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【獣医師監修】猫が毛づくろいするのはなぜ?理由や注意点・ブラッシングをするメリットを解説

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はじめに

猫好きなら猫がぺろぺろと毛づくろいしている場面を、何度も見たことがあると思います。

猫は、しょっちゅう毛づくろいをしているイメージがありませんか。

それもそのはず、猫は起きている時間の3割くらいは毛づくろいをしているといわれています。起きて活動している時間を10時間としたら、3時間は毛づくろいをしている計算になります。

しかし、単なるくせや習慣でおこなっているだけではありません。一見、同じように見える毛づくろいも、猫にとってはさまざまな意味を持つ大切な行動です。

今回は猫が毛づくろいをする理由や、注意点、安心して毛づくろいをさせてあげるために飼い主さんにぜひしていただきたいブラッシングについても解説いたします。

猫が毛づくろいするのはなぜ?

これほどの時間をかけて、猫が毛づくろいをするのにはさまざまな意味があります。

いつも同じようにみえる毛づくろいが、猫にとって実は異なる理由でおこなわれていることも十分に考えられます。

猫が毛づくろいする主な理由を1つずつみていきましょう。

毛並みを整えるため

猫には換毛期があり、毛が生え変わる際にごっそりと抜け落ちるため、この時期にそのまま放置すると不要になった抜け毛が絡んで毛球になってしまいます。

体を舐めて、余計な毛を落とすことで、毛球のない整った毛並みをキープさせています。

猫の舌は糸状乳頭(しじょうにゅうとう)と呼ばれるざらざらとした無数の突起があり、ブラシのような構造になっています。

この特徴的な舌で体を舐めて、不要な抜け毛をしっかりと除去しているのです。

体を清潔に保つため

猫はとてもきれい好きな動物なので、汚れることを嫌います。

猫の被毛には、汚れやノミ・ダニなどが付着していることがありますが、毛づくろいをすることで、不要な毛と一緒にそれらを取り除いています。この際には、ただぺろぺろと舐めるだけでなく、被毛を噛んだり、ほぐしたりするような仕草もみせます。

また、汚れだけでなくニオイが体に残ることを好まず、食事のあとや排泄のあとには自分の体についているニオイを消すために毛づくろいをします。

これは狩猟動物である猫が、敵や獲物に気付かれないよう自身のニオイを周りに漂わせたくないことが関係しているといわれています。

体温を調節するため

人間は暑くなると、汗腺から汗をかくことで体内の熱を放出し、体温を下げます。しかし、猫は汗をかく汗腺が肉球にしか存在しないため、汗をかいて熱を放出できません。

そこで、体温調節のために毛づくろいをするときに、被毛に唾液をつけ、唾液を蒸発させることで気化熱により体温を下げています。夏の毛づくろいは暑さ対策のためにおこなわれることも多くなります。

また、冬の毛づくろいには被毛のあいだに空気を含ませて、熱を逃がさないようにする効果があります。

気持ちを落ち着かせるため

緊張や不安、イライラしているときなど、ストレスを感じると猫は毛づくろいを始めます。

人間が深呼吸をするように、自ら気持ちを落ち着かせるための行動です。

この場合の毛づくろいは、全身をなめるというよりも、どこか一定の場所を短い時間だけ舐めることが多いようです。

しかし、強いストレス状態が続くと、同じ場所を執拗に舐め続け、被毛が剥げてしまうことがあるほどです。

そのため、強いストレスでの毛づくろいはあまり放置しておくのは猫にとって望ましい状況ではないので、ストレスの原因を取り除いてあげる必要があります。

大きな音や、知らない人が訪ねてきたなどの一過性のことにストレスを感じているときは、すぐに落ち着くことが多いのでさほど心配はいりません。しかし、多頭飼いを始めたときや、引越したばかりのときなど慣れるまで時間のかかるものや、見直しが必要なケースでは、ストレスを感じ過ぎないよう注意しなければなりません。

他の猫とのコミュニケーションのため

多頭飼いしているご家庭などでは、猫同士がお互いを舐めあっているのをみたことがあるのではないでしょうか。

これは「アログルーミング」といって、愛情や信頼の表現方法の1つとされています。

アログルーミングでは、自分では舐めることができない頭や首、耳などを舐めることで信頼関係をより深めていきます。

猫同士以外でも、飼い主さんに対して猫が舐めてくる行動は、愛猫からの信頼や愛情表現なのです。

猫が毛づくろいをするタイミング

猫は1日のなかで、多くの時間を毛づくろいに割いていますが、そのタイミングは習慣としてだいたい決まっています。

猫がよく毛づくろいをするタイミングをご紹介します。

食事の後

食後に毛づくろいをする猫は多く、口の周りや前足についた汚れをキレイに舐めとり、そのまま全身を毛づくろいしていきます。

今は家の中で飼い主さんにご飯をもらっていますが、もともと猫は狩猟動物のため、食事のニオイを敵に気付かせないよう舐めてきれいにしています。

くつろいでいる時

遊び終わったあとや、トイレのあとなどリラックスした状態のときにも毛づくろいをします。体に付いた汚れやニオイを落とし、舐めることで自分のニオイを体に付けていきます。

くつろいでいるときの毛づくろいは、かなり入念におこなわれることが多く、前足、顔、背中、お腹、お尻、後ろ足といったように時間をかけて全身をくまなく舐めていきます。

不安やストレスを感じている時

猫は神経質な動物のため、些細なことでもストレスに感じてしまうことがあります。大きな物音や来客などの一過性のものから、引っ越しや、新たに猫を迎え入れたときなどさまざまな場面でストレスを感じた時に毛づくろいをすることがあります。

あまりにストレスが強過ぎると、同じ場所を執拗に舐めてしまい、被毛が抜けてしまうことがあるので気を付けてあげてください。

猫同士で毛づくろいしあう時

アログルーミングという猫同士の愛情表現の1つで、同じ環境で暮らす仲のよい猫同士によくみられます。

頭や首などお互いの舐めづらい場所を舐めあうことによって、信頼関係を深めていきます。

毛づくろいの仕方がいつもと違う時は注意

毛づくろいは猫にとって毎日の日課となっていますが、明らかにいつもと違う毛づくろいを見かけたら注意が必要です。

強いストレス状態や体に異常があることもあり、見逃すとさらに悪化させてしまうことがあります。

まったく毛づくろいをしなくなってしまった場合にも、体に異変が起きていることが多いため注意が必要です。

具体的に、注意すべき行動を解説いたします。

細かく噛む

いつもの毛づくろいと違い、体を細かく噛んでいるときは汚れを取っているのではなく、その部分がかゆいために噛んでいることが多いです。

多少のかゆみならば、治まればすぐに噛まなくなりますが、あまりにも頻繁に自分の体を噛んでいるようでしたら、ノミやダニの寄生や、アレルギー性の皮膚炎の可能性があります。

そのまま放置して噛み続けると、被毛が抜け、患部が傷ついてしまうこともあります。また、虫の寄生や皮膚炎は治療が必要となるため、噛み続けているようでしたら獣医師に相談しましょう。

激しく舐める

激しく舐めるケースも、皮膚などに炎症があり、かゆみのために噛んでいる場合や、強いストレスにより気持ちが落ち着くまでずっと激しく舐め続ける場合などさまざまな理由があります。

いずれにしても、激しく舐め続けることは猫の体にとって望ましくはありませんので、飼い主さんが原因を取り除いてあげましょう。

明らかにいつもと様子がおかしく、激しい毛づくろいをしているようならば、肉体的な問題なのか精神的な問題なのか、猫の様子をしっかり観察してください。

皮膚炎など体に問題があれば動物病院を受診して治療をおこない、精神的なものであれば、なにか猫が落ち着けない原因があるはずなので、問題の解決によって落ち着ければ異常な毛づくろいは治まる可能性が高くなります。

毛づくろいをしない

毛づくろいは猫にとって、毎日欠かせない行動です。もし猫が毛づくろいをしなくなってしまったら、それは猫にとって大きな問題です。

毛づくろいをしなくなる理由はいくつかあります。

1つは加齢によるものです。高齢になると体を自由に動かせなくなることもあり、若い頃のように毛づくろいができなくなることがあります。さらに心配なのは認知機能低下により毛づくろいをすること自体を忘れてしまっているケースもあります。

ほかに肥満が原因で毛づくろいをしなくなるケースです。太りすぎた猫は脂肪が邪魔をして体をうまく曲げることができずに毛づくろいができなくなってしまうことがあります。

次に、健康面に問題を抱えていると、痛みやつらさで毛づくろいをしなくなることがあります。例えば口腔内に病気を抱えて口が痛い、関節の炎症で体が曲げられないなど年齢に関係なく病気を抱えていると毛づくろいがしたくてもできないことが考えられます。

毛づくろいができなくなると、毛球の原因となり、さらなる皮膚のトラブルやストレスの原因となるのでブラッシングなど、飼い主さんによる対策が必要です。

猫は抜け毛を飲み込んでもいい?

猫は毛づくろいをすると、抜けた毛のほとんどを飲み込んでしまいます。

かなりの量の毛を飲み込んでいるはずですが、猫にとって抜け毛は飲み込んでもよいものなのでしょうか。

少量ずつ便の中に混じって排出される

飲み込んだ抜け毛が少量ならば、通常は少量ずつ便に混じって排出されます。気をつけなければならないのは、便に混じっている抜け毛の量です。

混じっている抜け毛の量が多いようならば、体内に詰まらせてしまうことがあるので、ブラッシングなどで補助してあげたほうがよいでしょう。

胃の中で毛球になって吐き出す

便に混ざらずに胃の中に残っていた抜け毛が、胃の中で毛球になり胃の粘膜を刺激すると吐き出すことがあります。

猫が嘔吐をするととても心配ですが、問題なく吐き出せているのならばさほど心配はいりません。

しかし、吐く仕草を何度もしていながら、吐き出せない状態が続くと、胃酸が逆流することで食道を刺激して食道炎を発症してしまうことがあります。そのまま放置すると嘔吐の頻度が増え、食欲不振や元気がなくなるなどの症状がみられるようになります。

毛球症になることがあるので注意

毛づくろいをした毛球が便や嘔吐によって排出されないままでいると、体内で大きな毛球になり毛球症になってしまうことがあります。

毛球症とは、飲み込んだ毛球が排出されずに大きくなってしまい、胃腸に溜まってしまう病気です。大きくなると自然排出が難しく、腸などに詰まると最終的には開腹手術をしなければならないことがあるので注意が必要です。

抜け毛が多い時期は気をつける

通常でも長毛種の場合は抜け毛が多いため、体内で毛球にならないようブラッシングなどをしてあげる必要がありますが、短毛種の場合でも抜け毛の多い時期にはかなりの毛が抜けることがあるので、長毛種同様に抜け毛対策をしなければなりません。

猫にブラッシングをするメリット

猫が大量の抜け毛を飲み込んでしまわないようにするために、ブラッシングは欠かせません。

ブラッシングをすることが猫にとってどのようなメリットがあるのか、解説します。

飲み込む毛量を減らせる

ブラッシングの大きなメリットは、毛づくろいにより飲み込む抜け毛の量を減らせることです。抜け毛の多い時期でなくても可能な限り毎日ブラッシングをしてあげることで、猫がいつ毛づくろいをしても飲み込んでしまう毛の量を減らすことができます。

ブラッシングをしても、毛づくろいをすれば毛を飲み込んでしまうことは避けられませんが、抜け毛の量を少量に抑えることで、一度に飲み込む量を減らせるので、胃腸の中に毛球ができにくくなるため毛球症対策として効果的です。

汚れを落とせる

猫が毛づくろいをおこなう目的の1つに体を清潔に保つことがあります。ブラッシングでも同じように汚れを落とす効果が期待できます。

毎日のブラッシングで、不要な毛とともに汚れを落とすことで、寄生虫や臭い対策につながります。

健康の維持に役立つ

ブラッシングをしないでいると、被毛がもつれてしまいそこから皮膚に炎症などが起こることがあります。また、まとまった抜け毛を飲み込んでしまうと毛球症を発症する可能性が高くなりますが、ブラッシングをこまめにおこなうことで、それらの病気の予防になるため愛猫の健康維持に役立ちます。

シニア猫は毛づくろいをしなくなるのでブラッシングが必須

人間同様に、年齢を重ねると今まで当たり前にしてきたことができなくなります。猫も毎日の日課であった毛づくろいをしなくなることがあります。

また、体力があっても認知症になってしまうと、毛づくろいしようとする意思がなくなってしまうこともあるので、飼い主さんが意識的に毛づくろいの代わりにブラッシングをしてあげなければなりません。

ブラッシングに慣れさせるには?

こまめなブラッシングをおこなうためには、猫にブラッシングは嫌なことではないと知ってもらう必要があります。スムーズにブラッシングするために大切な3点を解説します。

子猫の時からブラッシングを始める

すべてのことに共通していますが、ブラッシングを習慣づけるためには子猫の頃から日課として慣れてもらうことが重要です。

成猫になってからいきなり始めると、どうしても警戒心の強い猫は抵抗してしまい、近くに寄ってこなくなる子が多いので、子猫のうちに始めておきましょう。

最初は短時間から始める

いきなり長時間ブラッシングをすると、猫にとって苦痛の時間となってしまい大きなストレスになってしまいます。そのため、最初のうちは時間を決めて、ブラッシングがすべて終わらなくても短時間で切り上げるようにしてください。

慣れてきたら少しずつ時間を延ばしていくとよいでしょう。始めのうちは部位ごとに分けて、別の場所は次回にする、といったように分けておこなうのがおすすめです。

嫌がったらすぐにやめる

もしブラッシングをするときに嫌がるそぶりをみせたら、すぐにやめてください。無理に続けると猫にとってトラウマになり、ブラシを見ただけで逃げ出してしまいブラッシングをさせてくれなくなります。

ブラッシングができたらご褒美をあげる

子猫の頃から、ブラッシングをさせてくれたらご褒美をあげましょう。ブラッシングとご褒美をセットにして習慣づけることで、猫にとって「ブラッシングは嫌なことじゃないんだ」と覚えさせることができます。

まとめ

猫の毛づくろいに関して解説いたしました。毛づくろいは猫が本能的におこなう習慣ですが、飼い主さんがサポートをしてあげないと毛球症などを引き起こし、愛猫が苦しんでしまうことがあります。

また、毛づくろいの様子を毎日しっかりと観察しておくことで、猫の心身の健康状態を確認する手掛かりになるので、どこか悪くないか、強いストレスを抱えていないか、今回ご紹介した内容を参考に注意していただけるとよいでしょう。

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