豆知識

【獣医師監修】マイナー猫種のライコイってどんな猫?体の特徴や遺伝子などについて詳しく解説

ペットスタートマガジンでは「ペットとの暮らしを始めるすべての人に」をコンセプトに、ペットにまつわる様々なお役立ち情報を、これからペットとの暮らしをスタートする方へ向けて提供しています。ペットにまつわる全ての情報をペットスタートマガジンで御覧頂けるように日々コンテンツを発信していきます。

はじめに

ライコイという猫をご存じでしょうか。

あまりなじみのない名前ですが、比較的歴史の浅い新しい猫の一種です。見た目は少しワイルドな感じで一見怖く感じる風貌ですが、とても人懐っこく飼いやすい猫として猫好きの間では注目が集まっています。とはいえまだマイナーの域を出ていないのが現状です。

そこで今回は、まだライコイに関してご存じない方のために、ライコイの歴史や特徴などについて詳しく解説していきます。

この記事を読んで、ライコイを知ることで新しい家族候補になるかもしれないので、最後までくまなくチェックしてみてください。

ライコイってどんな猫?

ライコイといっても聞きなじみのない方が多いのではないでしょうか。

それもそのはず、猫主として認められたのが2012年と日が浅く、世界的に飼育頭数も少ないので実際にライコイを目にする機会は限られています。

ライコイについて知っていただくために、まずは歴史から紹介します。

2012年にTICAによってマイナー猫種と認められた

ライコイは、2012年に猫の血統登録機関であるTICAにマイナー猫種として認められました。

その独特の被毛がオオカミを連想させることがあるため、ギリシャ語でオオカミを表す「Lykoi」からライコイと名付けられました。

読み方は「リコイ」「リュコイ」といわれることもありますが、一般的な呼び方は「ライコイ」です。

ライコイの元になった猫種は2種類

ライコイはアメリカで飼育されていた2匹の異なる品種が元になりました。

この2匹の猫が、偶然持ち合わせた特徴がライコイという新しい品種を生んだといわれています。

毛が薄い猫という共通の特徴があった

まず1匹目の猫は、パッティ・トーマスさんという方が飼っていた黒猫です。通常の黒猫から生まれたにもかかわらず、なぜか全体的に被毛が薄かったといわれています。

もう1匹の猫は、別の場所でスフィンクスのブリーダーをしていたブリトニー・ガブルさんが偶然里親募集広告で見つけた猫でした。

無毛にみえる姿が特徴のスフィンクスとは少し違った外見をしていましたが、被毛が薄い特徴がある猫でした。

これだけであれば、離れた場所に被毛の薄い少し変わった猫が2匹存在していたというだけのお話ですが、偶然にもこの2人にはシェリル・カーさんという共通の友人を介して巡り会う事になりました。

2011年の秋頃から繁殖を始めた

この奇跡的な出会いにより、2011年の秋頃から被毛の薄い2匹の猫を交配する計画をスタートさせてライコイが生まれました。

被毛が薄いことは、病気の可能性もあったため、あらゆる検査を通して先天性の病気ではないことを証明し、2012年に血統登録機関であるTICAにマイナーな新猫種だという認定を受けることができました。

当初は認定のみの扱いで、キャットショーには出場できないものでしたが、2017年にはキャットショーにエントリーして賞をもらう資格である「チャンピオンステータス」も獲得しています。

また、被毛が薄い特徴であったため、スフィンクスなどの無毛の遺伝子を持つと考えられていましたが、DNA検査の結果そのような遺伝子は継いでいないことがわかりました。

ライコイの特徴は?

ライコイの特徴といえば独特の毛並みにあります。

ライコイが他の猫と大きく違う被毛の特徴についてみていきましょう。

白と黒の被毛が混じっている

ライコイの被毛の色は白と黒が密に入り混じっている「ローン」と呼ばれるとても珍しいパターンをしています。

1本の毛の中に複数の色の被毛が混じっている「テックド」というパターンもほかの猫にはみられますが、ローンはライコイのみに見られ、他の猫種には存在しません。

黒と白が密集しているため、全体的な印象はグレーがかってみえます。

生後3週間ごろから被毛が抜けはじめる

生まれたばかりの頃は、体中にしっかりとした毛が生えていますが、不思議なことに生後3週間を過ぎる頃になると被毛が抜け始めます。

はじめは目や鼻、耳や口周りの毛が抜け始め、徐々に全身の毛が抜けていきます。

成長とともに全身に抜け毛が見られるようになる

成長すると、顔の周りはほぼ無毛となり、全身もまばらな独特の被毛の状態になります。

ただし、被毛の量には個体差があり、被毛が少ない個体や、あまり抜けていない個体までさまざまですが、ライコイの多くは顔の周りの毛がなく、全身もまばらに毛が生えている子が多くなります。

猫は一般的にオーバーコートとアンダーコートの2種類の被毛が生えていることが多く、オーバーコートは水をはじくなど、あらゆる刺激から身体を守る働きをしています。

アンダーコートは、体の内側に生えており、やわらかく細いのが特徴です。役割として、体温を保持し寒さから身を守り、季節に合わせ抜け替わるため、体温調節に役立っています。

ライコイの被毛の特徴として、毛の根元の細胞の変異によりアンダーコートを作ることができません。

そのため、無毛の猫のように、他の猫種に比べて寒さに弱い傾向があります。

体の特徴

オオカミのような姿でライコイという名前がついていますが、決して大きな猫ではありません。

ライコイの体の特徴について解説いたします。

比較的体小さく細身の体型

オオカミの意味をもつライコイですが、平均体重は2〜4.5kgと小柄で細身の体型をしています。

オス・メスともに大きさには大きな違いはありません。

ワイルドな見た目ながら、コンパクトな体がとても愛らしい姿が特徴です。

小柄なため、運動量はさほど多く必要ありませんが、運動不足はストレスにつながり問題行動を起こしてしまうこともあるので、室内でキャットタワーやおもちゃを活用して適度な運動をさせることが望ましいです。

顔は三角形で小さい

顔は三角形をしており、細身で被毛が抜けているためか、それぞれのパーツがくっきりとしている印象です。

耳は先端に向かって細くなっている

耳は顔の大きさからすると大きめで、付け根が広く、ぴんと立っている姿が特徴的です。

目はパッチリとしていてつり目気味

目は顔が小さい割には大き目でぱっちりとしており、少しつりあがった印象があります。

性格は穏やかで人懐っこい

ライコイはワイルドな見た目をしているため、少し怖い印象があるかもしれませんが、実はとても人懐っこく飼い主にも従順な猫種です。

また、先住猫や他の動物とも仲良くできるほど社交的なため、猫の多頭飼育やほかの動物との共生にも向いています。

少し警戒心の強い一面も持ち合わせているため、慣れるまでは飼い主さんにも警戒することがありますが、慣れてくると本来の人懐っこさが前面に出てくるようになります。

ライコイに1日も早く慣れてもらうためには、迎え方に注意が必要です。

最初の頃は、新しい環境や、見たことのない人や動物の姿が見えるため、一般的な猫でも多少の警戒心やストレスを感じてしまいます。

ライコイは特に人一倍警戒心が強いため、最初の段階で怖い思いをしてしまうと慣れるのに少し時間がかかってしまうかもしれません。

新しくライコイを迎えた際には、自分から興味を示すまではそっとしてあげてください。

反対に、すでにライコイを飼っているご家庭ならば、新しい家族を迎えるときにも問題行動を起こすようなことは少ないでしょう。

ただし、ライコイが嫉妬してしまわないよう、何事も先住猫を優先してあげることを忘れないでください。

従順な性格のため、飼い主さんと遊ぶことが大好きですが、とても頭がよくいろいろなことを理解できるだけでなく、気に入ったおもちゃなどがあれば、1匹でも遊ぶことができるため留守番などをさせるような場面でもきちんとこなすことができるでしょう。

また、においに敏感な子が多いため、お部屋の中ににおいの強い芳香剤などは置かないようにしてください。

ライコイの遺伝子の研究からわかっていること

前述のとおりライコイには無毛の猫の遺伝子を継いでいないことがわかっていますが、それ以外にもいくつかのことが研究によって判明しています。

被毛の生成に必要な成分が欠如している

ライコイにはそもそも被毛の生成に必要な成分が欠けており、それによって生まれたときにはしっかりと生えていた被毛が、成長とともに抜け落ちていきます。

また、本来ならば、一度抜けても新しい被毛によって生えそろうはずですが、大人になってもきれいに生えそろうことはありません。

被毛を維持する成分バランスが欠けている

被毛の生成のための成分が欠如しているほかにも、すでに生えている被毛をすべて維持するだけの成分バランスを満たしていないこともわかっています。

バランスが欠けているために、顔や体の被毛がまだらになり、ときにはさらに抜けてしまうことがあるのです。

しかし、無毛な猫の遺伝子の系統ではないため、完全に無毛になることもなく、現在のような姿になったと考えられています。

ライコイの平均寿命はどれくらい?

一般的な猫の寿命は、個体にもよりますが12〜18歳程度といわれていますが、ライコイの平均寿命はどれくらいなのでしょうか。

まだ歴史が浅い猫種のため不明

ライコイは現在飼育されているさまざまな猫種に比べ、その歴史も浅く、飼育頭数も少ないため、あまりデータがありません。

今後、さらに人気が高まり、世界中でライコイを飼う人が増えれば、先天的な問題なども含めてより詳しくライコイについてわかってくることで正確な寿命についても判明してくるでしょう。

12歳~15歳程度ではないかといわれている

現在、数少ないデータの中ではライコイの平均寿命は12〜15歳程度といわれており、一般的な猫の寿命とさほど大きな違いはありません。

ただし、あくまで少数の個体数の中から考えられているデータのため、実際には平均寿命以上に長生きをしている個体もいると考えられているので、引き続きライコイの平均寿命についてはチェックしておく必要があります。

ライコイが気をつけておきたい病気は?

ライコイは誕生からまだ日が浅く、頭数も少ないため品種特有の疾患などの報告はされていません。しかし、これから繁殖を続けていくなかで新たな疾患などが発見される可能性もあるので、新しい情報や、体調の微妙な変化にも気を配っておく必要があります。

また、一般的な猫がかかりやすいといわれている猫風邪や甲状腺機能亢進症などの病気にも注意が必要で、ライコイ特有の疾患がなくても定期的な健康診断を受けておくことが大切です。

被毛が少ないため皮膚病になりやすい

被毛の少ないライコイは皮膚に疾患を抱えるような皮膚病というよりも、ブラッシングなどで皮膚を傷付けてしまうことにより皮膚に異常をきたすことがあります。

個体により、被毛の量が異なるため、一概にはいえませんがそれほど頻繁にブラッシングの必要はありません。ブラッシングの回数が多すぎると本来抜く必要のない被毛まで抜けてしまうこともあり、やりすぎることで露出の多い地肌を傷付けてしまいます。

基本的には1日1回にとどめておき、もし、皮膚が傷ついてしまっているようでしたら、ブラッシングは中止し、獣医師の診断を受けるようにしましょう。

日頃のケアが必要

ライコイは、デリケートな皮膚を持っているため、過剰なブラッシングなどは避けたほうがよいですが、体を清潔に保つために日頃のケアは必要になります。

おすすめのケア方法は、濡れたタオルなどでの拭き取りです。濡れタオルであれば皮膚を傷つけずに汚れを落とすことができるので、皮膚の弱いライコイにはうってつけのケア方法です。

ただし、ブラッシング同様に、あまり強くゴシゴシと力を入れ過ぎてはいけません。いずれのケアも猫が嫌がるようならば、いったん手を止めて、また別の機会に少しずつ慣れさせていくようにしてください。

下部尿路疾患にも注意が必要

猫がかかりやすい病気である下部尿路疾患にも注意が必要です。

下部尿路疾患とは、膀胱や尿道など下部尿路の病気の総称で、代表的な疾患として膀胱炎や尿路結石症があります。

膀胱炎は細菌の感染により膀胱に炎症が起こる病気で、痛みにより、一度にまとまった量のオシッコができないため、残尿感で気持ち悪そうなそぶりを見せたり、頻繁にトイレに行ったりするようになります。

メスはオスよりも尿道が太く短いため、細菌が入りやすいことからメスの方が細菌性の膀胱炎になりやすい傾向があります。

膀胱炎のなかには、原因の特定できない「特発性膀胱炎」と呼ばれるものがあり、検査をしてもはっきりとした異常が見つかりません。ただし発症の引き金にはストレスが関係しているといわれているため、迎えて間もないときや、引越しをしたときなどには注意が必要です。

尿路結石症は膀胱や尿道に結石ができることで、尿路に傷が付いて出血や炎症を起こしたり、尿道が詰まってしまいオシッコが出にくくなったりしてしまう病気です。

排尿時にいつもよりも力んでいる場合や、痛そうに鳴いているときには尿路結石症が疑われます。

また、症状が進行して、もしオシッコが出なくなってしまうと尿毒症を引き起こし、腎不全になってしまい最悪のケースでは死に至ってしまうこともあるので、少しでも異常を感じたら放置せずに病院を受診してください。

結石が体内に確認できたら、小さいものであれば内科的治療で済んでしまうこともありますが、結石が複数の場合や、大きい場合には手術により摘出することになります。

しかし、猫の結石は再発しやすいため、日頃のケアが重要になります。

猫はもともと飲水量が少ない動物のため、ウェットフードを与えることで1日の飲水量を増やしたり、獣医師に相談のうえ尿路結石症に配慮されたフードに変えたりすることで結石予防になるので試してみることをおすすめします。

まとめ

今回はライコイについてご紹介しました。まだ飼育頭数も少なく、とても珍しい猫種であるため、わからない部分も多いですが、ワイルドな見た目と裏腹に人懐っこく、穏やかな性格でとても飼いやすいといわれています。

実際に飼おうとしても入手自体が困難で、価格も非常に高額になりますが、数は少ないですが、日本にもブリーダーは存在しているので探してみてはいかがでしょうか。

RANKING
人気記事ランキング