【獣医師監修】猫にエビを与えたらダメな理由3つ!危険な摂取量と対処法も紹介

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はじめに

猫がエビを欲しがったり、フードの中にエビが入っていたりすることは少なくありません。しかし、エビの摂取には注意が必要です。この記事では獣医師監修のもと、エビを猫に与える際のリスクと、適切な摂取量、食べた場合の対処法について詳しく解説します。

エビはアレルギーの危険や、大切な栄養が不足してしまうことになりかねない食べ物です。それらをどのようにすればリスクを軽減できるのかもお伝えしていきます。

飼い主は愛猫が危険に晒されないようしっかり理解しておきましょう。

猫が生エビを食べたらダメな理由

猫が生エビを食べると大きなリスクがあります。この章では、生エビが猫にどのような影響を及ぼすのか、猫の健康を守るために知っておくべきその症状と成分の危険性について解説します。

ビタミンB1欠乏症になる可能性がある

ビタミンB1は猫が必要とする栄養素です。

猫が生エビを食べるとビタミンB1欠乏症に陥るリスクが高まります。エビに含まれるチアミナーゼという酵素が、ビタミンB1を分解してしまうことから起こるビタミンB1欠乏症は、結果として猫にどのような症状がおこるのでしょうか。

生エビに含まれる危険な成分「チアミン」って?

チアミンとは、ビタミンB1のことで、猫を含む多くの動物の健康に不可欠な栄養素です。ビタミンB1は糖質の代謝を助けて、エネルギーに変えるためのサポートをしたり、神経系や筋肉、心臓の機能を正常に保ったりと重要な役割をしています。

肉食でタンパク質を必要とする猫にとって、ビタミンB1は大切な栄養素ですが、水溶性ビタミンと呼ばれるビタミンB1は身体の中に長く蓄積されません。

そのため、不足しやすい栄養素で、食事から積極的に摂取することが大切となってきます。

もし不足すると身体の栄養バランスが崩れ体調を崩してしまったり、不足した状態が続くと神経症状などを起こしたりすることもあります。

エビにはチアミナーゼという酵素が含まれており、この酵素をたくさん摂取してしまった場合、チアミンを分解し、その結果、生エビを食べることにより猫はビタミンB1を失ってしまうのです。不足してしまうとさまざまな健康問題が発生するおそれがあります。

少しだけ口にしたからと行って、すぐに死に至ることはないかもしれません。しかし、猫にとってエビを食べることはおすすめできないことです。

ビタミンB₁欠乏症になるとどうなる?

ビタミンB1(チアミン)は、猫の健康維持にとても重要です。このビタミンは、糖質の代謝を助け、エネルギーを作る過程で大切な役割をはたします。また、神経系の正常な機能を維持するためにも必要です。そのため、ビタミンB1が不足するとビタミンB1欠乏症を引き起こし、猫に健康問題が生じます。

ビタミンB1欠乏症の初期の症状は、食欲不振や体重の減少です。さらに、神経系に関連する症状として、ふらつきや痙攣が発生することがあります。これらの症状は、猫の日常生活に影響を与えます。

症状が進行すると、深刻な問題を引き起こす可能性があります。最悪の場合意識不明や心不全を引き起こすこともあるほどです。

チアミナーゼを含む生エビを猫に与える際は、これらのリスクを十分に理解し、適切な処理と量の管理に注意する必要があります。

生エビの与え方には慎重にし、猫の健康を守るための適切な対策を行いましょう。

嘔吐下痢などの消化器症状が出ることがある

肉食動物の猫の体にとって、生エビの消化は得意ではありません。そのため、消化器系のトラブルが発生する可能性があります。

消化器症状は嘔吐や下痢などで、エビの殻や尻尾の固い部分は消化が悪いためこのような症状が起こります。

チアミナーゼは加熱することで不活化できるため、猫にエビを与えるときには、生エビを与えるのではなく、適切に調理されたエビを与えることが推奨されています。

嘔吐や下痢は、猫が苦しむだけでなく、脱水症状を引き起こすリスクもあるため、これらの症状がみられた場合は、早めに獣医師の診察を受けることが重要です。

アレルギーを引き起こす可能性がある

アレルギーとは、体が特定の物質(アレルゲン)に過敏に反応してしまう状態です。

猫の場合も、甲殻類アレルギーやアナフィラキシーのような反応が起きることがあります。

アレルギー反応の症状は、皮膚の痒みや発疹、腫れ、嘔吐などです。

これらの症状は、猫にとってとても不快なものであり、特にアナフィラキシーの場合はときに呼吸困難を引き起こすなど危険な状態に至ることもあります。

これまでにエビ以外の甲殻類を食べて、アレルギー反応が出ている場合、生エビを与える前にも注意が必要です。

どの理由もリスクが高まるだけで、生エビを絶対に食べてはいけないというわけではありませんが、リスクを犯してまで与えるものではありません。

最初から生エビは与えないようにしておくことが懸命です。

猫が食べると危険な生エビの摂取量はどれくらい?

猫に生エビを与える際、どれくらいの量なら安全なのでしょうか。生エビは猫にとって完全に禁止なものではありませんが、摂取量には注意が必要です。

生エビを少し舐めてしまったら?

猫が生エビを少し舐めただけなら、あまり心配はありません。多くの猫は、生エビを舐めてしまっても特に健康上の問題がないことが一般的です。しかし、猫が生エビを少しでも舐めた後に、異常な行動や嘔吐や下痢の症状、皮膚の痒みなどのアレルギー反応が出た場合には注意が必要です。

このような症状が見られる場合には、猫がエビに対して敏感に反応をしている可能性があります。アレルギーを発症する摂取量は個体差があるため、様子がおかしいようなら早めに獣医師の指示を仰ぎましょう。

一度でも反応が出てしまった場合には、今後はエビを含む食材を猫に与える時には慎重にし、基本的には与えないようにしてください。

猫に危険な生エビの摂取量の目安

猫にとって生エビをどれくらいの量食べると危険かははっきりわかっていません。しかし、安全に摂取する量の目安はほんの少しです。

生エビは、ビタミンB1を破壊する酵素(チアミナーゼ)が含まれており、ビタミンB1欠乏症を引き起こす原因となるものです。また、アレルギー反応や消化器系の問題を起こすリスクもあります。

そのため、安全を優先して考えると猫にとってリスクを伴う食材のため、できる限り避け、他の安全な食材を食べさせる方が良いです。

どうしてもエビを与えたい場合は、加熱して安全性を確保し少量与えるようにして、生エビを定期的に与えるということは避けましょう。

生エビを食べてしまった時の対処法

猫が生エビを食べてしまった時の対処法は、緊急性を判断する上で飼い主にとってとても重要なものです。正確な対応は、猫の健康状態を守る上で、場合によって命を救うこともあります。

この章では、生エビを摂取した猫があらわす可能性がある、さまざまな症状や、それぞれの症状があらわれた場合どのように対処するべきか、具体的に解説していきます。

どのような症状が緊急を要し、速やかに獣医師の診察が必要か、そしてどの症状であれば自宅での観察が可能かを明確に分けることで、飼い主が迅速で適切な判断が下せるようになります。

すぐに病院へ行ったほうが良い症状

猫が生エビを食べた後にもしも普段と違った症状があらわれた場合は、すぐに獣医師の診察を受けることが大切です。

繰り返し嘔吐したり、水分を多く含む下痢の症状があったりする場合は、脱水症状を引き起こす可能性があるので注意しましょう。

また、呼吸が早くなったり苦しそうにしたりしている場合には、アレルギー反応が原因の可能性もあります。そのほかに、ふらつきや異常な興奮、反応が鈍いなど、いつもとは違う行動がみられる場合にも同様の注意が必要です。

少しでもおかしいと感じたら、猫を落ち着かせつつ安全に病院に連れて行きましょう。

病院では、いつどのくらいの量のエビを食べてしまったのか、獣医師に細かく説明できるようにしておきましょう。

動物病院ではどんな治療をする?

生エビに対して何らかの反応が出てしまい、動物病院を受診した際、まずは健康状態のチェックをして、症状を確認することから始まります。

その後、猫がエビの柔らかいところを食べてしまって、まだ胃の中にあるような場合は、吐き出させる処置をします。ビタミンB1欠乏症を発症している場合には、さまざまな検査をし、治療を行います。

動物病院での治療は、猫が生エビを食べたことにより、どのような症状が出ているかで変わってきます。

家で様子を見ても良い症状

猫が生エビを少量食べてしまったからといって、必ず病院に行かなければいけないというわけではありません。猫が生エビを食べてしまったことにより発生する可能性のある症状はたくさんあります。すべての症状に治療が必要ではありません。

例えば、軽い下痢などの症状であれば様子をみて問題ありません。

このような場合、飼い主は注意深く観察し、下痢が続くかを確認します。この期間に猫が元気で日常と変わりないようならば、病院には行かず自宅で様子を見続けても良いでしょう。

しかし、症状が悪化するか、違う症状があらわれた場合は、すぐに動物病院を受診することが大切です。

エビは加熱すれば猫が食べても大丈夫!

エビを加熱することでチアミン(ビタミンB1)の破壊を防げますが、それはどういったことなのでしょうか。

加熱によりエビに含まれるチアミナーゼという酵素が不活化されることを詳しくご紹介します。愛猫のために、加熱することの大切さを理解しておきましょう。

加熱すると「チアミン」が不活化される

エビに含まれるチアミナーゼという酵素は、チアミン(ビタミンB1)を破壊する作用がありますが、この酵素は熱に弱い性質です。そのため、エビを適切に加熱することで、チアミナーゼ酵素は分解されるため、ビタミンB1欠乏症にはなりません。

加熱は、猫にとって大切なビタミンB1を失うリスクを避けられるということです。

エビを加熱する際は、中心部までしっかり加熱することが必要です。

茹でたり、蒸したり、焼いたりと色々な加熱方法がありますが、どの加熱方法でもチアミナーゼという酵素が不活化され、猫にとって安全な食品となります。

加熱後はエビを適切なサイズに切って、猫が食べやすいようにしてから与えましょう。

エビが含まれるお菓子もOK

猫のお菓子には生の状態ではなく、すでに加熱処理された加工済みのエビが使用されているものがあります。

ペット用のお菓子は、健康を考慮して開発されているため、使用している材料は安全性が確認されています。また、添加物や保存料も安全に摂取できる範囲内で使用されています。

栄養バランスも考えられているため、エビの栄養価を生かしつつ、他の必要な栄養素も含まれていることが多いです。

猫にエビが含まれるお菓子を与える際は、パッケージに記載されている推奨される量をしっかり守りましょう。もしもエビアレルギーが疑われる場合は与えないか、獣医師に相談してから与えることが大切です。

エビ以外にもある!チアミンが含まれる危険な食べ物

エビだけでなく、ほかにもチアミンが含まれる危険な食べ物が存在します。猫に与えるべきではないその他の食べ物と、それらがなぜ危険なのかをみていきましょう。

魚介類や甲殻類

魚介類や甲殻類の中には、エビ同様にチアミン(ビタミンB1)を破壊するチアミナーゼという酵素を含んでいるものがあります。イカやタコ、カニなどです。生や不十分な加熱の状態で猫に与えると、ビタミンB1の分解が進み、欠乏症を起こすリスクが高まります。

そのため、与える際には必ず十分に加熱しましょう。加熱することで、チアミナーゼ酵素が不活化され、ビタミンB1が保たれます。

ただし、加熱しても猫の主食として大量に与えることは避けるべきです。栄養バランスを考え、適量を守りましょう。タコやイカなどは細かくしてから与え、消化不良にならないようにしてあげることも大切なことです。

シダ類

シダ類も、チアミンを破壊する酵素を含んでいることがあり、猫には危険です。

特にあく抜きをしていない、ワラビやゼンマイなどのシダ植物は生の状態で摂取した場合、チアミンの分解を促進する酵素が活動し、ビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性があります。

家庭でワラビなどを育てることはあまりないことかもしれませんが、植物の中には猫にとって有毒になるものも存在します。

植物を育てる場合には、どの植物が安全であるかよく調べることも重要です。

万が一、猫がシダ類を摂取してしまった場合は、ビタミンB1欠乏症の症状に注意し、症状がみられたらすぐに獣医師に相談しましょう。

まとめ

この記事では、猫に生エビを与える際のリスクと適切な対処法について詳しく解説しました。生エビを食べることによる主なリスクは、ビタミンB1欠乏症、消化器症状、アレルギー反応が挙げられています。

これらのリスクは、エビを適切に加熱することで猫に安全に与えられます。

万が一、猫が生エビを食べてしまい、何らかの症状があらわれてしまった場合、症状に応じて獣医師の診察を受けるべきです。軽い症状であれば様子をみることも可能ですが、重症化するとすぐに治療を必要とします。

どれくらいならば、様子をみる程度で問題ないか、すぐに獣医師の診察を必要とするのはどのような時かをしっかり理解しておくことが大切となってきます。

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