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【獣医師監修】猫のしゃっくりは気づかない?しゃっくりの原因と病気の可能性について詳しく解説

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はじめに

しゃっくりは、人間だけでなく猫にもみられる現象ですが、猫のしゃっくりに気づかない飼い主も多いのではないでしょうか。

しゃっくりが猫の健康にどのような意味を示しているのかご存知ですか。実は、しゃっくりは危険を伴うこともあるものなのです。この記事では獣医師監修のもと、猫のしゃっくりの原因と、それが示す可能性のある健康問題について詳しく解説します。

猫のしゃっくりを見過ごさず、適切な対応ができるようになりましょう。

猫のしゃっくりは気づきにくい

猫のしゃっくりは非常に目立たないため、多くの飼い主がその存在に気づかないことがあります。人間のしゃっくりは聞こえる音で簡単に確認できますが、猫のしゃっくりは音を発しないため、猫が活動的になっているときや、飼い主の注意がほかに向いている時は見逃されがちです。

猫のしゃっくりは音がしない

猫のしゃっくりは、人間のように「ヒックヒック」という音はしません。猫がしゃっくりをする際に声帯を使わないため音がなく、音の発生しないしゃっくりは、静かさから飼い主にとってさらに気づきにくい状態となります。

一定間隔でお腹がピクッと動く

猫のしゃっくりは、お腹がピクッとリズミカルに動くことで、視覚的に確認できます。この動きは、一定の間隔を保ちながら続くことが多く、猫がリラックスしている時や静かな環境では、この細かな動きを確認できます。しかし、日常の忙しさや騒がしさでは細かな動きを見落とすことがほとんどです。

猫のしゃっくりはどうして起こる?

猫のしゃっくりは静かなため、見たことがなかったり、気付けなかったりする飼い主が多くいます。では、猫はどのようなときにしゃっくりをしているのでしょうか。

横隔膜のけいれん

猫がしゃっくりをする理由は、胸とお腹の間にある横隔膜という筋肉が突然ピクッと動くためです。横隔膜は呼吸に必要な筋肉で、普段は脳の指示に従って落ち着いています。しかし、急に食べ物を食べたり、冷たい水を飲んだりすると、横隔膜が刺激されてしゃっくりが起こることがあるのです。

猫が苦しそうな時は病気の可能性も

しゃっくりが頻繁におこる場合や、呼吸が早くて苦しそうに見える場合は注意が必要です。呼吸器の病気や心臓の問題のサインの可能性があります。

しゃっくりと一緒に咳が出る場合も、何らかの別の病気が隠れているからかもしれません。もし猫が続けてしゃっくりをしていて、普段と違う様子を見せるなら、獣医師に診察してもらうことをおすすめします。

猫のしゃっくりが出るのはどんな時?

猫のしゃっくりはいつ起こるのでしょうか。この章では、猫がしゃっくりをする状況と、その理由を解説します。

食べ過ぎた時

猫がしゃっくりをする典型的な状況は、食べ過ぎた時です。

適正量を超えて食事を摂ると、胃が急激に膨らみます。この胃の拡張が横隔膜に直接的な刺激を与え、しゃっくりを引き起こしているのです。また、食べ過ぎが原因で嘔吐する場合も、動きがしゃっくりに似ているため、飼い主がこれをしゃっくりと間違うこともあります。

さらに、食べ過ぎはただしゃっくりを引き起こすだけでなく、肥満や糖尿病などのさまざまな健康問題のリスクを高めるため、愛猫の食事量は体格や年齢に合わせて慎重に調節しなければいけません。

食事の量が多すぎるとしゃっくりが頻繁に起こるため、適切な量を守りましょう。

特に、他の猫と一緒に生活している場合は、互いの食事を食べてしまうこともあります。食べ過ぎを防ぐためにも、別々に食事を与えるなど、管理には注意が必要です。

早食いをした時

猫が早食いをすると、しゃっくりが起こる可能性があります。これは、猫が食事を急いで飲み込む際に、食べ物だけでなく空気も一緒に大量に飲み込んでしまうからです。

この空気が胃を急激に膨らませ、胃の下に位置する横隔膜に圧力がかかります。横隔膜が不意の圧力を受けると反射的にけいれんし、しゃっくりが引き起こされます。

早食いによる急激な胃の拡張は、ただしゃっくりを引き起こすだけではなく、他の健康問題を招くリスクもあります。嘔吐や、猫では稀ですが、胃が拡大して回転してしまう状態の、胃拡張捻転症候群など、重篤な状態を引き起こしかねません。

このようなリスクを減らすためには、食事の間隔を適切に調整して、1回あたりの食事量を少なくして回数を増やすなどの工夫が効果的です。また、早食い防止用のフードボウルを使用することで、食べるスピードを自然に抑え、空気の飲み込みを減らせます。

食事や飲水で空気を多く飲み込んだ時

猫が食事や飲水をする際には、食べ物や水と一緒に空気を飲み込むことがあります。特に、急いで飲食をするときに空気の摂取量が増えるため、胃内に空気が溜まり胃が拡張してしまいます。この胃の拡張が横隔膜に刺激を与えることで、しゃっくりが引き起こされることがあるのです。

また、飲み込んだ空気が胃内にたまると、体は余分な空気を排出しようとします。これがしゃっくりの原因となり、ときにはゲップを伴うこともあります。

この現象は、子猫の間に多くみられますが、成猫になっても早食いや急な飲水が原因で空気を多く飲み込み、しゃっくりやゲップを引き起こすことがあります。

適切な食事のペースを保ち、飲水時の環境を整えることで、しゃっくりやゲップを減らせるでしょう。

冷たいものを食べた時

猫が冷たい食べ物や水を摂取すると、冷たい刺激が直接横隔膜に伝わることがあります。食べ物や水の温度が急に低くなることで内臓が反応し、横隔膜がけいれんを起こしてしゃっくりが発生するのです。

また、室内の寒暖差や吸い込む空気の温度差も横隔膜への刺激となりうるため、生活空間の温度管理も重要となります。冬場など寒い時期は、猫が飲む水をぬるま湯にするなど、温度差を緩和する工夫をすると良いでしょう。

激しい運動をした時

猫が激しく走り回ったり、遊んだりした後にしゃっくりが起こることがあります。特に食後の運動は、胃や内臓が激しく動いてしまい、横隔膜に負担をかけてしまいしゃっくりが起こります。胃拡張捻転症候群の原因にもなるため、特に注意しなければいけません。

食後は猫を遊びに誘わず、ゆっくりと休ませてあげましょう。もし猫が自然に遊び始めたり、他の猫とじゃれ合ったりする場合は、食後はケージに入れて落ち着かせる時間を作ると良いでしょう。

ストレスや不安を感じた時

猫がストレスや不安を感じると、しゃっくりが発生することがあります。不安や緊張が原因で、猫の呼吸が早くなり、胃腸や横隔膜に異常な圧力がかかるためです。特に、猫が不安を感じると体が緊張し、胃腸が収縮することがあります。これが横隔膜に刺激を与え、しゃっくりを誘発します。

しゃっくりが特定の状況で頻繁に起こる場合、その状況が猫にとってストレスの原因である可能性が高いと考えて良いでしょう。攻撃行動をみせる、自身を過剰に舐めるといった行動は、ストレスや不安のサインであることが多いです。

ストレスや不安を減らすためには、知育トイでおやつを与えて猫の注意を引きつけたり、十分な運動や遊びを提供したりすることが効果的と言われています。また、状況が改善しない場合、行動治療を行う病院を受診し、専門的なアドバイスを求めるのも良いでしょう。

愛猫に合った方法でストレスを管理し、穏やかな環境を提供することで、しゃっくりの発生を抑えられるかもしれません。

しゃっくりが出る病気もあるので要注意

しゃっくりが出る病気はどのようなものがあり、どのように注意していけば良いのでしょうか。猫のしゃっくりについて、生理現象以外に考えられる病気を詳しくみていきます。

心臓病

心臓病がしゃっくりの原因になることがあります。特に肥大型心筋症や拡張型心筋症など、心臓の病気で心臓自体のサイズが大きくなると、心臓が気管を圧迫し、咳やしゃっくりを引き起こす要因となります。

心臓が肥大すると、心機能の低下を伴いながら症状が悪化します。しゃっくりだけでなく、咳も同時にみられることがあります。さらに進行すると、胸水が貯留したり、肺水腫の発生などにより呼吸困難を引き起こしたりする場合もあります。

これらの症状がみられた場合、すぐに動物病院を受診して心臓の検査を受けなければいけません。

脳神経の病気

脳の病気が原因で、猫にしゃっくりのようなけいれんが見られることがあります。このような症状は、てんかん、脳腫瘍、脳炎、水頭症、脳や脊髄などのさまざまな病気によって引き起こされることがあるものです。

呼吸に関連する、筋肉をコントロールしている神経に影響を与えることがあり、結果としてしゃっくりや、しゃっくりに似たけいれんが発生することがあります。

猫が健康な状態でも、寝ている間に突然ビクッとしたり、バタバタとした動作をしたりすることがありますが、これらは一時的なものであり、通常は心配する必要はありません。

しかし、けいれんが繰り返し起こる、激しいけいれんが5分以上続くなどの場合は、脳や神経系の問題が疑われるため、緊急性が高い状況と考えられます。

猫にとって苦痛を伴う場合や、他の重篤な健康問題を引き起こす可能性があるため、早期発見と適切な治療が求められます。

消化管の病気

消化管の病気のなかで、特に消化管の腫瘍や胃腸炎などが原因で、胃腸が異常に拡張する場合、横隔膜を刺激してしゃっくりが発生することがあります。

これらの病気は、胃や腸の機能に直接影響を与え、内部の圧力を異常に高めることがあるものです。その結果、横隔膜が反応してしゃっくりが引き起こされます。

消化器系のトラブルによるしゃっくりは、ただのしゃっくりとは異なり、猫の元気がなくなる、嘔吐を繰り返す、腹部が腫れ上がる、体重が減少するなどの他の症状が見られる場合が多いです。これらの症状は病気の進行を示していることがあるため、見過ごさず早期に対処することが重要になります。

特に腫瘍は高齢の猫によく見られますが、どの猫にも発症する可能性のあるものです。

胃腸炎の場合は、人間同様ストレスや食事の変化など、ささいなことが原因で発症します。

早期発見、早期治療が大切となってくるため、日頃から猫の行動や体調に注意を払い、異常がみられた場合には早めに獣医師の診察を受けましょう。

病気は猫にとって深刻な問題です。しゃっくりという形で初期症状があらわれることがあるため、普段とは異なるしゃっくりがみられた場合は、一時的なものと決めつけず他の症状がないかなどの注意を払いましょう。

病院を受診した方が良いしゃっくりは?

人間と同じで、猫のしゃっくりも基本的に自然に治ります。しかし、以下のような状態が続いている場合は注意しなければいけません。

自然に治るしゃっくりではなく、何らかの病気が隠れている場合があります。

しゃっくりが半日以上続く

猫のしゃっくりは通常、短時間で自然に治るものですが、半日以上しゃっくりが続く場合は注意が必要です。

しゃっくりが長く続くということは、横隔膜やその周辺の神経に何らかの刺激があると考えて良いでしょう。

猫が通常よりも長くしゃっくりを続けている場合、ただしゃっくりしているだけでなく、その間に、繰り返し止まったり始まったりすることが多いです。この症状は、疾患によるしゃっくりの特徴で、1日以上続いたり頻繁に繰り返されたりする場合には、特に警戒しなければいけません。

また、しゃっくり自体の持続時間が半日未満であっても他の症状が伴っている場合は、様子を見るのではなく早めに動物病院を受診することをおすすめします。

しゃっくり以外に気になる症状がある

猫がしゃっくりをする際に、嘔吐、食欲不振、苦しそうな呼吸、体調不良の兆候など他の症状が伴う場合は、ただのしゃっくりではなく、何らかの健康問題が潜んでいる可能性があります。

食事や飲水後に頻繁に嘔吐する場合、胃拡張捻転症候群や腸閉塞など、命に関わる疾患が原因のしゃっくりかもしれません。

また、猫が普段好きな食べ物を食べなくなったり、全体的に食欲が落ちていたりする場合は、消化管で問題が起きていることが多いです。

その他、口を開けて苦しそうに呼吸をする開口呼吸は、特に緊急を要する呼吸器系の疾患が進行しているサインです。

これらの症状がみられる場合には、しゃっくりもそれぞれの病気の一症状である可能性が高く、ただしゃっくりしているだけではなく、深刻な健康問題が隠れている可能性があります。

元気がない

猫がしゃっくりをしているときに元気がなくなったり、ぐったりしていたりする様子を見せる場合は、何らかの病気の兆候である可能性が高いです。

猫は本能的に体の不調を隠す動物で、明らかに症状があらわれるときには、その症状が進行していると考えて良いでしょう。

このような状況では、しゃっくり自体が直接的な原因ではなく、他の健康問題が隠れている可能性があります。特にしゃっくりが連続して発生しており、それと同時に猫が普段と異なる様子を見せる場合は、速やかに動物病院に連れていくことが重要です。

診察の際には、猫のしゃっくりや他の症状を正確に伝えるため、しゃっくりの様子を動画で撮影しておくと役立ちます。これにより獣医師は症状をしっかり理解でき、適切な診断と治療を行えます。

まとめ

猫のしゃっくりは多くの場合、一時的な生理現象ですが、しゃっくりが長く続く、元気がなくなる、嘔吐が伴うなど他の症状がみられる場合は、病気が隠れている可能性があることがわかりました。しゃっくりとともに、何か気になることがある場合は、早めに獣医師に相談することが大切です。

猫の異常を正確に伝えるために、しゃっくりの様子を動画に撮り、診察の際に獣医師に見せると良いでしょう。早期発見、早期治療が愛猫の健康を守ります。

この記事が、猫のしゃっくりを心配している飼い主にとって役立つものになれば幸いです。

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