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【獣医師監修】猫の喧嘩は止めた方がいい?猫の喧嘩のルールや対処法を詳しく解説

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はじめに

猫を多頭飼いしているご家庭ならば、喧嘩をしている姿を目にしたことがある方が多いのではないでしょうか。激しすぎる喧嘩で愛猫がケガをしてしまわないか心配ですよね。

喧嘩を始める前に止めたほうがよいのか、どのように対処すべきなのか、など心配で頭を悩ませてしまう飼い主さんも多いと思います。

そこで、今回は猫の喧嘩について適切な止め方や喧嘩のルールについてくわしく解説していきます。

猫が喧嘩する理由は?

猫はできる限りトラブルを避けるために、理由もなく喧嘩をすることはありません。猫の喧嘩にはなにかしらの理由があることがほとんどです。

喧嘩をする猫はオス猫が多く、喧嘩の原因もさまざまです。よく見られるおもな喧嘩の原因についてご紹介します。

自分の縄張りを守るため

猫はテリトリー意識の強い動物です。自分が決めたテリトリーにほかの猫が入ってくることを嫌うため、威嚇して追い出そうとします。それでも相手がテリトリーを離れないようならば喧嘩になります。

これは、外で暮らす猫に限ったことではありません。同じ家に暮らす猫同士でもそれぞれリラックスできる場所などがあり、あまり相性がよくない猫同士だと自分のパーソナルスペースに侵入してきたり、荒らされたりすることで喧嘩が勃発してしまうことがあります。

猫のテリトリーはオスの方がメスよりも範囲が広いため、オスの方が喧嘩になる傾向が多いといわれています。

メス猫の取り合い

発情期を迎えたメス猫は、フェロモンを発して、複数のオスを引き合わせて一番強いオスと交尾しようとします。

そのフェロモンに反応したオス猫が、メス猫を探して縄張りを広げていく際に、同様に行動範囲を広げた別のオス猫と、メス猫の取り合いから喧嘩になることがあります。

去勢していないオス猫は発情期になると、子孫を残そうとする本能で、いつもより気性が荒く攻撃的な性格になっていますが、去勢済みのオス猫でも、去勢時期が遅かったり、何かストレスを抱えていたりすると喧嘩に発展することがあるので注意しましょう。

エサを手に入れるため

猫は、本来自分で食料を手に入れて生きていかなければならないため、自分のエサを狙ってくる敵に対しては強い警戒感を示し、大切な食べ物を守るために喧嘩になることも珍しくありません。

飼い猫は自分で調達しなくても、食べ物を手に入れることができるため、警戒心も野良猫に比べ弱まってくることが多いですが、食事中に自分のエサに同居猫が興味を示すと、本能的に自分の食べ物を取られたくないために喧嘩になることがあるので、離れた場所で食べさせるなど工夫が必要です。

猫同士の相性が悪い

猫の世界でも、理由もなく猫同士の相性の悪いケースは存在します。顔を合わせるたびに威嚇しあう猫もいれば、お互いに近付かないようにしている猫など性格により対応はさまざまです。

このような猫は、ちょっとしたきっかけでいきなり喧嘩になることもあるので、飼い主さんも注意していなければなりません。

一般的に、オスの成猫同士は相性がよくないといわれており、子猫の頃から一緒に暮らしていると喧嘩は起きにくいようです。

新しい猫を迎え入れる際には、成猫の場合には特に先住猫の性格を踏まえたうえで迎え入れなければなりません。

猫が喧嘩をする時のやり方は?

猫の喧嘩はやみくもに戦っているわけではありません。猫の世界にはきちんとした喧嘩のルールが存在しています。

猫のなかでは、体が大きいイコール喧嘩が強いとされており、体格差があり明らかに勝ち目がない場合には自分から目を逸らして喧嘩を回避します。

お互いに一歩も引かずに喧嘩になるときは以下のようにして喧嘩が始まります。

うなり声やにらみ合いで威嚇する

互いに喧嘩ができる相手と認識したら、背中を丸めて毛を逆立てながら「ウー」「シャー」と低い声で威嚇しながらにらみ合います。

ここで相手の力が自分より上だと判断すれば、目を逸らしてその場を離れます。もしどちらも引かなければ機会を伺いながら攻撃を始めます。

一方の猫から先制攻撃をする

威嚇でお互いに譲らなければ、一方の猫が先制攻撃を仕掛けます。タイミングをはかっていきなり飛びついて喧嘩がはじまります。仕掛けられた側もこうなると一歩も引かずに取っ組み合いになり攻撃をやり返します。

猫パンチや取っ組み合いをする

取っ組み合いになるとお互いに噛みついたりパンチやキックを繰り出したりと激しく揉み合い、どちらかが降参するまで双方が攻撃を続けます。あまりの激しさにときには大きなけがをしてしまうこともあり、猫の喧嘩はまさしく命がけです。

どちらかが反撃しなくなると喧嘩は終了

どちらかの猫が、反撃をやめた時点で喧嘩は終了となります。負けたほうの猫が逃げ出したり、その場でうずくまっておとなしくなったりしたら、降参のサインです。

勝った猫もそれ以上攻撃はせず、そのまま立ち去ります。

ちなみに、お腹をみせてひっくり返っているのは降参しているという意味ではありません。むしろ「かかってこい」という意味合いがあり、お腹を攻撃されるリスクはあるものの、両手両足を使って攻撃しようとしているため、むしろ強い臨戦態勢にあります。

また、一度勝敗が決した猫同士が再び喧嘩になることはなく、次に会っても負けた方は威嚇せずにおとなしくその場を離れます。

一見、やみくもに喧嘩しているようですが、このようなルールのもとに猫の喧嘩はおこなわれています。

猫のケンカのルール

猫の喧嘩はただ取っ組み合いをしているだけではありません。誰が決めたわけではありませんが本能的に猫のなかで喧嘩のルールが存在しています。

もちろん例外もありますが、猫の喧嘩を観察しているとほとんどの猫がこのルールを自然と身に付けています。

致命傷を負うような喧嘩はしない

猫は喧嘩をしながらも、自分と相手の力量を測っているため、お互いに致命傷になるような喧嘩はしません。猫の喧嘩の目的はお互いを傷つけあうことではなく、縄張りやメス猫、食べ物などを相手に奪われないようにするためにおこないます。

そのため、その場所から相手を追い払うための喧嘩なので、強い猫は相手を降参させて追い払うために、弱い猫はかなわないと思ったら、自分の身を守るための行動を取るので、致命傷を負う前に喧嘩が終了します。

勝ち目がないと判断したら逃げる

これ以上喧嘩を続けても勝ち目がないとわかった猫は、その場から逃げ出すことで負けを認めます。相手の猫が逃げ出すかうずくまって降参の意思をみせたら勝敗が決するため、勝った猫もそれ以上攻撃しません。

勝った猫があとを追いかけて、とどめをさすようなこともありません。

喧嘩は止めたほうがいい?

猫の喧嘩を人間の手で止めたほうがよいのでしょうか。これはケースバイケースです。飼い猫同士の場合には、本気の喧嘩なのかじゃれ合っているのかしっかりと見分けなければなりません。

猫の本気の喧嘩の見分けかたや、止めるべき喧嘩についてみていきましょう。

喧嘩している時の見分け方

喧嘩しているのもじゃれ合っているのも一見同じように見えるかもしれませんが、喧嘩の場合にはかなり感情が高ぶっている様子をみせます。

シャーッと威嚇している

遊んでいる同士の猫が、お互いを威嚇しあうことはありません。「シャー」「ウー」など低い声で威嚇しながらにらみ合っていたら、喧嘩の前触れです。

背中を丸くしてしっぽが膨らませている

背中を丸めて、毛を逆立てることでしっぽを膨らませているのは威嚇行動で、声を出しながらこのような行動に出たときはいまにも攻撃を仕掛けようとしている証拠です。

大きく荒々しい声を出している

低い声を出しながら、背中を丸めて威嚇しながら相手の様子を伺い、相手も引かなければ大きく荒々しい声を出して先制攻撃を仕掛けます。敵と認識せずにじゃれ合っている場合はこのような威嚇行動をみせることはありません。

喧嘩を止めるかどうかは相手の猫による

猫同士の本能的な行動を飼い主は止めるべきなのでしょうか。結論からいいますと相手の猫によるところが大きく、必要に応じた判断が必要です。

相性の悪くない猫同士の喧嘩は見守る

日頃一緒に暮らし、仲良くしている猫同士ならば、じゃれ合っていることの方が多く、傷付け合うほどの喧嘩に発展することは少ないので、見守ってあげればよいでしょう。お互いに興奮してこれ以上は危険と判断したら止めましょう。

喧嘩とじゃれ合いの違いは、喧嘩の場合には首などを狙って攻撃したりするので、首に噛みつこうとしたら喧嘩が始まっていると考えてください。

同居猫でありながら、相性が悪い猫同士の場合には、お互いのテリトリーに入ってきたら本気の喧嘩になる可能性が高いので、にらみ合った時点で止めたほうがよいでしょう。

野良猫との喧嘩はすぐに止める

外に出て行動する習慣のある飼い猫が、野良猫と喧嘩になりそうな場合にはすぐに止めてください。野良猫と接触することで猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスに感染するおそれがあります。

喧嘩で負った傷口などから感染すると、治療が難しく発症すると短い時間で死に至ってしまう恐ろしい病気です。

極力外に出さずに野良猫との接触は避け、万が一喧嘩になりそうなばあいには、すぐに喧嘩を止めて飼い猫を引き離してください。

エスカレートする場合はおやつで気を引く

喧嘩を止めるときに、一方を抱き上げたり、大きな声を出したりすると猫にとってはストレスになってしまい、イライラしてまたすぐに喧嘩を始めてしまう可能性があります。喧嘩を止めるときには、おやつなどを与えて猫が喜ぶ方法で、気を逸らして止めるのがおすすめです。

多頭飼いで猫同士の喧嘩を減らす方法は?

多頭飼いのご家庭で、毎日喧嘩が起きていたら、飼い主さんも気が気ではありません。できれば喧嘩を減らし静かに暮らしたいものです。

多頭飼いで穏やかに暮らすためには先住猫の性格が大きく関係してきます。

先住猫が多頭飼いに向いているか慎重に判断

多頭飼いを検討する際に、考えなければならないのは、先住猫の性格が多頭飼いに向いているのかということです。縄張り意識が強く警戒心の強い猫は、あとから来た猫に対し警戒のあまり攻撃的な姿勢で接する可能性があります。

多頭飼いを考えるうえで先住猫が大きなストレスを感じないよう慎重に判断し、検討する必要があります。

相性がいい猫を選ぶ

多頭飼いには相性がとても重要です。新しく迎え入れる猫は、先住猫と相性がいい猫を選ぶとトラブルに発展することが少なくなります。

基本的には成猫のオス同士はあまり相性がよくないといわれています。

以下のような場合には比較的相性が良く、トラブルが少ないといわれています。

親子や兄弟姉妹など血縁関係のある猫

親子、兄弟姉妹など血縁関係があると多少の性格の違いはあっても、比較的大きな喧嘩には発展しにくいといわれています。

ただし、相性はよくても最初の頃は生活スペースを分けて少しずつ慣れさせていった方が、先住猫もストレスを抱えずに済みます。

去勢・避妊手術をしている猫同士

去勢・避妊手術を済ませた猫は、縄張り意識も薄れ、発情行動に出ることもないので、喧嘩になることは少ないケースが多いです。

繁殖を考えていなければ多頭飼いを始める前に去勢・避妊手術を済ませておくとよいでしょう。

ただし、手術をした時期が遅く一度発情期を迎えた猫は、手術を受けて繁殖はできなくなっても発情行動が残り、攻撃性が収まらないことがあるので、早めに手術を受けた方がよいでしょう。

子猫

お互いが子猫の場合や、片方が子猫の場合は活発に遊ぼうとするだけで、威嚇行動などもみせないため喧嘩になることはあまりありません。

子猫がじゃれてくることに対して、威嚇したりケガを負わせるような攻撃を加えたりすることはほとんどないので、どのような性格の子猫でも比較的うまく関係性が築けます。

喧嘩になることはありませんが、高齢の猫の場合にはあまりにも活発な子猫の存在自体がストレスになってしまうことがあるので注意が必要です。

相性が悪い猫同士は生活空間を分ける

一緒に生活し始めて、どうしても相性が悪い場合には、生活空間を分けて飼うようにしてください。部屋を分けることができればよいのですが、なかなかそうはいきません。その場合でもキャットタワーの上段・下段や、少し離れた場所に別々のベッドなどのパーソナルスペースを用意しておけば、大きなトラブルは少なくなります。

猫グッズなどは1つのものを共有せずに、それぞれの専用のものを用意してください。トイレも猫は同じトイレを使用するのを嫌うため、先住猫と新しい猫用で分けておき、可能ならばもう1つきれいなトイレを用意しておくのがおすすめです。

相性が悪くない猫も、最初の頃の対面は短時間に限定して、徐々に慣れさせておくとよいでしょう。ここで焦って何度も接触させることで、互いにストレスになって喧嘩などを始めると今後の生活にも大きく影響してきます。

また、毎日の生活では基本的には先住猫ファーストで、何をするにも先住猫を優先してください。このようなことは些細なことではありますが、猫の世界では大変重要なことなので、常に気に留めておいてください。

まとめ

猫の喧嘩についてご紹介しました。猫にもさまざまな性格の子がいますが、たとえ気性が荒くても理由もなく喧嘩になることはほとんどありません。

多くが、縄張りや発情行動によるものが多く、狙って相手に致命的なケガを負わせることはありません。

しかし、同居している猫同士で毎日喧嘩になっていれば、猫にとっても大きなストレスになりますし、毎日様子を見ていなければならないのは飼い主さんにとっても大きな負担になってしまいます。

また、野良猫との喧嘩では感染症のおそれもあり、もし喧嘩が始まりそうになったら止めなければなりません。

結論として、猫に喧嘩をさせないために、同居している猫でもお互いのスペースを尊重し、安心して暮らせる場所を用意して、できる限り家から出さずに野良猫との接触を避けるなど、飼い主さんが喧嘩のルールや対処法を正しく理解することがとても重要になります。

当記事を参考に、猫同士の喧嘩を回避して、気持ちよく暮らせる環境作りをしてもらえると幸いです。

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