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はじめに
愛猫の健康は、飼い主にとっては何よりも大切なことです。何かあればすぐに病院に連れて行くなどの対策を取る飼い主もいますが、猫が痔になるという事実はあまり知られていないことです。実は猫も人間と同様、痔に悩まされることがあります。
この記事では、猫が痔になる原因やその症状、そして家庭でできる予防法について詳しく解説します。猫の快適な生活を支えるために、今日から始められる対策を一緒に学びましょう。
猫の痔には2種類ある
猫の痔には2種類存在します。どちらも猫に大きな不快感を与え、時には重大な健康問題を引き起こしかねません。それぞれの特徴と見分け方について、詳しく解説していきます。
切れ痔
切れ痔、または裂肛とも呼ばれるこの状態は、肛門の皮膚や粘膜が避けてしまうことです。この症状は排便時に肛門に小さな裂傷ができるため、便に血が付着することが多く、時にはお尻にも血がつくことがあるため、発見しやすい特徴があります。
切れ痔は病気というよりは、擦り傷や切り傷に近い感覚で、特に便秘時に発生しやすいものです。排便の際の圧力で肛門が傷つき、痛みや出血を伴うことがあります。
猫の切れ痔は、適切な食事で便を柔らかくすることで予防や改善が期待できます。猫に水分をたくさん取らせて、硬い便を避けるようにしましょう。
しかし、猫はあまり水分を取らない動物です。
家の中で何ヶ所かに分けて水を置いておいたり、流れる水に興味を持つこともあるので、自動給水機を置くなど工夫をしてあげましょう。
痔ろう
猫の肛門には左右に肛門腺(肛門嚢)と呼ばれる袋状の構造があり、ここには分泌液が溜まっています。通常この分泌液は便と一緒に排出されるのですが、時に液がうまく排出されずにつまり、最近に感染して膿を溜め込むことがあります。これが痔ろうの前兆となる状態です。
痔ろうは肛門周辺が赤く晴れて炎症を起こすことから始まり、肛門腺の感染が進行すると、肛門の内側と外側を繋ぐトンネルが形成され、膿が肛門ではない外側の皮膚から漏れ出ることがあります。さらに悪化すると、穴から便が出ることもあります。
この状態を肛門嚢炎ともいい、肛門腺の炎症によるものです。穴が開いて膿が漏れ出す場合、迅速な治療が必要となります。
猫が痔になる原因は2つ
それではなぜ猫が痔になることがあるのでしょうか。猫が痔になる主な原因は便秘と下痢です。全く違う症状ですが、これらがどのように痔を引き起こすのかみていきましょう。
便秘でなる場合
便秘は猫が痔になる一般的な原因の一つですが、それはいくつかの要因が関わってきます。
水分不足
食べ物は口から入り、食道を通って胃に達し、そこで消化された後、小腸で栄養素が吸収されます。小腸で吸収されなかった残りの食べものカスは大腸へ移動し、ここで水分が吸収され便ができ、最終的には体外へ排出されます。
猫はあまり水分をとりません。しかし、水分が不足すると便が硬くなり便秘を引き起こすことがあります。
便秘は大腸に便が詰まることや、硬い便が排泄時に痛みを引き起こすことが原因で起こります。適切な水分摂取は便秘を防ぐために重要です。
運動不足
運動不足も猫の便秘を引き起こす一つの原因です。猫が十分に運動していない場合、消化活動が鈍くなり、腸の動きも遅くなることがあります。
近年、完全室内飼いの猫が増えてきました。そのため、家の中だけでは運動量が低下して便秘の原因となってしまいます。
普段からおもちゃで遊んだり、キャットタワーや高い家具をうまく配置して、猫が自然に運動できる環境を整えてあげることが大切です。
繊維質の食べ過ぎ
繊維質は消化器系の健康には欠かせない要素ですが、猫は本来肉食であり、繊維質を多く摂取すると消化しにくいことがあります。そのため、猫が過剰に繊維質を摂取すると、便秘を引き起こすことがあります。
食事にほんの少し加える程度で良さそうです。
加齢
猫が歳をとると、運動量そのものが減少するほか、体のさまざまな機能が衰えることもあるため、筋力が低下して便秘しやすくなることもあります。
そのため高齢の猫は若い猫に比べて、便秘になりやすいです。便秘が長期間続くと、硬く乾燥した便が肛門を刺激し、痔の原因となります。高齢の猫には、消化が良く、適切な水分を含む食事を与え、定期的に軽い運動を促すことが、便秘や痔を予防するための助けとなります。
下痢でなる場合
便秘だけでなく、下痢もまた猫の痔の一つの原因です。下痢の場合、便が肛門嚢に入って細菌が繁殖します。
下痢になる原因を詳しくみていきましょう。
ストレス
猫のストレスは、多くの健康問題を引き起こす原因の一つです。
猫は生活環境の変化にとても敏感で、引越しや家族構成の変化、新しいペットの追加などが原因でストレスを感じ、下痢を起こすことがあります。
このような変化によるストレスは、猫が新しい環境に慣れることで改善しますが、下痢が長引く場合はストレス以外の原因が考えられるため、獣医師に相談することが大切です。
猫も人間と同じように、ストレスが健康に影響を与えるため、適切な対応を行いましょう。
食べ過ぎ
猫が下痢になる一般的な原因の一つは、消化吸収不良です。
これは、食べ物が消化管でうまく消化や吸収されないときに起こります。猫が食べすぎた場合やフードの種類を急に変更したとき、人間の食べ物を食べた場合などです。
食事の量を適切に管理し、猫が一度に食べる量を小分けにすることは、下痢とそれによる痔を防ぐために効果的な方法です。
薬の副作用
猫の下痢はさまざまな原因によって引き起こされますが、その中でも一部の処方薬や抗生物質が副作用として下痢を引き起こすことがあります。
これらの薬は、猫の腸内環境を変化させ、下痢を誘発するのです。
さらに、感染症、内臓疾患、アレルギーなどの健康問題も下痢の原因となることがあります。
食べてはいけないものを食べた
猫が洗剤や殺虫剤などの化学物質を誤って飲み込むことで、中毒性の下痢を起こすことがあります。
また、これらの物質に毒性がなくても、消化されずに腸を経過する際に刺激を与え、下痢を引き起こしている場合もあります。
このような問題を防ぐためには、猫が食べてはいけないものは手の届かない場所に保存し、猫が誤って食べないように注意することが重要です。
もし猫が異物を飲み込んだり、薬の副作用で下痢がみられたりした場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
気をつけたほうがいい痔は?
猫の痔は見逃されがちなものでありながら、深刻な健康問題を引き起こすことがあります。
特に注意が必要な痔の症状を知っておくことで、早期発見と適切な対処が可能になります。
痔の症状が長く続いている
猫の痔の症状が長く続いている場合、特に注意が必要です。症状が長引くことは、より深刻な状態になっている可能性があります。
基本的に痔の症状は、生活環境の改善で防げます。
しかし、長期にわたる痔は、肛門周辺の持続的な痛みや出血、赤み、腫れが含まれます。これらの症状が見られる場合、猫が深刻な感染症や他の消化器系の疾患に苦しんでいる可能性が考えられるため、早急に獣医師の診察を受けることが大切です。
適切な診断と治療を早めに受け、猫の苦痛を軽減してあげましょう。
熱をもったり化膿している
猫の痔で熱を持ったり化膿している状態は、特に注意しなければいけません。これらの症状は、感染が進行していることが考えられ、肛門嚢が破裂している可能性もあります。
肛門嚢が破裂した場合、避けた皮膚を縫合する治療が必要です。このような症状をみつけたら、速やかに獣医師の診察を受けましょう。
猫が痔にならないためにできることは?
猫が痔に苦しむことなく快適に生活するためには、飼い主が普段から予防策をとることが重要となってきます。この章では、猫の痔を予防するための具体的な方法をご紹介します。愛猫の健康を守るためにポイントを押さえて日々の生活で活かしていきましょう。
便秘を予防する方法
猫の便秘は痔の大きな原因の一つで、便秘を防ぐことは、痔を予防する上で効果的です。日常のケアで簡単に実践できる便秘予防の方法を具体的にみていきましょう。
水分を多く摂らせる
猫の便秘を予防するためには、十分な水分摂取が大切です。
猫は水をあまり多く飲まない動物なので、水分摂取を促す工夫が必要となります。
新鮮な水を常に飲めるようにして、水の入れ物を家の数箇所に置くなどの工夫をしましょう。
また、自動給水機を使うと、流れる水に興味をもち、より多くの水を飲むようになる猫もいます。
そのほか、普段の食事にウェットフードを取り入れることもおすすめです。
ウェットフードはドライフードに比べて水分量が多いため、食事を通じて猫に無理なく水分を摂取させられます。ただし、おやつは主食ではないため、栄養が偏らないようにしてください。
適切な水分摂取は、便の柔らかさを保ち、便秘を防ぐのに役立ち、痔のリスクを減らせるのです。
フードを変更する
猫の便秘予防には、フード選びも大切なポイントです。便秘がちな猫には、消化がよく、食物繊維が適度に摂れる食事を選びましょう。食物繊維は、腸の動きを活発にしてくれます。
フードの変更は、獣医師と相談の上で行うと良いでしょう。獣医師は猫の健康状態やニーズによって、適切な食事を選択します。
また、フードの急な変更は、猫の消化器系に負担をかけてしまうため、徐々に行うことが大切です。適切なフードへの移行は、猫の便秘を予防し、痔のリスクを減らす助けとなります。
日頃からよく運動させる
猫の便秘予防には日頃の運動が重要です。適度な運動は猫の腸の活動を刺激し、便通を良くする効果があります。
運動を促すためには、猫が興味を持ちやすいおもちゃを用意し、日々の遊びを通じて身体を動かす機会を増やすことが効果的です。飼い主は猫が喜ぶおもちゃで定期的に遊んであげ、運動が自然と行えるようにしてあげましょう。
キャットタワーのそばに背の高い家具などを上手く配置して、猫が上下運動を自然に行えるように環境を整えてあげることも大切です。
定期的に運動させることで健康になり、体重管理にも役立ちます。これにより、便秘を防ぎやすくなり、痔のリスクも減らせます。
お腹をやさしくマッサージする
猫の便秘予防と対策には、日常のお手入れを丁寧に行うことが効果的です。
猫が自分でグルーミングをする際に、飲み込む毛の量を減らすため、定期的なブラッシングを行いましょう。
また、触れられることが好きな猫には、お腹のマッサージも有効です。マッサージは猫の腸の動きを刺激し、便秘の予防に役立ちます。マッサージを始める際は、猫が快適に感じる額や顎などから始めて、徐々にお腹へと範囲を広げていきましょう。
お腹をマッサージする際は、軽く「の」の字を描くように優しく撫でます。マッサージに慣れていない猫には、徐々に慣れさせることが重要です。
トイレの環境を整える
猫の便秘予防には、トイレの環境も適切に整えなくてはいけません。
猫は清潔で快適なトイレ環境を好みます。トイレの砂は定期的に交換し、排泄物は毎日取り除くことで、猫がトイレを使うことを嫌がるのを防ぎます。
また、家の中にトイレの場所を一つだけに限定せず、複数設置することも有効です。特に複数猫を飼っている場合は、猫が他の猫との競争を避けてリラックスしてトイレを使えるようにするため、それぞれの猫用にトイレを設けることをおすすめします。
また、留守番をさせる時間が多い場合は猫用の自動トイレもおすすめです。自動で排泄物を綺麗にしてくれます。
トイレ環境を整えることで、猫がストレスなく定期的に排便を行えるようになり、便秘のリスクを減らせます。
下痢を予防する方法
猫の健康管理において下痢の予防は非常に重要です。下痢を防ぐことで、痔のリスクを減らせます。日常の食事管理をしっかりしていきましょう。
刺激の少ないフードに変える
猫の下痢予防には、刺激の少ないフードへの切り替えが有効です。
猫それぞれに合った最適なキャットフードを見つけることは重要ですが、全ての猫に完璧に合うフードは存在しません。
食べ物の好みや消化のしやすさは異なることが多いです。キャットフードはさまざまな原材料から作られており、猫によっては穀類、高タンパク質、または脂質が多い食品が消化に適していない場合があります。
フード選びは、猫の体質や好みをよく観察しながら、さまざまな種類をためしてみましょう。
ただし、食事の変更は徐々に行い、猫の体調を見ながら調節してあげてください。適切なフードへの切り替えは、猫の全体的な健康維持と、下痢の発生を抑える助けとなります。
食事量を減らして腸を休ませる
食事は猫の消化管の健康に直接影響します。下痢が発生した場合、消化がしやすいようにフードを柔らかくして与えるか、無理のない範囲で量を減らして腸を休ませることが重要です。
ただし、子猫の場合は食事量を減らすと健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、消化に優しいフードへの切り替えも効果的ですが、急なフードの変更は猫が食べなくなるリスクや下痢が悪化する可能性があるため、徐々に切り替えることが大切です。
どちらにせよ、獣医師の指導のもとで行う方が良いでしょう。下痢がひどいからと飼い主の判断で食事量を減らすのではなく、まずは獣医師に相談しましょう。
まとめ
猫が痔になる主な原因は下痢と便秘です。便秘は水分不足、運動不足、繊維質の食べ過ぎや加齢が引き起こすことが多くあります。
反対に下痢は、ストレスや食べ過ぎ、薬の副作用、不適切な物の摂取が原因です。
これらを防ぐためには、適切な水分の摂取やバランスの良い食事、定期的な運動などの日々の管理が必要となります。
猫の痔は見過ごされがちですが、早めに気付き適切なケアをすることで、愛猫の健康を守れます。