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はじめに
猫を飼っていて、噛まれたことはありませんか。
甘噛みであったり、強く噛んできたりすることがありますが、これがなかなか痛いものです。
でもよく見ていると、あらゆる場面で噛んでくるので、何か意味があるのではないでしょうか。
今回は、猫が飼い主を噛む理由や、対処法についてどのような意味があり、何をすべきなのかくわしく解説していきます。
猫が人を噛む原因
猫が人を噛むのには理由があります。
子猫の場合には、遊びの一環としてじゃれあっている中で噛むこともありますが、成猫の場合にはさまざまな感情や要求の表現として噛むことがあります。
猫をよく観察していると、何かをアピールするときに、人を噛むことが多いことに気付くのではないでしょうか。
猫が人を噛む原因となるアピールのなかで代表的なものとして、以下のようなことがあるので、それぞれ解説いたします。
遊び足りていない
猫は遊び足りていないときに、飼い主を遊びに誘うために、噛んでアピールすることがしばしばあります。
過去に噛むことで、遊びたい欲求に飼い主が応えてくれた経験があるため、噛むという行動を繰り返している可能性があります。
そのため、しっかりと遊んであげているのに、遊び足りないと噛んできたときに、飼い主は応えてはいけません。
噛むことで欲求が満たされることを猫が知ってしまうと、遊び以外でも、何かをしてほしいときに毎回噛んでくるようになってしまいます。
そうなってしまうと、猫は自分が飼い主をコントロールしていると理解してしまいます。
立場が逆転してしまうと、遊ぶたびに噛まれることになりますし、飼い主が猫をコントロールできなくなってしまいます。
対策として、しっかりと遊んであげたあとは、噛むことで「もっと遊んでほしい」とアピールしてきても無視することです。
噛むことでは欲求は満たされないことを、教えていかなければなりません。
気を引きたい
飼い主の気を引きたい、もっとスキンシップを取りたいときなどに、甘噛みをしてくることがあります。
この行動は大好きな飼い主に、もっと甘えたいアピールをしているのです。
もともと猫は、親や兄弟とスキンシップを取る際に甘噛みをするので、心を許している飼い主にも同様の行動を取って甘えてきます。
また、スキンシップを取っていないとき、例えば飼い主が寝ているときなどに、甘噛みで起こしにくるのも気を引きたいためにおこなう行動です。
この場合、甘えて甘噛みをしているので、いきなり叱ったり、無視をするのは猫のストレスにもなるので避けたいところです。
甘えたい衝動で軽く嚙んでくる程度なら、遊んであげたり撫でてあげたりすれば、しばらくすれば、嚙むこともなくなるので、積極的にスキンシップを取ってあげるのがよいでしょう。
ただし、強く嚙んでくるような攻撃的な姿勢を見せた場合には、しっかりと「痛い」という意思表示をしてやめさせなければなりません。
軽く噛んでアピールしてきたら遊んであげる、強く噛んだら「痛い」、という意思表示を見せると猫も徐々に理解できるようになります。
歯が痒い
成長期の段階で、歯の生え変わりの時期を迎えると猫が噛んでくることが多くなります。
これは、生後3ヵ月〜6ヵ月の子猫によくみられ、乳歯が抜け、永久歯へと生え変わる過程で、歯に痒みがあるために起こす行動です。
この時期の子猫は、この痒みを解消するために、身近にあるものをなんでも噛もうとします。
そのため、飼い主が近くにいれば、決して攻撃的ではないにしろ、口の中が気持ち悪いので噛みついてくるというわけです。
永久歯に生え揃い、痒みがなくなれば自然と治まるので、その間の対策として噛みたいときに好きなだけ噛んでいられるおもちゃを用意してあげるとよいでしょう。
注意してほしいのが、口の中の違和感で、猫もイライラしている場合があるので、夢中でおもちゃを噛んでいるときにちょっかいを出すのは避けてください。
力加減がわからない
力加減のわからない猫は社会性が身についていない可能性があります。
猫は本来、親兄弟の中でじゃれあいながら、力加減を学び、強く噛んだら痛いことや、噛むことで相手を怒らせるといったことを覚えながら成長していきます。
ところがこの大切な時期に、親兄弟から離され、ペットショップなどに引き取られ、一匹で育てられた猫は、社会性が身についていないため、力加減を知らない噛み癖のある猫が多い傾向にあります。
手っ取り早い解決方法としては、多頭飼いでほかの猫と関わることで力加減を覚えていくことですが、簡単に多頭飼いができる飼い主さんはそう多くありません。
そのため、飼い主さんが親兄弟の猫に代わって、社会性を教えていかなければなりません。
成猫になってからしつけをするのはとても難しく、子猫の時期にくらべ噛む力が相当強くなっているので、加減がわからないことはとても危険です。
猫が噛んできたら「痛い」と言って、遊ぶのをやめてその場から離れるようにしてください。わざと猫の口に指を入れて噛ませるなどの行為は、危険なのでやめましょう。
すぐに改善されることはありませんが、根気よく続けることで、噛むことはいけないことだと覚えてくれるでしょう。
猫のことを触りすぎている
猫は時間の許す限り飼い主が触れてあげると喜ぶ、とつい思ってしまいますが、必ずしもそうではありません。
猫は長時間同じ場所に拘束されることを嫌うため、自分からすり寄ってきても、「これ以上は嫌だ」と感じると触れられることを嫌がります。
それに気付かずに、いつまでも撫でていると、突然噛んでくることがあります。
これは「愛撫誘発性攻撃行動」といい、猫にとっては珍しいことではありません。
よく観察していると、撫でている最中にも不快に感じた際には、サインを出していることがあります。
しっぽを大きく揺らし、「イカ耳」と呼ばれる耳を倒す仕草を見せたときは触れられることを嫌がっているサインです。
ゴロゴロと喉を鳴らしているときも注意が必要です。
それを気持ち良いサインと勘違いして、さらに触り続けていると、ガブッと噛まれてしまうこともあります。
たくさん触れられることを嫌がらない猫もいるので、すべての猫が嫌がるわけではありませんが、「もうやめてほしい」サインを見逃さないよう触れながら猫の様子をチェックしておきましょう。
八つ当たり
なにか物事にイライラしているときに、怒りを関係ないものにぶつける八つ当たりは、人間だけに限ったものではありません。
猫もイライラしていたり、驚いたりした際に、その原因とは全く関係ない相手に攻撃をする八つ当たりをすることがあります。
これを「転嫁性攻撃行動」といい、猫同士の喧嘩や興奮したとき、なにかに驚いたときなどに多くみられます。
このような場合、かなり本気で攻撃してくるので、落ち着いて距離を取りつつ、イライラやストレスの原因を取り除いてあげましょう。
また同じ行動を起こさせないためにも、原因の特定はとても重要で、理由を突き止めて環境を整えることが重要となります。
また、家の中に原因があり、すべての環境を変えることは難しいときには、少しずつでもかまわないので、ストレスを感じない程度に、その環境に猫を徐々に慣れさせていくよう取り組んでみましょう。
恐怖を感じている
猫は恐怖を感じると、最初は固まってしまったり、逃げたりするのですが、それでも身の危険を感じると一転して、攻撃に転じてきます。
猫が感じる恐怖には、猫が本来持っている、天敵に襲われたときに感じる恐怖と、環境の変化やストレスを感じた場合の、何をされるのかわからない恐怖といったものがあります。
どちらの恐怖も、猫が相手に威嚇をされたと感じて、攻撃することで自身の身を守ろうとした反応からきています。
家の中に天敵はあまりいませんが、飼い主が過剰に叱って、大きな声を出したり、叩いたりすると、身を守るために噛んでくることがあります。
しつけのために強く叱ることは、猫の攻撃のスイッチを入れてしまうことにもなりかねないので、やめましょう。
ほかにも、動物病院での診察や、知らない人が猫の安心できるテリトリーに入ってくるときなど、日常と違うストレスを感じやすい状況も、防衛本能から噛んでくる猫が多くなります。
飼い主とはいえ、猫がリラックスして寝ているときに、突然触ったりすれば攻撃の対象になってしまい、噛まれてしまうケースもあるので注意しましょう。
猫が感じる恐怖を簡潔にいってしまうと「嫌だ、やめてほしい」という意思表示を噛むことで示しています。
飼い主さんがするべき対策は、猫がどのような性格で、何を嫌がるのか把握しておくことから始めてください。
次に、その恐怖をできるだけ感じさせないように、先回りして環境を整えるようにしていくことが有効な対策です。
動物病院を怖がるなら、子猫の頃からかかりつけの病院を持ち、体に触れられることに慣れさせておくことも有効です。
自分のテリトリーに他人が入るのを嫌がるのであれば、子猫の頃からたくさんの人に触れてもらうことや、安心できるスペースにはあまり立ち入らないようにするなどして、威嚇行動をおこさせないことが重要になります。
噛まれた時の対処法
猫は噛むことで、自分の要求が通ってしまったり、敵が逃げたりすれば、攻撃したことでの成功体験を持ってしまいます。
そのまま放置をしていても、次回も同じことになる可能性が高いので、いくつかの対策を紹介するので実践してみてください。
時間をおく
一度、興奮状態になった猫にすぐに手を出したり、刺激を与えたりするのは逆効果です。
そのために、猫の気を紛らわせたりして、不安から距離を取らせる方法があります。
猫用のおもちゃを与えるなどして、気をそらして時間をおきましょう。
別のことに夢中になることで、少しずつ落ち着きを取り戻してくれば成功です。
無視する
遊んでいる最中に噛まれたならば、すぐに遊ぶのをやめ、「痛い」と低い声で伝える、もしくは何も言わず、そのまま無視して猫から離れましょう。
少し前まで、楽しく遊んでいたのに、噛むことによって突然遊びの時間が終わってしまった、と猫に感じさせるためです。
何度か繰り返すことによって、噛むと楽しい事が終わってしまうと理解させれば成功です。
少し時間が経過してから、また遊んであげて、それでも噛むようならば、同じように無視して部屋を出ることを繰り返すうちに、「噛むことはいけないこと、噛むと飼い主を怒らせる」ことを理解し、噛まなくなってきます。
ただし、このしつけはできる限り子猫のうちに済ませておきましょう。
成猫にあえて噛ませると、噛む力が強すぎてケガにつながります。
子猫に社会性を身に付けさせるトレーニングの一環として覚えさせるのが、適切なタイミングといえるでしょう。
注意点として、性格的に、無視されることで、余計に問題行動をおこしてしまう猫もいることです。
しっかりと愛猫の性格を観察して、問題行動をおこすようであれば、無視するのではなく、噛まれたときにしっかりと注意して、いけないことだと伝える方法に切り替えるなどの工夫が必要となります。
1人遊びを覚えさせる
人を噛んだりじゃれたりはするけれど、あまり1人遊びをしていないようでしたら、おもちゃを与えるなどして、「これは好きなだけ噛んでいいもの」と教えて噛む欲求を満たしてあげましょう。
1人遊びを覚えることは、噛み癖の矯正に役立つだけでなく、留守番をしている際にも、寂しさで問題行動を起こすことへの回避にもつながっています。
1人遊びさえ覚えてしまえば、歯が痒いことや、ストレスなどで、物を噛む行動に出ても、おもちゃを噛んでもらえばよく、飼い主さんが疲れているときや、時間のないときにも勝手に遊んでくれるので、噛む癖がなくなり、飼い主さんの負担も減るため一石二鳥です。
可能であれば、飽きてしまうことのないように、いくつかの噛んでよいおもちゃを用意してあげるとよいでしょう。
猫の噛む力ってどのくらい
噛むといえば、猫よりも犬の方が強い印象があります。
では猫の噛む力とはどれほどの強さなのでしょうか。
ここでは甘噛みではなく、本気で噛んだ場合の猫の噛む力について解説いたします。
猫の噛む力
猫の噛む力は約100kgあるとされています。
ちなみに、人間の噛む力が約60kgとなるため、猫の噛む力がいかに強いのかイメージできるでしょう。
そのためできるだけ、恐怖を与えない、興奮させない、甘噛み以上にはさせないなどの環境整備や、トレーニングが必要になります。
これだけの強い力で噛まれれば、噛まれた方は、「痛い」くらいでは済まない可能性もあるので、攻撃的な姿勢を見せてきたら注意してください。
また、猫の歯を見るとわかるように、1本1本が鋭く尖っているので、噛まれると深く食い込んで、傷口が深くなってしまいます。
もし、攻撃してきそうな場合には猫の気を紛らわせ、その場から立ち去って距離をおくなどしてください。
くれぐれも手を出して、さらに猫を刺激してしまうのはおすすめできません。
犬と比較すると
では噛むと力強いイメージのある犬と比較してはどうなのでしょうか。
個体差はあるものの、犬の中の噛む力は小型犬が100kg、大型犬が200kgといわれています。
猫の噛む力は100kgで、小型犬相当の噛む力を持っていることになります。
噛む力の強いイメージの犬とも同等の力を持っている猫は、噛む力が相当に強いことがわかります。
猫に噛まれることによってかかる病気
猫の歯は鋭く、噛まれると皮膚に食い込み、傷口が深くなることがあります。
噛まれたら、まずは流水でしっかりと傷口を洗ってください。
放置すると、化膿する恐れもあり、とても危険です。
猫の口は小さいため、犬と比べ傷口が小さく見えることもありますが、鋭い歯の影響により傷が深いケースもあり、痛みが強ければ医療機関を受診してください。
また、猫に噛まれることで、傷口から感染症にかかることもあるので、人が発症する恐れのある病気についてまとめておきます。
猫ひっかき病
猫ひっかき病は、ノミが媒介するバルトネラ菌が原因の感染症です。猫はバルトネラ菌に感染していても無症状ですが、感染した猫が人間を引っかいたり噛んだりした場合は、人間にも感染し症状が現れます。
傷口が赤く腫れ、化膿することもあり、痛み、発熱、わきの下のリンパ節の腫れがあり、ごくまれに意識障害を引き起こすこともあります。
治療方法は抗生物質の投薬でほとんどの症状が改善します。
重度の症状が出ている患者に限り、点滴を用いて治療をおこないます。
パスツレラ症
パスツレラ症はパスツレラ菌による感染症で、猫に噛まれたことにより、人間に発症します。
症状としては、噛まれたところが、早ければ数時間で赤く腫れあがり、同時にリンパ節の腫れや発熱の症状も出てきます。
免疫力が落ちている場合や、高齢者などは、適切な治療を怠ると敗血症になることがあり、呼吸器系の基礎疾患があると、気管支拡張症などを引き起こす場合があります。
ほかにも、糖尿病や肝硬変、HIV感染症や悪性腫瘍など免疫不全を起こす基礎疾患を抱えている場合には、重症化する可能性があります。
パスツレラ症の原因となるパスツレラ菌は、犬や猫の口の中に高い確立で存在する菌で、犬の75%、猫にいたっては100%保有していることがわかっています。
そのため、噛まれたとき以外にも、口移しで食べ物をあげたりするのは危険です。
治療法としては噛まれたらすみやかに病院を受診してください。
傷口の洗浄と抗生物質の投与で改善します。
猫に噛まれて、赤く腫れあがってきたり、体に違和感を感じたりしたら、すぐに病院を受診するようにしてください。
カプノサイトファーガ感染症
この感染症も猫に噛まれると、発症する可能性のある感染症で、感染後、数日以内に発熱や倦怠感、吐き気や腹痛を起こします。
重症化すると、敗血症や髄膜炎を起こすことがあります。
感染している可能性がある場合には、すみやかに抗菌剤による治療を開始します。
ただし、報告例の少ない感染症のため、感染し、発症に至るのはまれなケースと考えてよいでしょう。
まとめ
猫が飼い主を噛む理由や、対処法について解説しました。
歯が痒く甘噛みをする場合と、社会性を身につけていないがゆえの要求噛みが、おもな原因でした。
甘噛みは子猫のうちにきちんと飼い主がしつけをおこなうことで、改善することができます。
そのまま放置してしまうと、猫も常にストレスを感じながら過ごすことになりますし、飼い主さんも攻撃的な性格を持て余し、安心できないまま飼い続けなければなりません。
噛まれることによって起きる可能性のある感染症も心配されるので、当記事の対処法を参考に、子猫のうちに噛み癖対策をおこなっておくことを強くおすすめします。