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はじめに
あなたは保護犬と聞いてどのようなものを想像しますか。
犬を手放したり、飼育を放棄したりすることにはどのような理由があると考えますか。
保護犬はさまざまな理由から保護されます。その理由の中には信じられないような理由も少なくありません。そして保護された犬の中には、病気や怪我をしている状態で放置されていた犬、ご飯を食べられない状態になるまで衰弱している犬もいます。
本記事では、保護犬とはどのような犬が多いのか、特徴や注意点をわかりやすく解説します。
保護犬とは
保護犬とは、家がなかったり飼い主がいなかったりなどのさまざまな理由で、動物愛護施設などで一時的に保護されている犬たちのことです。
令和3年度、日本では1年間に24102頭もの犬が保護されました。
その中には、劣悪な環境にいた犬がレスキューされ、保護されているケースもあります。
中でも、多頭飼育崩壊が大きな問題となっています。
犬を多頭飼育した飼い主やブリーダーが無責任な飼い方をした結果、繁殖しすぎて飼育が不可能になることを指します。
救助された犬の中には、健康状態も悪く病気を持っている場合もあります。
この他に、保護される犬の中で一番多いのは飼い主のいないケースです。
元々は飼い主の元暮らしていた犬が、何らかの理由で飼育放棄され捨てられたり、迷子になったまま家に戻れなくなりそのまま野生で暮らし始め野良犬になってしまったりするケースです。
次に、飼育困難が理由で保護されたケースです。
飼い主の病死など、やむを得ない理由もある中、身勝手な理由で手放すなどいろいろなケースがあります。
飼育困難の原因として、次のような問題が挙げられます。
身体的問題
飼い主が高齢になりお世話が難しく、保護してもらうパターンです。
犬も病気になったり加齢から介護が必要になったりする場合もあります。
経済的問題
予想以上に飼育費用がかかり、飼いきれなくなる場合があげられます。
犬の寿命で言うと約10年以上飼育費用がかかることになり、その間に飼い主側の生活も変化し、費用を捻出できなくなる場合も考えられます。
去勢・避妊の手術費用が払えず、いつの間にか頭数が増え多頭崩壊に陥ってしまうケースがもあります。
時間的問題
飼い主の生活に変化があり、犬との生活が難しくなるケースです。
仕事が変わり、家にいる時間がほとんどなくなったり、お世話の時間の確保が難しくなったりする理由があげられます。
生活の変化の問題
犬を飼うということは同居する全員の協力のもと成り立ちます。
子供が生まれ一緒に生活できなくなったり、配偶者など一緒に生活する相手に受け入れてもらえなかったりして飼うことが難しくなり、仕方なく手放すという問題もあげられています。
住まいの問題
持ち家ではない場合、ペット可の物件に住む必要があります。
しかし仕事の都合などで引越しを余儀なくされる場合、引越し先で物件が見つけられないといったケースです。
このような飼育困難が原因で保護を申請するほかに、トイレを覚えない、鳴き声がうるさい、可愛くないなど、1度家族として迎え入れた飼い主として許されない理由で飼育を放棄する人もいます。
しかし、2013年に施行された改正動物愛護法により自治体が引き取りを拒否できる措置が
設けられました。
動物愛護法で、飼い主や動物取扱業者にも動物がその命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」が明示されたためです。そのため持ち込み頭数は減少してきています。
保護犬の特徴
保護犬と聞くと、迎え入れてもちゃんとしつけられるか不安に感じる人も多いと思います。
実際、保護犬にも色々な性格の犬がいます。
どのような環境で育ってきたかにより性格は様々です。
まずはしつけがどこまでできているか確認し、保護犬の性格に合わせて焦らず気長に接することから始まります。
犬の特徴を正しく理解してからお迎えするようにしましょう。
新しい環境に慣れにくい
過去に虐待や育児放棄など、家族として信じていた飼い主に可愛がられてこなかった保護犬の場合には人間に心を開くまで時間がかかります。人に対するトラウマがあるので仕方のないことです。
また、ずっとゲージの中で暮らしていて散歩に連れて行ってもらえていなかった犬も人間の愛情を知らず、人間との楽しい経験がありません。
環境に慣れるまでには、不安や警戒心を感じてご飯もお水も口をつけない犬もいます。
心を開いてくれるまでは、適度な距離感を保ちつつ根気強く付き合ってあげましょう。
警戒心が強い
保護される前、人に辛い目にあわされ愛情を受けられず育った犬は警戒心が強いことがあります。
今までの経験から人間に心を開かず警戒心が強くなります。
警戒心から吠えることを「警戒吠え」といい怖く怯えていることを表しています。
警戒心が強い犬は、人に慣れさせるために時間がかかる傾向にあるので、まずは何に対して警戒心を抱いているのかを観察し見極めてあげましょう。
落ち着きがなくよく吠える
子供の頃に色々経験できておらず社会化ができていなかったり、怖い経験があったりする場合トラウマを抱えている場合があります。
そのため、保護犬の中には急に走り出したり逃げようとしたりしてしまう犬も少なくありません。
まずは脱走しないよう飼育環境を整えてあげてください。
また、犬が吠える理由は遠吠えや興奮、警戒吠えなどさまざまな理由があります。
来客時に知らない人に対して吠える行動も、わからなくて怖いという感情です。
何に対して怖がっているのかよく観察し、接し方を考えましょう。
保護犬の引き取り先
保護された犬は、保健所、動物愛護相談センター、動物愛護団体などで一旦保護され、新しく迎え入れてくれる先を探します。
保健所
各自治体に設置されている公的機関です。
飼い主のいなくなった犬などを保護しており、里親募集もおこなっています。
保健所から保護犬を引き取るには、狂犬病予防接種を受けさせることや、終生飼育ができることなどの条件が設けられており、この条件をクリアしなければ引き取ることはできません。
一般的に保健所から保護犬を引き取る時には、引き取るための登録をおこないます。
次に講習を受けて実際犬と触れ合い飼育方法を教えてもらう必要があり、この家庭で最期まで幸せに暮らせるかしっかりチェックされます。
その後譲渡の申し込みをして、希望者が他にいなければ譲渡決定です。
各自治体によってトライアル期間を設けていたり、家庭訪問があったりします。
条件が多く見えがちですが、保護犬をこれ以上増やさないように決められたものです。
詳しい内容は保健所に問い合わせをしてみましょう。
動物愛護相談センター
行政が管轄している動物愛護センターは、保健所で一時的に保護された犬がうつされてくる場所です。
動物愛護センターから譲り受ける場合、譲渡対象者の基準チェックにクリアすれば譲渡されます。その内容は、動物愛護センターで譲渡講習会を受講する、同居人全員の同意が得られている、動物が適正に飼育できる環境である、先住犬がいない人が優先などさまざまです。
動物愛護センターの多くは、殺処分ゼロに向けて、さまざまな取り組みをおこなっています。そのため、ペットショップではお金を払えばすぐに犬を迎え入れられますが、動物愛護センターからは、保護犬を引き取るための条件をしっかり設けているので簡単には引き取れません。
この条件は、自治体により対応が異なります。
全国に何箇所か存在しますので、お近くの動物愛護センターに問い合わせをしてみてください。
東京都動物愛護相談センター
動物愛護団体
行政の管轄の動物愛護センターだけでは手が足りていないのが現状の昨今、動物愛護センターを連携し、動物愛護活動を行っているのが民間の動物愛護団体です。
民間の動物愛護団体は、保護された動物たちの飼育や保管の役割をになっている重要な場所です。
動物愛護団体が主催している譲渡会が定期的にあり、そこで実際に保護犬と触れあうことで、相性のいい犬を探し出せます。
譲渡会を開催する動物愛護団体は、各都道府県から許可をもらって活動しているので安心です。動物愛護団体によって差はありますが、譲渡前に講習を設けている場所もあります。
保護犬の注意点
保護犬を迎え入れる際、犬が新しい環境に慣れるまで、しっかり様子をみてあげなくてはいけません。
保護犬は誰でも簡単に飼うことは不可能です。
希望すればすぐ譲渡されるという簡単なものではなく、様々な基準をクリアし、しっかりした準備が必要となります。
迎え入れたあとも、食事はしっかり取れているかなどの健康チェックは大切です。
過去のトラウマへの理解
保護犬は今までの経験や環境から苦手なものがある場合があります。
それは散歩や訪問者など犬によってさまざまです。犬が何か失敗しても大きな声で叱らず、少しずつ新しい環境に慣らしてあげることが大切です。
最初のうちは、散歩やしつけなどのコミュニケーションの時間をたっぷり取れるよう、余裕を持った生活を心がけましょう。
社会化の必要性
色々な場所や音、人や他の動物に慣れさせ社会性を身につけることを社会化といいます。
初めて見たものや、初めて聞いた音、初めて知らない人に出会った時には、恐怖と警戒心を抱くものです。その警戒心は怯えたり吠えたりする行動につながります。
子犬の時期にトレーニングをすることによって身につく社会性ですが、ある程度の大きくなった犬に身につけさせることはとても大変で、時間と労力がかかります。
犬は音や匂いなど、色々な刺激に敏感です。反応すること自体悪いことではありませんが、極端に激しく反応する場合は社会科ができていないといえます。
社会化ができていない場合、お留守番ができなかったり、何かあった時に預け先に馴染めなかったりと、いざというときに犬だけではなく飼い主も困ることになります。
本来全てのワクチンを接種し終わったあとに社会化のトレーニングをするのが理想です。
この時期を逃がさないよう、外へ連れて行き、他の人や動物と触れ合う機会を与えてあげましょう。
成犬になっている場合は、慌てず犬のペースに合わせゆっくり慣れさせてあげることを一番に優先してください。
飼い主の愛情と忍耐が必要
保護犬はすでに成犬に成長している犬も多くいます。子犬であればすぐに慣れることでも成犬となると少し難しいことが多くなってくる場合もあります。
今までどのような環境で育ってきたかもよりますが、犬の性格に合わせて焦らずトレーニングしていきましょう。
まずは家族に慣れることからです。愛情を持って接していれば、人間に対してトラウマがあったとしても愛情は伝わっていきます。
殺処分される犬もいる?
引き取り手が見つかる犬がいる一方、そのまま殺処分となることもあるのが現状で、ペットに関する最も深刻な社会問題の一つとなっています。
過去10年間の推移を見ると、殺処分数は減っています。その背景には民間の動物愛護団体が直接引き取る数が増加したことにより、保健所が引き取る数が減少したことが挙げられます。民間の愛護団体と協力し、動物を保護する場所を増やすことが重要です。
このような行政と民間団体の協力は、すでに複数の場所でおこなわれており、今後もさらに波及していくことが期待されています。
その中で令和3年度は2739頭もの犬が新しい家族に迎え入れられないまま殺処分されてしまいました。
殺処分にならないことはもちろんですが、まずは保護犬にならないように飼い主が責任を持って飼育することが重要です。
実は、悪質なブリーダーもいる?
ブリーダーとは特定の動物に専門的な知識をもっており、交配や繁殖をして販売する業種です。
生まれた子をペットショップに流通させたり、直接飼い主に販売したりします。
本来信頼できるはずのブリーダーの中には、残念ながら悪質なブリーダーも存在しています。
保護を申請してくる理由は、管理不十分で許容範囲を超える数が繁殖したり、病気の犬は売れなかったりという悪質なものです。
また劣悪な環境の中、無理やり繁殖をおこなっているブリーダーもいます。
ブリーダーの高齢化や廃業などにより、多頭飼育崩壊の現場から犬をたくさん保護するケースもあり、多頭飼育崩壊問題や悪質なブリーダーは社会的課題とされています。
まとめ
保護犬はさまざまな理由で保護され、家がなかったり飼い主がいなかったりする状況で動物愛護施設で保護されます。本来、飼い主が責任を持ち飼育すれば保護犬など存在しません。
保護犬となった理由には、飼い主の飼育放棄や経済的・身体的な問題もあります。
新しい環境に慣れにくく、トラウマや警戒心を抱いている犬も少なくありません。
保護犬の注意点は、過去のトラウマへの理解や社会化、飼い主の愛情と忍耐が必要なことです。一方でいまだ殺処分とされる保護犬や、悪質なブリーダーによる問題も存在します。保護犬を迎え入れる際は、慎重かつ責任をしっかり持って行動することが重要です。