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【獣医師監修】犬が草を食べたがるのはなぜ?犬が食べてはいけない危険な草や食べてしまった時の対処法を紹介

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はじめに

愛犬がお散歩中や、公園などで遊んでいるときに草を食べていたことはありませんか?

外に生えている草をむしゃむしゃと食べていると、心配になってしまうと思います。

そもそも、なぜ草を食べたがるのでしょうか。実は、犬が草を食べたがるのにはちゃんと理由があります。

「いくら理由があるとはいえ、体に害があるかもしれない。もし体調を崩してしまったらどうしよう」と不安に思う飼い主さんがほとんどでしょう。

そこで、今回は、犬が草を食べたがる理由や、食べてはいけない草をもし食べてしまったときの対処法まで詳しく解説いたします。

犬が草を食べたがるのはなぜ?

犬に草を食べさせるのは控えたほうがよいでしょう。食べてしまっても問題のない草もありますが、中毒症状を起こしてしまう草もあり、万が一中毒になれば愛犬がたいへん苦しみます。中毒だけでなく、寄生虫や細菌が付着している草を食べてしまえば感染症になってしまうおそれがあり危険です。

食べても大丈夫な草と、食べられない草の見分けがつかないようならば、散歩中などに食べようとしても食べさせない方が安心です。

それでも愛犬が、草を食べたがるのはいくつかの問題によるものかもしれません。

考えられる原因について、みていきましょう。

ストレスが溜まっている

犬は毎日の生活のなかで、ストレスを感じると草を食べることがあります。

散歩に来たのに飼い主さんと散歩を楽しめず退屈をしているときや、毎日留守番の時間が長く寂しい思いをしているとき、引越しなどで慣れていた環境が大きく変わるときなどに強いストレスを感じて草を食べている可能性があります。

またたくさんの運動を必要としている犬種の場合、運動不足によるストレスでもこのような行動に出ることがあるため、十分な運動時間を確保してあげましょう。

もし、ストレスが原因で、飼い主さんの声に反応しないほど草を食べているようなときには、愛犬と積極的にコミュニケーションをとって、散歩の時間を楽しいと感じさせることができれば解消される可能性があります。

栄養が足りていない

栄養が足りていない、もしくは栄養が偏っている場合に、草に含まれているビタミンを摂取しようとして本能的に草を食べることがあります。

毎日の食事で、総合栄養食のフードを適量食べていれば、必要な栄養素が不足することはありませんが、そうでないドッグフードや、栄養やカロリーが不足している手作り食などを与えていると、草を食べて不足している栄養素を補給しようとしていることがあります。

ほかに、単に空腹を満たすために、目の前にある草を食べているという場合もあり、これらのような場合には、食事の質、量ともに見直すことで改善されることがあります。

胃腸に不調を抱えている

犬は胃腸の調子が悪いときに、吐くことで解消しようとして、尖った草を食べ、胃の粘膜を刺激して吐き出そうとすることがあります。

胃腸の調子以外にも、異物を飲み込んでしまい、吐き出そうとするときなども草を食べて吐こうとします。

草の食感が好き

単に草の食感が好きで、草を食べることを楽しんでいるケースもあります。お腹を満たすというよりも、草をくわえて噛み切ることを楽しく感じて、遊びの延長で草を食べています。

この行為を愛犬が楽しんでいるのならば、それ自体がストレス発散や、一種のリラックス効果を得ていると考えられるため、草を食べて体調を崩すようなことがなければ多少ならば問題ありません。

ただし、草を食べることで体調を崩すのに毎回食べてしまうのは、草を食べることが癖になってしまっている可能性があります。

草を食べて毎回体調を崩したり、吐いたりするようならば、草を食べさせないようにしてください。

まだ家に帰りたくない

散歩や外遊びが楽しくて、家に向かう帰り道に限って草むらに向かい、草を食べ始めるときは、まだ家に帰りたくないサインを出していることがあります。

歩くのをやめて、草を食べることで、時間稼ぎをしているのかもしれません。毎日決まった散歩コースで刺激が少ないときや、散歩時間が短くもの足りないときなどにこのような行動を見せることがあります。

犬が草を食べるのは危険?

犬は本能的に草を食べていることが考えられますが、道端や公園などの草を好きなように食べさせるのは危険をともなうため、あまりおすすめできません。

すべての草が安全な物とも限らず、ときには健康に悪影響を及ぼし、命の危険にさらされてしまうことがあります。

愛犬を散歩させていると、草の近くで足を止めてにおいをかいだり、草を食べていることがありますが、有毒性のある植物や、寄生虫、危険な薬剤などを口にしてしまうリスクが高いので、できる限り避けるようにしてください。

外で自由に草を食べさせることの危険性を、飼い主さんはしっかりと理解しておく必要があります。

犬に有毒な植物がある

公園などで見かける植物のなかには、犬にとって有毒なものも少なくありません。飼い主さんがそのすべてを把握することは難しく、自由に食べさせることはとてもリスクが大きいので避けた方がよいでしょう。

犬にとって有毒な植物を口にしてしまうと、中毒症状を引き起こしてしまいます。少量でも重篤な中毒になる植物も存在しているため、散歩のコースで、よくわからない植物を愛犬が食べようとしていたら、すぐに引き離して食べさせないことが最善の予防策になります。

寄生虫や虫がついてくることがある

仮に犬が食べても健康に害のない草だったとしても、安心はできません。草むらには寄生虫も多く潜んでいます。特に気を付けたいのがマダニやノミです。

マダニやノミは葉先から犬の皮膚に移ってきて、血を吸うことで皮膚の炎症やかゆみ、大量に寄生されると貧血などを起こしてしまいます。

特にマダニはこれらの症状に加え、犬にとって、深刻な感染症を引き起こすことがあり大変危険です。

できれば、草むらに犬を入れないようにすることが望ましいですが、入ってしまった場合には、外から帰ったら愛犬の体にマダニやノミが付いていないか確認しましょう。

また、寄生虫の対策として、月に一度の駆除薬の投与を欠かさずおこなうようにしてください。

草むらには寄生虫以外にも、虫が潜んでいることがあります。虫のなかには、クモやムカデなど毒を持っているものも多いため、刺されると痛みや炎症を初めとして深刻な健康被害を受けることもあるので、愛犬が草を食べていなくても、長い時間草むらでは遊ばせない方がよいでしょう。

除草剤には犬に有害な成分が含まれている

公園や、歩道などに生えている草には除草剤が散布されていることがあります。公園などでは除草剤の散布をおこなったときには、注意喚起の告知などがされていることが多いですが、一般のご家庭で散布された除草剤は、いつどこで撒かれたかわからないことがほとんどです。

除草剤の付いた草を食べてしまうと、中毒症状を起こすことがあり、おもな症状として嘔吐、下痢、けいれんなどがあります。

食べてしまった量によっては、命に関わるほど深刻な症状を引き起こすこともあるので、注意が必要です。

病原菌がついている場合がある

草に付いている寄生虫によって、感染症になるおそれがあることは前述しましたが、それだけでなく、草に病原菌が付いており、食べてしまうことで感染症になってしまうケースがあります。

この病原菌は、草が持っているものではなく、感染症にかかった犬の糞便が付着した草を食べてしまって、愛犬が感染症にかかるリスクが高まってしまいます。

感染症にかかると、場合によっては愛犬に深刻な症状をもたらすことがあるので、安全が確認できない草を食べさせるのはやめておきましょう。

犬が食べてはいけない危険な草の種類

犬が食べてしまうと危険な草は意外と多くあります。公園などでもよく見かけるものも多いため、お散歩中などに誤って食べてしまわないよう、飼い主さんは気を付けておかなければなりません。

犬に有害な草は多い

犬にとって有害な草をはじめとする植物は多く、誤って食べてしまって重篤な中毒症状を引き起こすことも珍しくありません。

なかには、食べていなくても触れるだけで皮膚に炎症を起こすものもありますが、有害な草をすべて覚えることが困難な場合は、草むらなどに近づかないことが有効な対策といえます。

また、ご家庭で栽培している植物のなかに有害なものがある場合は、犬が近付けない場所に移動するなどして、誤って食べてしまわないようにしてください。

公園や道端によくある危険な草は?

公園や道端でよく見かける草をはじめとする植物で、危険なものをご紹介します。

ツツジ科全般

ツツジ科の植物(ツツジ・シャクナゲなど)は葉や花に毒性があり、食べてしまうと中毒症状を引き起こすことがあります。おもな症状は嘔吐、下痢などで、大量に摂取すると命を落としてしまうことがあり、犬にとってかなり危険な植物です。

ユリ科全般

ユリ科の植物(ユリ・チューリップなど)も犬にとってかなり危険な植物です。ユリ科の植物を食べてしまうと、嘔吐のほかに、けいれん、狂乱、昏睡など非常に危険な中毒症状がみられることがあります。

ユリ科は家庭で栽培されていることも多いため、犬の近付けないところに置くようにしてください。

アサガオ

アサガオも公園などでよく見かけますが、アサガオの種子には犬にとって有害な物質が含まれており、食べてしまうと嘔吐や下痢、血圧低下といった症状が現れることがあります。

アサガオは小学校などで、栽培されることが多く、家の前に置かれているのをよく見かけますが、鉢の周辺に種子がないとは限りませんので、アサガオを見かけたら近づかないようにしてください。

アジサイ

アジサイは葉とつぼみに有毒成分があり、食べてしまうと嘔吐、めまい、意識障害を起こすことがあります。

花壇やお庭でよく見かけることがありますが、誤って食べてしまわないよう近くに行くことは避けてください。

スイセン

スイセンの球根には有毒成分があり、食べてしまうと嘔吐、下痢、中枢神経麻痺、血圧低下などの症状が現れます。

スイセンはニラに似ているため、人間でも誤って食べてしまい中毒症状を引き起こすため、犬以外にとっても大変危険なため、誤食には注意してください。

アロエ

アロエは人間にとって、美容液などに使用されていることから、安全と考えてしまいがちですが、犬にとっては有害な部分があります。

犬が食べてはいけないのは、アロエの内部の乳液部分で、食べてしまうと下痢、嘔吐、胃腸障害を引き起こしてしまうことがあります。

ご家庭で栽培するときも、愛犬が近づけない場所を選ぶようにしましょう。

有毒な草を食べてしまった時に出る症状

有毒な草を食べてしまうと、食べたものによって出る症状は異なりますが、以下のような症状は、中毒症状が出たときによくみられるものなので、草を食べて当てはまるような症状がみられたときには中毒を疑う必要があります。

下痢・嘔吐

犬は、有毒な草を食べてしまうと、下痢や嘔吐になってしまうことがあります。

これは有毒な草の成分が消化器系を刺激して引き起こされたものです。中毒が原因のものもあれば、感染症によって下痢や嘔吐を繰り返すケースなどがあります。

すぐに治まって、愛犬の様子が何もないようならば経過観察をしてもよいですが、繰り返し下痢や嘔吐が続き、ぐったりとしてしまった際には動物病院に連れていきましょう。

血便

犬が草をたべてしまい、消化までに時間がかかっているときや、毒性成分が腸を刺激して血便が出ることがあります。

これは食べてはいけない草を食べてしまい、中毒症状が原因となって引き起こされています。

中毒になると、胃腸が傷ついて下痢をしていることが多いですが、水のような便に血が混ざっているようなときがあるので、愛犬が血便をしていたら、重症化する前に動物病院へ行きましょう。

神経症状

神経障害とは、震えやけいれん、意識障害のことで、毒性のある草を食べてしまったときによくみられます。

草を食べてしまい様子をみているうちに、震えてくるようならば、さらに症状が悪化してけいれんや意識障害になってしまうことがあり、注意が必要です。

よだれ

中毒症状が進行すると、よだれを垂らしながらけいれんすることがあります。これは中毒症状が進行しており、危険な状態なので、すみやかに動物病院で適切な治療を受けてください。

犬が危険な草を食べてしまった場合の対処方法は?

愛犬が危険な草を食べてしまい、様子がおかしく具合が悪そうなときにはなんらかの対処が必要となります。

しかし、対処法を間違えると、かえって苦しむことになります。

症状が出たらすぐに動物病院へ

まず中毒症状が出て、異常が確認できたときは、たとえ症状が軽くてもあとで悪化する可能性が高いため、すみやかに動物病院へ連れていき適切な処置を受けてください。

その際に、様子がおかしくなり始めた時間や、考えられる原因、どのような症状が出ていたか、など治療に必要な情報が提供できるようメモなどに残しておきましょう。

また嘔吐物や下痢をした便などは、うまく採取できるようならばビニールなどで少量取って持っていくと原因の解明に役立ちます。

重篤な中毒症状は大変危険で一刻を争うため、経過観察はせずに、すぐに病院で治療を受ける必要があります。

病院での治療法は?

病院で治療を受ける際には、食べてしまったものを吐かせるか、中毒症状を緩和するための治療をおこなう場合の2種類があります。

これは、食べてからの時間の経過によって、医師が治療法を決めていきます。

催吐剤を使用して吐かせる

草を食べてしまい、中毒症状が出てからの時間が1〜2時間程度であれば、まだ胃に残っている可能性があるため、催吐処置によって吐き出させる治療を選択することがあります。

嘔吐を促す薬剤を投与して、吐き出すのを待ちます。どうしても吐けない場合は、さらに別の薬を投与するか、便が出るのを待ちます。

催吐剤での嘔吐処置をおこなうには、食べてからあまり時間が経過していないことが望ましいので、少しでも異変を感じたり、明らかに有毒な草を食べてしまったりしたことが確認できたらすぐに病院へ連れていきましょう。

中毒症状に対して薬物投与を行う

催吐処置を施しても変化がみられない場合や、時間が経過して胃を通過してしまっている場合には、中毒症状に対しての治療をおこなうことになります。

おもな治療法は薬物投与で、毒素吸着剤を投与することがあります。これは毒素を吸着して一緒に排泄させる治療で、中毒症状の緩和に役立ちます。

ほかに、点滴治療をおこなうこともあり、それでも症状が改善されない場合は、胃洗浄などをおこなうケースもあります。

これは、その時点での愛犬の状態にもよるので、獣医師と相談のうえ、治療方法を決めていきましょう。

いずれにしても、中毒症状は大変苦しく、ときには命に関わるほど重症化するものもあります。

そのため、危険といわれている植物や、判断できない草や草むらには、愛犬を近付けないようにすることでリスクを大幅に減らすことができるので、散歩や外遊びの際に、飼い主さんは注意して見守ってあげましょう。

まとめ

今回は、犬が草を食べたがる理由や、中毒を引き起こした際の対処法などについて解説いたしました。

犬は身近にある植物のなかに中毒になってしまうものが多いことも、おわかりいただけたかと思います。

散歩などをしていると、草に近づいていくことがよくありますが、あらゆるリスクを考えると、草を食べるのを放置しておくことはおすすめできません。

どうしても、愛犬が草を食べることを好むようならば、市販されているペット用の草を購入して与えてみるのもよいかもしれません。

これでしたら、中毒の心配もなく安心して与えることができます。

ほかに、今回ご紹介したストレスや栄養不足が関係していることもあるので、心当たりがある場合には、愛犬とのコミュニケーションを増やして、ストレスを解消させたり、食事の内容を見直したりすることで草を食べる癖が治るかもしれません。

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