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はじめに
家族の一員である猫が何かを誤って食べたり飲んだりしてしまった場合、飼い主としてはとても心配になってしまいます。
このような緊急事態を冷静に判断するためには、正しい知識と迅速な対応が求められます。
この記事では獣医師監修のもと、猫が誤食・誤飲した緊急の際に役立つ情報を詳しく解説します。
誤食・誤飲の危険物リスト
猫が誤食・誤飲してしまったものの中には、特に危険性の高いものや注意が必要なものがあります。
どのような危険があるのかを判断しましょう。
危険性の高いもの
猫にとって危険性の高いものがあります。
それはどれも身近なもので、あなたの家庭にもあるものがほとんどです。
紐状のもの
紐状の物を誤食・誤飲してしまった場合は非常に危険です。
猫が紐や糸のようなものを飲み込むと、消化管を通過する際、紐が腸に絡まり腸が折り畳まれたようになってしまうことがあります。
これにより、腸閉塞や腸のねじれに繋がる危険性があるため大変危険です。
この場合、緊急の手術が必要になるため、紐状のものの誤飲には注意しなければいけません。
ネギ類
どの部分でも与えてしまうと危険を伴い、ネギ中毒を引き起こしてしまいます。
早い場合誤食後、2〜4時間で症状があらわれます。
ネギ中毒はネギ類に含まれる「有機チオ硫酸化合物」が原因です。
赤血球内のヘモグロビンが酸化すると、赤血球内にあるハインツ小体が出現します。
そのハインツ小体を持つ赤血球は、壊れやすくなるため、体は貧血状態に陥ります。
そのため、食欲低下やふらつきなどの症状につながります。
有機チオ硫酸化合物は熱にも加工にも強いため、どのように調理しても危険性は変わりません。
ネギ中毒による解毒剤は存在しないため、胃の中に入っているものを吐き出させるか、症状が重い場合麻酔をかけて胃の中を洗う処置が行われます。
チョコレート
中毒物質である、カフェインとテオブロミンが入っているチョコレートは非常に危険な食材です。チョコレートだけでなく、ココアパウダーにも含まれます。
どのくらいの量を摂取したかによっても変わってきますが、チョコレートを口にした場合には、中枢神経や循環器、消化器に作用しダメージを受ける可能性があります。
中毒の症状には、嘔吐、下痢、痙攣など最悪の場合には死に至ることもある猫にとっては非常に危険なものです。
テオブロミンの無毒化には時間がかかる上、猫は無毒化する能力が少ないため、少量でも大変危険です。
万が一食べてしまった場合には、チョコレートを吐き出さないといけません。
すぐに獣医師の診断を受けましょう。
花や観葉植物
自宅で飾っている花や観葉植物を猫は何気なく噛んだりする場合があります。
しかし猫にとって植物は危険なものが存在します。
ユリ科の植物は猫が摂取すると腎臓への毒性から急性腎障害を引き起こし、最悪死に至る場合がある、とても危険性の高い植物です。
ユリの花、葉、花粉、ユリを入れた花瓶の水も、猫にとっては少しの量で中毒を引き起こす可能性があります。
誤飲後1〜3時間以内に嘔吐、食欲不振、意識レベルの低下などの症状があらわれます。
ユリ科の花は猫の届く範囲に絶対に置かないようにすることが重要です。
観葉植物の中にも、猫に有害な種類が多く存在します。
観葉植物として人気のある、ポトスやモンステラなどのサトイモ科の植物も危険です。
シュウ酸カルシウムが結晶状態で多く含まれているため、猫が口にしてしまうと口腔内に炎症や疼痛を引き起こし、嘔吐してしまうことがあります。
観葉植物を置く場合には、猫に有害ではないことを確かめた上で置きましょう。
要注意なもの
猫砂、ティッシュペーパーの端
飲み込んだ量と形によって変わってきます。そのまま消化管を通過するものから、形状によっては詰まってしまう可能性のものもあります。
形状が小さければそのまま排便される可能性もあるため、どれくらいの量や形のものを摂取してしまったのかをまずは確認することが大切です。
ティッシュペーパーに興味を持っている猫を飼っている場合には、誤食することがないよう、常に片付けておきましょう。
洗剤、シャンプーなど
洗剤やシャンプーなどには、猫にとって有害な化学物質を含んでいるものがあります。飲み込んだ量によって症状に差があります。
少量であれば症状が出ずに済むこともありますが、中には少量でも中毒性の高いものもあるので注意が必要です。
洗剤やシャンプーなどを舐めてしまった場合には、まずは猫の口の周りや体に液体が残っていないか確認し、それ以上飲み込まないようにすぐに洗い流し、必要に応じて動物病院を受診しましょう。
猫が誤食・誤飲した時の対処法
猫が危険な物を誤食・誤飲した場合、まずは速やかに動物病院に連れて行くことが肝心です。この迅速な対応が、猫の健康を守る上で最も重要といえます。
しかし、その際飼い主も冷静に対応しなくてはいけません。
パニックに陥ると、適切な判断や猫へのケアができなくなるため、落ち着いて行動することが求められます。
すぐに動物病院へ連れて行く
猫が有害物質を誤食・誤飲した場合、最も重要な対処法はすぐに動物病院に連れて行くことです。
迅速な対応が猫の命を救う鍵となります。
病院へ行く際は、可能であれば猫がどのような物を誤食・誤飲したのかわかるように持参しましょう。それにより、獣医師は猫の状態を正確に把握し、適切な治療を迅速に行うことができます。
特にチョコレートや薬物、毒物を含む植物など、すぐに処置しなくてはいけない場合は、何をどれくらい摂取したのかは重要になるため、冷静に説明できるようにしておきましょう。
飼い主が焦ってはだめ
猫が何かを誤食・誤飲した時、飼い主が冷静さを失ってしまうことはよくあることです。
猫のことを大切にしているからこその自然な反応ですが、飼い主が冷静さを保つことが大切となります。
焦りは正しい判断を妨げるため、落ち着いて対処することで、猫へ正しいケアができます。
大声をあげて、急いで取り上げるようなことはせず、まずは落ち着いて誤食・誤飲したものが何か、どれくらい口にしているかを把握しましょう。その際、猫を観察し、異常な行動をしていないか、おかしな症状が現れていないかを確認します。
必要であれば、獣医師に電話で相談し、病院へ行くかどうか判断を仰ぎましょう。
飼い主が冷静に獣医師に状況や症状を伝えることにより、適切な診断を受けられます。
動物病院へ連れて行く際には、安全運転を心がけ、猫に余計なストレスを与えないように声かけをしながら連れて行ってあげましょう。
この場合、最も大切なことは猫の安全を一番に考えることです。
猫が誤食・誤飲した時の緊急性
猫が何か危険な物を誤って摂取してしまった場合、その緊急性を正しく把握しなければいけません。
誤食・誤飲のすべてが獣医師の介入が必要というわけではないため、緊急を要するかどうか、まずは飼い主の判断に任されます。
どのような症状が緊急性を要するかを正しく理解し、適切に行動しましょう。
すぐに病院へ行くべき症状
猫が誤食・誤飲した際に見せる症状の中には、すぐに獣医師の診断が必要なものがあります。
以下のような症状があらわれた場合、迅速な対応が求められます。
嘔吐・食欲不振
猫が誤食・誤飲した後に嘔吐や食欲不振の症状があらわれた場合、これは消化器系の問題や中毒の可能性があると考えられます。
嘔吐は体が有害物質を排出しようとしている反応かもしれません。
また食欲不振は腸閉塞で腸が動かなくなっていることが原因の可能性もあります。
その場合、お腹を触ると痛みで嫌がるそぶりを見せることもあるため、速やかに獣医師の診断を受ける必要があります。
痙攣・麻痺
誤食・誤飲によって猫が痙攣や麻痺の症状が出ていた場合、神経系への深刻な影響を受けていると考えられます。
このような症状は、特定の毒素や薬物が原因で起こることが多く、緊急の処置が必要です。
呼吸困難
猫が誤食・誤飲後に呼吸困難の症状が見られた場合、深刻な状況をあらわしています。
呼吸器系への影響や、アナフィラキシーショックなどのアレルギー反応、飲み込む途中で食道に詰まってしまっていることが考えられるため、早急に動物病院に連れて行きましょう。
湿疹
猫が誤食・誤飲した際に湿疹があらわれるということは、アレルギー反応や皮膚への刺激が原因である可能性があります。
特定の植物や化学物質に対する過敏反応によって湿疹が発生することがあり、これは猫が不快感を感じている証拠です。
湿疹は赤み、かゆみ、腫れなどがあり、猫が自分で舐めたり噛んだりすることによって、症状が悪化してしまう場合があります。
このような皮膚の異常があらわれた場合には、猫が誤食・誤飲してしまった物質に反応している可能性が高いと考えられます。
多尿、無尿、血尿
猫に多尿、無尿、または血尿の症状があらわれた場合、腎臓や尿路系の重大な問題が考えられます。
ネギ類を与えてしまった場合には、血尿の症状があらわれる場合があります。
少しの量でも、危険性の高いユリ科の植物を口にしてしまった場合には無尿に陥り、急性腎不全になってしまった場合には死亡率が非常に高くなってしまいます。
また中毒により、尿の量が極端に増えることもあります。
他の症状同様、尿の量などもしっかり管理しましょう。
よだれを垂らしている
猫が異常な量のよだれを垂らしている場合、口の中への刺激や消化器系の問題、中毒の兆候である可能性が考えられます
よだれは猫が不快感を感じていることをあらわしており、獣医師の指示を仰がなくてはいけません。
様子を見てもいい症状
猫が誤食・誤飲をしても、全ての場合が緊急性を要するというわけではありません。
毒性の低い物質、細かくて小さい物、辺縁が丸いものなど、比較的安全と考えられる物を摂取した場合には様子を見てもいいことがあります。
このような状況の場合、猫の行動や健康状態を注意深く観察することが大切です。
毒性が低いものを食べた
猫が毒性が低いものを誤食した場合は緊急性があまり高くないため、すぐに獣医師に相談する必要はありません。
例えば、人間用の食品や植物など一部のものは軽度の胃腸の不調を引き起こす可能性はありますが、深刻な状態にはならないことがほとんどです。
このような場合には、猫の様子を観察し異常が見られない限り、慌てずに様子を見ておきましょう。
細かくて小さいものを食べた
猫が非常に小さくて柔らかい物質を誤食した場合、大抵は自然に消化されるか体外に排出されます。
小さな食品や柔らかい素材の小物は、食べた量やその大きさにもよりますが、通常猫の消化器系で問題を起こすことはありません。
ただし、猫が異常な行動をしていたり、消化不良の兆候が見られたりする場合には、獣医師に相談する必要があります。
辺縁が丸いものを食べた
鋭利なものではなく、辺縁が丸いものを誤食した場合、消化管を傷つけるリスクは低いと考えられます。小さなビーズや丸いプラスチック片などは、食べた量やその大きさにもよりますが、刺激や損傷を引き起こさずに消化管を通過する可能性が高く緊急を要するものではありません。
それでも猫が不調をあらわしたり、そのほかの症状が見られる場合には獣医師の診断を受けましょう。
病院での費用と治療法
猫が誤食・誤飲により病院を受診する際、治療費用と治療法は気になるところです。
治療費用は摂取した物質の種類や猫の症状の重さによって変わり、治療法は猫の健康状態と摂取したものによって変わってきます。
平均費用
猫が誤食・誤飲した際の病院での治療費用は、状況によって大きく変わってきます。
一般的な診察料や基本的な治療費用から、緊急手術やレントゲン検査、血液検査の他に、長期にわたって治療が必要な場合の高額な費用までさまざまです。
平均的な治療費用は数千円〜数万円の範囲内になることが多いですが、状況によってはそれ以上になる可能性もあります。
手術代に加えて全身麻酔にかかる費用においても、猫の体重によって金額に変動があり、5000円〜15000円かかるといわれています。
ペット保険の加入状況や飼い主の治療方法の選択によっても変わってくるため、獣医師としっかり話し合い相談することが大切です。
治療法
猫が誤食・誤飲した場合の治療法は、接種した物質や種類、猫の健康状態によって変わってきます
軽度の症状の場合、経過観察や症状に応じた薬物治療が行われ、中毒物質を摂取した場合は催吐処置、腸閉塞などの場合は緊急手術が行われます。
また中毒症状がある場合には解毒治療なども行われます。
ここでも、どのようなものを誤食・誤飲してしまったかの情報はとても重要で、針などの尖ったものを誤飲した場合には催吐処置は行えません。
治療法の選択は、獣医師の診断のもと、猫にとってどれが最適な方法かを考え決められます。
まとめ
この記事では、猫が誤食・誤飲した際の緊急性と対処法について詳しく解説しました。
重要とされることは、猫にあらわれる緊急を要する症状を見逃さず、適切なタイミングで獣医師に相談することです。
治療費用と治療法は状況によって異なりますが、猫の健康を最優先に考えることが大切です。
日頃から猫の健康に注意を払い、万一の場合に備えておきましょう。
この記事を見て、少しでも冷静に判断できる知識をつけてもらえると幸いです。