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- はじめに
- 犬が蚊に刺されるとどうなる?
- 犬が蚊に刺された時によくある症状
- 犬が蚊に刺されて発症する病気
- フィラリア症は命に関わることも
- フィラリアの治療法は?
- フィラリアは予防薬で予防できる
- 犬が蚊に刺されてフィラリア症を発症する確率
- まとめ
はじめに
暖かくなってくると蚊が発生する季節になります。あちこち蚊に刺されるとかゆいだけでなく、とても不快な気持ちになりますね。
また、かゆいだけでなく、まれに感染症にかかることもあり、たかが虫刺されと侮るわけにはいきません。
蚊に刺されるのは犬も同様です。しかも、犬の場合には、蚊に刺されることでフィラリアなどの重篤な病気を発症することがあり、しっかりとした対策が必要です。
今回は、犬が蚊に刺された場合のおもな症状から、フィラリア対策まで、飼い主さんが知っておかなければならない知識についてご紹介します。
犬が蚊に刺されるとどうなる?
犬が蚊に刺された場合、かゆみを感じることもあれば、被毛に隠れて確認できないこともありますが、赤く腫れているなど人間と変わらない症状が出ます。
同じ場所をしきりに気にして噛んでいたり、足で掻く仕草をみせていたら、蚊に刺されている可能性があります。
人間と大きく異なるのは、犬の場合には、正しい対策をおこなっておかないと、人間よりも重篤な問題が発生する可能性があるという点です。
飼い主さんは、たかが虫刺されと侮らないことが大切です。
犬が蚊に刺された時によくある症状
犬が蚊に刺されたときに出る症状は、当初は人間と変わらない症状であることが多いです。
そこから、感染症などに進行することがあるため、初期症状での発見が大切です。
痒み
蚊の発生する季節に、しきりに体を痒がる姿をみせたら、蚊に刺されている可能性が高いでしょう。
家の中でも蚊に刺されることはありますが、散歩などで外出した際に刺されることがよくあります。
蚊に刺されると、刺された部位を頻繁に掻きむしる、舐める、噛むなどの行動をみせるようになります。特に耳や、鼻の横などの顔周り、お腹など比較的被毛の薄いところが刺されやすいようです。
刺された部位は赤くなり、炎症を起こしているため、掻く仕草を見たら、被毛をかき分けて確認してください。
腫れ
蚊に刺された部位は、赤く腫れてくることが多く、痒がっている部位の被毛をかき分けて、赤くポツンと腫れているか確認しましょう。
ただし、犬の場合、人間と違って蚊に刺された部位を、初期の段階であまり痒がらないことがあります。この場合、愛犬自体が蚊に刺されていることに気が付いていないことがあるので、ブラッシングなどのケアの際に、どこか赤く腫れているところがないか注意して観察しておきましょう。
犬が蚊に刺されて発症する病気
犬が蚊に刺されると、ただ痒いだけでなく、そこから病気に発展することがあります。人間でもたまにみられる蚊アレルギーやフィラリア症が代表的なものです。
なかでもフィラリアは、大変恐ろしい病気で、しっかりと対策をしておかないと命に関わる病気なので、注意が必要です。
蚊アレルギー
蚊に刺されると、まれに強いアレルギー反応を示すことがあります。軽度の場合にはかゆみや腫れがみられ、体を掻くなどの症状がでます。しかし、アレルギーが進行して、重度のものになると、じんましんが出て、さらにアナフィラキシーショックを起こすことがあります。
アナフィラキシーショックとは、アレルギーの発症から短い時間のうちに、複数の臓器や全身にあらわれる強いアレルギー反応のことです。
重症化すると、症状が皮膚、粘膜、呼吸器、循環器など複数の臓器にあらわれ、血圧低下や意識障害になり、ときには命を落としてしまうことがあります。
過去になんらかのアレルギーを引き起こしている犬は、特に注意が必要なので、蚊に刺された場合には、しばらくのあいだ目を離さずに経過観察をおこなってください。
フィラリア症
フィラリア症は、寄生虫の名前で、このフィラリアが犬の心臓や肺動脈に寄生して、全身の血液循環や、内臓に大きなダメージを与える病気です。
すでにフィラリアに感染している犬が蚊に刺されると、蚊の体内にフィラリアの幼虫が入り、未感染の犬に吸血することで、刺された犬の体内に幼虫が入ります。
その幼虫が、数ヵ月かけて成虫になり、体内に寄生します。重症化するような例では、成虫が体内に大量に寄生していたことがわかっています。
新たに感染した犬の体内で、寄生した成虫が幼虫を生み、蚊に刺されることによって、ほかの犬に感染していくといったサイクルでフィラリア症は広まっていきます。
成虫は、大きいものだと30cm以上にもなるほど成長します。
フィラリア症は、初期の段階では症状が出ないことが多く、そのまま数年が経過することもあり、症状が出たときにはすでに重症化している可能性が高い、大変怖い感染症です。
また、これまで何の症状もなく、飼い主さんもまったく気付かない状態で、あるとき突然発症して、急激に悪化して数日で命を落としてしまうこともあります。
フィラリア症は命に関わることも
前述のとおり、フィラリアはすぐに症状が出ないため、気付いたときには数年が経過していて、すでに重症化しており、手の施しようがなく命を落としてしまうことがあります。
まったく症状をみせることなく、突然発症した場合には、かなり感染が進行していることが考えられ、治療が困難になってしまいます。
フィラリアに感染した場合は治療が必要
フィラリアに感染したことが発覚したら、すみやかな治療が必要です。
ただし、愛犬の年齢や、寄生状況などによって治療方法は異なります。基本的には、薬を使用した駆除や、手術が検討されます。
一方で高齢の場合や、寄生が進み体力が大きく落ちているときには完治を目指すのではなく、症状に対する対症療法により、自然にフィラリアが減少していくことを期待する方法を選択することが多いですが、症状が改善される可能性はそれほど高くありません。
症状が出るのは感染から6ヵ月以降
蚊に刺されることで体内に入り込んだフィラリアの幼虫は、およそ6ヵ月をかけて成虫になります。成虫になったフィラリアは、血管内を通り心臓や肺動脈を最終寄生場所にします。
成虫になったフィラリアは、犬の体内で5~6年生きることこともあり、寄生してすぐに症状が出ることもあれば、数年のあいだ無症状で、症状が出たときにはすでに重症化していることも少なくありません。
なかには、症状が出ないまま長生きする犬もいるため、感染しても症状が出るまで発見しづらい特徴があります。
フィラリア症の症状
フィラリアは軽度のうちはほとんど症状がなく、段階を経て、徐々に体にさまざまな異変を引き起こします。
愛犬が蚊に刺されてフィラリア症になっているか不安な場合、以下のような症状がないか確認してみましょう。
軽度の症状
感染して間もない頃で、症状が軽い場合、ほとんどの犬が無症状なことが多く、症状が出てもごくたまに軽い咳をする程度のため、ほとんどの飼い主さんが症状に気付くことが困難です。
軽度のフィラリア症の場合、犬自身もそれほど苦しさや異変を感じていることが少なく、つらそうな素振りも見せず、元気な場合が多いので、そのまま症状が進行してしまうことが多くみられます。
中度の症状
中度になると、食欲不振で元気がなくなり、これまでと少し様子が変わってきます。さらに進行すると、貧血や呼吸を苦しそうにするなど明らかな異常を見せはじめます。
この段階で、異変に気付くことができれば病院に連れていき、検査によってフィラリアへの感染が確認できますが、見落としてしまうと、さらに症状が悪化します。
中程度から重度の症状に近づいていくと、腹水が溜まり、呼吸困難になることもあり、明らかに危険な状態になってきます。
場合によっては、散歩中に失神してしまうことがあるなど、急激に元気がなくなっていきます。
重度の症状
軽度から、中度と段階を経て重度になる場合には、異常を感じた時点で検査を受けることができれば治療も可能ですが、それまでまったく症状が出ないまま、いきなり重度の症状が出てしまうことがあります。
この場合には緊急性が高く、命の危険も考えられるため、早急に病院での治療が必要となります。
このときに出る症状は重篤なものが多く、心臓の右側に寄生したフィラリアが、心臓内の逆流防止弁である三尖弁(さんしんべん)を傷付け、フィラリア自体が血液の流れを邪魔することで「三尖弁機能障害」という症状が発生し、心不全を引き起こします。
ほかに、フィラリアによって、肺へつながる血管が硬くなって、血栓を作る「肺障害」があります。血栓が肺を傷つけて、呼吸困難などを引き起こします。
三尖弁機能障害も肺障害も発症すると、愛犬の命に関わるほど危険なものなので、緊急性の高い症状となります。
フィラリアの治療法は?
フィラリア症は、治療が困難で、確実に完治するという病気ではありませんが、早期発見により駆除できれば改善の余地があります。しかし、フィラリアが大きくなればなるほど治療が困難になっていきます。
また、一度感染してしまうと、たとえフィラリアを駆除できたとしても、ダメージを受けた心臓や肺などの機能は戻ることはありません。
つまり、完治して、もとのような元気な状態に戻ることは難しいので、何よりも感染しないことが大切です。
フィラリアに感染してしまった場合の治療として、代表的なものをご紹介します。
外科手術
すでにフィラリアが成虫になっており、心臓へ寄生している場合、外科手術によりフィラリアを摘出する方法を選択することがあります。
首の静脈から、鉗子(先端がつまみになっている機材)を挿入し、心臓に寄生しているフィラリアを釣り出します。
しかし、フィラリアの外科手術には特殊な機材や高度な技術が必要とされているため、実施できる病院や医師は少ないのが現状です。
また、体力的な負担も大きく、すでにフィラリアを発症して、衰弱している場合には手術に耐えられないと判断し、手術ができないことがあります。
駆虫薬の使用
フィラリアの成虫を駆除するには、成虫用の駆虫薬が必要です。ただし、体内の寄生数が多い場合に一度にまとめて駆虫薬を投与してしまうと、成虫が一気に死滅してしまい、血管や肺に大きな負担をかけることになりかえって危険にさらされてしまいます。
そのため、徐々に弱らせていくケースや、数回に分割して投与するケースなど、時間をかけて治療をおこなうこともあります。
ただし、大量に寄生している場合、死滅した成虫が、肺の血管に詰まってしまい症状を悪化させてしまうなどのリスクも存在しています。
予防薬の投与
成虫の駆虫薬にはリスクの心配もあるため、フィラリア症の予防薬の長期的な投与で、寄生虫の被害をこれ以上広げずに、フィラリアが寿命を迎えて死滅していくのを待つという治療方法を選択することがあります。
予防薬は、本来感染していない犬に対して処方されるもので、成虫を駆除することはできませんが、予防薬の投与によって、徐々に弱っていくことを期待して投与します。
ただし、大量に寄生している場合に、一気に幼虫を大量に駆除したのと同じ状況になってしまい、ショック反応を起こしてしまうことがあるため、寄生している成虫の数が少ないときに選択される治療法です。
フィラリアの駆除や手術に耐えることができない状態の場合、予防薬の使用も困難なので、症状を悪化させないための対症療法を選択します。
ただし、対症療法で寄生虫が自然に減少するのは考えにくく、症状が回復に向かう可能性は高くないのが現状です。
フィラリアは予防薬で予防できる
フィラリアは、感染してしまうと命の危険にさらされる、大変危険な感染症です。しかし、きちんと予防すれば、ほぼ100%予防できる病気なので、きちんと予防していれば、恐ろしい病気ではありません。
予防薬の投与時期としては、一般的には5月〜12月とされていますが、お住まいの地域により異なります。蚊を見かける時期によって投与する期間が違うため、お住まいの地域の動物病院で確認してください。
ここで注意点ですが、フィラリアの予防薬を投与する前には、毎年病院でフィラリア感染の検査を受けてください。
一般的には、毎年春頃に血液検査を実施して、フィラリアに感染していないことを確認する必要があります。
これは、感染の有無を調べるだけでなく、すでに幼虫が体内にいる状態で、予防薬を投薬することで幼虫が一気に死んでしまい、血管に詰まるおそれがあるケースや、ショック状態になってしまうことを防ぐ意味合いもあるので、検査を実施して問題ないことを確認したうえで投薬を開始しましょう。
毎月1回服用するタイプの経口薬が多い
予防薬には、一般的な錠剤タイプや、肉などに混ぜ込んで食べやすさを重視したチュアブルタイプ、首のうしろに滴下するスポットタイプ、年1回の投与で予防できる注射タイプなどがあります。
錠剤タイプは、フードに混ぜても薬だけ残してしまい、なかなか飲んでもらえないことがあり、チュアブルタイプは食いつきは良いのですが、原材料にアレルギーがあると使用できません。
滴下タイプは、肌の弱い犬には合わないことが多く、注射はアレルギーの発生率がほかに比べ高いといわれています。
どのタイプを選択するのかは、愛犬との相性もあるので、獣医師に相談してみるとよいでしょう。
一般的には、錠剤タイプやチュアブルタイプなどの経口薬が多いといわれていますが、地域によって1年中蚊が発生するところなどは、注射を検討してみてもよいかもしれません。
また、最近では、フィラリアの予防に加えて、ノミ・ダニなどの外部寄生虫や、線虫・回虫など内部寄生虫の駆除を同時におこなえる薬も販売され、1回の投薬ですべてまかなえるため、大変人気が高くなっています。
毎月決められた日に投薬する
フィラリアは、前回の投与からちょうど1ヵ月後に投薬するようにしてください。投薬期間が短すぎてもいけませんし、長すぎても効果がなくなってしまうため、決まった日に投薬するようにしましょう。
1回目の投薬を終えたら、次の日にちをメモするなどして次回投薬日を忘れないようにしておきましょう。
予防薬を毎月投与する理由は?
注射以外の予防薬を毎月投与するのには理由があります。
蚊に刺されて、フィラリアの幼虫が体内に侵入して、心臓や肺の血管に届くまでの期間が約1ヵ月と考えられています。
心臓や肺に到達するまでの間に、フィラリア予防薬を追加して投薬すれば、次の幼虫が仮に体内に入っても、血管へ届く前に駆除できるため、毎月の投薬が必要になります。
犬が蚊に刺されてフィラリア症を発症する確率
犬が蚊に刺されて、フィラリアに発症する確率は予防しているか、いないかで大きく異なります。
予防をしていない犬は約22%
フィラリアの予防をしていない犬は、約22%の割合でフィラリアに感染します。同じ予防をしていないケースでも、外で飼われている場合と、室内飼いでは、割合は変わってきますが、いずれにしても高い確率で、感染してしまうことがわかります。
22%でもかなり高い確率ですが、3年間予防をしていない犬では、感染確率が92%にも達してしまいます。
予防をしていればほぼ100%防げる
予防していない犬の感染率はとても高く、恐ろしい感染症ですが、しっかりと予防していればほぼ100%防げることもわかっています。
一度感染してしまうと、完治が難しく、重症化して、命を落としてしまうリスクを考えたら、フィラリアの予防は犬を飼う飼い主さんにとって、必ずおこなう必要があると考えてよいでしょう。
フィラリアに感染している犬がどこにいるのか、判断することは難しく、フィラリアの幼虫を持った蚊に絶対に刺されないようにするのも、現実的ではありません。
しかし、予防さえしっかりとしていれば、万が一蚊に刺されても、発症することはありません。
まとめ
犬が蚊に刺されることによって発症する、アレルギーやフィラリアについて解説いたしました。
特に、フィラリアは、犬を飼っている以上、飼い主の責任として必ずおこなわなければならないといってもいいほど大切なことです。
予防をしておかないと、大変危険な病気であることが、今回の記事でおわかりいただけたかと思います。
大切な愛犬を苦しめることのないよう、必ずフィラリア対策はおこなうようにしましょう。