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はじめに
犬が自分の足を舐めるのは、なぜでしょうか。
その理由は、前向きなものから、気になるものまで、多岐にわたります。
場合によっては、病気やストレスのサインである可能性も疑わなくてはなりません。
この記事では、犬が足を舐める原因や対処法を徹底解説します。ぜひ参考にしてください。
犬が自分の足を舐める理由
犬が自分の足を舐める行動には、さまざまな理由が考えられます。
セルフグルーミング(毛づくろい)やリラックスの場合もありますが、病気やストレスの兆候である可能性も念頭に置いておきましょう。詳しく説明していきます。
セルフグルーミング
犬が自分の足を舐める理由の一つに、セルフグルーミング(毛づくろい)があります。
毛や肉球に汚れや食べ物がついている際に、舐めて清潔を保つ行動です。
また、本能的に、ノミやダニなどを取り除くために行うセルフグルーミングもあります。
このように、犬が身だしなみの一環として、自分の足を舐めるならば、あまり気にする必要はありません。特にキレイ好きな犬種には、よく見られる光景です。
なお、セルフグルーミングには、上記のような衛生的な意味に加えて、緊張をほぐす効果もあります。以下で説明します。
リラックスのため
犬が自分の足を舐める理由の一つは、リラックスを促すためです。
さまざまなリラックスパターンがあります。例えば、食事や遊びが終わった後、少し残念な気持ちを紛らわせるために自分の足を舐めるパターンです。
または、寝る前や目覚めた後に、自分の足を舐めてリラックスすることもあります。
これらのパターンは、時折見かける程度であれば問題ありません。
その他にも、初めて訪れた場所や、苦手な対象物に遭遇した際に、犬は自分の足を舐めてリラックスしようと試みることがあります。
犬が普段よりも強い不安や緊張を感じている場合は、一旦、原因となる場所から離れたり、遊んで気分転換をさせてあげたりするとよいでしょう。
病気やストレスのサイン
犬が自分の足をしばらく舐め続けている場合は、病気やストレスを抱えている可能性が高いです。動物病院に行くなどの、何らかの対処が必要でしょう。
対処方法については、後の章で詳しく説明しますので、ここでは、病気やストレスのサインについて解説していきます。
傷病のサイン
病気や傷害がある場合、犬は自分で痛みやかゆみを和らげようとして足を舐めることがあります。
犬をはじめ動物には、「ズーファーマコロジー(Zoo Pharmacology)」と言う、自分で自分を治そうとする本能行動が備わっているからです。
特に犬が足を舐め続けている際は、病気やストレスが原因ではないかと疑ってみましょう。
犬が罹っている可能性が高い傷病には、アレルギーや感染症によるかゆみ、骨折や関節炎による痛み、椎間板ヘルニアによる痺れなどがあります。
ストレスのサイン
傷病と同様に、ストレスも、犬が足を舐める原因となります。
犬は、過度の緊張や恐怖、孤独感、スキンシップ不足などがストレスの要因となり、足舐めが習慣化することがあります。
このような場合、自傷行為を含む常同障害へとエスカレートする兆候として捉えることができ、決して見過ごせません。
犬が人の足を舐める理由
犬が飼い主をはじめ人の足を舐める理由はいくつか考えられます。
愛情表現やコミュニケーションを図るため、かまってほしい気持ち、好きなニオイだから、気になるニオイを調べるためなどです。
ただし、足は清潔な場所とは言い切れません。いつでも足を十分に洗っておきましょう。
そして、衛生面や感染症のリスクを考慮し、舐め癖がつかないように犬を教育することも大切です。
感謝や愛情を表現するため
犬が人の足を舐める理由の一つは、愛情や感謝を示していると捉えられます。
犬と人のコミュニケーションの一環です。
なぜなら、動物の世界では、舐める行為が愛と信頼を伝える手段とされているからです。
犬自身も、人や仲間の犬を舐めることによって、「オキシトシン」と「エンドルフィン」と呼ばれる幸福ホルモンが放出されます。
人に感謝や愛情を示すことで、犬はストレスや不安を和らげているのです。
帰宅した飼い主に、犬は喜んでペロペロとなめてくれることがよくあるでしょう。
犬は舐めることで、楽しい気持ちと、感謝や愛情を伝えてくれます。
家族や群れの絆を深めるため
犬が人の足を舐める理由には、家族や群れの絆を深める意味があるとも考えられます。
動物は仲間との絆を深めたい場合に、相手を舐めることがよくあるからです。
犬は優れた嗅覚で足の匂いを確認し、舐めた味からも情報を得る習性を持っています。
足は汗腺や皮脂腺が集中する場所であり、個体のにおいが強く出る部位です。
犬は人のにおいを嗅ぎながら足を舐めることで、その人のさまざまな状況を確認しています。
つまり、犬は家族や群れの一員として、人との絆を深めようとしているのです。
遊びや注意喚起の意味もある
ほとんどの犬は遊び心が旺盛なため、遊びたい気持ちを示すために、人の足を舐めることがあります。
大好きな飼い主に「遊ぼうよ」「かまってほしい」と伝える手段なのです。
また、犬は甘えたい時にも、飼い主の関心を引くために、人の足を舐めることがあります。
一方で、飼い主が感情的な状況にある時には、犬は足を舐めることで飼い主を安心させようとすることもあります。
犬が足を舐める理由は、単なる犬自身の興味や欲求だけでなく、飼い主との感情の共有のためでもあります。
犬との楽しい時間を増やし、信頼と絆を深めるためにも、犬からのサインに気付き、適切な対応をしましょう。
犬が足を舐める際に注意すべき症状と対策
犬が自分の足を舐める際に注意すべき症状と対策を、傷ができた場合、舐め続けている場合、かじる場合の、それぞれについて解説します。
舐めすぎて傷ができた場合
犬が足を舐めすぎると、皮膚のバリア機能が失われ、乾燥や炎症を起こしやすくなります。舐めすぎて弱くなっている皮膚は、傷ができやすい状態です。傷ができると、感染症にもかかりやすくなります。
傷ができてしまった場合、傷口から出る浸出液には、傷を自然に治していく自己修復作用があります。
犬が傷口を舐めてしまうと、傷の回復を遅らせるどころか、治りかけの皮膚を再び破壊させてしまうこともあるのです。
したがって、傷ができた犬には、傷口を舐めないように対策を施す必要があります。
最もおすすめなのは、エリザベスカラーを装着することです。
軽さ、柔らかさ、視界の良さなど、商品によって長所が異なります。
サイズが合っていて、犬に負担が少ないエリザベスカラーを選ぶことが大切です。
その他には、靴や靴下を着用する方法もあります。
エリザベスカラーや靴を嫌がる犬には、包帯の保護だけでも効果的です。
化膿や炎症がある場合は、適宜交換して清潔な状態を保ちましょう。
獣医師のアドバイスを受けながら、傷の状態と犬の好みに合わせて、適切な対策方法を選んでください。
舐め続けている場合
犬が足を舐め続けている場合の注意すべき症状をご紹介します。
アレルギーや痒み
皮膚の赤みやただれがあれば、アレルギーが関与している可能性があります。犬が足を舐め続けてしまうのは、皮膚のかゆみや痛みを緩和させようとしているのです。
早めに動物病院で診断を受けましょう。
家族に被害の及ぶ外部寄生虫
外部寄生虫に感染すると、激しいかゆみ以外には、発疹、貧血、発熱などを伴います。
ダニの種類により、脱毛も発症するかもしれません。
動物病院で適切な処置を受けましょう。家族にも被害が及ぶ可能性があります。
日頃から、定期的な予防対策が必要です。
舐性皮膚炎(しせいひふえん)
舐性皮膚炎の初期症状は脱毛や着色です。進行すると皮膚がただれて化膿します。
足先などで起こりやすく、舐めすぎた刺激と湿った状態が炎症を引き起こすのです。
ストレスが原因のこともあれば、傷が引き金となることもあります。
獣医師の指導のもと、治療を進めていきましょう。
舐めるだけでなくかじる場合
犬が足を舐めるだけでなく、かじる行為にまで及んだ場合は、早急に動物病院に行きましょう。
必要に応じて、全身の血液検査、レントゲン検査などもしてください。
犬が自分の足をかじる場合に生じる影響を、詳しく説明します。
傷からの感染症
犬が自分の足をかむことで、噛み傷ができると、傷口から細菌が入る可能性があり、皮膚が炎症を起こすことがあります。
この炎症は、痛みやかゆみを引き起こし、犬が傷口をさらに舐めたり齧ったりし続けるという悪循環に陥りかねません。
皮膚の悪化を防ぐため、早めに動物病院で診てもらいましょう。
歩行障害
また、噛んだ傷によって違和感や痛みが生じるため、歩行障害を伴うことがあります。
歩行障害は骨格の変形に発展することがあります。
普段と違う歩き方をする場合は、速やかに獣医師に相談してください。
例えば、椎間板ヘルニアや血栓塞栓症に罹ると、しびれからくる舐めや噛み、歩行障害が見受けられます。獣医師による各症状の識別が必要です。
皮膚炎や指間炎
犬が足をかむことで、赤みや毛抜け、腫れなどの症状が見られる場合、皮膚炎や指間炎が疑われます。
これらの症状はかゆみや感染を悪化させる恐れがあります。
早急に動物病院に行き、薬を処方してもらいましょう。
犬の足舐めに対する日常的な対処法
犬の足舐めで日常的に気を付けるべき対処法をご紹介します。
爪のトリミングや清潔な環境づくり
犬が足を舐める原因にならないように、常日頃から環境を清潔に保つ必要があります。
まず、散歩の後には足や爪、肛門、口を洗い、手足や指をきちんと洗浄し、清潔に保つことが大切です。
また、足裏の被毛が伸びすぎたり、爪が長すぎたりしていると、犬が足を舐める原因になり得ます。足元のチェックをこまめに行いましょう。
アレルギーによる痒みが原因で足を舐める犬には、食物アレルギーを引き起こす可能性のある食品を避けてみることも重要です。
さらに、犬の皮膚に刺激を与えず、やさしい洗浄力のシャンプーを選んで使用すると良いでしょう。耳掃除もこまめに行い、清潔な状態を保つことが必要です。
秋から冬にかけての乾燥シーズンは、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみが増す傾向があります。
この時期は保湿タイプのシャンプーや保湿剤を使用して、皮膚の保護機能を補うことが大切です。
飼い主の清潔な環境づくりが、犬の健康維持に役立ちます。
ベッドやカーペットの定期的な掃除、犬用のベッドの洗濯なども、疎かにしないように気を付けましょう。
ストレスの原因を見つけて解消する
犬の足舐め行為は、ストレスによって引き起こされることがあります。
皮膚病やケガの兆候が見られない場合、犬が足を舐める原因は、ストレスかもしれません。
特に退屈や不安からくる足舐めは「常同行動」や「常同障害」につながる可能性が高く危険です。
「常同障害」はエスカレートすると自傷行為に及びます。一刻も早くストレスの原因を見つけて解消しましょう。
運動不足やコミュニケーション不足がストレスとなり、足舐めを引き起こす可能性があります。
遊びや散歩を増やすことが重要です。スキンシップによる飼い主とのコミュニケーションも大切にしましょう。
その他にも、新しい環境への適応や家族構成の変化、飼い主の変動などは、ストレスの要因となります。
何らかの変化があった時には、通常以上に犬への愛情を表現し、適切なケアを提供することが必要です。
犬がひとりで留守番をするような時間も充実できるように、おもちゃや音楽を活用して楽しい部屋環境を作りましょう。
犬の心と体の健康を保つためには、飼い主の愛情と配慮が必要です。
獣医師の診察を受ける必要がある場合
動物病院への受診が必要な症状を見ていきましょう。以下の症状が出ている場合、獣医師の診察が不可欠です。
- 足が真っ赤になっている
- 足先が腫れて毛が抜けている
- 足を引きずるか持ち上げる
- 手足をはじめ体が震える
- 足先が冷たくて肉球の色が薄い
- 奇妙な歩き方
- 肉球に何らかの異変が見られる
- 元気や食欲の喪失
犬の足舐めに関する注意点
最後に、犬の足舐めに関する注意点を、3つのポイントにまとめました。該当する場合は、ぜひ実施してください。
傷や炎症がひどい場合は早めに獣医師の診察を受ける
犬の傷や炎症がひどい場合は、早めに獣医師の診察を受けることが重要です。
症状が放置されるほど、感染や悪化のリスクが高くなります。 迅速に受診しましょう。
気になる行動が続く場合は専門家に相談する
犬が足を舐める以外にも、何か気になる行動が続く場合は、専門家に相談することが重要です。
異常な舐め癖や不安定な行動は潜在的な問題を示しているかもしれません。専門家のアドバイスを受けて、適切な対応をしましょう。
犬の心の健康も大切にする
犬の足舐めが持つ深層的な意味や健康状態を見逃さず、犬の心の健康も大切にしましょう。
犬が足を舐めるという行為は、不安やストレス、孤独感などが原因になっていることがあります。
スキンシップ、散歩、遊びなどを通して、犬とのコミュニケーションを深めることが必要です。
そのような行為によって、犬は、飼い主に愛されている安心感を得られ、心の健康を保てるようになっていくでしょう。
心と体はつながっているので、犬の足舐め防止には、心の健康が重要となります。
まとめ
この記事では、犬が足をなめる理由や対処法について、解説しました。
足舐めの理由は、犬によって、さまざまです。
犬が足をなめ続けていたり、かじったりしている場合には、何らかの病気が原因かもしれません。早急に動物病院で診療を受ける必要があります。
ストレスが原因である場合は、犬の気持ちに寄り添うことと、獣医師などに相談することが大切です。
専門家のサポートを受けながら、犬のストレスの原因を解消する努力をすれば、きっと快方に向かっていくでしょう。