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【獣医師監修】猫がずっと舌なめずりしているのはなぜ?原因と考えられる病気を詳しく解説

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はじめに

猫を飼っていれば、猫が舌を出してペロペロとしているのを見たことがありますよね。

でも、猫が舌なめずりをしている行動にどのような意味があるか、考えたことはあまりないのではないでしょうか。

よく思い出してみると、いろいろな場面で舌なめずりをしていた姿が思い浮かびますが、この舌なめずりという行動にはどのような理由があるのか、なにか病気ではないのか気になるところです。

そこで、今回は猫の舌なめずりについて、なぜ、どのような理由でペロペロとするのか、病気との関連性はあるのかなどについてくわしくみていきましょう。

猫がずっと舌なめずりしているのはなぜ?

猫が舌なめずりをしているのにはどのような意味があるのでしょうか。

人間でも行儀がよくない事ではありますが、食後や口元が乾燥しているときなどに舌なめずりをしている姿をみることがあります。

人間同様、猫にも舌なめずりをする理由が存在します。

考えられる理由についてご紹介します。

食事の後なら口の周りを掃除している

舌なめずりの理由として、真っ先に思い浮かぶのは、口の周りの掃除です。

猫は人間と違い、手を使って食事をせず、食器に直接顔をうずめて食事をします。

そのため、どうしても顔の周りに食べ物が付着してしまい、汚れてしまいます。

食事の際に口の周りについてしまった汚れを、人間がナプキンでキレイにふき取るように猫は舌なめずりでキレイに掃除しています。

また、おいしい食事であれば、口の周りについている食べかすを舐めることでもう一度味を楽しんでいるのかもしれません。

口の周りについたニオイを消している

食後に口についた汚れを舐めとっている姿はよく目にしますが、きれいになったあとも舐め続けている場合があります。

これは口の周りにまだ食べ物のニオイが残っており、余韻を味わいながら満足な状態を表しているのでしょう。

猫はきれい好きで嗅覚が優れている

猫はとてもきれい好きな動物なので、顔の周りについた食べ物や汚れを落とすときに舌でキレイにすることがあります。

キレイに舐めとって一見何もついていないような状態でも、嗅覚が優れている猫には顔周りから食べ物のニオイが漂っているのでしょう。

神経質に舐め続ける子もよく見かけます。

また、すぐれた嗅覚を持つ猫は、食後だけでなく、飼い主さんが食事の準備を始めた時も、食べ物のニオイを察知し、今にもよだれを垂らしそうにしながら舌なめずりをして「早く食べたい」と意思表示をみせることも珍しくありません。

転位行動をしている

転位行動とは、動物行動学で使われる用語で、緊張状態にあるときに、気持ちを鎮めて落ち着くために、まったく関係のないことをする行動のことをいいます。

ストレスや不安を感じた時に感情を転換するために行う行為

この転移行動は、猫が強いストレスを感じた時に、本能的に気を鎮めようとする際にみられるもので、関係のないことをすることで、意識をいったん別のところへ持っていくための行動です。

人間でも同様の事はよくみられ、焦っているときやイライラしているときに、深呼吸をしたり、頭を掻いたりした経験があると思います。

猫も判断に迷うときなどに、舌なめずりをして、落ち着こうと無意識にこのような行動に出ることがあります。

転位行動をするのはどんな時?

猫が転位行動を見せるのは前述したように、強いストレスを感じて、イライラが募るときや、苦手な猫や敵に遭遇したときに、攻撃するか退避するか、まったく正反対の判断をしなければならない場面で、関係のない舌なめずりを見せることがあります。

ほかにも、家の中で高いところに登るのを失敗したときなど、何かうまくいかなかったときや、気持ちよく寝ているのに途中で起こされたり、自分がしようとしていたことを中断させられたりしたときなどにも転位行動を起こします。

また、仲の良くない猫と遭遇した場合などでも、緊張状態になり、攻撃するか、逃げるか葛藤することで転位行動をみせることがあります。

日常的によくみられるのは、何かに我慢しなければいけないときで、新しい猫と同居し始めたときや、自分のテリトリーを荒らされてしまったなどのストレス状態で自分を落ち着かせるために舌なめずりをみせたりします。

舌なめずり以外に毛づくろいやあくびなどをすることも

転位行動は舌なめずりに限ったものではありません。

猫がみせる転位行動として毛づくろいがあります。

この場合の毛づくろいは、全身をくまなくというよりも、鼻や、前足、後ろ足など、一部分を舐めることが多く、本来のグルーミングとは違い、自分を落ち着かせるためにおこなう姿が多くみられます。

ほかにも突然あくびをすることもあります。

このあくびは眠いからではなく、叱られたときなどに抗議する意味があるといわれています。

イライラしているときには爪とぎや、突然マウンティングに出ることもあり、これも転位行動のひとつだといわれています。

このように、舌なめずりや他の行動を見せるときには、猫が精神的に追い詰められていたり、イライラしたりしているため、あまり良い状態ではないことが多いので転位行動がみられたら注意が必要です。

ずっと舌なめずりをしている時に考えられる病気

猫が舌なめずりをするのは、口の周りの掃除や、ストレス回避のための転位行動以外に病気の可能性も考えられます。

この場合には、食後のときと違い、ずっと口周りを気にしながら舌なめずりを続けていることが多くみられます。

このようなケースでは、口腔内の病気を発症していることがよくありますが、ほかの病気の可能性もあるので、考えられる病気についてみていきましょう。

口腔内の病気を発症している可能性

猫がしきりに口元を気にしているようならば、口腔内の病気を発症している可能性が高くなります。

おもな病気として歯周病と口内炎があります。

歯周病

猫が口の周りを気にして舌なめずりをしたり、口臭がきつくなったりしてきたら歯周病のサインかもしれません。

歯周病の主な原因は、食べ物のカスからできる歯垢が歯周ポケットに溜まり細菌が繁殖して炎症を起こすことで発症します。

最初の段階では、歯茎が赤くなる歯肉炎の症状がみられます。

歯肉炎になると炎症を起こし、痛みをともなうことで食欲不振や元気がなくなる事があり、さらに歯周病が進むと、口臭がかなりきつく、よだれが多くなり、舌なめずりを頻繁にするようになります。

炎症が進むと歯周炎を起こし、歯肉の痛みや出血に加え、膿が出ることもあり、進行すると歯がぐらつき出し、そのまま抜け落ちてしまいます。

歯周病の早期発見のためには、日頃のデンタルケアと口周りの異常を見逃さないことです。

今回ご紹介している猫の舌なめずりでも、口腔内の異常を見つけることができます。

歯周病になると、口の中に炎症を起こし、口臭がきつくなり、よだれが多くなるので、猫は頻繁に口の周りを気にするしぐさを見せます。

食後でもなく、ごく日常的な状況で、口周りを気にしながら舌なめずりをするようなら、口の中を確認した方がよいでしょう。

口の中を確認して、歯が黄色く変色していたり、歯茎が腫れていたりした場合には、歯周病の可能性が高くなるので、動物病院を受診してください。

効果的な予防法として、食後の歯磨きなど日々のデンタルケアがとても重要です。

口内炎

猫の口内炎とは、歯肉や唇の内側、舌や口腔内のすべての組織を対象に腫れや炎症が起きることをいいます。

口腔内の一部に発症するものや、全体に及ぶ重度のものまで多岐に渡ります。

口内炎になる明確な原因はいまだに不明とされていますが、猫カリシウイルスなどのウイルス感染、細菌による感染症や、免疫低下などが主な原因ではないかと考えられています。

おもな症状として、口周りへの強い痛みがあります。

痛みにより口周りを気にしたり、顔を触れられるのを嫌がったりすることがあり、さらに痛みが強くなると食事を摂らなくなり体力が衰え衰弱してしまうこともあるので注意が必要です。

また、よだれの量が増える場合があり、気にした猫が頻繁に舌なめずりを繰り返し、炎症部分から出血して血が混ざったよだれを垂らすこともあります。

ほかにも、強い口臭や、食欲不振での脱水症状など、あらゆる症状がでることを理解しておきましょう。

予防法としては、歯周病と同じく日常的な口腔内のこまめなケアが大切です。

ウイルス感染などを防ぐことは難しいかもしれませんが、毎日のケアにより、歯垢や歯石などからの細菌感染の予防にはつながります。

また、毎日のケアを通じて、口周りの異常を早期発見できるメリットがあり、軽度なうちに治療を施すことができるので、すぐにでも取り組んでください。

口内炎は他の疾患による免疫力の低下で発症している場合もあるので、すでに症状がみられる場合には、そのまま放置せずすみやかに動物病院を受診しましょう。

その他の病気の可能性も

ここまでおもに口腔内の病気についてご紹介しましたが、それ以外にも考えておいたほうがよい病気についても解説します。

胃腸炎

猫は比較的胃腸炎になりやすく、おもな症状として嘔吐や下痢などがあります。

吐かない場合でも、悪心からよだれを垂らしたり、口をクチャクチャする様子がみられることがあります。

胃腸炎の原因はいくつかありますが、傷んでいる食べ物や脂肪分の多いもの、食べ慣れていないものを食べたなど食事が原因となっていることがあります。

ほかに、ウイルスや細菌感染、子猫の場合には寄生虫感染が原因となるケースもあります。

また猫は大変ストレスに弱いため、ペットホテルなどに預けられたときや、自分の居場所に知らない人がたくさん出入りしたことによるストレスが原因で胃腸炎を発症することもあるのでおぼえておきましょう。

胃腸炎には急性と慢性があり、急性胃腸炎の場合には突然嘔吐や下痢を起こし、よだれを垂らして苦しみますが、軽度なものなら1〜2日で治まります。

慢性胃腸炎は同様の症状が数週間続き、いったん治まっても再び嘔吐などの症状が出ることがあり、重症化すると水も飲まなくなることがあるので脱水症状に注意しなければなりません。

急性の場合、数日で症状が治まればそのまま様子をみてもよいですが、何度も嘔吐を繰り返し胃液などを吐くようであれば、病院を受診した方がよいでしょう。

慢性は、長期間にわたり胃腸炎の症状が続くため、消耗も激しく、脱水症状や食欲不振による体重減少などが起きやすいため、動物病院で適切な処置を受けてください。

腎不全

腎不全とは、腎臓がダメージを受けて機能が低下することで体の中の老廃物や毒素を十分に排出できなくなるなど、十分な働きができなくなる状態を指します。

他の動物に比べ、猫は腎不全になることが多く、特に高齢猫に多くみられます。

原因はウイルスや細菌感染による腎炎、結石などにより尿路が狭くなってしまうなどさまざまなことが影響しています。

たくさん水を飲んで、尿量が急激に増え、食欲不振や、よだれを垂らして辛そうにしているときは腎不全の初期症状が疑われ、悪化すると体重減少や尿とともに毒素を排出できなくなる尿毒症を引き起こし腎機能が失われてしまいます。

腎不全の完治は難しいと言われており、重症化してしまうと命の危険にさらされてしまいます。

そのため、早期発見による適切な治療により進行を遅らせることが大切です。

肝不全

肝不全は、肝臓病が進行し肝機能が著しく失われた状態を指します。

原因は年齢によるもの、肥満、ウイルスや細菌感染によるものなどさまざまですが、初期症状として嘔吐や食欲不振などがあり、その際に口の周りを頻繁に舐めることがあります。

また、猫が食欲不振になった際に、肝臓が急激に脂肪を蓄積しようとすることで肝リピドーシスという病気を発症することがあります。

食事を摂らない状態が数日続くと発症率が高まり、自力での回復は難しいため、積極的な治療が必要となります。

ストレスや体調不良などで食事を摂らなくなると肝リピドーシスを発症する危険がありますが、特に肥満の猫が突然なにも食べなくなった場合に多く見られるので、異常がみられたらすぐに病院で検査、治療を受けてください。

こんな症状があれば早めに病院へ

猫が舌なめずりをするケースは、食べ物を食べたときだけではありません。

もし、食事の時間以外でも口の周りをしきりに気にしていたら、病気のサインかもしれません。

舌なめずり以外をしているときに以下の症状がみられたら、早めに病院を受診してください。

口内粘膜に異常がある

口内の粘膜に異常が見られたら、口内炎や歯周病による歯肉炎の可能性が高くなります。

赤く腫れていたり、出血したりすることが多く、炎症により唾液の量が増えることで口の周りを気にするしぐさをみせます。

症状が進むと痛みで元気がなくなり、食欲不振になり、内臓にも影響を及ぼすことがあります。

食欲がない

体内に異常があると猫は食欲がなくなり、まったく食事を摂らなくなることがあります。

猫は食事によって水分を摂取する場合が多く、食欲が落ちることで脱水症状になることがあるので注意が必要です。

また、肥満気味の猫が数日のあいだ食事を一切摂らないと肝リピドーシスを発症し、大変危険な状態になるので、早めに病院を受診しましょう。

元気がない

人間と同じように、猫も体調不良になると元気がなくなります。

普段から寝ていることが多い猫ですが、体に異常があり元気がないときは体を休めているときとは明らかに様子が違います。

いつも食事のときやおもちゃで遊ぶときは元気にしていた愛猫が、動くのを辛そうにしていたら体に異常があるかもしれません。

口臭がきつい

口臭がきつい猫は歯周病が進行していることがあります。

猫の口の中を確認して、歯肉が赤く腫れ、出血やよだれが増えるなどの症状がみられた場合には歯周病が悪化しているとみてよいでしょう。

さらに悪化すると、歯が抜け落ち、痛みによる食欲不振でほかの疾患も併発するおそれがあります。

口臭は歯磨きで予防することができるので、毎日のデンタルケアを欠かさずおこないましょう。

まとめ

猫が舌なめずりをする理由には、口の周りをきれいにする以外にも健康状態に大きく関わっていることを解説いたしました。

猫はあまり痛がるそぶりを見せない動物なので、口の周りをしきりに気にしていたら、どこか異常があるかもしれないと知っておくだけでも、病気の早期発見につながります。

猫が舌なめずりをしていたら、少し口元を確認するだけでも愛猫につらい思いをさせなくてすむかもしれないので、ぜひ取り組んでみてください。

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