健康

【獣医師監修】犬の口が臭くなる原因は?病気の可能性や歯周病のケア方法を詳しく解説

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はじめに

愛犬の口臭が気になったことはありませんか。もし愛犬の口が臭いと感じたらそのまま放置するのはおすすめしません。

本来、健康な犬は口臭がなく、もし口の臭いが気になるような場合には、体になんらかのトラブルを抱えているか、日頃のケアに問題がある可能性が高くなります。

口臭の原因はさまざまで、ご自宅でのケアで解消できるものもあれば、病院での治療が必要な場合もあります。いずれにしても、口の臭いが気になるほどにおうケースでは、症状が進行していることが考えられます。

大切なことは、正しい知識を持ち、口臭に異変を感じたら少しでも早く治療やケアに取り掛かることです。

そこで今回は、犬の口臭の原因や、考えられる病気の可能性、正しいケア方法まで愛犬の健康のためにぜひ知っておいていただきたい口臭に関する知識をご紹介いたします。

犬の口臭が気になる?

「最近、愛犬の口の臭いが気になる」愛犬の近くに顔を近づけてそう感じたら、そのまま放置せずに、まずは原因を突きとめましょう。

臭いの種類によっても原因は異なることが多いため、どのような臭いなのか見極める必要があります。

もし、若いうちから口臭がかなり強いようですと、年齢を重ねていくうちにさらに症状が進行して、歯を失ってしまう可能性もあります。

愛犬の口臭が気になったら、何が原因なのか飼い主さんが理解して、治療の必要があるのか、緊急性が高いのか判断できるようにしておきましょう。

犬の口が臭くなる原因

犬の口が臭くなる原因として、まず思い浮かぶのは口腔内ではないでしょうか。しかし、口の中が原因のものでも、単に口腔ケアが足りていないものと、なんらかの病気が原因となっているものがあります。

また、病気のなかでもすべてが口腔内の病気というわけではありません。

愛犬の口が臭くなってしまう原因について、くわしく解説いたします。

口の中の乾燥

犬の口の中は、普段は唾液で潤っていますが、飲水量が少ないときなどに口の中が乾燥して、唾液が粘り気のある濃縮した状態になります。

口の中が乾燥して、唾液が濃縮されると口臭がきつくなり、生臭い臭いが発生します。また、暑い時期に体内の熱を下げるために、ハアハアと口を開けて呼吸をするときにも同様の口臭が発生することがあります。

このようなときには、いつもより多めに水分補給を促すことで、解消される場合があります。

もし、室内で適温にも関わらず、口呼吸を繰り返しているときは、鼻炎の可能性があります。鼻づまりで苦しくて口呼吸しているときは、鼻炎やアレルギーなどで口呼吸をしているのか、獣医に相談してみましょう。

臭いの強い食べ物

臭いの強い食べ物を食べると、食後に口の中に臭いが残ってしまうことがあります。この場合、しばらくすると収まることが多いですが、食べかすがそのまま残ってしまうとしばらくにおいが残ってしまい、放置すると口内環境の悪化へとつながります。

ペットフードの劣化

開封したフードは、空気に触れることで酸化します。ウェットタイプはもちろんですが、比較的保存しやすいドライフードも時間が経過すると、徐々に劣化していきます。

劣化したフードは、いつもと違う臭いがすることがあるので、食べた際に口内が臭くなってしまいます。

腐ってしまったフードや、酸化したフードを口にすると、口臭だけでなく、腹痛や下痢、嘔吐など食当たりの原因にもなるので、ペットフードの状態が少しでも劣化していると感じたら与えないようにしてください。

特にウェットフードは、水分を多く含んでおり、開封後すぐに劣化してしまうので、できるだけ食べきりサイズを選ぶとよいでしょう。

病気

病気によって愛犬の口が臭くなっている場合には、注意が必要です。病気による口臭は口内の疾患によるものだと考えられがちですが、必ずしもそうではありません。

犬の口が臭う原因のなかには、内臓の病気によるものがあり、場合によってはすぐに治療を開始した方がよいものもあります。

ここでは、口臭を発生させる病気について解説いたします。

歯周病

歯周病とは、あらゆる歯の構造に悪影響を及ぼす口内細菌によって引き起こされ、口臭の原因としてもっとも多くみられる病気です。

歯周病になるには、段階があり、食べかすや細菌が唾液と混ざってできる歯垢が、歯と歯茎の隙間に付着することで、歯茎の肉に炎症を起こし歯肉炎になります。

歯垢はそれほど固くないため、ハミガキや適切な治療によって完治することも可能ですが、時間が経つと、歯垢が石灰化して歯石になってしまいます。

歯石は簡単にとることができないうえに、歯垢が歯石に変わるスピードがとても早いため、歯石の上にさらに歯垢がたまり、歯石が増えていきます。

そのまま歯肉炎を放置するとさらに症状が進行して、歯の周囲の組織を破壊し、歯周病になってしまいます。

歯周病は、歯や歯茎だけなく、歯を支える骨にまで影響を及ぼし、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。

歯周病になると、歯垢や歯石、炎症により生じる膿などから腐敗臭のような臭いを発生させます。

口腔内腫瘍

口腔内に腫瘍ができることが口臭の原因になることもあります。

腫瘍には良性と悪性があり、良性で腫瘍が小さいものならば、周囲に大きな影響を及ぼすことはありませんが、悪性になると口腔内のあらゆる組織が破壊されてしまうため、歯周病と同様に腐敗臭のような臭いが発生します。

口腔内腫瘍の場合、口が臭くなる症状だけが出ることはなく、口周りの痛みや、食欲低下、食べこぼしやよだれが増えるなど、全身に異常がみられるようになります。

腸閉塞

愛犬の口から便のような臭いがする場合には、腸閉塞や腸捻転など緊急性の高い重篤な問題が起きている可能性があります。

これは何らかの原因により、腸が変形した場合や、異物の誤飲によって起こります。腸の動きを阻害されるため、内容物がうまく流れずに口臭が便のようになることだけでなく、実際に便のような嘔吐物が出ることがあります。

腸閉塞を起こしている場合は、口臭以外にも、強い腹痛や、ぐったりとしてしまうなどの深刻な症状を引き起こすため、放置してしまうのは大変危険です。

胃の疾患

胃の疾患により、口から酸っぱい臭いを発することがあります。胃に炎症があり、胃酸が過剰に分泌されることで、口臭が酸っぱい臭いになることがあります。

空腹時にも同じような臭いがすることがありますが、胃酸過多の場合には同時に吐き気を催すこともあるので、嘔吐を繰り返すようならば、胃の炎症や別の疾患の可能性があるので注意が必要です。

肝臓の疾患

肝臓は代謝に関係する臓器のため、正常に機能していないと本来体外に排泄されるはずの老廃物が、毒素として体内に溜まってしまいます。

このような場合には、口臭がアンモニア臭を発することがあります。

肝臓の異常は、初期段階ではみつけにくく、進行してから発見されることが多いため、口臭など少しでも疑わしいときは病院に連れて行きましょう。

腎臓の疾患

腎臓は尿を作り、老廃物を外に排泄する役割がありますが、腎機能に異常があると排泄できずに体内に毒素として蓄積します。

このような場合に、口の臭いがアンモニア臭を発することがあり、腎臓疾患が疑われます。

腎臓病には急性と慢性があり、急性腎臓病は急激に腎機能が低下してしまい、嘔吐や下痢、脱水症状や尿量が極端に減るなどの症状が発生し、放置すると死に至ることもあり緊急性が高い病気です。しかし、早期治療をおこなうことができれば腎機能が回復することもあります。

慢性腎臓病は、長い時間をかけて徐々に腎機能を悪化させていきます。初期段階では無症状なことが多く、症状が出たときには進行しているため、口臭がアンモニア臭に変わっていたり、体重が減少したり、多飲多尿になるなどしたら、慢性腎臓病の可能性があるので、病院を受診しましょう。

犬の口臭は病院に連れて行った方がいい?

犬の口の臭いが臭くなる原因のなかには、時間をかけて進行していくものと、緊急性の高いものがあります。

いずれにしろ適切な処置が必要となりますが、特に緊急性の高い口臭を放置しないための見極めが重要です。

原因が病気の場合は早めの治療が必要

愛犬の口臭の原因が病気の場合には、できるだけ早い段階で病院を受診することをおすすめします。

歯に食べかすが付着している程度でしたら、口内ケアを飼い主さんがおこなうことで解消されますが、歯肉炎による出血や、歯周病になってしまっている場合には、治療が必要になります。

口腔内の腫瘍や、胃腸、肝臓、腎臓などの内臓疾患などが疑われる場合には、異常を発見次第、まずは病院へ連れて行き、適切な治療を受けましょう。

この場合には、口臭だけでなく、全身にさまざまな症状が出ているにも関わらず発見が遅れている可能性も考えられるため、すみやかな診断と治療が必要になります。

口臭を防ぐには自宅でのケアも大切

口臭の原因のなかで、もっとも多い歯周病の予防には、自宅でのデンタルケアが大変重要です。

歯石になってしまうと、なかなかきれいにするのは困難なため、硬くなっていない歯垢のうちに取り除いてあげましょう。

しかし、歯ブラシを使って歯を磨こうとしても、うまくいくことはなかなか難しいので、いきなり歯ブラシを口に入れるのではなく、子犬の頃から口の周りや口内に触れられることに慣れさせておくとよいでしょう。

慣れてきたら、少しずつ歯ブラシを使用して徐々に時間を増やしていくのがおすすめです。それでも、どうしてもダメな場合には、歯磨きシートで口の中全体をふき取ってあげてください。

ほかにもおやつとして歯磨きガムを与えるなど、いろいろな方法で毎日のケアをしてあげてください。

すべてを完璧にこなそうと歯磨きの時間が長くなると、次から愛犬が嫌がってケアをさせてくれなくなるので、少しづつ慣れさせていきましょう。

口臭で一番多い歯周病のケア方法は?

前述のとおり、口臭の原因でもっとも多いのは歯周病です。日頃からデンタルケアをおこなっていない場合には、ほとんどの犬が歯周病にかかる可能性が高いといってもよいでしょう。

歯周病で愛犬が苦しまないためには、病院での適切な治療と、ご自宅での毎日のデンタルケアが重要になってきます。

病院での治療

病院での治療が必要なケースは大きく分けて2つあります。

1つが内臓疾患が原因の口臭で、嘔吐や下痢を繰り返し、ぐったりとして元気がない状態が口臭と同時にみられることがあります。

このケースは緊急性の高いものが多いため、すみやかに動物病院を受診して、必要な検査、治療を受けてください。

犬の口臭の原因としてもっとも多い歯周病は、病院での治療が必要です。一度歯周病になってしまうと、自宅でのケアでは歯周病を治すことはできません。

放置すればさらに悪化してしまうので、歯石や出血を確認したら、できるだけ早く病院で治療を受けましょう。

歯石を除去

すでに歯石ができてしまっている場合には、歯ブラシでは取れません。また、ご自身で歯石を取ろうとすると、愛犬の歯や歯茎を痛めてしまうのでやめましょう。

歯石を除去するには、動物病院での歯石除去が必要です。歯石は歯の表面だけでなく、歯周ポケットにも入り込んでいる可能性が高いので、専門の器具を使用して、獣医師によって治療してもらわなければなりません。

歯石が付いてから時間が経過すると、歯茎が痩せてくることがあり、歯石を除去したタイミングでぐらついた歯が抜けてしまうことがあります。

しかし、歯石を除去しなければ、歯周病はさらに進行して、強い痛みによって愛犬が苦しんでしまうので、歯石が気になり始めたら、動物病院を受診して、除去のタイミングを相談しておきましょう。

歯周ポケットの掃除

歯周ポケットとは歯と歯茎の間の溝のことをいいます。歯周病ではない、健康な歯をしている犬でも歯周ポケットはあります。

しかし、歯周病が進行すると、歯周ポケットが深くなり、歯垢や歯石が溜まってしまいます。

歯周ポケットに歯垢や歯石が溜まるのは、歯の表面に付着するよりも厄介です。というのも、歯周ポケットに入り込んでしまうとやわらかい歯垢でもブラッシングで取り除くことができないからです。

歯周ポケットが深くなればなるほど、歯周病が進行しているということなので、重症化する前に治療を開始しましょう。

全身麻酔が必要な場合も

最近では、麻酔のリスクを心配される方のために、麻酔をせずに歯石除去をおこなうことがありますが、これは歯石が少なく、歯の表面だけに付着している一部の歯石を取る際におこなわれているもので、基本は全身麻酔での治療が必要です。

歯周ポケットに入り込んでしまっている歯石は、簡単にとることができず、時間もかかり痛みもともなうため、全身麻酔下で処置をおこないます。

治療は1~2時間程度で終了するので、日帰りでの治療が一般的です・

高齢犬でも、検査で問題がなければ麻酔下での治療は可能ですが、異常が発見された場合には歯石除去をおこなうことができません。

そのため、歯周病になってしまったら、高齢になる前に歯石除去の治療を受けておく必要があります。

自宅でのケア方法

歯周病の予防には、自宅でのケアが重要になります。歯周病になってしまうと病院で治療が必要になりますが、毎日こまめにケアすることで、口内環境を整えることができます。

歯ブラシを使ったブラッシング

歯磨きは歯周病予防にもっとも有効的なケア方法です。食後に口の中に食べかすが残ったままにしておくと、歯垢から歯石に変わってしまい歯ブラシでは取れなくなってしまいます。

歯垢が歯石になるまでの期間は、3〜5日程度といわれているため、可能な限りこまめな歯磨きが必要です。

基本は、食後におこなうのが理想的ですが、1日1回でも予防効果は期待できるので取り組んでみましょう。

しかし、これまで歯ブラシを使用したブラッシングをしたことがない愛犬の口に、いきなり歯ブラシを入れても、ほとんどの子がびっくりして拒絶すると思います。そのまま無理やり続けても抵抗して嫌がるだけでなく、次回から歯ブラシを見ると近寄らなくなることもあり、歯磨きがおこなえなくなってしまいます。

毎日の歯磨き習慣をつけるためには、徐々に慣らしていかなければなりません。

歯磨きを習慣化するには?

歯磨きを習慣化するにはいくつかのステップを踏んで、慣らしていくことをおすすめします。

まずは、顔や口の周りを触ることに慣れさせましょう。いきなり顔を押さえて歯磨きをしようとしても、抵抗して嫌がる子がほとんどです。まずは警戒心を取るために、愛犬の体に触れてじゃれ合うなかで、顔や口を触っても嫌がらないよう何度も繰り返すことから始めましょう。

次に、手前の歯から触ってみましょう。口に触れられることに慣れても、いきなり大きく口を開けさせるのではなく、前歯から少しずつ指の腹の部分で触れてみてください。特に嫌がることがなければ、少し横にスライドして歯ブラシで磨くような動きを試してみましょう。

ここで初めて愛犬の顔の近くに歯ブラシを持っていきます。目の前に歯ブラシがあっても嫌がって逃げないようになれば、いよいよ歯磨きの練習開始です。

最初は歯ブラシを歯に当ててみてください。まずは無理にこすらずに当てるだけにしましょう。歯に触れるだけでも慣れていない場合には相当な違和感があるはずなので、少しずつ場所を変えて、触れても抵抗することがなくなれば、まずは1本歯を磨いてみてください。

1本磨いて大丈夫ならば、隣の歯を1本というように段階を踏んでいき、歯ブラシを使うことが習慣化できてきたら、徐々に磨いていく本数を増やしていきましょう。

ポイントとして、このステップを一気に進めるのではなく、1つできたらご褒美をあげて、嫌がったらすぐに中止するという流れを根気よく繰り返すことです。

途中のステップで足踏みしてしまうことがあっても、焦って次に進もうとすると、恐怖と警戒心で、できていたこともさせてくれなくなってしまいます。

歯磨きは生涯に渡って続けていくものなので、焦らずに進めていってください。

また、口に指は入れさせてくれるけれど、歯ブラシを嫌がる子の場合には、歯磨きシートなどを活用して試してみてください。

歯磨き効果のあるフードを与える

歯垢や歯石予防の補助的な役割として、歯垢が付着しにくいフードを与えるのも有効な予防対策です。

しっかりと噛むことで、歯磨き効果を得られるよう成形されているフードなどがあります。

また、おやつとして歯磨きガムを与えてみるのもおすすめです。歯磨きガムを与える場合、好きなように食べさせるのではなく、飼い主さんが手に持ったガムを歯のいろいろな部分を使って噛ませてあげると効果的です。

ただし、これらはあくまで補助的な役割であり、フードやおやつだけでは完全な歯周病対策にはならないため歯磨きと並行して試してみてください。

サプリメントを服用する

補助的な役割として、サプリメントを服用するのも有効な歯周病予防です。粉末タイプやジェルタイプなどがあり、粉末タイプはフードの上に振りかけて与えたり、食後にそのまま舐めさせたりして服用させます。

ジェルタイプの場合には、指に適量をつけて舐めさせても良いですし、歯磨きの際に歯ブラシに付けて服用させるのも効果的です。

いずれも、犬の好きな風味がするため、それほど嫌がることもないので、補助的な役割として活用するとより高い効果が得られます。

まとめ

犬の口臭についてご紹介してきました。歯周病が進行すると、かなり強いにおいを発することが多いですが、それよりも症状が進行すると愛犬が痛みや不快感で苦しむことになってしまいます。

何より大切なことは、日頃からのケアを怠らず、口臭に少しでも違和感を感じたら原因を特定することです。

口臭の多くが歯周病が原因と考えられていますが、まれに今回ご紹介したような内臓疾患などが原因になっている場合があり、緊急性の高いものもあるので注意が必要です。

毎日の生活のなかで、今回ご紹介した口内ケアを習慣化しながら、愛犬の口内環境をしっかりとチェックしてあげてください。

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