、数週間に一度など定期的に観察を行うと、健康状態の変化にいち早く気づける可能性が高まります。

特に、心臓や呼吸器の病気にかかりやすい犬種や高齢犬の場合、普段の呼吸数を定期的に確認しましょう。

犬の呼吸数の測り方

犬の呼吸数を測る場合は、犬が横になって寝ている時やリラックスしている状態で犬の胸部や腹部の動きを見て、一回の呼吸で上下する回数を数えてください。

測定の際にはタイマーを用意し、15秒間に数えた呼吸の回数を4倍すると、1分間の呼吸数を求めることができます。

この方法であれば、短時間で効率よく正確な呼吸数を把握することが可能です。また、呼吸の際に体の動きだけでなく、呼吸音にも注意を払いましょう。

異常な呼吸音が聞こえないかを確認すると、体調変化をより正確に把握できます。さらに、呼吸数の測定を定期的に行い記録しておくと、異常が出た時に比較しやすいです。

犬の息が荒くなるよくある原因

次に、犬の息が荒くなるよくある原因を紹介します。それぞれ詳しく紹介しますので、愛犬の息が荒い場合は当てはまるものがないかチェックしてください。

激しい運動をした

まず、犬の息が荒くなるのは激しい運動をしたからです。運動によって体内の酸素消費量が増加し、体が必要とする酸素を供給するために呼吸が速くなります。

犬の体は筋肉や内臓の働きを維持するために多くのエネルギーを必要とし、同時に体温も上昇するため、呼吸を速めて体温を下げようとするのです。

そのため、運動後の一時的な息遣いの荒さは正常な生理的反応と考えられます。しかし、呼吸が長時間落ち着かない場合や激しい呼吸が続く場合は注意が必要です。

犬の体力や年齢に合わせて運動量を調整することが大切で、特に高齢犬や健康状態に不安がある犬には無理な運動を避けましょう。

熱さを感じている

次に、犬の息が荒くなるのは暑さを感じているからです。犬は汗腺が少なく、人間と違って体温調節が苦手なため、暑さを感じると息遣いが荒くなる場合があります。

犬は体温を下げるために舌を出して荒い呼吸をするパンティングという行動を取るのです。犬はパンティングで体内の熱を放出し、効率的に体温を下げようとします。

特に夏場の散歩や日中の屋外での運動後には、息遣いが荒くなりやすいです。しかし、過度に暑さを感じている場合、熱中症のリスクが高まります。

犬が舌を出して荒く息をし続けている、もしくは呼吸がしきりに荒く落ち着かない場合、涼しい場所へ移動させ、水分補給を行うなどの対応をしましょう。

ストレスがある

3つ目に、犬の息が荒くなるのはストレスがあるからです。ストレスの原因は様々で、例えば見知らぬ場所への移動や、病院での診察、騒音や雷などが挙げられます。

また、家庭内での変化や飼い主の不在も、犬にとってはストレス要因となる場合が多いです。

ストレスがある状況では犬の体が警戒モードに入り、緊張感が高まって呼吸が速くなります。

ストレスによる荒い呼吸が続くと、犬にとって大きな負担となるため、なるべくリラックスできる環境を整えてあげることが大切です。

たとえば、落ち着ける場所を作ってあげたり、安心できる飼い主の存在を感じさせてあげたりして、犬のストレスを軽減しましょう。

不安になっている

4つ目に、犬の息が荒くなるのは不安になっているからです。

不安の原因は多岐にわたり、知らない人との接触や他の犬との遭遇、苦手な音や環境などが犬にとっての不安要因になる場合があります。

不安を感じると、犬は防衛反応として警戒心が強まり、呼吸が速くなりやすいです。また、不安から逃れようとする姿勢や耳や尻尾の動きなども見られる場合があります。

犬が不安を感じている場合、まず原因を取り除き、安心できる環境を作ってあげることが大切です。

飼い主がそばにいて撫でてあげたり、優しく声をかけることで犬は安心しやすくなります。

また、犬が好きなおもちゃやおやつを使ってリラックスさせてあげましょう。

感情が高ぶっている

5つ目に、犬の息が荒くなるのは感情が高ぶっているからです。

たとえば、飼い主が帰宅した時や遊びの時間に興奮した時など、嬉しさや喜びがピークに達すると、犬は息を荒くし、しっぽを振って飛び跳ねる場合があります。

これは犬が感情を表現する一つの方法で、健康上の問題とは異なる一時的な呼吸の乱れです。

感情が高ぶっているときの荒い呼吸は、基本的に短時間で収まるため、特に心配は必要ありません。

ただし、感情が高ぶりすぎると興奮状態が続く可能性もあるため、興奮しすぎた場合には、優しく声をかけたり少し落ち着かせたりする行動が必要です。

長時間興奮状態にあると呼吸器や心臓に負担がかかる恐れがあるため、状況に応じた対処を心がけましょう。

加齢によるもの

最後に、犬の息が荒くなるのは加齢によるものです。高齢になると、体の代謝機能や体力が低下し、少しの運動や刺激でも呼吸が速くなる傾向があります。

また、加齢により心臓や肺の機能が衰えると、体全体の酸素供給が不十分になりがちであるため、呼吸を増やして酸素を取り入れようとするのです。

加齢による息遣いの変化は、自然な老化現象としても見られます。しかし、高齢犬の場合、呼吸が荒くなる原因が疾患に関わっているケースもあるため、注意が必要です。

心臓病や呼吸器疾患など、高齢犬に多い病気が原因で呼吸に影響が出ている可能性があるため、異常が見られる場合は早めに診察を受けることが大切です。

短頭種の犬は息が荒くなりやすい

短頭種の犬は息が荒くなりやすいと言われています。短頭種の犬は体の構造上から疾患を抱えやすいので、犬の種類や症状を詳しく見ていきましょう。

短頭種といわれる犬の種類

短頭種の犬は、特徴的な平たい顔と短い鼻を持つ犬種を指し、呼吸器系の問題が発生しやすいと言われています。

短頭種はパグやフレンチ・ブルドッグ、シーズー、ペキニーズなどです。

短頭種の犬は、鼻や気道が短いために空気の通り道が狭くなっており、他の犬種に比べて息遣いが荒くなりやすい傾向があります。

特にパグやフレンチ・ブルドッグは、愛らしい見た目や人懐っこい性格で人気が高いものの、運動時や興奮時に息が荒くなりやすいです。

短頭種気道症候群とは?

短頭種気道症候群とは、短頭種の犬が特有の顔の構造によって引き起こされる呼吸器疾患の1つです。

短頭種は頭部の骨格が原因で、鼻腔や喉頭などの気道が非常に狭くなっており、呼吸がしにくい構造になっています。

構造的な問題により、息が荒くなるケースが多く、通常の活動でも呼吸困難や疲れやすさを感じやすいです。

また、短頭種起動症候群は進行性で、年齢を重ねるごとに症状が悪化する場合も多いので、早期の予防と治療を徹底しましょう。

短頭種気道症候群の症状

短頭種気道症候群の症状は、犬によって異なるものの、最もよく見られる症状は、激しい呼吸音やいびきです。

短頭種の犬は、気道が狭いために呼吸する際に音が出やすく、特に睡眠中のいびきが目立つ場合があります。

また、軽い運動や遊びでもすぐに息が荒くなる、呼吸が浅くなるといった症状も頻繁に見られやすいです。

さらに、短頭種起動症候群の症状が進行すると、舌や歯茎が青紫色になるチアノーゼが発生する場合があります。原因は酸素が十分に供給されないためで、呼吸困難のサインです。

チアノーゼが見られた場合、即座に涼しい場所へ移動させ、冷やすなどの応急処置をしましょう。

進行すると意識を失ったり、さらに危険な状態に陥ったりする場合もあるため、早めの対処が求められます。

犬の息が荒いときに考えられる主な病気

次に、犬の息が荒いときに考えられる主な病気を紹介します。さまざまな病気が影響している可能性があるので、特徴や症状を詳しく見ていきましょう。

気管支炎

まず、犬の息が荒いときに考えられる病気は気管支炎です。気管支と呼ばれる気管から肺に続く空気の通り道に炎症が起きると気管支炎を発症します。

気管支に炎症が起こると呼吸がしづらくなり、息遣いが荒くなりやすいです。特に小型犬や年配の犬がかかりやすく、症状としては咳や呼吸困難が見られます。

急性気管支炎は風邪やウイルス感染が原因で発症する場合が多く、治療によって早めの回復が期待できますが、慢性気管支炎になると症状が長期化しやすいです。

気管支炎は、感染症やアレルギー、環境中の刺激物質などによっても引き起こされる場合があります。

また、短頭種の犬はもともと呼吸器の構造が狭いため、特に気管支炎にかかりやすい傾向が強いです。

気管虚脱

次に、犬の息が荒いときに考えられる病気は気管虚脱です。気管虚脱とは、気管がつぶれて呼吸がしにくくなる状態を指し、特に小型犬に多く見られます。

気管は通常、しっかりした軟骨によって形を保っていますが、軟骨が弱くなると気管がつぶれてしまうのです。

気管が部分的に潰れると空気の通り道が狭くなり、息が荒くなったり呼吸時に「ガーガー」や「ホッホッ」といった独特の音が発生したりします。

気管虚脱の原因は、遺伝的な要因や加齢、肥満が影響していると考えられる場合が多いです。治療としては、気管を広げるための薬物療法や体重管理、運動制限などが行われます。

肺炎

3つ目に、犬の息が荒いときに考えられる病気は肺炎です。肺炎になると正常な呼吸が困難になります。

細菌やウイルス、真菌などが原因で感染し、肺がダメージを受けると、呼吸が速くなったり、苦しそうな息遣いが見られたりするのです。

犬が肺炎にかかると、息遣いが荒くなるほか、咳や鼻水、発熱などの症状も現れます。

特に免疫力が低下している子犬や高齢犬は肺炎にかかりやすく、悪化すると命に関わる場合もあるため注意が必要です。

治療としては、抗生物質や抗ウイルス薬の投与が行われます。また、肺炎の回復を助けるために酸素療法が行われる場合も多いです。

心臓病

4つ目に、犬の息が荒いときに考えられる病気は心臓病です。犬の心臓病は、心臓が正常に血液を送り出せなくなる状態で、体全体の酸素供給が不足し、息遣いが荒くなります。

特に高齢の犬や特定の犬種は心臓病のリスクが高く、運動時や興奮時に呼吸が苦しくなりやすいです。

心臓病には、先天性のものと後天性のものがあり、代表的な症状として息切れや咳、疲れやすさが見られます。

行われる治療は、薬物療法による血流の改善や、心臓の負担を軽減する生活習慣の見直しなどです。

飼い主は日常的に愛犬の呼吸状態や体調の変化を観察し、早期発見に努めましょう。また、適切な体重管理と運動量の調整も、心臓への負担を減らすために効果的です。

フィラリア症

5つ目に、犬の息が荒いときに考えられる病気はフィラリア症です。

フィラリア症は、蚊によって媒介される寄生虫であるフィラリアが心臓や肺の血管に寄生し、呼吸器や循環器系に深刻なダメージを与えます。

フィラリアが成長して血管を詰まらせると、血液の流れが悪くなって呼吸が荒くなったり、咳や倦怠感などの症状が現れたりするのです。

フィラリア症は重症化すると命に関わるため、早期の予防が欠かせません。

予防薬は、蚊の活動が始まる時期に合わせて月に一度の投与が基本で、飼い主が適切に予防薬を管理するとフィラリア感染を防ぐことができます。

肺水腫

6つ目に、犬の息が荒いときに考えられるのは肺水腫です。肺水腫になると、肺に水分がたまり、酸素の取り込みが困難になります。

心臓病や感染症が原因で発症する場合が多く、突然の呼吸困難や息遣いが荒くなる症状が見られやすいです。

また、肺水腫になると犬は酸素不足に陥り、舌や歯茎が青白くなるチアノーゼが現れる場合があります。行われる治療は、酸素吸入や利尿剤の投与などです。

急性の肺水腫は命に関わるため、すぐに動物病院での処置を行いましょう。飼い主は呼吸の状態を日常的に観察し、異常を感じたら早めに受診することが重要です。

熱中症

最後に、犬の息が荒いときに考えられる病気は熱中症です。

熱中症は、高温多湿の環境で体温が異常に上昇する状態で、呼吸が荒くなるほか、よだれや嘔吐、意識混濁などの症状が現れます。

犬は汗腺が少ないため体温調節が苦手で、特に暑い環境や車内に長時間放置されると熱中症にかかりやすいです。

熱中症の初期対応として、涼しい場所に移動させ、水を与えて体を冷やしましょう。体温が急上昇した場合には、すぐに動物病院での処置が必要です。

また、飼い主は、犬が高温環境に晒されないよう管理し、特に夏場は室内温度や散歩の時間帯に配慮しましょう。

犬の呼吸が荒いときにできる対処法

犬の呼吸が荒くなったときには、状況に応じた落ち着いた対応が必要です。

激しい運動や暑さ、興奮などが原因で呼吸が荒くなっている場合には、静かで涼しい場所に移動させ、体を休ませましょう。

特に、暑さで呼吸が荒くなっているときは熱中症のリスクがあるため、水を与え、体を冷やすことも重要です。

氷を噛ませる、濡れタオルで拭くなどの方法も一時的な冷却には良いですが、冷やしすぎには注意が必要です。

ストレスや不安によって呼吸が荒くなっている場合には、犬が安心できる環境を整え、飼い主がそばにいてあげてください。

呼吸の状態に大きな変化がないか観察し、症状が続いたり、他に異常が見られたりする場合は速やかに獣医師に相談することが大切です。

こんな症状が出たらすぐに病院へ

犬の呼吸が荒くなると同時に、いくつかの危険な症状が見られる場合には、すぐに動物病院での診察が必要です。

例えば、息遣いが荒くなるだけでなく、咳が止まらない、嘔吐やよだれが多い、舌や歯茎が青白くなるなどの症状は、酸素不足や心臓の問題を示している可能性があります。

また、意識がぼんやりしている、ふらつきが見られる、口を開けたままで呼吸しているといった状態もすぐに対処が必要な状態です。

特に、気温が高い環境での呼吸の荒さや、運動後に収まらない息遣いは熱中症のリスクがあり、放置すると生命に関わる危険性が高まります。

突然の呼吸困難や立ち上がれないといった症状も重篤な病気の可能性が考えられるため、症状が深刻化する前に迅速に診察を受けましょう。

まとめ

今回は、犬の息が荒い原因について紹介しました。犬は、激しい運動や暑い状態、興奮しているときなどに息が荒くなります。

また、短頭種の犬は、鼻や気道が短く、空気の通り道が狭くなって息が荒くなりやすいです。

息が荒いのが長期間続く場合は病気の可能性があるのですぐに動物病院に連れていきましょう。犬の息が荒い原因を特定して、犬の健康をサポートしてあげてください。

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