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【獣医師監修】犬がため息をつく理由とは?ため息をつく理由やその裏にあるストレスなど解説

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はじめに 

みなさんは、犬がため息をついているのをご覧になったことはありますか。

犬を飼っている方ならば、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。しかし、どのような理由でため息をついているのか詳しい理由をご存じの方は少ないでしょう。

人間も、いろいろな理由でため息をつくように、犬にもため息をつく理由はさまざまです。

ポジティブなため息やネガティブなため息など、飼い主さんが理解してあげることで、愛犬の状態を把握できるようになるため、ぜひ知っておきたいところです。

また、精神的な部分だけでなく、病気によってため息をついている可能性もあるため、注意が必要です。

そこで、今回は、犬がため息をつく理由や、ため息が意味するストレスや、病気についてくわしく解説していきます。

犬のため息と鼻息の違い

人間の場合には、ため息と鼻息の違いは明らかですが、犬の場合には少しわかりにくいため、見極めが必要です。

ため息と鼻息の違いについて解説します。

犬の場合は口からではなく鼻からため息を出す

人間のため息は口から「ハア」と吐き出しているイメージですが、犬の場合は口からため息を吐き出すことはありません。

犬の場合は、ため息も鼻息同様に鼻から吐き出します。

ため息の音は、少し低めでうめき声に近いものや、小さな音でかすかに聞こえてくる程度の長めの音がしたらため息と考えてよいでしょう。

規則的に継続していれば鼻息

長めに吐き出すのはため息ですが、いわゆる通常の呼吸と同じように規則的に一定のリズムで吐き出しているものが鼻息です。

基本的には、ため息は深く息を吸い込んで長く吐き出し、鼻息は吸い込む量と吐き出す量が1:1の割合と考えるとわかりやすいと思います。

通常の呼吸時には鼻息の方が多いので、吐き出すときの様子を観察していれば、深く吐き出すため息を見分けるのはそれほど難しくはありません。

一時的に出る規則性や継続性のないものはため息

一定のリズムで規則的に出る鼻息に対して、長さや、呼吸の深さが毎回異なるような不規則なものがため息です。

人間でもため息には深いため息や浅いため息があるように、犬もその時々の感情などでため息は大きく異なるので、同じ鼻から出る息でも鼻息とため息には大きな違いがあります。

犬が口から大きな息を出すことがあるが、ため息ではなく「開口呼吸」

ため息とは別に、犬がよく口で「ハアハア」と呼吸をするのをみかけますが、これは犬の呼吸の一種で「開口呼吸」というものです。

開口呼吸自体は、犬ではそれほど珍しいものではありませんが、開口呼吸にも意味が異なることがあるので、きちんと見分けることが大切です。

犬が開口呼吸をするのは主に体内の熱を逃がし、体温を下げるときです。

犬は汗をかかないため、汗をかいて熱を逃がすことができないので、開口呼吸で熱を逃がします。

散歩のあとや、ドッグランなどで思い切り走ったあと、ほかにも夏の高温時やうれしくて興奮しているときなどに開口呼吸で呼吸を整えています。

この動作は、犬にとってごく自然なことで、心配はいりません。暑さでハアハアといっているときには、水分補給をさせて、涼しいところに行けば収まることがほとんどです。

しかし、なにも心当たりがないのに、開口呼吸を繰り返している場合には、どこかに異常があるのかもしれません。

暑い夏に開口呼吸を繰り返して、体内の熱を逃がそうとしても呼吸が落ち着くことなく、ぐったりとしているときには、熱中症になっている可能性があります。

ほかに気温も高くなく、運動もしていないのにハアハアと激しい呼吸を繰り返し、長時間収まらない場合や、ゼーゼー、ヒューヒューなどの異音が混ざっているときは病気によって開口呼吸をしていることも考えられます。

おもに、呼吸器疾患や循環器疾患のときにこのような状態になることが多く、早急に治療する必要があるので、動物病院で診察してもらいましょう。

犬のため息の理由とは

犬のため息にも、さまざまな意味があります。同じようなため息に見えても、愛犬の感情は異なることが多く、飼い主さんが察知してあげることで、愛犬のいろいろな感情を理解することができるようになります。

リラックスしている

愛犬を抱っこしているときや、飼い主さんのそばにいるときに、穏やかな表情でため息をつくことがあります。これは究極のリラックス状態で、愛犬が安心して、この状態をもっと続けていたいという幸せのサインです。

このような状態のときは、精神的にも大変ポジティブになっており、しっぽも緊張しておらず、緩んだ状態で体の力も抜けて、見るからにリラックスしていることがわかります。

ため息の長さは短いため息や、長いため息などさまざまですが、目を閉じたまま寝息のようなため息のときもあり、愛犬にとってストレスのない快適な状態といえるでしょう。

また、人間がお腹いっぱいにご飯を食べたあとに、深いため息をつくことがあるように、おいしいご飯を食べて、とても満足することができた場合にも同様なため息をつくことがあります。

ほかにも息を大きく吸い込んで、鼻をクンクンさせたあとにでるため息は、においを嗅ぐことで満足できる情報を得ることができたことをあらわしています。

ため息というと一般的にネガティブなマイナスイメージが強いですが、必ずしもそうではなく満足しているときにも思わず出てしまう行動といえます。

犬が不満やストレスを感じているとき

犬が短く「フン」といったため息をつくときは、強いストレスを感じていることが多く、今置かれている状況に不満を持っている可能性があります。

散歩に行きたいときや、お腹が空いたときなど欲求不満を抱えたときに出ることが多くなります。

ため息とあわせて、うしろ足で体を掻きむしったり、前足を舐めたり噛んでいたりするような行動をみせます。

ほかにも、見慣れない人が自分の縄張りである家を訪ねてきたり、引越しや新しい家族が増えたりするなど、愛犬の周りの生活環境に変化があったときなどにストレスを感じていることがあります。

また、散歩の時間が短い、留守番が長いなど、飼い主さんとの信頼関係が成り立っていない場合などにもストレスで頻繁にため息をつくことがあるので、気を付けましょう。

このような場合、生活環境を改善してあげることで、ため息をつくほどのストレスを解消してあげることができます。

例えば、愛犬が静かに過ごせるスペースを作ってあげる、毎日きちんと散歩に連れていく、1日のうちで少しでも必ず愛犬とコミュニケーションをとるなど、考えられるストレスの要因を取り除いてあげることで、ストレスから出てしまうため息を減らすことができるでしょう。

気分を落つかせたい

犬自身も気分が高ぶって興奮してしまっている状況や、落ち着かない状況を自分で解消しようとして短いため息をつくことがあります。

人間が、ソワソワ落ち着かないときや、興奮した状態でイライラしているときに深呼吸をして落ち着かせようとすることがあるように、犬も自分の感情を落ち着かせるためにため息をつきます。

このような状況を目にしたら、愛犬が何に対して興奮しているのか、落ち着かないのか確認して、できるだけ原因を取り除いてあげるようにしてあげてください。

疲れている

疲れているときには、深いため息をつくことがあります。これは人間でも同じようなため息をつくことがあるので、イメージしやすいと思います。

肉体的な疲労でも、精神的な疲労でもため息をつきますが、すべてがネガティブなものではなくたくさん遊んで疲れたときや、大好きな人に会って気分が高ぶったときなどにも、満足のサインとしてため息をついています。

疲れにはいろいろな要因があり、体調がすぐれないときや、体力をたくさん使って疲れているときなど愛犬の状態に心当たりがあるときには、ゆっくりと休ませてあげてください。

体調に関しては、休んでも回復しなければ、どこかに異常があるかもしれないので病院に相談するとよいでしょう。

わざとため息をついている

犬はわざとため息をつくことがあります。以前に飼い主さんの前でため息をついた際、かまってもらった、おやつをもらった、散歩に連れて行ってもらえたなどの成功体験から学習し、飼い主さんの顔を見てわざとため息をつくようになるのです。

前にそのようなことがあったことを記憶して、「同じことをまたしてもらいたい」といった感情で、飼い主さんに向けてアピールします。

ため息は、無意識に出るものだけでなく、飼い主さんとのコミュニケーション手段として意図的なものもあることを理解しておくと、愛犬との意思疎通が、よりスムーズになるかもしれません。

ため息をつきやすい犬種ってあるの?

ため息はすべての犬が吐きますが、一部の犬種を除けばそれほど回数は多くありません。

しかし、鼻の短い短頭種の犬は、生まれつき鼻腔が短く軟口蓋が垂れ下がっているため、効率よく酸素が取り込めずに呼吸が大きくなるので、吐き出した息がため息となって出ることがあります。

ため息をつきやすい犬種のなかから、3犬種をご紹介します。

パグ

パグは鼻ぺちゃで、しわのある顔が特徴的な犬種です。

呼吸時にブーブーと音がするのが特徴で、鼻や喉の気道が狭く短頭種気道症候群という病気を発症しやすい犬種です。

ほかに、空気の通り道が狭くなる鼻腔狭窄症や、筋肉がたるみ呼吸を塞いでしまう軟口蓋過長症を発症しやすいといわれています。

ボストン・テリア

ボストン・テリアは鼻ぺちゃですが、しわはそれほど多くない顔立ちが特徴的です。

短頭種のため、ボストン・テリアも軟口蓋過長症や短頭種気道症候群を発症しやすく、呼吸がしづらくなることがあるので、苦しそうにしていたら速めに動物病院を受診してください。

フレンチ・ブルドッグ

フレンチ・ブルドッグも短頭種であり、気道が狭いため鼻腔狭窄症や軟口蓋過長症などの呼吸器系の疾患にかかりやすい犬種です。

これらの症状は肥満によってさらに悪化するおそれがあるので、太りやすいフレンチ・ブルドッグは適切な体重管理が必要です。

また、呼吸器に大きな負担がかかるような激しい運動は避け、首輪ではなくハーネスなどで胴を固定して散歩するようにしましょう。

体調が悪い時にため息をつくことも?!

犬のため息は、ストレス状態を除けば、それほど問題になることはありません。

しかし、場合によっては体調がすぐれず、病気のつらさが原因でため息をついている可能性も考えられます。

体調によるため息を判断するためには、そのときの愛犬の様子やため息の頻度が重要となってきます。

愛犬がいつものため息と様子が違うようでしたら、病気の可能性があるので、他に変わったところはないか観察し、ご自身で判断が難しい場合にはすみやかに動物病院を受診するようにしてください。

ため息の回数が多く食欲がない

毎日、食事の時間になると喜んで食べている子が、食欲がなく、ため息をついておとなしくしているようですと、なんらかの病気が原因の可能性があります。

いつもと様子が違うときは、愛犬をよく観察して、ほかに異常がないか確認しましょう。

ずっと寝ている

日中も留守番のときやお散歩以外では、自分のスペースで休んでいることもありますが、お散歩にも行きたがらずほとんど動かずに、頻繁にため息をついているときは、病気が辛く動かないようにしているかもしれません。

食後や夕方など特定の時間にため息が多い

食後など特定の時間や状況でため息が出る場合には、胃など消化器官に異常が発生しているかもしれません。

毎日、食後などにため息やげっぷを繰り返している場合は、体調を崩している可能性があります。

犬がため息をつく場合に考えられる病気

犬が、病気が原因でため息をつく場合に考えられる、代表的な病気についてみていきましょう。

以下にご紹介する病気以外でも、体になんらかの異常が発生してため息をついていることもあるので、もし愛犬がため息をついているようならさまざまな可能性を考えて病院で獣医師の判断を仰ぎましょう。

鼻腔狭窄

鼻腔狭窄は鼻先の短い短頭種に多くみられる病気で、鼻腔が狭く、起きているときでもいびきのように鼻をブーブーと鳴らし、鼻水を飛ばす、呼吸が荒くなるなどの症状がみられます。

原因は、先天的に鼻腔が狭いことによって発症することがほとんどですが、感染症やアレルギーが関係していることもあります。

鼻腔狭窄を患っていると、少しの運動や興奮したときに呼吸が荒くなり、酸欠状態に陥ることがあります。そのまま進行するとチアノーゼを起こし、失神してしまうことがあります。

また、呼吸のしづらさで体温調整も難しいため、熱中症にもなりやすい特徴があります。

先天性なものであるため軽度のものならば、積極的な治療を必要としないこともありますが、呼吸困難など、日常の生活に大きく影響を及ぼすときは外科手術によって鼻腔を広げる治療が必要になります。

先天性の疾患のため、積極的な予防方法はありません。しかし、この病気は肥満の影響でさらに症状が悪化する可能性があるため、症状がなくても体重管理はおこなう必要があります。

気管虚脱

気管虚脱とは、空気の通り道である気管が、途中で潰れてしまい呼吸が困難になる病気です。

原因は遺伝的なものが関係しているといわれていますが、具体的には解明されていません。

小型犬や、短頭種に多い病気とされ、特に7歳以上で好発するといわれています。

症状は気管の狭窄度合いにより4つのグレードで分類されており、初期のグレード1では25%、グレード4では75%以上の狭窄とされています。

初期段階では、ほとんどが頚部気管で進行すると胸部、気管支へと範囲が広がっていきます。

初期段階の症状は、たまに空咳をするくらいのため、わからないことが多く、進行することで一度の咳が長く続き、回数も増えていきます。

重度になると、毎日咳が続き、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音やチアノーゼなどが発生します。

呼吸が激しいため、体温調整も難しく、熱中症にもなりやすいため体温管理にも注意が必要です。

治療方法としては内科治療と外科手術がありますが、気管を拡張するための内服液を服用する方法が一般的です。しかし、内科治療では気管の形状が元に戻ることはないため、重度の症状がある場合には、外科的手術が選択されることがあります。

気管虚脱を予防するには、症状を悪化させる要因を取り除くことが望ましく、肥満の防止や首輪からハーネスへの切り替えなどを積極的におこなうとよいでしょう。

胃捻転・胃拡張症候群

胃捻転とは、胃が捻じれてしまうことをいい、胃拡張は、胃にガスが溜まって過剰に膨らむことを指します。

原因として、食事を一度に大量に早食いで食べてしまうことで、空気を大量に取り込んでしまう場合や、ドライフードを食べたあとに水をたくさん飲んで、フードが膨張してしまうことなどがあります。

また、満腹の状態ですぐに運動すると、重くなった胃が激しく動いて胃が捻じれてしまいます。

ため息との関係も、これらの要因によって、胃の中に大量のガスが発生し、ため息やげっぷが出やすくなってしまうからだと考えられています。

治療方法は、胃の中の空気を抜き、点滴治療などをおこないます。状況によって捻じれた胃をもとに戻すための手術をおこなうことがあります。

予防方法として、一度に大量にご飯を食べさせない、食後に大量の水を飲ませない、食後の激しい運動を避ける、などがあります。

うつ病

犬もうつ病になることがあります。肉体的にどこも不調がないにもかかわらず、何度もため息をついて、表情に力がなく、気分が沈んで落ち込んでいるような状態のときは、うつ病などの精神疾患の可能性があります。

うつ病の犬によくあらわれる症状として、元気の消失、食欲の減退や食欲過多、おもちゃなどにも関心を示さないなどの無気力、クンクンと鳴くことが増えるなどがあります。

ほかに、飼い主から離れると不安になって、問題行動を起こすような「分離不安」などがあります。

原因には、新しい家族が増える、家族と離れる、引っ越しなどの環境の変化や、運動不足などがあるといわれています。

愛犬が、精神的に不安定になっていると感じたら、身の回りで以前と変わったことがないか振り返ってみることで、精神疾患の原因を見つけ出すことができるかもしれません。

これらの問題を解消していくと、徐々に落ち着きを取り戻し回復するケースが多いですが、なかなか症状が改善しないときは、獣医師に相談して適切なアドバイスや治療を施すことをおすすめします。

まとめ

犬のため息について、いろいろな視点から解説いたしました。

ため息を付く理由にはさまざまなものがあり、必ずしもマイナスな理由だけではないということや、精神的なものだけでなく、病気が原因となっていることがあることなどがおわかりいただけたかと思います。

もし、大切な愛犬がため息を頻繁にするようになったら、肉体的な問題なのか、精神的な問題なのか、当記事を参考に飼い主さんがしっかりと把握することで、症状の改善につなげていただけますと幸いです。

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