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はじめに
愛猫がほうれん草を食べたがることはありますか。ほうれん草を食べたがったとしても、野菜なので問題などない、と考える方も多いと思います。しかし、ほうれん草は少し注意しなければいけないことがある野菜です。
栄養価が高く健康に良い面を持つほうれん草ですが、猫の健康を害する成分も含まれています。
この記事では獣医師監修のもと、ほうれん草を猫に与える際のメリットとリスク、注意点を詳しく解説します。ほうれん草についてしっかり理解した上で、猫に与えてみてください。
ほうれん草は猫も食べられる!
人間にとって健康な食材のほうれん草は、猫にとっても食べさせて問題のない食材です。
ほうれん草にはビタミンやミネラルが豊富に含まれており、健康に役立ちます。その反面、猫は本来肉食なため、野菜の消化は得意ではないことと、腎・泌尿器疾患のシュウ酸という尿路結石症を引き起こす原因になる成分も含まれているので、適切な調理方法と適量を守らなければいけません。
飼い主はほうれん草についての知識を深め、ほうれん草を与える際には、量や頻度に注意して与える必要があります。
ほうれん草の栄養成分は?
ほうれん草は栄養豊富な野菜であり、猫の健康に役立つ成分と、有害な成分が含まれている食材です。
この章では、その両面を詳しく解説していきます。猫にとって利点となるビタミンやミネラル、その他注意が必要な成分も理解することで、愛猫に安全にほうれん草を与えられます。
猫の健康に役立つ成分
ほうれん草には猫の健康をサポートする多くの栄養素が含まれています。
猫の体調を整えることに役立つものばかりです。これらの栄養素が猫の健康にどのような役割を果たすのかをみていきましょう。
ビタミンC
猫はビタミンCを体内で自然に発生させます。そのため、どうしても必要な栄養素ではありませんが、年齢や体質が原因で不足する場合もあるものです。
鉄分はビタミンCと一緒に摂取すると体内に吸収されやすいもので、ほうれん草はビタミンCを豊富に含んでいるので、鉄分を摂取するのにおすすめです。
ビタミンCは猫の免疫を強化し、若々しく保ちつづけ、ガンを抑制する働きのある食材のため、ほうれん草は猫にとって、健康維持に役立つ食材といえるでしょう。
ビタミンE
ビタミンEは脂溶性のビタミンで、体内の体質を酸化から守り、細胞の健康を維持する役割があります。また、このビタミンは抗酸化作用を持ち、体内の余分な活性酸素を除去して免疫力を支え、老化を防ぐ効果のある成分です。
ビタミンEが不足すると、神経機能が衰えたり、筋肉が低下するなどの問題が起こり得ます。ほうれん草にはビタミンEの一種であるα-トコフェロールが含まれており、これが健康維持につながります。このビタミン摂取は特に老化防止や、免疫力の維持に役立つため、日々の食事に取り入れることがおすすめです。
ビタミンB
ほうれん草はビタミンB群を豊富に含んでおり、これが多くの健康効果をもたらします。
ビタミンB群は、白内障の予防や皮膚、被毛、爪の健康を維持するのに役立つものです。
ほうれん草にはビタミンB1、B2、B6、ナイアシンが含まれており、これらのビタミンは水溶性で、不足すると口内炎や皮膚炎などの健康問題を引き起こす可能性があります。
βカロテン
ビタミンAは皮膚の健康を維持し、暗い場所での視力を支える重要な役割を果たします。また、喉や鼻の粘膜を強化し、体を病原体から守る効果もあります。
人間では、ビタミンAはβカロテンから体内で生成されることが多いです。このβカロテンはほうれん草に豊富に含まれており、抗酸化作用や免疫力の向上にもなります。
しかし、猫は体内でβカロテンをビタミンAに変換する能力がないため、βカロテンを含むほうれん草からビタミンAを直接摂取できません。そのため、猫はビタミンAを含む他の食品を与える必要があるという理由があります。
猫の食事に置いてビタミンAの源として適切な食品を選ぶことが必要です。
鉄分
ほうれん草に含まれる栄養素の中で、一番に鉄分が挙げられますが、その量は2.0mgほどです。
鉄分は猫の体で重要な役割を果たします。
赤血球をつくるのに必要な鉄分ですが、この栄養素はヘモグロビンの成分で、呼吸で取り込んだ酵素を体中の細胞に運ぶ手助けをします。鉄分が足りないと、猫は貧血を起こし、疲れやすくなったり、元気がなくなったりするので重要なものです。
また、鉄分は猫の免疫システムを強くし、病気に対する抵抗力を高めるのにも役立ちます。
そのため、猫の食事には適切な量の鉄分が含まれていることが大切です。
タンパク質と一緒に摂ると吸収力が高まる栄養素なので、食事のバランスをみてほうれん草を追加してみましょう。
猫に有害な成分
ほうれん草に含まれるたくさんの栄養素が猫の健康を支える一方、注意が必要な有害な成分も含まれています。それらの成分が猫に与えるリスクについて詳しく解説します。
シュウ酸
シュウ酸は、ほうれん草に含まれるジカルボン酸の一種で、植物がミネラルを体内に保持するのを助けるものです。
ほうれん草には0.7gほどのシュウ酸が含まれており、これがカルシウムなどのミネラルと結合する特性を持っています。
しかし、生のほうれん草を大量に摂取すると、体内の利用可能なカルシウムが減少し、血液の凝固機能に悪影響を及ぼすことがあります。
猫にとってシュウ酸は特に有害で、尿路結石症の原因となるシュウ酸カルシウム結石を形成するリスクがあるものです。シュウ酸は水に溶けやすいため、ほうれん草を茹でてから水にさらすことで、シュウ酸の量をある程度減らせます。
カルシウムは通常、腸内でシュウ酸と結合し体外へ排出されますが、カルシウムの摂取が不足するとこれが妨げられ、その結果、シュウ酸が尿中に多くなり、尿路結石症のリスクが高まります。
尿路結石症とは?
尿路結石症は、猫の腎臓や尿道など泌尿器系に小さな石が形成される病気です。特にほうれん草に含まれるシュウ酸から生じるシュウ酸カルシウム結石は、猫にとってリスクが高いとされています。
猫が尿路結石になると、トイレの回数が増え、排尿量が減少し、排尿時の痛みや血尿がみられることがあります。重症化すると尿毒症や膀胱炎が発生し、尿道が結石で詰まると尿がでなくなり、最悪の場合急性腎不全を引き起こす恐れのあるものです。
尿路結石症の治療は、カテーテルを使って結石を取り除く方法があります。
重症の場合は尿毒症や急性腎不全の治療も行い、再発を防ぐためには、食生活の見直しが必要です。特に結石ができやすいオス猫の場合、尿道を広げる手術が行われることもあります。
シュウ酸はアク抜きをすると減少する
ほうれん草に含まれるシュウ酸は、水に溶けやすい性質を持っています。そのため、ほうれん草を茹でることにより、シュウ酸の大部分の減少が可能です。このアク抜き処理により、ほうれん草のシュウ酸含有量を約半分から80%ほどに減少できます。
ただし、電子レンジでの加熱ではシュウ酸は減少しないため、アク抜きは必ずお湯を使用しましょう。この方法によって尿路結石のリスクを減少できるものの、猫にとってはシュウ酸のリスクは残るため、ほうれん草を与える際は慎重に行う必要があります。
猫は野菜を消化するのが苦手
肉食動物の猫は、本来野菜を消化するのが苦手です。なぜ苦手なのか、野菜を多く摂取するとどのようなことが起こるのかを見ていきましょう。
猫は本来は肉食動物
猫は本来肉食動物で、野菜などの植物を直接消化吸収するのは得意ではありません。
野生の猫は小動物を捕食し、その内臓を通じて間接的に植物由来の栄養素を摂取していました。しかし、現代のペットとしての猫は、必要な栄養に合わせて特別に設計されたキャットフードを食べることで、健康を維持しています。
そのため、栄養が豊富であるほうれん草を直接与えることは、猫にとって適していないことが多く、栄養があるとはいえ逆効果になることもあります。
猫と人間では必要な栄養が異なるため、猫には猫用の食事を与え、人間の食べ物を無理に与えることは避けるべきです。
食物繊維を多く摂ると消化不良になる
ほうれん草は猫にとって消化しにくい食材です。もし与える場合は、大きな塊ではなく小さく刻むことで、猫の胃腸への負担を減らせます。
若く健康な猫であれば大きな問題にはなりにくいですが、基本的にほうれん草を含む野菜は食物繊維が豊富で、猫はこれを上手に消化できません。そのため消化不良を起こす可能性があります。
特に胃腸が弱い猫や、消化器系の疾患を持っている猫には、ほうれん草を与える際には慎重になるべきといえそうです。
猫にほうれん草を与える際の注意点
猫にほうれん草を安全に与えるためには、いくつかの重要な注意点があります。この章ではアク抜きの方法や、与えてもいい適切な量など詳しく解説します。
これらのポイントを押さえて、猫の健康を守りながら栄養を摂取できるようにしましょう。
必ず水で茹でてアク抜きをする
猫にほうれん草を与える際には、まずは水で茹でてアク抜きをしましょう。これは尿路結石などの健康問題を引き起こす可能性がある有毒なシュウ酸を減らすことが目的です。
アク抜きをすることで、80%ほどのシュウ酸を減少させられます。
茹で時間の目安
シュウ酸は水に溶けやすいので、ほうれん草を茹でる際の時間は茎の部分を1分ほど、葉の部分を10秒ほどが目安です。短時間でサッと茹でることが重要で、茹ですぎてしまうとビタミンなどの猫の健康に役立つ栄養素まで失われてしまうので注意しましょう。
レンジ加熱はNG
電子レンジでの調理は簡単ですが、猫にほうれん草を与える際はレンジ加熱は避けるべきです。電子レンジを使用すると、均一に熱が行き渡らず、シュウ酸が十分に除去されないことがあります。また、加熱しすぎると栄養素が壊れやすいため、面倒でも茹でる方がおすすめです。
これらの手順で調理することで、猫がほうれん草を安全に食べられるようになり、健康を守れます。
与えていい量は少しだけ
猫にほうれん草を与える量は少しにしておきましょう。猫の主食は肉であり、野菜の消化に適した体をもっていません。特にほうれん草に含まれるシュウ酸は、過剰に摂取すると尿路結石のリスクを高めるため、少量で栄養補助的に与えることが推奨されています。
また、多く与えてしまうと消化不良や栄養の偏りを招く可能性があります。
どうしてもほうれん草を与えるならば、多くても葉っぱ1枚くらいにしておきましょう。
与える頻度は少なめにする
ほうれん草は栄養豊富な野菜ですが、猫にとっては消化しにくい食材です。特に、ほうれん草に含まれるシュウ酸は肝臓への負担となることがあります。さらに、ビタミンの過剰摂取が他の健康問題を引き起こす可能性もあるため、ほうれん草を猫に与える際は頻度を控えめにしておきましょう。
毎日与えるのではなく、たまの手作りご飯を作る時などに少量を加える程度にすることがおすすめです。
細かく刻んでから与える
大きいままでは食べにくく、歯や気管に詰まってしまう危険があります。
猫の消化がしやすくなるよう、ほうれん草を与える際には細かく刻んでから与えましょう。
栄養価の高いほうれん草の選び方
ほうれん草を猫に与える際には、栄養価の高さも重要なポイントとなります。最も栄養素が豊富で安全なほうれん草の見分け方を知り、猫の健康に役立てましょう。
この章では、猫にほうれん草を与える際に選ぶべきポイントについて詳しく解説します。
葉がみずみずしくツヤとハリがあるものを選ぶ
ほうれん草を選ぶ際には、葉の色は濃い緑色で鮮やかなものを選びましょう。葉の色は鮮度の指標となります。また、葉先がしっかりハリがありみずみずしいもの、葉肉も厚いものは風味がよく美味しいほうれん草です。
根本の状態もしっかりみてください。付け根がふっくらしていて、赤色が鮮やかなものが望ましいです。この部分は栄養が豊富なので綺麗に洗って無駄なく使いましょう。
太い茎や硬い葉のものは成長しすぎており、アクが強いため避けた方が良いです。ほうれん草は通常、複数の株が束になって販売されています。可能な限りそれぞれの葉や根の付け根を観察し、全体的に新鮮でシャキッとしたものを選ぶようにすると良いでしょう。
細すぎず真っ直ぐに伸びたものを選ぶ
ほうれん草は、茎の太さ、鮮度、季節の違いも味に関わってきます。
まずは茎の太さをよく観察しましょう。細すぎず、適度に太くてしっかりしているほうれん草を選ぶと良いです。適度な太さの茎は、葉もしっかりしており、旨みが豊富です。
しかし、極端に太いものは成長しすぎており、葉が硬く悪が強くなっているため避けましょう。
鮮度の低いほうれん草は、根元を持つと下に垂れ下がってきてしまいますが、鮮度の高いほうれん草は、根元を持っても葉先がしっかりピンとしています。また、葉が下の方から密着して生えているものも新鮮でおいしい証拠です。
ほうれん草は季節によって味や栄養価が異なります。特に冬場は味が濃く、栄養価も高いため、この時期のほうれん草はおすすめです。
まとめ
この記事では、猫にほうれん草を安全に与える方法と、その際の注意点を獣医師監修のもと、詳しく解説しました。
ほうれん草は栄養価が高い一方、シュウ酸による尿路結石のリスクなど、猫にとっては有害な成分も含まれています。アク抜きをして量や頻度を控えめにするというポイントを守ることで、猫の健康が守られます。
適切なほうれん草を選び、猫の健康を第一に考えた食事を与えましょう。