【獣医師監修】猫に栗を与えても大丈夫?栗の調理方と与える際の注意点

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はじめに

近年はペットフードが多様化するに伴って、飼い主さんが自宅で調理した食材を猫に与えるケースが増え、食材の1つである栗は栄養価の高い食材として注目されています。

しかしペットに栗を与えることが安全であるかどうかについては、十分な情報が提供されていないのが現状で、「猫に栗を与えても大丈夫?」といった不安や疑問を感じる人も多いでしょう。

この記事では、猫に栗を与えることの安全性や注意点を中心に、栄養成分や健康効果についても触れながら有益な情報を紹介し、猫に栗を与える際の注意点や適切な調理方法について詳しくまとめました。

猫に栗を与えても大丈夫?

猫に栗を与えても大丈夫なのか1

日常的に人間が食べている食材のなかには、猫にとって有害なものも少なくないため、猫に与える食材については慎重に選ぶ必要があります。

栗は秋の味覚として古くから親しまれてきた果実で、調理法によってしっとりとした食感とほっくりとした食感を味わえるところが特徴です。

人間にとっては馴染み深い食材で、茹で栗、蒸し栗、焼き栗、素焼き、栗ご飯、栗きんとん、和菓子、スイーツなど、さまざまな料理に活用されています。

猫にとっても適切な量であれば栗を食材として与えても問題ありませんが、与え方や量を間違えると、健康被害を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

ここでは、栗が猫にとって安全かどうかを検討し、具体的な栄養素や注意点について詳しく解説します。

猫に危険な成分は含まれていない

一般的な見解から判断すると、栗には、猫にとって有害な成分は含まれていないことが明らかになっています。

たとえばタマネギやニンニクなどは猫にとって毒性があり、摂取すると健康に重大な影響を及ぼす可能性がありますが、栗にはそのような有害成分は含まれていません。

ただし栗を大量に摂取すると、消化不良を引き起こす可能性があります。

猫は消化器官が人間とは異なり、特定の成分を消化する能力が限られているため、栗を与える際には少量にとどめることが重要です。

また栗の皮や渋皮は硬く、これらの硬い部分をそのまま与えると、消化不良や腸閉塞を引き起こすリスクがあるため、必ず取り除いてから与えるようにしましょう。

また栗の皮や渋皮には、タンニンというポリフェノールの一種が多く含まれており、強力な抗酸化作用を持つ一方で消化をさらに難しくする要因となります。

タンニンは少量であれば問題ありませんが、大量に摂取すると嘔吐や下痢などの消化不良の症状を引き起こす可能性があるため、与えすぎないよう適量を守ることが重要です。

なお塩、砂糖、醤油、バターなどの調味料は、猫の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、猫に栗を与えるときは調味料を使用せず、湯がいたり蒸したりする調理方法を推奨します。

栗に含まれる主な栄養素

栗は栄養価が高く、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンC、カリウム、食物繊維、葉酸、亜鉛などの有益な成分が豊富に含まれています。

ビタミンB1(チアミン)は、糖質の代謝を促進してエネルギー生成を促進する役割を担い、猫の活力を維持することに役立ちます。

ビタミンB6(ピリドキシン)は、たんぱく質の代謝を促進して神経伝達物質の生成に関与し、猫の神経系の健康をサポートします。

ビタミンCは水溶性ビタミンの1つで、細胞の結合組織にあるコラーゲンの合成に不可欠な栄養素です。

ビタミンCには、血管、粘膜、骨、軟骨、筋肉などを丈夫にしたり、傷を修復したりする働きがあり、酸化ストレスに由来する疾患の予防効果が期待されています。

カリウムはミネラルの一種で、体内の水分量の調整やナトリウム濃度を調整して血圧を正常に保つ働きがあり、高血圧や心臓病の予防に役立ちます。

栗には不溶性と水溶性の両方の食物繊維が含まれており、それぞれが異なる健康効果を持っているところが特徴です。

不溶性食物繊維は水に溶けない性質を持ち、腸の動きを活発にして便通を促進します。

水溶性食物繊維は水に溶ける性質を持ち、コレステロールの低下、血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。

葉酸はDNA合成や細胞の分化に関わる水溶性ビタミンで、神経組織の発達や貧血予防などの効果が期待できる栄養素です。

亜鉛はミネラルの一種で、免疫機能の強化や皮膚と被毛の健康維持に役立ちます。

これらの栄養素は猫の健康維持にさまざまな形で寄与していますが、栄養価が高い一方で過剰摂取による健康リスクも指摘されているため、適量を守ることが重要です。

栗を与えるときは皮や渋皮は取り除き、調味料を使用せずに調理して、最初は少量ずつ様子を見ながら与えて、猫の体調をよく観察することが重要です。

もし消化不良やアレルギー反応などの異変が現れた場合には、すぐに与えることを中止し、すみやかに獣医師に相談してください。

ビタミンB1

糖質をエネルギーに変換する際の補酵素(酵素の働きを助ける非タンパク質の低分子有機化合物)として働き、エネルギー代謝を促進する役割を担う水溶性ビタミンの1つです。

人間にとっては「エネルギー代謝の促進」「脳機能の維持」「心機能の維持」「消化機能の維持」「免疫機能の維持」「疲労物質の除去」「美肌効果」などの効能効果があります。

猫にとってもビタミンB1はさまざまなメリットをもたらしますが、与え方や量を間違えるとデメリットも発生する可能性があるため、与え方には注意が必要です。

メリットとしては、「エネルギー代謝の促進」「神経伝達物質の生成」「消化吸収の促進」「免疫力の向上」「皮膚や被毛の健康維持」などの作用が期待できるでしょう。

ビタミンB1は、糖質の代謝を促進しエネルギー産生を助ける役割を果たす効果があるので、十分に摂取することで猫のエネルギー代謝が促進され、元気に活動できるようになります。

また神経伝達物質であるアセチルコリンやドーパミンの合成に関与していることが明らかになっており、脳や神経系の機能維持に不可欠です。

ビタミンB1を十分に摂取することで、猫の神経伝達機能が正常に維持され、ストレスを軽減したり学習能力を向上させたりする効果が期待できるでしょう。

また消化酵素の働きを助ける役割があるため、十分に摂取することで猫の消化吸収機能が促進され、栄養素を効率的に吸収できるようになります。

さらに免疫細胞の活性化や抗体の産生を促進する効果があるため、風邪や感染症などの病気に対する抵抗力を高めることにも期待できるでしょう。

ビタミンB1には皮膚や被毛の細胞の代謝を促進する効果もあるため、猫の皮膚や被毛を健康に保ち、抜け毛やフケを予防する効果が期待できます。

デメリットとしては、「消化不良」「アレルギー反応」「与えすぎによる肥満」などに注意が必要です。

猫によっては栗を消化するのが難しい場合があり、特に子猫や老猫あるいは消化器官の弱い猫は、消化不良を起こしやすい傾向があります。

猫によっては栗に対してアレルギー反応を起こす場合があり、アレルギー反応の症状には、「嘔吐」「下痢」「発疹」などがあります。

また栗には炭水化物が豊富に含まれているため、与えすぎると猫が肥満になる可能性があり、糖尿病や関節炎などの健康問題を引き起こすリスクがあるため、注意が必要です。

ビタミンC

ビタミンCは、「美容のビタミン」や「風邪予防のビタミン」などと呼ばれている水溶性ビタミンの一種です。

人間にとっては「コラーゲン生成の促進」「抗酸化作用」「免疫機能の強化」「鉄分の吸収促進」「ストレスへの耐性向上」「美肌効果」などの効能効果があります。

猫は体内でビタミンCを自ら合成することができるため、積極的に食事から摂取する必要はありません。

適切な量を摂取することで健康維持のためのメリットは期待できますが、与え方や量を間違えるとデメリットも発生する可能性があります。

ビタミンCを過剰に摂取すると下痢や嘔吐などの症状が現れることがあるため、猫の健康状態をよく観察し、必要に応じて獣医師に相談して適切な量を摂取するようにしましょう。

メリットとしては、「抗酸化作用」「免疫力向上」「コラーゲンの生成促進」「ストレス軽減」などの作用が期待できるでしょう。

ビタミンCには強力な抗酸化作用があり、体内で発生する活性酸素を中和する働きをする栄養素です。

ビタミンCを十分に摂取することで猫の細胞を活性酸素によるダメージから守ることができ、老化や病気の予防に役立ちます。

また免疫細胞の活性化や抗体の産生を促進する効果があり、免疫系をサポートする作用により風邪や感染症などの病気に対する抵抗力を高める効果に期待できるでしょう。

さらにコラーゲンの生成を促進する効果があり、十分に摂取することで猫の皮膚や被毛を健康に維持する効果、関節の柔軟性を維持する効果、傷の治癒を促進する効果などに期待できます。

なおビタミンCには、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制する効果があることが研究で示唆されているようです。

ビタミンCを十分に摂取することで、猫のストレスを軽減することに役立ち、心身の健康を維持することにも期待ができるでしょう。

デメリットとしては、「過剰摂取によるリスク」「必須栄養素ではないことによる過剰補給」などに注意が必要です。

ビタミンCは水溶性ビタミンなので水に溶けやすく、体内に蓄積されにくいという特徴があります。

一般的には過剰摂取のリスクは低いとされていますが、過剰に摂取すると消化器官に負担をかけ、下痢や胃腸の不調を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

また健康な猫は体内でビタミンCを合成できるため、通常の食事で十分にビタミンCを摂取している場合、補助的なビタミンC補給は必要ありません。

過剰な補給は栄養素が無駄になるだけでなく、消化器官に負担をかける可能性があるため、栗を与えるときは適量を守り過剰に与えないようにしましょう。

カリウム

細胞の浸透圧を維持したり、神経信号の伝達を促進したり、筋肉の収縮を促したりするなど、さまざまな機能に関与しているミネラルの一種です。

人間にとっては「血圧の調整」「筋肉の収縮「心臓の機能維持」「神経系の機能維持」「骨の健康維持「むくみの予防・改善」などの効能効果があります。

猫にとってもカリウムはさまざまなメリットをもたらしますが、与え方や量を間違えるとデメリットも発生する可能性があるため、与え方には注意が必要です。

メリットとしては、「腎臓機能のサポート」「血圧の調整」「心臓病の予防」「筋肉の機能維持」「細胞の健康維持」などの作用が期待できるでしょう。

カリウムには体液バランスを調整する作用があるため、適度に摂取することで余分なナトリウムの排泄を促進し、高ナトリウム血症の予防や改善に役立つなど、腎臓機能のサポートとして期待できます。

また体内の余分なナトリウムを排出することで血圧を下げる効果があり、さらに血管を拡張させる作用も持っているため、血圧の調整に重要な役割を果たします。

猫の高血圧は心臓肥大や心不全などの原因となるため、血圧を調整する作用があるカリウムを適度に摂取することで、心臓病の予防にも効果が期待できるでしょう。

カリウムとナトリウムが細胞に出入りすることで電気信号が発生し、これが神経を通じて筋肉に伝達されることで筋肉の収縮と弛緩が行われるため、適度なカリウム摂取は筋肉の機能維持に役立ちます。

カリウムを適度に摂取することで、筋肉の正常な機能を維持し筋力低下を防ぐ効果に期待できるため、運動量の多い猫は筋肉の痙攣(けいれん)や脱力感などを引き起こすカリウム不足に役立つでしょう。

またカリウムは細胞内の水分量を調整する作用があり、細胞膜の機能を維持することにも役立ちます。

細胞膜は細胞内外の物質の出入りを制御する役割を担っており、その機能が低下すると、細胞の健康に悪影響を及ぼします。

デメリットとしては、「過剰摂取による高カリウム血症」に注意が必要です。

カリウムを過剰に摂取すると、高カリウム血症を引き起こす可能性があり、重篤な場合には「心停止」に至ることがあります。

また腎臓機能が低下している猫はカリウムがうまく排出されないため、高カリウム血症を発症するリスクが高いです。

高カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が正常範囲を超えて高くなる状態のことを指し、「筋力低下」「しびれ感」「弛緩性麻痺」「不整脈」「心電図異常」などの症状が見られます。

タンニン

植物の樹皮・果皮・種子・葉・実などに多く含まれている成分で、植物が害虫や動物から身を守るための防御機構として機能する化合物であり、強い渋みや苦みを持つポリフェノールの一種です。

人間にとっては「抗酸化作用」「抗菌作用」「抗炎症作用」「血糖値の調整」「血圧降下作用」「抗肥満作用」「抗アレルギー作用」「抗ガン作用」「収斂作用(しゅうれんさよう:タンパク質を変性させることにより組織や血管を縮める作用)」などの効能効果があります。

猫にとってもタンニンはさまざまなメリットをもたらす可能性を秘めた成分ですが、与え方や量を間違えるとデメリットも発生する可能性があるため、与え方には注意が必要です。

メリットとしては、「抗酸化作用」「抗菌作用」「皮膚・被毛の健康維持」などの作用が期待できるかもしれません。

タンニンは強い抗酸化作用を持ち、活性酸素による細胞の酸化を防ぐ効果があるため、猫にとってもアンチエイジングや健康維持に効果的である可能性があります。

また細菌やウイルスなどの病原微生物の繁殖を抑制する抗菌作用を持っているため、猫の口臭予防や虫歯予防に効果がある可能性もあるでしょう。

タンニンは抗炎症作用や抗菌作用もあるので、皮膚炎やフケなどの皮膚・被毛のトラブルを改善する効果にも期待できる可能性があります。

デメリットとしては、「消化器官への影響」「鉄分の吸収阻害」「腎臓への負担」「肝臓に負担」などに注意が必要です。

収斂作用(しゅうれんさよう)を持つため、過剰に摂取すると消化器官に負担をかける可能性があり、具体的には便秘や消化不良を引き起こすことがあります。

タンニンは鉄と結合しやすいことが報告されており、鉄分の吸収を阻害することで鉄分不足による貧血を引き起こすリスクが考えられるため、過剰に摂取しないよう注意が必要です。

またタンニンの過剰摂取は腎臓や肝臓に負担をかける可能性があるので、タンニンの摂取後は猫の状態をよく観察し、異常が見られた場合にはすみやかに獣医師に相談することを推奨します。

食物繊維

栗には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が含まれており、不溶性食物繊維の主成分はセルロース、水溶性食物繊維の主成分はペクチンです。

不溶性食物繊維には「腸内環境の改善」「便通の改善」「満腹感の促進」「血糖値の安定」などの効果があり、水溶性食物繊維には、「腸内環境の改善」「満腹感の促進」「血糖値の安定」「コレステロールの低下」などの効果があります。

猫にとっての食物繊維も人間と同様に、腸内環境を整えるなどのさまざまなメリットをもたらしますが、与え方や量を間違えるとデメリットも発生する可能性があるため、与え方には注意が必要です。

メリットとしては、「腸内環境の改善」「便通の促進」「便のニオイの改善」「毛玉の排出」などの作用が期待できるでしょう

食物繊維は猫の腸内環境を整える効果があります。

水溶性食物繊維は水分を吸収して膨らむ性質のため、便を膨張することで腸の動きを活発にして便通を促進する作用があり、便秘の予防や改善にも効果的です。

不溶性食物繊維は、腸内で善玉菌を増やして悪玉菌の増殖を抑えることで便通を促進する作用があり、便秘や下痢の改善に役立ちます。

食物繊維を摂取することで腸内環境が整うため、正常な便が出ることで便のニオイの改善にも期待できるでしょう。

また食物繊維は消化されずに大腸まで届くため、腸内で溜まった毛玉を絡め取って排出する効果があり、毛玉が原因の消化不良などを防ぐことにも効果的です。

デメリットとしては、「消化不良」「便秘」「ミネラルの吸収阻害」などに注意が必要です。

猫は元々肉食動物であることから食物繊維を分解する能力が低いため、食物繊維を過剰に摂取すると消化不良を引き起こす可能性があり、下痢や嘔吐などの症状が現れることがあります。

食物繊維は腸内環境を整える効果がありますが、過剰に摂取した場合は逆に便が固くなりすぎることで排便が困難になることがあるでしょう。

また食物繊維を多く含む食品に多く含まれるフィチン酸は、カルシウム・マグネシウム・鉄などのミネラルと結合し、キレートと呼ばれる複合体を作ります。

キレートは体内に吸収されにくいため、ミネラル不足を引き起こす可能性があるかもしれません。

少量の栗を摂取しただけであれば、ミネラルの吸収に大きな影響を与えることは考えにくいです。

しかし継続的かつ過剰に摂取した場合には、ミネラルの慢性的な不足につながる可能性があります。

猫に栗を与える際の調理方法

猫に栗を与えても大丈夫なのか2

猫の食事として栗を与えるときは、小さじ半分程度を週に1回程度を目安とし、過剰に与えないよう注意しましょう。

また栗を選定するときは、野菜コーナーもしくは果物コーナーなどに置いてある生栗を選ぶようにしてください。

加工された栗(甘栗、栗まんじゅう、栗の焼菓子、マロンクリーム)などは、甘味料や調味料などの添加物が含まれているため、猫には適切ではありません。

なお栗の皮には2種類ありますが、外側の硬い皮「鬼皮(おにかわ)」および内側の薄い皮「渋皮(しぶかわ)」どちらも必ず取り除きましょう。

調味料が加えられた食事は猫の消化器に負担をかける可能性があるため、栗を調理するときは調味料の使用を避けてください。

塩分や醤油などの調味料は猫にとって有害であり、消化不良やその他の健康問題を引き起こすリスクを生じることがあります。

また砂糖などの甘味料は、猫にとって過剰なカロリー摂取となり、肥満や糖尿病のリスクを高めてしまいかねません。

一般的には「茹で栗」「蒸し栗」などの調理方法が推奨されており、柔らかくなるまでしっかり加熱することが大切です。

皮は取り除く

猫に栗を与えるときは、皮を取り除いてから与えることが推奨されています。

栗の外側の固い皮「鬼皮」や内側の薄い皮「渋皮」は、猫の消化器官に負担をかける可能性があります。

また栗の皮は消化されにくいため、消化不良や腸閉塞のリスクを避けるためにも必ず取り除いてから与えましょう。

なお猫が誤って皮を飲み込んでしまうと、喉や消化管に詰まる危険性があるため、安全性の確保のためにも皮は必ず取り除いてください。

柔らかくなるまでしっかり加熱する

加熱を十分に行うことで、食中毒菌を殺菌することができます。

サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌などの食中毒菌は熱に弱いため、75℃以上で1分以上または65℃で5分間以上加熱してから食べるようにしましょう。

また十分に加熱して柔らかくすることで、猫が食べやすい食感にすることができ、猫の消化器官への負担が軽減されて消化不良のリスクも低減できます。

猫に栗を与えるときは、調理方法の一例として以下の方法を参考にしてください。

茹で栗の調理方法は、まず栗をよく洗い、水を張ったボウルに入れて冷蔵庫で半日から一晩置いてください。

鍋底に栗が重ならないよう鍋の半分くらいの高さまで水をたっぷり入れ、中火で沸騰させたら弱火にして30分から40分ほど茹でましょう。

栗が柔らかくなったら火を止めて、そのまま余熱でじっくり火を通し、粗熱が取れたら水気を切って鬼皮と渋皮を取り除いてください。

最後に、細かく刻んだり食べやすい大きさに切ったり、あるいは潰してペースト状にしたものを、小さじ半分ほど与えましょう。

蒸し栗の料理方法は、まず栗をよく洗い、水を張ったボウルに入れて冷蔵庫で半日から一晩置いてください。

破裂しないよう鬼皮を取り除いてから、蒸し器の底に栗が重ならないよう栗が完全に水に浸るくらいの量の水を入れましょう。

ふたをして40分から50分ほど蒸したら火を止めて、そのまま余熱でじっくり火を通し、粗熱が取れたら水気を切って渋皮を取り除いてください。

最後に、細かく刻んだり食べやすい大きさに切ったり、あるいは潰してペースト状にしたものを、小さじ半分ほど与えましょう。

猫に栗を与えるときの注意点は?

猫に栗を与えても大丈夫なのか3

栗を猫の食事として与える際は、以下の点に注意する必要があります。

  • 猫に与えて良い適量
  • 過剰摂取した場合のリスク
  • アレルギー反応に注意
  • 食物繊維が多いため下痢の時は避ける

次の項目で、それぞれに関して注意事項などを交えながら、配慮するべきポイントについて簡潔にまとめました。

猫に与えて良い適量

猫の食事として栗を与えるときは、小さじ半分程度を週に1回程度を目安とし、過剰に与えないよう注意しましょう。

子猫には、消化不良や誤飲、アレルギー反応などのリスクがあるため、栗を与えることはおすすめできません。

子猫の場合

子猫の消化器官では栗のような硬い食物を消化することが難しいと考えられるため、栗を与えることはおすすめできません。

なお一般的なフードの適量やおやつの適量については、以下の計算式を参考にしてください。

子猫に必要なカロリーは、生後3週目から8週目の場合に「260kcal × 体重」、14週目の場合に「200kcal×体重 」20週目の場合に「150kcal×体重 」40週目の場合に「100kcal×体重 」という計算式で求められます。

子猫におやつを与える場合は、1日に必要なエネルギーの10%から20%以内が適正量の目安です。

1日に必要なエネルギー量は、猫の体重や年齢、活動レベルによって異なりますが、一般的には「安静時のエネルギー要求量 = 体重 × 30 + 70」という計算式が適用されます。

たとえば体重2kgの子猫の場合、安静時のエネルギー要求量は130kcalとなり、おやつの適量は、この安静時のエネルギー要求量の10%から20%以内なので13kcalから26kcalとなります。

ただし個体差によって適切な量は異なるため、あくまで目安として参考する程度に留め、猫の様子を見ながら与える量を調整しましょう。

成猫の場合

成猫に栗を与えるときは、小さじ半分程度を週に1回程度を目安とし、過剰に与えないよう注意しましょう。

なお一般的なフードの適量やおやつの適量については、以下の計算式を参考にしてください。

成猫に必要なカロリーは、1歳以上の猫は基本的に「80kcal × 体重」、運動量の多い猫の場合は「90kcal × 体重」、運動量の少ない猫は「70kcal × 体重」、妊娠している猫は「100kcal × 体重」、授乳中の猫は「250kcal × 体重」、7才以上高齢猫は「60kcal × 体重」という計算式で求められます。

成猫におやつを与える場合は、1日に必要なエネルギーの20%以内が適正量の目安です。

1日に必要なエネルギー量は、猫の体重や年齢、活動レベルによって異なりますが、一般的には「安静時のエネルギー要求量 = 体重 × 30 + 70」という計算式が適用されます。

たとえば体重4kgの成猫の場合、安静時のエネルギー要求量は190kcalとなり、おやつの適量は、この安静時のエネルギー要求量の20%なので38kcalとなります。

ただし個体差によって適切な量は異なるため、あくまで目安として参考する程度に留め、猫の様子を見ながら与える量を調整しましょう。

過剰摂取した場合のリスク

猫に栗を与える場合、過剰摂取による健康リスクや食物繊維による消化不良など、いくつかの点に注意する必要があります。

  • 尿路結石
  • 肥満
  • 下痢

次の項目で、それぞれに関して注意事項などを交えながら、配慮するべきポイントについて簡潔にまとめました。

尿路結石

栗に含まれているマグネシウムは、尿路結石の形成を抑制する役割がありますが、過剰に摂取すると尿路結石のリスクが高まる可能性もあります。

一見すると矛盾するように見える現象は、以下の理由で説明が可能です。

マグネシウムはシュウ酸と結合してシュウ酸マグネシウムを形成することで、シュウ酸がカルシウムと結合してシュウ酸カルシウム結石を形成するのを防ぎます。

またマグネシウムは尿のpHを調整することで尿をアルカリ性に保つことに役立ち、アルカリ性の尿はシュウ酸カルシウム結石の形成を抑制する効果があります。

シュウ酸カルシウム結石は尿路結石のなかで最も一般的なタイプで、シュウ酸カルシウム結石の形成を抑制することは尿路結石の形成を抑制することにつながるのです。

マグネシウムを過剰に摂取すると、尿中のマグネシウム濃度が高くなり、カルシウム、シュウ酸、尿酸などの結石形成物質と結合して結晶化しやすくなることによって尿中の成分が過飽和状態になると、結石が形成されやすくなります。

マグネシウムの過剰摂取は、カルシウムやリンなどミネラルのバランスを崩す可能性があり、結石形成のリスクが高まることがあります。

つまりマグネシウムの摂取量が適正であれば尿路結石の形成を抑制する効果がありますが、過剰に摂取すると尿中の成分が過飽和状態になり、結石のリスクが高まる可能性があるのです。

また栗の水分含有量は少ないため、過剰に摂取すると水分不足となることが考えられ、脱水症状になりやすくなることから尿路結石を引き起こすリスクも高くなります。

肥満

栗は糖質と脂質が多く、100gあたり約150kcalから190kcalとカロリーが高い食品です。

猫が少量食べる程度であれば問題ありませんが、過剰に与えたり頻繁に与えたりすると必要以上にカロリーを摂取してしまい、肥満の原因となります。

猫の植物性たんぱく質や糖質の消化能力が低いため、栗を過剰に摂取すると消化不良を起こしやすくなり、さらに栄養不足に陥る可能性もあるため注意が必要です。

また栗に含まれるでんぷんが猫の血糖値を急上昇させる可能性があり、それが肥満につながるリスクがあります。

でんぷんは植物が光合成によって作り出す糖質の一種で、エネルギー源として貯蔵され、栗には主に、アミロースとアミロペクチンという2種類のでんぷんが含まれています。

猫の膵臓(すいぞう)から分泌される膵液(すいえき)には、アミラーゼという消化酵素が含まれており、でんぷんを糖に分解する働きがあります。

猫が栗を食べた場合、アミロペクチンが消化されてブドウ糖となることで血糖値が急上昇し、猫はインスリンの分泌量が少ないため血糖値がなかなか下がらないことで高血糖状態が長引く可能性があります。

高血糖状態が続くと、余分なブドウ糖が脂肪に変換されて蓄積することで肥満の原因となり、インスリンの分泌量がさらに減少して血糖値が慢性的に高くなると糖尿病になります。

下痢

猫の消化器官は動物性たんぱく質や脂肪の消化に特化しており、植物性たんぱく質や糖質の消化能力は低いため、栗を過剰に摂取すると消化不良を起こしやすくなります。

また栗の水分含有量は少ないため、過剰に摂取したことで水分不足の状態になると、胃腸の動きが鈍くなり消化不良を起こしやすいです。

栗に含まれるタンパク質やその他の成分が体質的に合わない場合があり、猫によってはアレルギーや過敏症により消化不良を引き起こすこともあります。

消化不良になると、「下痢」「軟便」「便秘」「腹痛」「排便回数が減る」「排便が困難になる」「食べたものを吐き出す」「食欲が減退する」などの症状が現れます。

アレルギー反応に注意

猫のアレルギーは単一の要因ではなく、遺伝的要因、免疫システムの状態、腸内環境、ストレスなど、いろいろな要素が複雑に絡み合わさって引き起こされます。

食品アレルギーは、猫にとって本来無害なはずのあらゆる食品がアレルゲンとなり、栗も例外ではありません。

猫の免疫システムは、体内に侵入する有害な物質から体を守るために働きます。

しかしアレルギー体質の猫は、本来無害な物質(アレルゲン)に対しても過剰に反応し、炎症などの症状を引き起こしてしまうことがあるのです。

栗に含まれるタンパク質やその他の成分が猫にとってのアレルゲンとなり、免疫システムが過剰に反応することでアレルギー症状を引き起こす可能性があります。

なおアレルギー体質は遺伝的に受け継がれる可能性があり、親猫のどちらか一方または両方がアレルギー体質の場合は、アレルギーを発症するリスクが高いです。

栗アレルギーの症状は、一般的には「皮膚症状(痒み、発疹、脱毛、赤み)」「消化不良の症状(下痢、嘔吐、食欲不振)」「呼吸器症状(くしゃみ、鼻水、呼吸困難)」「眼症状(結膜炎、涙目)」「その他(耳の痒み、顔の腫れ)などが見られます。

上記のような症状が現れたときは栗アレルギーが疑われるため、すぐに動物病院を受診して必要な検査や適切な治療を受けてください。

食物繊維が多いため下痢の時は避ける

猫が下痢をしている場合は、腸内環境がすでに乱れている可能性があります。

そのような状態で食物繊維を大量に摂取すると、腸の負担が大きくなり、下痢を悪化させてしまうリスクが高いです。

下痢をしていない猫に与える場合も、猫の様子をよく観察しながら少量ずつ与え、猫の様子に異変がないか注意しましょう。

もし消化不良やアレルギー反応などの異変が現れた場合には、すぐに与えることを中止し、すみやかに獣医師に相談してください。

砂糖や保存料などが含まれる加工品は与えない

猫に栗を与えても大丈夫なのか4

猫に栗を与える場合、砂糖や保存料などが含まれる加工品は避けたほうがよいでしょう。

その理由は、猫にとって有害であり、肥満やその他の病気につながる可能性が高いからです。

糖質が含まれる加工品は、「肥満」「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「脂肪肝」「肌荒れ」など、多くの健康問題にもつながる可能性があります。

本来、栗は炭水化物とカロリーが高いため、砂糖が加えられるとさらにカロリーが高くなり、肥満になるリスクが上がるでしょう。

肥満は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、運動機能の低下や関節への負担増加などの問題も引き起こします。

また糖質の過剰摂取は血糖値の上昇を招き、糖尿病の発症リスクが上がることが考えられるでしょう。

糖尿病は慢性的な高血糖状態が続く病気で、血管や神経に深刻なダメージを与える可能性があります。

保存料が含まれる加工品には、「発癌性」「アレルギー反応」「腸内環境への悪影響」「腸内細菌のバランスを崩す」「下痢や便秘などの消化器障害」などの症状を引き起こすなどの健康被害が懸念されます。

一部の保存料には、依存性があることが指摘されており、たとえば人工甘味料は天然の甘味料よりも甘みが強いです。

人工甘味料の味に慣れてしまうと自然の甘みでは物足りなく感じられて、より多くの砂糖を必要とするようになり、依存症が生じる可能性があるでしょう。

人工甘味料を頻繁に摂取すると味覚が鈍くなり、脳内の味覚処理に関わる神経伝達物質に影響を与えることで、味覚の混乱を引き起こす可能性も示唆されています。

保存料は、栗本来の栄養素を破壊する可能性が指摘されており、たとえばビタミンCは保存料の影響を受けやすいため加熱や保存によって分解されやすくなることで、栄養面の低下が危ぶまれます。

糖質や保存料などが含まれる加工品には、健康への悪影響や栄養面の低下などのデメリットがあるため、甘栗や栗まんじゅうなどの加工品は避けて、生栗を加熱したものを与えるようにしてください。

まとめ

この記事では、猫に栗を与えることの安全性や栄養素について紹介し、栗の調理方法と与える際の注意点や過剰摂取した場合のリスクなどについて解説しました。

栗は適切に調理し適量を守ることで猫にとっても安全な食材となりえますが、与えすぎると肥満や消化不良の原因となるため、アレルギー反応や消化不良などのリスクも十分に考慮し慎重に対応することが重要です。

猫の食事として栗を取り入れる場合には、事前に獣医師に相談して適した量や与え方などのアドバイスを受けて、猫の様子をよく観察しながら少量ずつ与え、もし消化不良などの異変が現れた場合には、すみやかに獣医師に相談してください。

当記事の情報を通して栗に関する基礎知識について理解を深め、猫に適切な食生活を提供するための指針として、ぜひお役立てください。

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