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はじめに
犬がいびきをかいて寝ている様子は「どことなく人間味があって癒される」と感じる方も多いのではないでしょうか?たしかに、健康な犬のいびきはリラックスして深く眠っているサインといわれています。しかし、身体的な構造や病気による呼吸器への負担がいびきの原因となることも少なくありません。今回の記事では、犬のいびきの原因や対処法、そしていびきに関連する病気について解説していきます。
犬のいびきの原因とは
健康な犬でもいびきをかくことはありますが、何らかの異常によりいびきをかきやすい状態になっている犬もいます。犬のいびきの主な原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
鼻ぺちゃの短頭種のいびき
短頭種とは頭蓋骨の幅に比べてマズル(鼻の長さ)が短い犬種のことです。代表的な短頭種としては、ブルドッグやパグ、ボストンテリア、シーズーなどが挙げられます。また、あまり「鼻ぺちゃ」というイメージがないかもしれませんが、キャバリアやチワワも短頭種の仲間です。
短頭種は他の犬種と比べると鼻腔や咽頭など空気の通り道が狭くなりやすく、いびきをかきやすい犬種といえます。また、その身体構造から外鼻孔狭窄や軟口蓋過長症といった呼吸器疾患にもなりやすく、このような病気が原因でいびきをかいている可能性もあります。
短頭種の特徴的な外見はチャームポイントでもありますが、その頭蓋骨の形から呼吸器に負担がかかりやすいことを知っておきましょう。
他の犬種のいびき
短頭種のように犬種特有の身体構造が病気の要因となるものを「遺伝的要因」といいます。短頭種の他にも「トイ種」と呼ばれる犬種は気管虚脱に陥りやすい傾向にあり、この気管虚脱もいびきの原因となりやすい疾患です。
トイ種には各地で古くから愛されてきた小型の愛玩犬が多く、ポメラニアンやトイプードル、ヨークシャーテリア、イタリアングレーハウンド、パグ、チワワなどの犬種が含まれます。愛玩用に小型化された穏やかな犬種が中心となっているため、現在もペットとしての人気が高く飼育している人が多い犬種といえるでしょう。
また、呼吸器トラブルのリスクが高くない犬種であっても、何らかの原因で気道が狭くなりいびきをかくことがあります。気道が狭くなる主な原因として考えられるのは、アレルギー・肥満・加齢などです。
まず、アレルギーで頻繁に見られる症状が鼻腔や喉、気管などの炎症です。炎症が起こると、腫れや分泌物により気道が狭くなり、犬がいびきをかくことがあります。また、肥満傾向になると喉の周囲に脂肪が増えることで気道が圧迫されて、いびきが頻繁に見られるようになるでしょう。そして、加齢のため喉の周りの筋肉が衰えることでも気道狭窄が起こりやすくなります。
これらの原因に加えて、命にかかわる病気がいびきの原因になっていることもあるため注意が必要です。病気といびきの関係については、この記事の後半でも詳しく触れていきますので参考にしてください。
ただし、いびきをかいているからといって必ずしも病気や身体の衰えが原因となっているわけではありません。思い切り運動した後など気持ちよく熟睡しているときも、喉の周りの筋肉が緩んでいびきをかくことがあります。
犬のいびきの対処法
いびきの原因は気道の狭窄であることを考えると、いびきがひどくなれば犬自身も息苦しさを感じるはずです。また、飼い主としても寝ている愛犬を見て「なんだか呼吸が苦しそう」と感じたら何らかの対処をしてあげたいですよね。自宅でできるいびき対策にはどのようなものがあるのでしょうか?
環境の改善
犬のいびきは、部屋の環境や寝る姿勢を改善することで軽減できる可能性があります。まずは、愛犬の睡眠中に姿勢を確認してみましょう。いびきをかきやすい犬にとって、楽な姿勢とされているのは「うつ伏せ」です。逆に仰向けや真横になって伸びるような姿勢は、気道が狭くなりやすいといわれています。
もちろん、俗に「へそ天」とよばれる仰向けや身体を大きくのばした横向きも一般的には「犬がリラックスしているときの寝相」といわれているので、決してそれ自体が悪い姿勢というわけではありません。
しかし、いびきをかきやすい犬の場合はうつ伏せの姿勢に変えてあげることで身体の負担を減らすことができます。もし、うつ伏せまで姿勢を変えることが難しければ、横向きのまま背中を丸めた姿勢にするだけでも呼吸がだいぶ楽になるはずです。
次に、部屋の環境改善でポイントとなるのが気温と空気の汚れです。気温が高いと呼吸が増えて気道への負担がかかるので、犬が過ごす部屋は22〜25℃を目安に涼しい室温を保ちましょう。
また、カビ・ハウスダスト・煙草などは犬にとって気管の炎症を起こす原因となります。カビ・ダニの発生を防ぐためには除湿に努め、犬用のマットやクッションもこまめに丸洗いすると効果的です。犬を飼っている方の中にも喫煙者はいると思いますが、犬の過ごす部屋では禁煙をおすすめします。
体重管理
肥満がいびきの主な原因となっている場合は、体重管理をしっかりと行うことでいびきの改善が期待できます。まずは飼っている犬の犬種や性別・年齢などから適正体重を確認し、定期的な体重測定やBCS(ボディ・コンディション・スコア)のチェックをしてみましょう。
もし体重やBCSを確認して肥満気味だった場合は、食事内容と運動量の見直しを中心にダイエットを進めていきます。食事内容の見直しをする際は、食事量を減らすだけでなく「量は変えずにローカロリーのドッグフードに替える」「ドッグフードの一部を低脂肪高たんぱくの食材や野菜に置き換える」など、犬が物足りなさを感じにくい工夫も必要です。
特に成長期が終わる頃と去勢・避妊手術の後は犬の体重が増えやすいタイミングなので「まだ若いから」と油断せず体重管理していくことが大切です。愛犬が若いうちから肥満度を意識した体調管理を行うことで、いびきをかきやすくなる老年期になっても適正な体重・肥満度をキープしやすくなります。
獣医師の相談
ここまで、犬のいびきについて原因や対策をいくつか紹介してきました。普段から愛犬の様子を観察していると「これが原因かな」と予測が付く場合もあるでしょう。しかし、これといった原因は思い当たらないものの、結果として「いびきが大きな病気のサインだった」というケースも少なくありません。
そのため、いびきが気になったらまずは獣医師に相談することをおすすめします。診察を受けて原因がわかれば、治療や生活改善の方向性も見えてくるので安心ですね。もちろん、病気の治療だけでなく自宅でできる生活改善についても、獣医師に相談することでアドバイスを受けることができます。
犬のいびきと病気の関係
犬のいびきには、生活改善で軽減できるものもあります。しかし、病気が原因であれば獣医師の診察や治療が必要となる場合もあるでしょう。いびきの原因となる病気にはどのようなものがあり、何を目安に獣医師に相談すべきなのでしょうか?
病気の症状としてのいびき
いびきは、狭くなった気道を空気が通過することにより起こります。気道が狭くなる原因には生活習慣や加齢など病的でないものも多いですが、ときには病気が原因となって気道が狭くなることもあるため注意が必要です。
気道が狭くなる病気としては、記事の前半で取り上げた外鼻孔狭窄・軟口蓋過長症・気管虚脱などが挙げられます。また、アレルギーや感染症による気道の炎症や、腫瘍による気道の狭窄が起きた結果、犬がいびきをかくようになることもあります。
そのほか、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎など肺の病気によりうまく酸素が取り込めない状態になった犬もいびきをかきやすいでしょう。これは、十分な酸素を取り込むために通常よりも呼吸の回数が増えて、気道を多くの空気が行き来するためです。さらに、一見呼吸器疾患とは無関係な心臓疾患でも症状の一つとしていびきが現れることがあります。
観察と早期対応の重要性
犬のいびきに対しては「ぐっすり寝入っていて癒される」と感じている飼い主も多いと思います。たしかに、熟睡したことで筋肉が緩みいびきをかいている犬もいるので、いびき=病気とは限りません。しかし、次のような場合には十分な観察と早めの対応が必要と考えられます。
- いびきが頻繁に聞かれる
- 急にいびきをかくようになった
- 徐々にいびきの音が大きくなっている
- 呼吸が苦しそうだと感じる
このような様子が見られたら、病気によるいびきの可能性が高いため獣医師への相談が必要かもしれません。また、最初は病気が原因ではなかった場合でも、大きないびきを繰り返すこと自体が犬の身体に負担をかけてしまうことが予想されます。いびきが気になったら、早めの対策と相談を心がけることが愛犬の健康を守ることにもつながるでしょう。
犬のいびきに注意するべき病気
さまざまな病気が犬のいびきの原因となりますが、その中でも特に注意が必要な病気があります。いびきの原因になりうる病気の中で、命にかかわる可能性が高いものや早めの対応が必要なものとはどのような病気なのでしょうか?
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に犬の呼吸が一時的に停止する病気です。原因としては筋肉の緊張や肥満、その他の病気により気道がふさがってしまうことなどが考えられます。睡眠中にいびきをかいていたり、そのいびきが急に止まったり、または睡眠中に急に興奮したように目を覚ますといった様子が見られたら、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
睡眠時無呼吸症候群は、発症後すぐに犬の命にかかわる病気とは言えません。しかし、重症化すると呼吸停止が頻繁かつ長時間にわたり、酸欠の状態に陥りやすくなります。体内の酸素が欠乏した状態では脳や心臓に負担がかかるため、重症の睡眠時無呼吸症を放置すると心臓疾患などの重篤な病気につながりかねません。
心臓病
犬の心臓疾患にはさまざまな種類がありますが、主なものとしては僧帽弁閉鎖不全症のほか、心筋症や肺高血圧症などが挙げられます。いずれも加齢に伴い発症することが多い病気ですが、僧帽弁閉鎖不全症や心筋症になりやすい犬種がいることから遺伝的要因も原因の一つと考えられます。
もし「いびきは呼吸器の異常により起こる」というイメージを持っていると、心臓疾患がいびきの原因と聞いてもピンと来ないかもしれません。しかし、心臓病を患うと、肺の圧力が上がったり心臓が拡大したりする場合があります。こうした肺や心臓からの圧力で気道が狭窄した結果、いびきをかくようになる犬もいます。
上気道感染症
上気道感染症は人間でいう風邪のようなもので、細菌やウイルスによって鼻腔や咽頭などの上気道に症状が現れる感染症の総称です。くしゃみ・鼻汁・咳・発熱などの症状がみられるほか、気道が炎症を起こして狭くなることでいびきが見られることもあります。
上気道感染症は他の犬や動物との接触により感染することが多いため、多頭飼いをしている環境やドッグランなどレジャーに出かける際には注意が必要です。また、もし飼っている犬に上気道感染症と思われる症状が出たら、同居犬や他の犬と接触を避けるなど感染を広げないための対策にも努めましょう。
上気道感染症の中にはケンネルコフなど、ワクチンによって予防できるものもあります。愛犬や周囲の犬の健康を守るために、適切な時期にワクチン接種をすることも検討してみてはいかがでしょうか。
その他の重大な病気の可能性
今回は、いびきの原因として比較的よく見られる病気をまとめました。しかし、この他にも犬の気道が狭くなる病気があります。中でも飼い主からは原因が分かりにくく注意が必要なのが、気道に腫瘍ができたことによるいびきです。放置すれば腫瘍が増大する可能性もあるため、早期の発見・治療が重要といえます。
また、病気だけでなく異物もいびきの原因の一つです。覚醒時の呼吸音が変わったり、ある時から急にいびきをかくようになったと思ったら、鼻腔に異物が詰まっていたというケースもあります。
このように、いびきは呼吸器に何らかの負担がかかっていることを知らせるサインです。緊急性が低い原因も多いですが、異常を感じたら早めに動物病院に行って、原因を確認することをおすすめします。
まとめ
犬のいびきには犬種・年齢・肥満度・病気などさまざまな原因があります。生活習慣の改善や環境の調整によりいびきを軽減できる場合も多いですが、病気が原因の場合などは治療が必要になることもあります。愛犬のいびきに気付いたら、しっかりと観察した上で必要に応じて獣医師に相談してみましょう。