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はじめに
街中で目の不自由な方と歩いている盲導犬はどのような仕事をしているのか、気になる方も多いと思います。
盲導犬は、目の不自由な方とコミュニケーションを取りながら生活のサポートを行っており、ユーザーにとって非常に重要な存在です。
ただ、盲導犬の役割や仕事内容が誤解される場合も多く、人によっては悪気が無くても盲導犬の仕事を邪魔してしまう場合があります。
目の不自由な方が快適に過ごせる社会を作るには、盲導犬への理解が欠かせません。
そのため、この記事では盲導犬の役割や具体的な仕事内容について詳しく解説します。
盲導犬になるまでの過程や盲導犬を街で見かけた時の正しい対処もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
盲導犬とは
盲導犬とは、目が見えない人や見えにくい人の日常生活をサポートする犬です。
盲導犬は、ユーザーをサポートするために、身体障害者補助犬法にもとづく特別な訓練を受けています。
盲導犬は、目的地まで案内してくれるイメージがあるかもしれませんが、主に歩行を補助するのが役割です。
ユーザーは、目的地までの地図を記憶し、盲導犬に指示を出して目的地まで向かいます。
そのため、ユーザーと盲導犬はお互いの役割を分担し、声・動作でコミュニケーションを取りながら歩行しているのです。
ユーザーが指示を出す時は「ストップ(止まれ)」や「ウェイト(待って)」など英語を使用しています。
盲導犬はハーネスと呼ばれる白もしくは黄色の銅輪を身に着けているのが特徴です。
盲導犬の多くはラブラドールレトリバーですが、ゴールデンレトリバーやジャーマンシェパードなどの犬種もいます。
盲導犬には、集中力を切らさずユーザーをサポートすることが求められるので、賢い・人懐っこい・穏やかな性格が必要です。
主な仕事内容
次に、盲導犬の主な仕事内容を紹介します。
- 角を教える
- 障害物を教える
- 段差を教える
- 目的物へ案内する
- 道の端を歩く
- 指示した方向に進む
それぞれ詳しく解説するので、盲導犬がどのような役割を果たしているか理解しましょう。
角を教える
1つ目の盲導犬の仕事内容は、ユーザーが曲がり角に気づかず進んで道に迷うことを避けるため、角を教えることです。
例えば、ユーザーと歩行していて左に角があった場合は、盲導犬は左の壁に沿って入り込み、角を教えてくれます。
ユーザーは、盲導犬が左に入り込んで止まってくれるので、左に角があると理解できます。
障害物を教える
次に、ユーザーが障害物にぶつからないよう、障害物の存在を教えることです。
盲導犬は障害物があったときに、ユーザーの横幅や身長を考慮したうえで、避けて歩行します。
ユーザーはハーネスの動きなどで、盲導犬が障害物を避けてくれたと理解できます。
段差を教える
また盲導犬は、前に段差がある時にユーザーが転ばないよう、立ち止まって段差の存在を教えます。
ユーザーは、盲導犬が止まったことや、ハーネスの傾きが上向きや下向きになることで、段差があることを理解します。
目的物へ案内する
ユーザーを目的物へ案内することも大事な仕事です。
例えば、ユーザーが「チェアー(椅子を探して)」と声を出すと、盲導犬は空席までユーザーを案内してくれます。
ユーザーは、指示を出した後に盲導犬が止まると、目的物に案内してくれたと理解できます。
他にも、目的物への指示は「ドアー(出入り口を見つけて)」などがあり、犬は出入り口を探して鼻先をドアノブにつけて静止し、出入り口を示してくれます。
道の端を歩く
盲導犬は、ユーザーが歩行者に気づかずにぶつかってしまったり、車道に転んで倒れたりする危険を避けるため、道の端を歩きます。
盲導犬は他の人とぶつからないよう道の端を誘導し、ユーザーの左に身体を添えて歩行します。
ユーザーは、盲導犬が道の端を歩いてくれるので、安心して歩行できます。
指示した方向に進む
盲導犬はユーザーの指示を聞き分け、ユーザーの行きたい方向へ連れて行ってくれます。
使用する英語の指示は、「ライト(右)」「レフト(左)」「ストレート(まっすぐ)」「ゴー(進め)」「バック(戻れ)などです。
盲導犬の一生
次に、盲導犬の一生について詳しく紹介します。
- 何歳から盲導犬になれる?
- 盲導犬に引退はある?
よくある疑問に関してまとめましたので、ぜひチェックしましょう。
何歳から盲導犬になれる
訓練を受けた犬は、基本的に2歳頃から盲導犬になれます。
盲導犬となる犬は、盲導犬協会所有の繁殖犬から産まれてくる子犬です。
繁殖犬は1匹あたり、平均5~6頭の子犬を産みます。
盲導犬候補の子犬が母犬や兄弟犬と共同で生活するのは、産まれてから2ヶ月ほどです。
この期間に子犬は人間と関わることで、人間に対して友好的になり、人間に懐いて奥せず生活できるようになります。
2ヶ月を過ぎると、子犬を育てるためにパピーウォーカーとよばれるボランティアの家庭に預けられます。
1歳になるまでのおよそ10ヶ月の間、パピーウォーカーの愛情を受けながら様々な場所に出かけて経験を積むので、子犬の社会化につながります。
子犬が1歳を迎えると開始されるのが、盲導犬になるための訓練です。
まず、候補の犬が、盲導犬として適性があるかチェックします。
盲導犬に適正があると評価された犬が行うのは、盲導犬訓練士による犬の個性に応じた訓練です。
一方で、盲導犬に適性がないと評価された犬は、キャリアチェンジ犬としてボランティアに引き取られます。
はじめに行う訓練は、犬に指示を出して、その指示通りの動作をさせる基本訓練です。
指示通りできたら褒めて、間違ったら教えるのを繰り返せば、犬は人間の指示を理解できるようになり、盲導犬として必要な能力が向上していきます。
基本訓練が終わった後に行うのが、障害物や段差・交差点を知らせるといった視覚障害者をサポートするために必要な動作を犬に覚えさせる誘導訓練です。
誘導訓練は盲導犬訓練士が行い、最終段階では盲導犬訓練士がアイマスクを着用して実践的に訓練します。
最後に行うのが、実際にユーザー候補となる、目の不自由な方と行う共同訓練です。
共同訓練で、ユーザーと犬は信頼関係を深めていき、犬はユーザーとのコミュニケーションを学ぶ一方で、ユーザーも犬の世話や歩行技術を習得していきます。
2歳程度で最終試験に合格すると、ようやく法律で認められた盲導犬です。
盲導犬に引退はある?
盲導犬には引退があり、10歳頃になったタイミングで引退します。
犬の10歳は、人間でいうと年齢は60歳前後です。
引退後はハーネスを外し、ユーザーの家族やリタイア犬受け入れボランティアの家庭へと引きとられ、穏やかな余生を過ごします。
リタイア犬ボランティアとは、盲導犬や盲導犬の候補を産んでくれる繁殖犬などが役目を終えた際に、家族として受け入れる取り組みです。
街で盲導犬に出会ったら
次に、街で盲導犬に出会ったらどうすべきか解説します。
- 盲導犬に触らない
- 写真を撮らない
- 食べ物をあげない
盲導犬を見かけたら見守るのが大前提ですが、注意すべきポイントをまとめましたので、参考にしてください。
盲導犬に触らない
まず、街で盲導犬に出会ったら、盲導犬に触らないようにしましょう。
街中で盲導犬を見るとその誠実さや可愛らしさから触ったり構ったりしたくなる場合もあるかと思います。
しかし、街中でハーネスをつけている盲導犬は仕事中です。
盲導犬に触ろうとすると盲導犬の注意をそらしてしまいます。
盲導犬は注意がそれてしまうと、ユーザーの指示を聞かなくなったり、ユーザーに角や交差点・段差などを伝えなかったりして、ユーザーを危険にさらしてしまうのです。
そのため、ハーネスをつけた盲導犬を見かけた時は、声をかけたり触ったりせず、見守ってあげましょう。
そのうえで、もしユーザーが困っている様子だったら、盲導犬ではなく、ユーザーに「お手伝いしましょうか?」と話しかけるのが重要です。
ユーザーの腕や肩をいきなり触ることは、絶対にやめてください。
写真を撮らない
次に、盲導犬を街で見かけても写真を撮ってはいけません。
1つ目の注意点と同じように、写真を撮ると盲導犬の集中力を切らしてしまい、ユーザーの安全を確保できなくなってしまいます。
また、盲導犬が物珍しいからといって、盲導犬は勝手に写真を撮っていい対象ではありません。
どうしても盲導犬の写真を撮りたい事情がある場合はユーザーに事前に声をかけ、了解を得るようにしてください。
勝手に写真を撮影したり、SNSに無断にアップロードすることは絶対にやめましょう。
食べ物をあげない
最後に、街で盲導犬に出会っても食べ物をあげてはいけません。
前述した2つの注意点と同様に、食べ物を与えると集中力が切れて注意が食べ物に向いてしまいます。
盲導犬の集中を切らす行為は、ユーザーの生活を危険にさらす行為ですので絶対にやめてください。
また、ユーザー以外の人から食べ物を与えてしまうと様々な問題が起きます。
例えば、今まで指示通りに行動した時に褒めて食べ物を与えるしつけを行っていた場合、何もせずに人から食べ物をもらえると、盲導犬がユーザーの指示通りに動かなくなる可能性もあります。
また、人から普段食べ物をもらっていると、もらえない時に催促するようになり、頻繁に集中力を切らすようになります。
さらに、ユーザー以外が食べ物を与えてしまうと、決まった時間に食事を取って排泄していたのに、余分な食事が発生することで、排泄リズムがコントロールできなくなってしまいます。
仕事をしている盲導犬を見て、褒めたりご褒美をあげたりしたいと考えるかもしれませんが、盲導犬とユーザーのためを思ってやめましょう。
まとめ
盲導犬とは、身体障害者補助犬法にもとづく訓練を受けた、目の見えない人や見えにくい人の日常生活をサポートするための犬です。
盲導犬の候補として、1歳頃から、ユーザーを誘導して指示通り動けるように訓練され、2歳から10歳まで仕事をこなします。
盲導犬はユーザーを目的地に連れて行くのが役割ではなく、ユーザーと動作でコミュニケーションを取りながら、ユーザーの歩行をサポートするのが役割です。
一方で、ユーザーは「ゴー(進め)」「ストップ(止まれ)」などの英語を使用して、盲導犬に指示を伝えます。
盲導犬ができるのは、角・障害物・段差の伝達、目的物への案内、道の端での歩行、指示した方向への進行などです。
盲導犬を見かけたら、盲導犬の注意をそらしてユーザーを危険にさらさないために、そっと見守ってあげましょう。
もし、ユーザーが困っている場合は声をかけてあげてください。
盲導犬の仕事内容を理解して、盲導犬・ユーザーが過ごしやすい社会を作っていきましょう。