【獣医師監修】猫にレーズンは危険!致死量やレーズンを食べてしまった時の対処法を解説

ペットスタートマガジンでは「ペットとの暮らしを始めるすべての人に」をコンセプトに、ペットにまつわる様々なお役立ち情報を、これからペットとの暮らしをスタートする方へ向けて提供しています。ペットにまつわる全ての情報をペットスタートマガジンで御覧頂けるように日々コンテンツを発信していきます。

はじめに

猫を飼っているご家庭で、お部屋に食べ物を出したままにしていませんか。食べ物を出していると、猫がいつのまにか食べてしまうことも考えられます。

もしその食べ物が猫にとって、とても有害な食べ物だったら大変危険です。

今回ご紹介するレーズンもその1つといわれています。

猫には食べてはいけない食べ物がたくさんありますが、レーズンも猫が決して口にしてはいけない食品で、少量でも命に関わることがわかっています。

今回は、猫にとって危険な食品であるレーズンについて解説いたしますので、猫と暮らしている飼い主さんはぜひ最後までご覧いただき、いざというときのために正しい知識を身に付けておきましょう。

猫にとってレーズンは危険!

レーズン自体はとても小さく、1つくらい猫が食べても問題ないと考えがちですが、レーズンは猫にとって中毒性のある食べ物で、大変危険な食べ物です。

人間に比べて体の小さい猫にとって、レーズン1粒を口にしてしまったことで取り返しのつかないことにもなりかねません。

また、レーズン自体が小さいがゆえに、たとえ注意していても、床に落としてしまうなどして、飼い主さんの知らないうちに猫がレーズンを食べて中毒になってしまうかもしれません。

​​レーズンは成分が濃縮されているため少量でも危険

ドライフルーツは基本的に乾燥させることで成分が濃縮され、人間が食べた際もしっかりとした濃い味を感じると思います。

次章でも説明しますが、ぶどうも猫にとって中毒の危険性があり、口にしてはいけない食べ物です。

つまり、レーズンもほかのドライフルーツと同様にぶどうを乾燥させているため、成分が濃縮されており、少量でも中毒になる危険性があると考えられます。

レーズンには砂糖やお酒も含まれていることがある

レーズン自体の危険性からは少し離れますが、レーズンはただぶどうを乾燥させた無添加のものだけでなく、砂糖やお酒を使用している商品もあります。

猫を飼っている方ならご存じかもしれませんが、砂糖やお酒も猫にとって安全な食べ物とはいえません。

食べる量にもよりますが、もし中毒症状が運よく出なくても、砂糖やお酒を原因としてほかの病気などにかかってしまうおそれがあります。

胃腸の調子を崩したり、嘔吐を繰り返したり、糖尿病の猫ならば、さらに症状を悪化させてしまうかもしれません。

そのうえ、レーズンによって中毒症状が出てしまうと、さまざまな症状が重複してしまい治療に大きな支障がでてしまうかもしれません。

パンやお菓子によく使われるため誤食に注意

レーズンはどちらかといえば、単体で食べる機会よりもパンやお菓子に含まれているものを口にする機会が多いのではないでしょうか。

つまり「うちにはレーズンは置いていないので大丈夫」と思っていても、普段何気なく食べているパンやお菓子をテーブルなどに放置してしまい、飼い主さんが目を離しているすきに猫が誤って食べてしまうことも考えられます。

レーズンに関わらず、普段人間が口にしている食べ物が、猫にとって危険な食べ物であるリスクを考えると、猫の行動範囲に食べ物を出しておくことはおすすめできません。

ぶどうも食べると危険

レーズンの危険性を解説するうえで、猫にとってぶどうが危険な食べ物であることをご紹介しないわけにはいきません。

ぶどうは本来ぶどう糖やポリフェノールを多く含んでおり、人間にとっては疲労回復、老化防止などに役立つ人気の高い果物です。

ところが、猫にとってぶどうは中毒をおこす大変危険な食べ物です。

ぶどうも食べると中毒を起こす

ぶどうを食べると中毒症状をおこし、場合によっては重篤な症状を引き起こすことがわかっています。

また、ぶどうのどの部分を食べてはいけないのか、はっきりとわかっていないため実だけでなく、皮、種、果汁のどれも食べてはいけません。

中毒になるかどうかは個体差もあり、どの程度食べると危険なのかもわかっていませんが、少量でも重篤な中毒症状を起こした報告例もあるので、少しの量も与えないようにしてください。

どの成分が中毒の原因かはまだわかっていない

ぶどうが猫にとって危険な食べ物であることはわかっていますが、ぶどうのどの成分が中毒の原因になっているのかわかっていません。

ぶどうに含まれているなんらかの成分(農薬、カビ、ポリフェノールの一種であるタンニンなど)を猫が口にしてしまうことで、さまざまな症状を引き起こすのではないかと考えられています。

そのため、ぶどうそのもの以外にも、今回ご紹介しているレーズンやジュースなどぶどうのエキスが含まれている加工品も含めて、誤って食べてしまわないよう注意が必要です。

猫がぶどうを食べると急性腎不全を発症

猫がぶどうを食べたことにより発症する症状として、急性腎不全があります。急性腎不全になると数時間から数日のあいだに急激に腎機能が低下し、進行が早いため治療が遅れると命の危険にさらされることもあります。

ぶどうを食べてしまい、嘔吐や下痢など体調不良になっている様子が確認できたら、急性腎不全になる前に一刻も早く動物病院へ連れていき適切な治療を受けてください。

猫に危険なレーズンの量は?

猫は一体どれくらいのレーズンを食べると危険な状態になってしまうのでしょうか。

体重1kgあたり20gを超えると危険といわれている

猫がレーズンをどれくらいの量食べてしまうと中毒になるのかはっきりと明らかになってはいませんが、体重1kgに対して20gを超えると危険といわれています。

レーズン1粒が約0.6〜0.7gなので、30粒前後になります。

しかしこの数値は、過去にこの量のレーズンを食べてしまった猫が、重篤な状態になったという例をもとにされており、厳密なものではないため、あくまで参考としてください。

致死量には個体差があるため注意

猫が体重1kgあたり20gのレーズンを食べてしまうと危険と説明しましたが、あくまで参考のデータであり、危険な量には個体差があります。

20g以上食べても体調を崩さないこともあるでしょうし、ほんの少し食べただけでも致死量になってしまうこともあります。

また、猫の体調や年齢、持病の有無などで危険な量は変わるので注意しましょう。

レーズンは1粒でも食べさせてはいけない

明確に致死量がわかっていないレーズンなので、あらゆるリスクを回避するためにも1粒でも食べさせることは避けてください。

猫にとってレーズンやぶどうは、ご紹介したとおり猫にとって大変危険な食べ物であるため、おやつなどで食べさせたり、人間が食べているものを、欲しがるからといって少量でも絶対に食べさせたりすることはしないでください。

また、人間がレーズンを含んだ食品を食べた際に、いつのまにか落としてしまったり、目を話しているすきに盗み食いをしてしまったりしないようにきちんと管理しましょう。

意外と見落としがちなのが、食べたあとのごみなどからレーズンを口にしてしまうことです。

もしレーズンを含んだものを食べたときは、袋に入っているものでしたら、口をしっかりと閉める、容器ならしっかりと洗って猫が舐めることができない場所に捨てる、など対策を徹底することで猫の誤食を防ぐことができます。

猫がレーズンを食べてしまったら?

レーズンの危険性に関してご紹介しましたが、もし猫がレーズンを食べてしまったらどのような状態になってしまうのか詳しく解説します。

急性腎不全になると短時間で症状が悪化する

レーズンを食べてしまった猫にとって、もっとも心配される症状は急性腎不全です。急性腎不全とはどのようなものか説明すると、なんらかの原因で、腎臓の機能が急激に低下して正常に働かなくなってしまうものです。

特徴として症状の進行スピードがあります。一般的に数時間から数日で腎機能が低下するものを急性腎不全と呼んでいます。

レーズンを食べてしまい、中毒症状が出る場合には、急激な異変がみられることがあります。このケースでは急性腎不全を発症している可能性が高くなります。

そのまま放置して様子をみることは大変危険なので、病院を受診するようにしてください。

急性腎不全が疑われる症状は?

腎臓は老廃物の排泄などさまざまな役割を果たしています。この機能が急激に働かなくなり、危険な状態になってしまうことを急性腎不全と呼びます。

もし、猫がレーズンを誤って食べてしまい急性心不全が疑われるときには、以下のような症状がみられることがあるので、このサインを見逃さないようにしてください。

嘔吐・下痢

レーズンを食べたことにより体内に異変が起きると、嘔吐や下痢になり元気がなくなります。特に急性腎不全の特徴として、これまで元気だったのに急に体調を崩し、嘔吐や下痢を繰り返すケースです。

ただし、嘔吐や下痢に関しては、急性腎不全以外でもみられることがあります。何も食べた様子がなければ、他の病気の可能性もあるので、吐いたものを確認するなどしてください。

もし、レーズンが混ざっていたり、なにかそれらしきものが確認できればレーズンを誤食してしまっていることが考えられます。

それでもわからなければ、ほかの症状を見て判断するか、念のため動物病院を受診しておきましょう。

もっともよくないのが、「とりあえず様子をみてから判断しよう」と考えて、そのまま放置してしまうことです。

急性腎不全は、急速に症状が悪化するため、いかに早く治療できるのかが回復のためのポイントになるので、医師の判断なしに経過観察をするのは危険です。

食欲不振

嘔吐や下痢と同時に、元気がなくなり、食べ物を口にしなくなることがあります。特に急性腎不全の場合には、それまで問題なく食事をしていた猫の様子が変わり、ぐったりとして、何も食べなくなるなど急激に体調が悪くなり、そのまま意識障害になることもあるので

注意してください。

食欲不振で、元気がなくぐったりとして嘔吐や下痢を繰り返すようならば、さらに別の症状が出てくる可能性が高いため、この時点で病院を受診しておきましょう。

尿が出ない

急性腎不全は、腎臓機能に急激に異常が生じる病気であり、緊急的な症状が尿量減少、あるいはまったく出ないといったケースです。

さらに進行すると血液中の老廃物や、不要な水分、体内の塩分などを尿として排出できなくなることにより尿毒症になってしまいます。

むくみが出る

腎機能が悪化して、老廃物の排出が困難になると、体にむくみが出ることがあります。これは体内に余分な水分や老廃物が溜まってしまっているためで、一刻も早く排出する必要があります。

しかし、すでに急性腎不全になってしまっている場合には、自力での排出は困難であり、さらに悪化する可能性が高くなります。

ほかにも、ご紹介したような、嘔吐や下痢、食欲不振や尿が少ない、もしくは出ないなどの症状が突然みられるようになり、急速に様子がおかしくなるようならば、急性腎不全の可能性が高いと考えたほうがよいでしょう。

少しでも食べてしまったら急いで動物病院へ

もし、レーズンを食べてしまった場合に、まずするべきことは動物病院へ連れていくことです。

急性腎不全は、いかに早い段階で治療を開始できるかが大変重要です。治療が遅れると回復できないまま亡くなる場合や、回復しても慢性腎臓病になってしまうこともあります。

猫の様子がおかしい場合には、まずは動物病院に連絡をして、医師の指示を仰いだうえで、一刻も早く病院へ連れていき適切な治療を受けることが大切です。

食べて1時間以内ならまだ吸収されていないことが多い

猫がレーズンを食べても、直後に症状が出ることはありませんが、もし周りにレーズンを食べた痕跡があれば、すぐに治療を始めるために病院へ連れていきましょう。

食べてから、治療を始めるまでの時間が早ければ早いほど、回復の可能性が高くなります。

レーズンを食べてしまって1時間以内ならば、消化吸収されずにそのまま残っていることもあるので、とにかく早く治療を開始することが重要です。

早期に処置を受けることで助かる可能性がある

レーズンを食べてしまい中毒になってしまった場合は、命に関わるほどの重篤な症状が出ることがあります。

そのため、治療開始までのスピードが回復へのカギになってきます。

レーズンを食べてしまったことがすぐに確認できるようならば、たとえ無症状でも病院へ連れていき早期に適切な処置を受けましょう。

病院での問診の際に、医師にわかりやすく説明ができるよう、吐いたものや、猫の様子などを写真や動画におさめておくと、仮に飼い主さんがパニックになってしまっても状況を伝えることができるので、できるだけ記録しておいてください。

病院では、レーズンの摘出と急性腎不全の検査をおこなうことになります。

催吐(さいと)処置という胃の中に残っているものを吐き出させる処置をおこなうことが多く、薬剤を静脈内に投与して嘔吐を促します。

また、血液検査も実施して、さまざまな数値を確認することで、腎機能の低下が起きているか調べます。

その後、尿検査やエコー、レントゲンなど必要に応じて検査を実施します。

催吐処置をおこなっても吐き出す様子がなければ、活性炭を飲ませることがあります。活性炭には、レーズンの成分の吸収を阻害する働きがあります。

この時点で急性腎不全の診断が確定した場合には、体内機能維持のための水分や電解質の投与のための点滴を開始します。

輸液療法とも呼ばれ、この治療により腎臓への血流が改善すれば腎機能の回復が望めるようになります。

また、尿が出ないなどの症状が出ている場合には、利尿剤の投与をおこない排出を促します。

急性腎不全の状態が重篤な場合には、透析治療をおこなうケースもあります。

症状が回復するまでのあいだは、入院治療になることが多くなりますが、重症化すると、このような治療をしても回復が困難になるため早期に治療を開始する必要があります。

まとめ

今回はレーズンを猫が食べてしまう危険性について解説いたしました。

レーズンやぶどうは猫にとって大変危険なもので、決して口にしてはいけないものだとおわかりいただけたかと思います。

レーズンをおやつ代わりにあげることは、猫を飼っている方ならば少ないと思いますが、人間が食べていたレーズンを猫が誤って口にしてしまうことは十分に考えられます。

たとえ1粒でも中毒症状が出る可能性も考えられるので、「少しくらいなら大丈夫」と過信せずに、猫の届かないところに保管するようにしましょう。

また、食べたあとのごみなども猫が誤って舐めてしまうことのないように廃棄することを心がけてください。

レーズン以外にも、人間が食べるもののなかには、猫にとって命に関わるものがたくさんあります。一緒に暮らしているとつい忘れてしまいがちですが、愛猫を苦しめないためにも注意しながら生活することが大切です。

RANKING
人気記事ランキング