【獣医師監修】猫に緑茶をあげても大丈夫?ダメな理由と緑茶に含まれるカフェイン含有量を解説

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はじめに

猫と暮らしていて注意しなければいけないことのなかに、口にしてはいけない食べ物があることはご存じだと思います。

代表的なものではネギ類やブドウなどがありますが、こういったものは猫の立ち入れないところに保管しておけば、誤って口にすることは少ないでしょう。

でも、毎日生活するうえで、人間がなにげなく口にしているものが猫にとって有害なものか気になりませんか。

例えば普段からよく飲む緑茶などはどうでしょう。

もしかしたら猫を飼っているご家庭で、飼い主さんが目を離したすきに緑茶を飲んだりしていたことはありませんか。

毎日飲むことの多いものなので、いつ猫が飲んでしまうかわかりません。そこで気になるのが、「猫にとって緑茶はあげても大丈夫な飲み物なのか」という点です。

緑茶には猫にとって、健康に役立つ成分が豊富に含まれているため、もし猫が気に入ってくれたら飲ませてみたいと思うかもしれません。

しかし、結論からいいますと、少量ならば大丈夫なこともありますが、積極的に緑茶を飲ませることはおすすめしません。

ではなぜ、緑茶を猫に飲ませることはいけないのでしょうか。

今回は、猫に緑茶をおすすめしない理由について解説していきます。

猫に緑茶をあげても大丈夫?

猫に緑茶をあげることはおすすめしません。

人間にとって、緑茶は身体によいイメージがありますし、実際に抗菌作用や抗酸化作用などさまざまな健康に関する効果が認められているため、猫の健康にもよい影響を及ぼすと考えても不思議ではありません。

たしかに緑茶の中にはカテキンやL-テアニンなど猫の体によい成分が含まれています。しかしその反面、カフェインなど猫にとって悪影響を及ぼす成分が含まれており、場合によっては中毒症状などを引き起こしてしまうため、基本的には緑茶を与えることはNGです。

猫に良くない成分が含まれているため緑茶はNG

緑茶にはカフェインが含まれているため、お茶を飲んでしまうと摂取量によってはカフェイン中毒を引き起こしてしまいます。

カフェイン中毒は、重度のものになると、命を落としてしまう危険があります。緑茶のなかでも抹茶や玉露には多くのカフェインが含まれており、少量飲んだだけでも中毒になる可能性があるため、猫に与えることはもちろん、誤って飲んでしまわないように、猫が立ち入る場所で人間が飲むこともできるだけ避けたほうがよいかもしれません。

カフェインのほかにも緑茶にはシュウ酸が含まれています。シュウ酸は結石の原因とされており、人間でも過剰な摂取は尿路結石になることがあります。

尿路結石のできやすさは体質にもよりますが、それでもシュウ酸の摂りすぎには注意しなければなりません。

このように、猫の体に良くない成分が含まれているので緑茶を与えるのはやめましょう。

ごく少量飲んでしまっても大きな問題にはならない

もし、猫が飼い主さんが目を離してる隙に、緑茶を飲んでしまったらできるだけ目を離さずにしばらく猫の様子をみておきましょう。

ほとんどの場合が、少量でしたら問題になることはないですが、体質によっては少量のカフェインでも中毒症状を引き起こす子もいるためです。

もし、緑茶を飲んだあとに、辛そうなそぶりをみせたり、嘔吐や下痢などの症状が確認できたら動物病院を受診してください。

緑茶に含まれる猫の体に良い成分

緑茶の中に含まれる成分はすべてが猫にとって悪いものというわけではありません。人間同様に健康にも良い影響を与える成分が含まれているので、ご紹介していきます。

カテキン

緑茶に含まれる成分の中でもっともよく知られているものはカテキンではないでしょうか。

カテキンはポリフェノールの一種で、カテキンを含む一部の商品は「トクホ(特定保健用食品)」としても認められています。

さまざまな健康効果が期待できる

カテキンに期待できる健康効果には老化や病気の予防となる「抗酸化作用」、ウイルスが細胞につきにくい状態を作り出す「抗ウイルス作用」、がん細胞の増殖を抑える「抗ガン作用」などがあり、健康に重要な役割を果たしています。

また、動脈硬化を引き起こす原因となるLDL(悪玉)コレステロールを低下させ動脈硬化の予防に役立つほか、食前に摂取することで、血糖値の上昇を抑える役割もあります。

カテキンを摂取すると脂質代謝が高まり、体脂肪が減少したり、消費エネルギーが上昇したりと肥満の予防にも役立ちます。

ほかにも、虫歯・口臭予防や、ピロリ菌の増殖を抑え食中毒や胃潰瘍の予防などの殺菌・抗菌作用などがあり、多くの健康効果が期待できます。

リラックス効果や、自律神経を整え集中力アップなども期待されますが、これらはあくまで人間に関してもたらされる効果であり、猫にも同様の効果が必ずしも期待できるわけではありません。

カテキンの量は品種や収穫時期などで異なる

茶葉に含まれているカテキンの含有量は品種や、収穫時期、栽培条件などで異なります。一般的には緑茶よりも、紅茶などのアッサム種の方がカテキンの量は多くなります。

また、日照量が多いほどカテキンは合成されるので、春に摘むお茶よりも、夏に摘む二番茶や三番茶の方がカテキンの含有量は高くなります。

若いうちに摘んだ葉は含有量が高い傾向があり、葉を成熟させると、カテキン含有量は低くなります。

L-テアニン

緑茶にはカテキンだけでなく、L-テアニンという成分が含まれています。

L-テアニンはお茶を飲んだ時に感じる「ホッとする」といったようなリラックス効果に関係していることがわかっています。

旨味成分のアミノ酸

L-テアニンはアミノ酸の一種で、お茶の旨味や甘味に関係しています。

緑茶特有の成分で、ほかの植物には見られない珍しい成分です。

お茶の木の根で生成され、幹を通して葉に送られます。葉に送られたテアニンが、太陽光を浴びることでカテキンとなり渋い成分に変化します。

そのため、テアニンを多く含むような玉露などの高級茶葉の場合には、あえて葉に太陽の光を当てないようにして育て、テアニンを多く含んだまま収穫します。

リラックス効果が人への実験で確認されている

テアニンを摂取することでリラックスしたときに分泌するα波が増加します。α波の増加により不安の軽減などが期待でき、リラックス効果を得られることが実験により確認されています。

テアニンは自律神経を整え、ストレスなどにも好影響を与え、毎日の生活を楽にしてくれます。

また、睡眠の質を向上させる働きを持ち、眠りが浅く、夜中に何度も目が覚める人や、寝起きが不快な人も、よく眠れ、スッキリとした目覚めが期待できます。

ただし、これらの効果はあくまで人間に対する効果のため、すべての効果が猫に有効かどうかはわからない部分もあります。

緑茶に含まれる猫の体に悪い成分

猫にとって緑茶がNGとされているのは、体に悪い危険な成分が含まれているためです。注意すべきカフェインとシュウ酸について解説いたします。

カフェイン

人間にとってカフェインの適度な摂取は目覚めの作用や、自律神経を高め、集中力アップなどの効果が期待できますが、感受性の高い猫にとってカフェインは中毒になる恐れがあり摂取してはいけない成分です。

中枢神経を刺激して覚醒させる作用がある

カフェインは中枢神経を刺激することで興奮状態を作り出します。

人間でも興奮状態になり、目が覚めるような効果のあるカフェインを、体の小さい猫が摂取すれば健康状態に悪影響を及ぼしてしまいます。

カフェインの効果が猫に働くことでカフェイン中毒になってしまいます。

カフェイン中毒になると、過剰な興奮状態で、嘔吐や下痢、さらにひどくなるとけいれんを起こし大変危険な状態になります。

摂取量によっては命を落としてしまう危険もあるため、猫が緑茶を飲んでしまい、このような症状がみられたときは速やかに病院を受診してください。

猫はわずかな量でもカフェイン中毒になる

実際、命を落としてしまうほどのカフェイン量をお茶で摂取するとなると、かなりの量を飲まなければならず、少量のお茶を飲んでしまっても命を落とすようなことは考えにくいですが、体質によっては少量摂取しただけでも中毒症状が出る可能性があるので注意が必要です。

シュウ酸

シュウ酸は尿路結石の原因となる成分で、人間でも過剰摂取により結石を発症することがあります。

過剰摂取とあわせて結石の原因となるのは、飲水量が少ないことです。飲水量が少なければ体内にシュウ酸が長い期間滞留して結石となってしまいます。

猫はもともとあまり水を飲まない動物です。そのため、意図的にシュウ酸を摂取しなくても結石ができやすいため、シュウ酸を含んでいる緑茶を飲んでしまうとますますリスクが高まります。

過剰摂取によってシュウ酸カルシウム結石になる可能性

飲水量の少ない猫が、緑茶で水分補給をしてしまうと、シュウ酸の過剰摂取になってしまい、シュウ酸カルシウム結石になる可能性が高くなってしまいます。

シュウ酸カルシウム結石は体内で溶けることがないため、自然排出ができない場合には積極的な治療が必要となります。

オシッコが少量しか出ずに、頻繁にトイレへ行ったり、血尿が確認できたりしたらすぐに病院へ連れていってください。

緑茶に含まれるカフェイン含有量

緑茶にも、いろいろな種類があり、カフェインの含有量は異なります。

100mlあたりの含有量で比較してみましょう。

種類別含有量

100mlあたり

種類カフェイン量
玉露160mg
抹茶(粉末2g使用)64mg
煎茶20mg

以上のように、玉露や抹茶はカフェインの含有量がかなり多くなります。

玉露や抹茶はほかの茶葉よりも若い芽を摘んで作られます。お茶は若い芽の方が総じてカフェインの含有量が多くなるため、煎茶に比べて、この2種類のカフェインはかなり多くなっているのです。

ちなみにコーヒーのカフェイン含有量が60mgなので、コーヒーよりもカフェインが多くなります。

そのため、少量でも猫に飲ませてはいけません。

猫のカフェイン摂取による致死量

少量ならば問題になることは少ないですが、大量に摂取してしまえば中毒症状をおこし、最悪死に至るケースもあります。

あってはいけないことですが、猫のカフェイン摂取による致死量をおぼえておきましょう。

体重1kgあたり80~150mg程度

猫のカフェイン摂取の致死量は体重1kgあたり80〜150mgのカフェインで、仮に3kgの猫ですと、240mgl〜450mgということになります。

煎茶の100ml当たりのカフェイン含有量が20mgですから、相当な量のお茶を飲まない限り、致死量を超えることはありません。

それほど水を飲まない猫が、一気に大量のお茶を飲むことは考えにくいので、少量でしたら大事に至ることはないでしょう。

個体差や体調によって致死量は異なる

相当な量を飲まなければ致死量を超えることは考えにくいので、致死量は個体差やその日の体調により変動するものと考えておいたほうがよいでしょう。

体重1kgあたり80~150mgはあくまでデータ上であり、数値の開きをみてもわかるとおり、実際にはカフェインにまったく耐性のない猫がいないとも限らず、少量でも体調が急変することも十分に考えられます。

また、少量の摂取で死に至ることはなくても、カフェイン中毒により、体調を崩してしまうことはあります。健康だった猫がカフェイン中毒により体調を崩してしまうこともあるので、もし、緑茶を飲んでしまったことを確認したらしばらくの間は目を離さずに、猫の様子を観察しておいてください。

猫に緑茶をあえて与える必要はない

緑茶は人間にとって、メリットの多い飲み物で、カテキンなど健康に対して大きな効果が望めますが、猫に関してはメリットがないわけではありませんが、カフェインやシュウ酸などを摂取するデメリットの方が大きいため、あえて緑茶を与える必要はありません。

もともと猫はまとまった量の水を飲む習慣がありません。泌尿器に問題を抱えやすく、結石などが多くみられるのはそのためです。

そのため、飲水量を確保するために、あまり水を飲まない子には、食事をウェットフードに変えるなど工夫しながら水分補給をさせなければなりません。

しかし、その大切な水分補給に緑茶を与えてしまうと、カフェインやシュウ酸などを摂取することでかえって猫の健康を害してしまう可能性があります。

「水は飲まないけれど、緑茶はよく飲む」という猫は、実際のところあまりいないでしょうし、もしよく飲むとしたら、それは緑茶の味よりも水の温度かもしれません。

かつて砂漠で生きてきた猫にとって、水分補給は水をごくごく飲むのではなく、狩りで獲った獲物の血液などから採取していたため、冷たい水を飲む習慣はなかったと考えられています。

猫のために冷たい水を用意してあげても飲まないのに、ぬるい緑茶だと口にする子がいるとしたら、それは猫にとってちょうど飲みやすい温度だったのかもしれません。

緑茶で得られるメリットは他の食品で代用できる

とはいえ、緑茶には人間にも猫にもよい成分が入っていることは間違いありません。

なかでも、抗酸化効果は重要なメリットで、ポリフェノールの一種であるカテキンは活性酸素を除去する働きが期待できます。

猫も加齢に伴い抗酸化力が低下していくため、カテキンを積極的に摂取したいところです。

また、歯の汚れや歯垢除去、消臭にもカテキンは効果があるとされており、フードだけでなく猫砂やトイレシートにも使用されています。

現在では、緑茶を摂取しなくてもカテキンが摂取できるよう、緑茶成分のみを抽出したキャットフードやおやつがたくさん販売されています。

そのため、リスクを冒してまであえて緑茶を飲ませなくても、緑茶成分配合のフードを選べばカフェイン中毒などのデメリットの心配をすることなく代用が可能です。

まとめ

今回は、猫に緑茶をあげることに関して解説いたしました。

緑茶は人間や猫にとって大変役に立つ成分が含まれていますが、猫に緑茶を飲ませることはカフェイン中毒などのリスクが高いためおすすめできません。

しかし、最近では緑茶成分を配合したキャットフードやおやつなどが増えていることからも、カテキンなど緑茶に含まれている成分は積極的に摂取することで猫の健康によい影響を及ぼすことがおわかりいただけたと思います。

緑茶をそのままあげるのはおすすめしませんが、まだ緑茶成分を与えていないのであれば、これを機会にフードなどを与えてみてはいかがでしょうか。

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