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はじめに
飼い犬が排せつ後のウンチを食べているのを目にしたら、ショックな方は多いでしょう。けれども、犬は自分のウンチを栄養として捉えて食すことがあります。一般的にはウサギ、コアラ、チンパンジー、フンコロガシなど多くの動物が食糞行動をしており、その中に犬も含まれています。けれども、飼い犬で食糞(ウンチを食べる)を続けている場合には、自然な行動のほかにも、別の理由が隠れているかもしれません。ここでは、犬が食糞する理由や健康への影響、やめさせるための方法や食糞対策グッズについて紹介します。
犬がウンチを食べる(食糞する)理由
飼い犬が食糞する(ウンチを食べる)理由は、その時々のシチュエーションによってさまざまです。なぜなら犬の習慣や性格、環境によってもそれぞれ理由が異なってくるためです。
心理的な面では、寂しい、かまってほしい、退屈しているなどのストレスを抱えている場合、興味本位で食べてみたなども考えられます。
また、もともと犬は食糞することがある動物なので、単純に自然の行動を取っているだけかもしれません。
けれども、なかには病気が理由で食糞を続けている場合もあるので、注意が必要です。ここではよくある3つの理由を紹介します。
自然な行動パターン
一般的にはウサギ、コアラ、チンパンジー、フンコロガシなど多くの動物が食糞行動をしており、犬も食糞行動がある動物です。そのため、犬にとってウンチを食べる(食糞する)ことは、自然な行動パターンと言えるでしょう。
もともと犬は、住処から離れたところで排せつする習性があります。そのため、住処でウンチをした時には、ニオイで敵に気づかれないようにウンチをその場で食べる習性を持っています。
また、子育てをする際にも母犬が子犬のお尻を舐めて排せつを促したり、身を守る手段や環境を清潔に保つためなどを理由に、ウンチを食べてきれいにするということも珍しくありません。そのような行動を見て育つ子犬は、母親を真似てウンチを食べてしまうということもありえるでしょう。
そのため、もしウンチを食べたのなら自然な行動としてとった可能性が考えられます。
栄養不足や消化不良の可能性
栄養不足で空腹になっている理由としては、ダイエット食で栄養が足りていない時や食事の量そのものが少ないなどです。極端に栄養バランスが偏ってしまうと、栄養失調になる恐れもあるため注意が必要です。栄養不足による空腹は以下の理由が考えられます。
- タンパク質不足
- ビタミン・ミネラルの不足
- 食事量が少ないまたは多い
- 消化率の低いドッグフードを食べている
病気が原因の場合には栄養不足と共に消化器官の機能低下が理由で空腹になっている可能性が考えられます。特に子犬や高齢の犬は、消化器機能の低下によって消化不良を起こしていることも考えられます。消化不良が原因の場合は、以下のような理由が挙げられます。
- 食べ過ぎ
- 消化率の低い食事内容
- ストレス
- 膵外分泌不全
- 寄生虫
犬は必要な栄養や酵素が不足していると、本能的に栄養を補おうとします。栄養が足りていず、自分のウンチで栄養を摂ろうとして食べている可能性が高いのです。
そのため、繰り返し犬がウンチを食べている時は、食事量や栄養状態を一度見直してみるといいでしょう。特に消化不良を起こし、1日に何度もウンチをしている時は早めに病院へ相談してください。
過剰な食欲や興奮状態
排せつされたほやほやのウンチは、ドックフードの種類によっては香料なども一緒に排出され、犬の食欲を誘っている場合があります。
そのため普段から食欲旺盛な犬は、ごはんと勘違いして食べてしまうかもしれません。
病気による過剰な食欲が伴っている可能性もあります。クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は副腎のホルモンの異常で起こる病気で、食欲が過剰になったり、多飲多尿などの症状がみられます。
ほかにも過剰な食欲が症状として現れるものは、
- 糖尿病
- 膵外分泌不全症
- 認知症
などが考えられます。
特に高齢の犬で過剰な食欲があり食糞している時は、認知症によって空腹感を覚え、ウンチを食べている可能性があります。
犬が興奮状態になり、食糞を繰り返していることも考えられます。
興奮状態になりやすい状況の例を挙げると、犬が思わぬ場所でウンチをした時に、飼い主が大声を上げたことを喜んでいると勘違いしてしまい、興奮してしまう場合です。
また、排せつ後ウンチを慌てて片付けてしまうと、ウンチを取られまいと食べようとすることがあるため、落ち着いて処理することが大切です。
うんちを食べることが健康に与える影響
飼い犬が自分のウンチを食べてしまい、健康に問題はないか心配な方も多いかと思います。結果的には、犬が自分のウンチを食べたとしても健康への影響は低いため、それほど心配する必要はありません。
けれども、長期的にウンチを食べ続けて癖になることは、決してよいことではありません。長期的な食糞による健康に与える影響を具体的な例を挙げ、説明します。
寄生虫や細菌の感染リスク
家の外に落ちている他の犬や動物のウンチを食べてしまうと、寄生虫、細菌の感染リスクが高まり、栄養バランスが崩れ、消化器官のトラブルにつながるリスクが高まります。最も一般的なのは回虫(カイチュウ)という寄生虫で、腸内の栄養を奪われてしまう原因になってしまいます。寄生虫の感染は、人間にも感染する可能性がゼロではないため、食糞が癖になっているのなら、直ちにやめさせる必要があるでしょう。
栄養バランスの乱れ
おなかの中に寄生虫がいる場合、必要な栄養素が奪われてしまい、空腹を感じやすくなります。そのため、栄養を補うために食糞を繰り返してしまう原因になりかねません。また、食事量が足りていないことや食事内容が合っていないことも栄養バランスの乱れの原因となり、食糞を続けてしまう原因となるので注意しましょう。
犬がうんちを食べるのをやめさせる方法
結果的には、すぐに片付けるのが食糞を防ぐ1番の得策です。また、あわてて片付けることで、犬も取られまいと口にくわえてしまうこともあるため、落ち着いて行うことが大切です。また、食べようとした瞬間に食べてはいけないことを犬に教えることも必要でしょう。このように日々の積み重ねにより、少しずつ食べる癖を減らしていくことが早道です。すぐに片付ける習慣と並行してできることを以下にて紹介します。
食事療法や栄養補助食品の見直し
それぞれの犬に合う食事は、犬種や年齢、日常の活動量によって異なってきます。ドッグフードに記載されている容量はあくまで目安と考え、1日の行動パターンや活動量なども目安にして量を決めることも大切です。また、ドッグフードの成分を確認し、栄養バランスに偏りのない食事を目指す方が好ましいでしょう。
まずは普段の食事を見直してみましょう。以下のチェック項目を参考にしてみてください。
- 消化率の良い食事かどうか
- 食事内容が犬に合っているか(カロリー・年齢など)
- 動物性タンパク質が豊富に含まれているか
- ごはんの量や回数は適切か
- ウンチの量が多すぎないか
また、未消化のまま排せつされてしまったウンチのニオイは、犬にとって食欲をそそられやすくなるでしょう。具体的な対策としては、以下のようなものがあります。
- 腸内環境を整える成分が配合されているもの
- ニオイ対策が含まれているもの
消化に良いドックフードに切り替えることで、ニオイが軽減され食べたいと思わなくなる効果が期待できます。また腸内環境を整えるサプリメントを与えることもニオイ軽減につながります。かかりつけの病院がある場合には、まずは獣医さんに相談するといいでしょう。
しっかりとしたトイレトレーニング
トイレトレーニングをしっかり行うことも食糞対策に効果があります。具体的には以下のトレーニングがおすすめです。
- 排せつ後、すぐに片付ける
- おやつやおもちゃなどを使ってトイレから遠ざける
- ウンチへの興味をそらす工夫をする
- 排せつ後、飼い主に教えるように訓練をする
- ウンチを食べなかったらおやつをあげてから褒める
- 万が一食べてしまっても怒らない
実際、ウンチを食べてしまったときに怒ってしまうと、それがトラウマとなり、トイレ自体に行かなくなってしまったり、さらに食糞の行動が増えてしまう事例もあります。食糞を繰り返しているうちは、速やかにウンチを片付け、食べても怒らず根気よく教えるのが大切でしょう。
また子犬でまだトイレに慣れていないなら、コマンドで排せつを促すトレーニングも効果的です。
トイレのしつけ方法
- トイレの時間を作りサークルで排せつを待つ
- 「ワンツー」「シーシー」「トイレ」などのコマンドを声がけて排せつを促す
- 上手にトイレができたらすぐに褒めてご褒美をあげる
トイレがしっかりできるようになったら、「トイレが終わったら飼い主に教える」訓練も効果的です。
飼い主に教える訓練
- ウンチをしたら飼い主の近くでお座りをさせる
- ウンチを片付けてからおやつをあげて褒める
このように、少しずつトレーニングすることで、食糞を減らしていきましょう。
ポジティブリンフォースメントの活用
犬をしつける際に大切なのは、ポジティブリンフォースメントを活用することです。
ポジティブリンフォースメントとは、ご褒美や褒め言葉を使って、犬にポジティブにより良い行動をしてもらう方法です。
オーストラリアのしつけ方法で、日本語に訳すと「正の強化」と言われています。
ポジティブリンフォースメントでは、ネガティブ要素のある「罰」や「叱る」ことはせず、「うまくできるようになったらご褒美をあげる」ことだけを繰り返します。
しつけのポイントは、「短い時間で練習すること」と「正しい行動ができた時のみご褒美があること」です。犬が自発的に正しい行動することで報酬がもらえることを覚えることができれば、ストレスもなく自然に食糞を直すことができるでしょう。
食糞対策グッズ
犬にウンチを食べるのをやめてもらう方法がわかったものの、完全に癖をなくすまでには時間がかかってしまうでしょう。また、根気よく教えているのになかなか成果が出ていないという方もいるかもしれません。
そんな時は、食糞対策グッズを活用するのも一つの方法です。ここでは具体的に食糞対策グッズを紹介します。
マウスガードや口輪の使用
犬にウンチを食べさせないために使えるグッズは、マウスガードや口輪などがあります。メリットとしては自由に口を開けられないため、拾い食いや噛み癖を防ぐ点です。
けれども、デメリットとしてはただの対処となってしまい、根本的な癖を直すことができません。また、犬に必要以上のストレスを与えかねません。
どうしても口輪を使う場合は、トイレの時のみに行うなど時間を制限した使い方がよいでしょう。
食糞防止スプレーの利用
食糞防止スプレーはウンチにかけると、犬が嫌なニオイや味になるスプレーです。スプレーをかけたウンチを食べることで、犬にウンチは美味しくないことを教えられます。
スプレーの味にはリンゴの苦味成分を抽出したものなどがあります。
食糞防止スプレーのメリットは、ウンチは美味しくないことを学習させることができる点です。デメリットとしては、一時的な効果のため、スプレーのニオイや味に慣れてしまうと根本的な対処にならなくなってしまう点です。
なのでスプレーを併用しつつ、しつけで少しずつ学習させたほうがよいでしょう。
インドアグラスの配置
トイレトレーニングで効果的なのが、インドアグラス(芝生のトイレ)を配置することです。取替え式のものから水洗式などの種類があります。
芝生の感触は犬にとってリラックス効果があり、普通のトイレマットよりも自然に便意を催すことがあります。トイレの時間を設けて訓練することで、排せつのタイミングを逃すことなくウンチを片付けることができるでしょう。
また、人工芝だと日頃のお手入れも簡単です。このインドアグラスはあくまでトイレトレーニングのグッズであるため、食糞を根本的になくすものではありません。
けれども、トイレトレーニングをする上では最適なグッズなので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
犬がウンチを食べる(食糞する)理由と対策について紹介しました。
内容をまとめると、犬が食糞する理由には、自然な行動パターン、栄養不足や消化不良、過剰な食欲や興奮状態などがあります。
食糞をやめさせるには、食事の見直しやポジティブリンフォースメントを用いたトイレトレーニングを行うのが最適です。
食糞対策グッズはあくまで対処療法なので、対策グッズを併用しつつ毎日訓練しながら食糞を減らすのが望ましいでしょう。