PETSTART 
DOG
CAT
ペットスタート 
ペットスタートマガジンでは「ペットとの暮らしを始めるすべての人に」をコンセプトに、ペットにまつわる様々なお役立ち情報を、これからペットとの暮らしをスタートする方へ向けて提供しています。ペットにまつわる全ての情報をペットスタートマガジンで御覧頂けるように日々コンテンツを発信していきます。
- はじめに
- 犬のクッシング症候群とは？
- 犬がクッシング症候群になる原因
- 犬のクッシング症候群の症状
- クッシング症候群にかかりやすい犬種
- 犬のクッシング症候群の治療法
- 治療にかかる費用や治療に必要な期間
- クッシング症候群を予防する方法はある？
- まとめ
はじめに
最近、愛犬の水を飲む量やトイレの回数が急激に増えたり、食欲が異常なほどに増えたりするといった様子はありませんか。
子犬の場合には、成長段階で一時的にそのような状態になることも考えられますが、中高齢期に差し掛かった犬が、いきなりそのような症状を見せることはあまりありません。
高齢になれば、ある程度は今までと違った様子を見せることはありますが、あきらかに異常な行動の場合には、病気の可能性も否定できません。
飲水量やトイレの回数の増加は、年齢的なものではなくクッシング症候群という病気のせいかもしれません。
今回は、クッシング症候群とはどのような病気で、どういった症状が出るのか、原因や治療法についても詳しく解説いたします。
犬のクッシング症候群とは？
クッシング症候群とは、具体的にどのような病気なのでしょうか。
副腎皮質機能亢進症
クッシング症候群は別名を「副腎皮質機能亢進症（ふくじんひしつきのうこうしんしょう）」といいます。腎臓の近くにある副腎という臓器から分泌されるコルチゾールという副腎皮質ホルモンが、体内で過剰に増えてしまうことで、体に様々な悪影響を与えてしまう病気です。
クッシング症候群は猫や人に比べて、犬の発生頻度が高く、特に中高齢期の犬によくみられるホルモン異常の病気です。
副腎皮質からのホルモン分泌が過剰になる
クッシング症候群は、副腎皮質から分泌されるコルチゾールが過剰に増えることで起きる病気です。
コルチゾールは各組織に作用して、糖質や脂質、タンパク質の調整や、血糖値の上昇、炎症や免疫機能の抑制作用があり、適切な体重や健康な体の維持、調整に役立っています。
体のあらゆる組織に対して重要な働きをしているため、コルチゾールが過剰に分泌されてしまうとこれらの働きも必要以上に強くなり、体に悪影響を及ぼすようになります。
感染に対する抵抗力が低下することで、病気や感染症になりやすく、血糖値が高い状態が続くため、糖尿病になるリスクも高くなります。
このように、クッシング症候群により、体に悪影響を及ぼすだけでなく、他の病気の併発のおそれがあるので、注意しなければなりません。
犬がクッシング症候群になる原因
クッシング症候群の原因は「腫瘍性」と「医原性」に分類されますが、クッシング症候群を発症した場合の多くが、腫瘍性のものとなります。
クッシング症候群が疑われる場合には、まず腫瘍性と医原性のどちらなのか、腫瘍性ならば体のどの部分に腫瘍ができているのか、それぞれ治療法も異なるため、原因の特定がとても重要です。
脳下垂体の腫瘍
副腎皮質から分泌されるホルモンの量をコントロールしているのが、脳下垂体です。脳下垂体からは「副腎皮質刺激ホルモン（ACTH）」というホルモンの分泌量を増加させるホルモンが分泌されていますが、下垂体に腫瘍ができることによって、ホルモンの量を制御できなくなり、ACTHの分泌が増加し過ぎてしまいます。
増加したホルモンに刺激を受けて、副腎皮質ではコルチゾールが過剰に生成されてしまいます。
コルチゾールが過剰に生成されることで、クッシング症候群を発症し、体に悪影響を及ぼしてしまいます。
腫瘍性のクッシング症候群のうち、8〜9割が脳下垂体の腫瘍によるもので、その多くは良性ですが、まれに悪性腫瘍の場合があります。
副腎の腫瘍
腫瘍性のクッシング症候群のうち、1〜2割が副腎の腫瘍によるクッシング症候群となります。
脳下垂体の機能は正常であるにも関わらず、副腎に腫瘍があることで働きが過剰になってしまいます。
脳下垂体の腫瘍に比べて、発生する割合は低く、良性ならば、切除により完治する可能性も高くなります。
ステロイド剤の投与
ステロイド剤の投与により、クッシング症候群を発症するケースがあり、これを「医原性クッシング症候群」といいます。
医原性とは、なんらかの医療行為が原因で他の病気や障害を発症するクッシング症候群を指しています。
別の病気でステロイドを長期的に投与していたことが原因となり、クッシング症候群を併発してしまいますが、使用を中止すると症状が改善することがあります。
ただし、ステロイドはすべて体にとって悪いわけではなく、別の疾患の治療に必要とされているために投与しているので、飼い主さんの判断で中止するのではなく、獣医師と相談して、適切な治療をおこなう必要があります。
犬のクッシング症候群の症状
クッシング症候群を発症すると様々な症状がみられます。この症状は一時的なものではなくコンスタントに異常がみられるため、加齢によるものだと自己判断してしまって病気のサインを見逃さないようにしましょう。
犬のクッシング症候群の代表的な症状は以下のとおりです。
飲水量が増加する
症状の中でも比較的気付きやすく、代表的な症状が、飲水量の増加です。
多飲の目安として1日の飲水量が体重1kgあたり100ml以上飲むようならば多飲と判断できます。
体重が5kg前後の犬が、1日にペットボトル1本以上水を飲むようになったらクッシング症候群による異常な状態といえるでしょう。
ただし、夏場や運動後など明らかに喉が渇いているときは場合によってたくさん水を摂取することもあるので、このような場合に水をたくさん飲んでも多飲とは判断できません。
あくまで、日常的にコンスタントに飲水量が増えているのかが判断材料となります。
尿の量が増える
飲水量の増加にともない、尿の量も増加する「多飲多尿」が続くこともクッシング症候群の特徴です。
通常、犬の1日あたりの尿量は1kgあたり50ml以下であり、これを日常的に超えるようであれば多尿と判断できます。
とはいえ、実際に尿量を計測することは一般の家庭では困難な場合が多いので、トイレの回数が今までよりも明らかに多くなっているかどうかで確認してもよいでしょう。
食欲が旺盛になる
クッシング症候群を発症すると、食欲が異常なほどに旺盛になることがあります。それまで毎日適量を食べていた子の食いつきが明らかに違ったり、食べ終わったあとも異常を感じるほどご飯を食べたがっていたりした場合には、クッシング症候群の症状が出ている可能性があります。
この病気の特徴として、食欲は旺盛でも筋力が落ちてしまい体力的に弱ってしまうことがあります。よく食べるからと食事を増やしてしまうと、体重だけが増えてしまうため食欲が旺盛であっても、異常を感じたら食事量を増やすのは避けてください。
筋力の低下とともによく見られる症状として、腹部膨張も特徴です。筋力の代わりに脂肪がたまり、横から見るとお腹だけがぽっこりと出ているように見えます。
そのため、クッシング症候群になった場合には、食事量や体重管理も大変重要です。
皮膚が薄くなる
クッシング症候群になると、様々な皮膚症状がみられるようになります。皮膚が薄くなり、色素沈着や炎症、かゆみが生じることがあります。ほかにも石灰化を引き起こし、「びらん」と呼ばれる表皮の欠損などがみられることがあります。
また、体内の抵抗力が落ちてしまうため、一度このような皮膚炎になると治りにくくなることもクッシング症候群の特徴です。
脱毛がみられる
クッシング症候群が進行すると、多くの犬に脱毛がみられるようになります。脱毛の範囲は個体差がありますが、体の一部分だけの場合もあれば、頭や四肢をのぞいて広範囲で脱毛してしまうこともあります。
他の皮膚炎でも脱毛がみられることはありますが、クッシング症候群で生じる脱毛の特徴として、左右対称でかゆみの伴わない点が、ほかの皮膚疾患と大きく異なります。
通常の皮膚炎ならば、皮膚の治療で治ることが多いですが、左右対称で脱毛が起きた場合には、別の治療が必要になるため正しく見極めなければならないので、進行する前に動物病院を受診して獣医師の判断を仰いでください。
血糖値が高くなる
コルチゾールが過剰に分泌されることによって、血糖値が上昇して高血糖になります。高血糖は人間でも自覚症状がないことが多く、気付かないまま放置してしまうと糖尿病になることがあります。
糖尿病を発症してしまうと、クッシング症候群の治療以外にも継続的な治療が必要となるので、重症化させないためにも、少しの異常でも放置するのは避けましょう。
クッシング症候群にかかりやすい犬種
8歳以上の中高齢犬に多くみられ、プードル、ダックスフンド、シュナウザー、ボストンテリア、ボクサー、ビーグル、シーズーなどがクッシング症候群になりやすい犬種とされています。ただし、あくまで好発犬種であり他の犬種でも発症することがあるので、その他の犬種でも注意する必要があります。
犬のクッシング症候群の治療法
クッシング症候群が疑われる場合には、まずは病院で検査を受けてください。適切な診断と適切な治療をすみやかに開始しなければ、過剰なコルチゾールの分泌により体中のあらゆる臓器に長期間負担をかけ続けることになり、徐々に重症化するリスクがあります。
そうならないためにも、クッシング症候群でみられるような症状を確認したら、まずは動物病院を受診してください。
原因を特定するために検査
動物病院を受診したら、何が原因で症状が出ているのか特定しなければ適切な治療を開始できません。
診察は、一般的な問診や聴診、目視での確認や触診から始めるところがほとんどです。
クッシング症候群のおもな検査内容は、血液検査、ACTH刺激試験、デキサメタゾン抑制試験、エコー検査、CT、MRI検査などがおこなわれます。
血液検査を幅広くおこなうことで、体の異常を見つけ出し、診断を進めながら次の検査に進みます。
ACTH刺激試験や、デキサメタゾン抑制試験はクッシング症候群の原因を究明するためにおこなわれる特殊な血液検査です。
ACTH刺激試験とは、合成ACTHを投与して、コルチゾール濃度を測定する検査で、投与前と投与1時間後に採血してコルチゾール量が過剰に増えていないか確認する検査です。
腫瘍性クッシング症候群であれば、コルチゾール量は過剰に増加します。ただし、医原性クッシング症候群の場合には、コルチゾールに変化はありません。
デキサメタゾン抑制試験もクッシング症候群を調べるための血液検査で、デキサメタゾンを投与して検査をおこないます。
正常な場合、デキサメタゾンを投与すると血中のコルチゾールが低下します。しかし、クッシング症候群になると、この機能が働かずにコルチゾールが低下しません。
エコー検査は、副腎の大きさを調べるためにおこなわれます。副腎の肥大が確認できた場合は、副腎腫瘍の可能性が高くなります。
脳下垂体に腫瘍があることが疑われる場合には、CTやMRI検査をおこなうことがあります。
腫瘍の場所が副腎か脳下垂体かによって治療方法が異なるため、検査によって原因を確定させて治療に進みます。
外科手術
下垂体性の腫瘍が原因である場合、そのまま内科治療を始めるとさらに下垂体が大きくなる可能性があるため、外科手術を選択することがあります。
しかし、下垂体が大きくなるケースは少ないことや、下垂体の摘出は大変難しく、手術ができる病院も限られており、第一選択としておこなわれる治療ではありません。
副腎性の腫瘍は、外科手術が第一選択としておこなわれます。問題なく腫瘍を摘出できれば、完治を目指すことができます。ただし悪性の場合、肺や肝臓、リンパ節など他の臓器に転移している可能性があり、転移が認められた場合には、手術することができません。
放射線治療
放射線治療は下垂体性腫瘍に対しておこなわれる治療法です。
下垂体が肥大すると神経症状がみられることがあるため、腫瘍が大きくならないよう放射線治療を実施します。
ただし、クッシング症候群の症状改善のためには、並行して内科治療をおこなう必要があります。
内科的治療
下垂体性腫瘍の治療として、一般的におこなわれるのが内科的治療です。副腎性腫瘍でもなんらかの理由で摘出手術が困難な場合には内科的治療が選択されます。
内科的治療では、トリロスタンなどコルチゾールの分泌を抑える薬を投与します。
クッシング症候群の内科治療は、完治をするための根本的治療ではなく、症状を抑え病気とうまく付き合っていくための治療となります。
内科的治療がうまく進んでいくと、症状をコントロールすることが可能になるため、定期的な検査をおこなうことで症状を抑えることができるようになります。
内科的治療で目指すのは、適切な投与量と投薬頻度を徹底して、「クッシング症候群を発症する前に近い状態を維持すること」となります。
投薬量や頻度を間違えてしまうと、副作用により、クッシング症候群ではみられないような、食欲不振や嘔吐、下痢などを発症してしまうことがあります。
そのため、医師の定めた投薬量で愛犬に問題が生じていないのか、ご家庭でも常に状態を気にしながら、発症前の状態に近付いているのか、飼い主さんが確認しておく必要があります。
副作用に関しては、様々なものがあるため、投薬開始後には、薬によって体に異変が起きていないか、薬剤に対する耐性があるのかなどを血液検査や、医師による診察などの健康チェックをおこないます。
健康チェックを頻繁におこなうことにより、投薬量や頻度などの治療方法を愛犬の状態によって調整することで、可能な限り発症前の状態に戻しつつ、さらにキープしていけるようコントロールします。
治療にかかる費用や治療に必要な期間
クッシング症候群の治療に関してご紹介いたしました。しかし大切な愛犬を苦しめたくないと考える反面、実際どれくらいの費用がかかるのか、できれば治療を開始する前に知っておきたいのではないでしょうか。
ここでは治療によりかかる費用や、治療期間について解説いたします。
治療にかかる費用は動物病院により異なることがありますが、あくまで一例として、治療を進めていくうえでの参考にしてください。
治療費の目安
クッシング症候群の治療として、まずは診断を確定させるための検査費用がかかります。
各種血液検査や、エコーなどを含めると項目の数にもよりますが、約4〜5万ほどかかります。
内科的治療をおこなう場合、毎日の投薬が必要になり、一般的な目安ですが、小型犬で月に2〜3万円、中型犬で約4万円、大型犬ですと約6万円かかりますが、体の大きさによる薬代の違いと考えてください。
放射線治療は、受けられる病院も限られるため、高額になることが多いです。麻酔代など諸々含めると1回10万円ほどかかります。これを4回おこなうため、40万円ほどかかってきます。
外科手術は、体の大きさによって麻酔料なども異なるため、小型犬で約6〜8万円、中型犬で7〜8万円、大型犬は8〜11万円ほどかかります。また、腫瘍の摘出手術をおこなった場合、術後は投薬治療も必要になるので、別途薬代がかかります。
参考：犬のクッシング症候群の治療費は高額で払えない？治療費用について | ぽちたま薬局スタッフブログ
治療期間
腫瘍性のクッシング症候群は、副腎の摘出手術などを除くと、完治を目指す病気というよりも発症前の状態に近付けてうまく付き合っていくことを目的とします。
そのため、内科的治療は生涯にわたって治療を続ける必要があります。治療期間に関しては、発症した年齢その日から一生涯と考えていただいた方がよいでしょう。
また、医原性のクッシング症候群は、ステロイドの使用を中止したり、量を減らしたりすることで改善が期待できますが、治療中の疾患が悪化する場合があるので、必ず獣医と相談のうえで判断してください。
クッシング症候群を予防する方法はある？
腫瘍性のクッシング症候群は、突然発生するため、残念ながら効果的な予防法は存在しません。大切なことは早期発見、早期治療でできるだけ、症状を軽減させることに尽きます。
医原性に関しては、ステロイドの使用を避けることが効果的ですが、別の疾患により医師の判断で使用する場合には、きちんとした説明を受けたうえで相談しながら減らしていくようにしましょう。
まとめ
クッシング症候群は、犬の病気としては、あまり珍しいものではなく好発的な犬種以外でもいつ発症するかわからない病気です。
また発症しても、食欲が増すことが多いため、かえって元気があると勘違いしてしまうことがあります。その後徐々に筋肉量が減り、皮膚に異常がみられてようやく気付くことができても症状がある程度進行している可能性があります。
このような状況を防ぐためには、飼い主さんが少しでも早く気付いてあげることと、正しい知識をあらかじめ持っておくことが大切です。
完治することがない病気ですが、症状が比較的特徴的なため、当記事を参考にしていただければ早期発見はそれほど困難な病気ではありません。
もし愛犬を毎日観察して「どこかおかしいな」と感じることがあれば、早い段階で病院を受診して愛犬が苦しむことのないようにしてあげてください。
