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はじめに
猫の体にしこりや腫れのようなものができて心配になったことがある方も多いと思います。
できものは体の異常を示している可能性があるので、見つけたらすぐに対処することが大切です。
今回は、猫のできものについて紹介します。主な原因や疑われる病気を詳しく解説しますので、できものができた時に適切に対処できるようになりましょう。
猫のできものとは?
まず、猫のできものとは何か紹介します。該当する状態や医学的な呼び方について解説するので、詳しく見ていきましょう。
しこりや何らかの腫れもののこと
猫のできものは、一般的にしこりや腫れた部分を指します。できものは、皮膚や体の内部に現れ、触れると硬い塊として感じる場合が多いです。
見た目に異常がない場合でも、触ったときに初めて気づく場合があります。
できものの大きさや形状は様々で、急激に大きくなるものもあれば、長期間にわたってゆっくりと成長するものも多いです。
猫の皮膚に現れるしこりや腫れは、日常的なけがや虫刺され、アレルギー反応によるものから、もっと深刻な病気に起因する場合もあります。
猫のできものに気づいたら、そのままにせず、できるだけ早く獣医師に相談することが大切です。
医学的には腫瘤という
猫のできものは、医学的には腫瘤(しゅりゅう)と呼ばれます。腫瘤とは、体内に生じる異常な塊や腫れを指す医学用語です。
腫瘤の原因としては、細胞の異常な増殖や炎症が関与していることが多いです。腫瘤が見つかった場合、性質を判断するために獣医師による検査を受けましょう。
猫のできものの主な原因は?
次に、猫のできものの主な原因を紹介します。
- 炎症によるもの
- 過形成によるもの
- 腫瘍によるもの
それぞれ詳しく紹介するので、愛猫にできものがある場合、どれに当てはまるかチェックしましょう。
炎症によるもの
まず、猫にできものができる原因は炎症が起きているからです。炎症が起こる要因や長引くとどのようになるか解説しているので、詳しく見ていきましょう。
細菌や真菌感染によって腫れて硬くなったもの
猫のできものの原因の一つは、細菌や真菌の感染です。猫の皮膚や体内に細菌や真菌が侵入すると炎症が発生し、皮膚や組織が腫れ、硬くなる場合があります。
例えば、他の猫とのけんかで傷を負った場合、細菌が傷口から侵入して感染を引き起こし、できものが形成されるのです。
また、真菌感染はカビの一種である真菌が皮膚に侵入し、かゆみや炎症を引き起こします。
感染すると、感染部位は赤く腫れ、時には硬いしこりとして感じやすいです。特に、真菌による感染は湿気の多い環境や、免疫力が低下している猫に多く見られます。
炎症が長引くと肉芽腫を形成することがある
猫のできものが炎症によるものである場合、炎症が長引くと肉芽腫(にくがしゅ)と呼ばれる状態に発展する恐れがあります。
肉芽腫とは、体内の炎症が長期間続いた結果、組織が硬くしこりのように変化したものです。
通常、炎症は一時的な反応で体が自己治癒を行いますが、慢性的に炎症が続くと、細胞が集まりすぎて異常な組織形成が進む場合があります。
肉芽腫は、感染や外傷、異物の侵入などが原因で形成される場合が多いです。例えば、異物が皮膚に残って炎症が起こった場合、囲むように組織が増殖してしこりになります。
痛みがある場合が多い
猫のできものが炎症による場合、多くが痛みを伴います。炎症が起こると、体内で様々な化学物質が放出され、神経を刺激して痛みを引き起こすのです。
特に、細菌や真菌感染が関与している場合、感染部位の組織が腫れて硬くなると共に、痛みが増すケースが多くあります。
猫が痛みを感じている場合、患部を頻繁に舐めたり、触れられるのを嫌がったりする行動が見られやすいです。
また、痛みが強い場合は、元気がなくなる、食欲が落ちる、攻撃的になるなど、行動に変化が現れることもあります。
飼い主は、このような兆候を見逃さず、早めに対処することが大切です。
過形成によるもの
次に、猫にできものができる原因は過形成が起きているからです。過形成の要因や特徴について詳しく見ていきましょう。
正常な細胞が何らかの刺激で過剰に増殖したもの
猫のできものが過形成による場合、できものは正常な細胞が何らかの刺激を受けて過剰に増殖した状態です。
過形成で細胞が異常に増殖してしまうと、しこりのような腫れが形成されます。過形成自体は良性の変化であり、腫瘍ではないことがほとんどです。
過形成によるできものは、猫の体に自然に生じる反応で、傷口の治癒過程で一時的に細胞が増える場合があります。
そのため、細胞の増殖は体の自然な修復機能の一部であり、時間が経つにつれて自然に消えていく場合が多いです。
ただし、過形成によるしこりが大きくなったり、消えずに長期間存在したりする場合は、念のため獣医師に相談しましょう。
通常は痛みがない
過形成による猫のできものは、通常痛みをがないことが特徴です。過形成が細胞の異常な増殖により引き起こされる一方で、炎症や感染が原因ではないため痛みは伴いません。
過形成によるしこりや腫れは、触れても痛がらないケースが多く、猫自身も存在に気づいていない場合があります。
痛みがないできものは、急いで治療が必要ないケースが多いですが、長期間にわたって大きくなる、または形が変わる場合は、できものの性質を確認するために検査が必要です。
特に、急激に大きくなったり、皮膚の色が変わるような兆候が見られたりする場合は注意しましょう。
腫瘍によるもの
最後に、猫にできものができる原因は腫瘍です。腫瘍の分類や特徴について詳しく見ていきましょう。
腫瘍は良性と悪性に分類される
腫瘍は、細胞の異常な増殖により形成されるもので、良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。
良性腫瘍は増殖がゆっくりで、他の組織に侵入することはほとんどなく、通常は命に関わることはありません。
代表的な良性腫瘍には、脂肪腫や乳頭腫、毛芽腫などがあります。通常、外科的に切除すれば再発するケースは少なく、猫にとっても比較的軽度の治療で済む場合が多いです。
一方、悪性腫瘍は周囲の組織や臓器に侵入し、急速に増殖する特徴があります。猫にとって悪性腫瘍は命に関わる深刻な問題であり、早期発見と治療が重要です。
代表的な悪性腫瘍には、リンパ腫や扁平上皮癌、肥満細胞腫、乳腺腫瘍などがあり、放置すると病変部位だけでなく、遠隔臓器にも広がる可能性が高くなります。
猫によく見られる良性腫瘍と悪性腫瘍
次に、猫によく見られる良性腫瘍と悪性腫瘍を紹介します。それぞれに分類される腫瘍の特徴や危険性についてまとめているので、腫瘍についての理解を深めましょう。
良性腫瘍
まず、猫の良性腫瘍でよくみられるものには下記の3つがあります。
- 脂肪腫
- 乳頭腫
- 毛芽腫
良性腫瘍は猫の健康に大きな影響は与えませんが、場合によっては摘出が必要ですので、詳しくチェックしてください。
脂肪腫
まず、猫に見られる良性腫瘍は脂肪腫です。脂肪腫は皮膚の下の脂肪細胞から形成され、触ったときに動きやすく、通常は痛みを伴いません。
脂肪腫はゆっくりと成長し、多くの場合は猫の健康に重大な影響を与えません。特に肥満の猫に発生しやすい傾向がありますが、痩せた猫にも見られる場合があります。
また、猫が高齢になると脂肪腫が発生するリスクが増えるため、老齢の猫では特に注意が必要です。
腫瘍が大きくなって日常生活に影響を与えたり、猫が不快感を感じたりする場合には、獣医師が手術による摘出を推奨する場合があります。
悪性の脂肪肉腫との鑑別診断が必要な場合もあるため、猫の体にしこりが見つかった際には、早めに獣医師に相談しましょう。
乳頭腫
次に、猫に見られる良性腫瘍は乳頭腫です。猫の皮膚や粘膜にできる良性の腫瘍で、ウイルス感染によって引き起こされる場合が多くあります。
外見は小さなカリフラワーのような形状をしており、白っぽく硬いこぶとして現れることが特徴です。
乳頭腫は通常、痛みを伴わないため、猫が存在に気づかないケースが多く、飼い主も発見が遅れる場合があります。
乳頭腫の原因となるパピローマウイルスは、接触によって伝染するため、多頭飼育や外に出る猫が感染しやすいです。
また、発見された乳頭腫は、猫が引っ掻いたり噛んだりすると、出血や二次感染のリスクが高くなります。
そのため、免疫力を強化するための治療や、腫瘍が悪化した場合には外科的に摘出することも検討しましょう。
毛芽腫
最後に、猫に見られる良性腫瘍は毛芽腫です。毛芽腫は、毛包の細胞から皮膚の深部にできる場合が多く、初期には小さな硬いしこりとして現れ、徐々に大きくなる場合があります。
猫の毛芽腫は特に若い猫や中年猫に見られ、単発で発生することが一般的です。毛芽腫は、痛みを伴わない場合が多く、飼い主が撫でているときに偶然発見される場合があります。
良性のため通常は大きな健康リスクを伴いませんが、成長速度や位置によっては摘出を検討しましょう。
診断の際は、細胞診や組織生検を用いて、毛芽腫かどうかを確認することが一般的です。猫の皮膚に異常が見られた場合、良性腫瘍であっても早めに診断を受けてください。
悪性腫瘍
まず、猫の悪性腫瘍でよくみられるものには下記の3つがあります
- リンパ腫
- 扁平上皮癌
- 肥満細胞腫
- 乳腺腫瘍
それぞれの悪性腫瘍の特徴や症状について詳しく見ていきましょう。
リンパ腫
まず、猫に見られる悪性腫瘍はリンパ腫です。リンパ腫は猫に最もよく見られ、リンパ組織ががん化して発生します。
リンパ腫は、全身のどの部位でも発生する可能性がありますが、特に消化器系、胸腔内、鼻腔内で見られるケースが多いです。
原因としてはウイルス感染、特に猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスが関与している場合がありますが、原因不明なことも多いです。
リンパ腫の症状は発生部位によって異なりますが、体重減少や食欲不振、嘔吐、下痢、呼吸困難などです。
リンパ腫の治療には化学療法や放射線治療が使用されますが、早期発見と治療は予後に大きく影響するため、飼い主は猫の体調の変化を見逃さないことが重要です。
扁平上皮癌
次に、猫に見られる悪性腫瘍は扁平上皮癌です。扁平上皮癌は、皮膚や口腔内の粘膜に発生するケースが多くあります。
特に耳や鼻、口の中、歯茎など、紫外線にさらされやすい部位に発生しやすいです。扁平上皮癌の原因は、日光への過剰な露出や、慢性的な感染症などが考えられます。
扁平上皮癌は、進行が早く、周囲の組織に浸潤しやすいです。初期症状としては、小さな傷やかさぶたができ、治らずに広がっていきます。
進行すると、出血や潰瘍を伴い、猫に強い痛みを引き起こす場合が多いです。
治療法は、早期発見できれば手術による摘出が効果的ですが、進行した場合は放射線治療や化学療法が必要になるケースもあります。
肥満細胞腫
3つ目に、猫に見られる悪性腫瘍は肥満細胞腫です。肥満細胞腫は、肥満細胞と呼ばれる免疫細胞ががん化して発生します。
肥満細胞腫は皮膚や内臓、特に脾臓や肝臓に見られる場合が多く、悪性度が高いものは進行が早いです。肥満細胞腫が皮膚に現れる場合、小さなしこりとして現れ、触ると固く感じられます。
肥満細胞腫は、猫の体内でヒスタミンなどの化学物質を放出し、周囲の組織に炎症やかゆみ、さらには潰瘍を引き起こす恐れがあります。
肥満細胞腫の診断には、細胞診や組織検査が必要で、治療には外科手術が一般的です。ただ、場合によっては化学療法や放射線治療が行われることもあります。
肥満細胞腫は再発するリスクが高いため、治療後も定期的な検診が重要です。
乳腺腫瘍
最後に、猫に見られる悪性腫瘍は乳腺腫瘍です。乳腺腫瘍は、猫の乳腺に発生する腫瘍で、特に避妊していないメス猫に多く見られます。
乳腺腫瘍の約85%が悪性で、進行が早いため、早期発見が非常に重要です。
乳腺にしこりや硬い塊が見つかった場合、特に成長が早い場合には悪性の可能性が高く、早急に診断と治療を受ける必要があります。
乳腺腫瘍の原因は、ホルモンの影響が強く関与している場合が多いです。避妊手術を行っていない猫や、中高齢期で避妊手術を行った猫は、乳腺腫瘍のリスクが高くなります。
治療は手術による腫瘍の摘出が最も効果的です。場合によっては周囲の組織やリンパ節の切除も行われます。
できものを見つけたら獣医師に相談
次に、できものを見つけたら獣医師に相談することが大切です。
獣医師に相談すべき理由や相談するタイミングについてまとめているので、事前にチェックして対処できるようになりましょう。
できものは何らかの体の異常
できものが良性か悪性かに関わらず、できものは体内で何らかの異常なプロセスが進行している兆候です。
できものの原因はさまざまで、単なる皮膚の炎症や感染症によるものから、良性の腫瘍、さらには悪性のがんまで幅広く存在します。
炎症や感染症が原因の場合、できものは体の免疫反応として現れますが、放置すると状態が悪化することがあるため注意が必要です。
また、腫瘍の場合は、良性のものであっても放置すると大きくなり、生活に支障をきたす可能性があります。
さらに、悪性腫瘍の場合は、早期に発見して適切な治療を受けると将来が大きく変わるため、できものを見つけた際は速やかに獣医師に相談しましょう。
早めの受診と検査が大切
猫のできものを発見した際は、早めに獣医師の診察を受け、適切な検査を行うことが非常に大切です。
できものは外見だけでは良性か悪性かを判断するのは難しいため、専門的な検査が必要になります。
獣医師はまず視診や触診でできものの特徴を確認しますが、確定診断には細胞診や組織検査が用いられる場合が多いです。
細胞診では、針を用いてできものの細胞を採取し、顕微鏡で観察します。細胞診により、腫瘍の性質や感染症の有無などがわかる場合が多いです。
また、急速に大きくなるできものは悪性の可能性が高く、ゆっくりと成長するできものやは、良性である場合が多くあります。
ただ、どちらにせよできものが大きくなると日常生活に支障をきたす可能性があるため、早めに対処しましょう。
まとめ
今回は、猫のできものについて紹介しました。猫にできものはしこりや何らかの腫れものを指し、主な原因は炎症や過生成、腫瘍などです。
猫の腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、良性のものは日常生活に支障をきたさない限り心配ないですが、悪性のものは進行が早いため早急な対応が求められます。
できものは何らかの体の異常なので、見つけたらすぐに医師に相談し、腫瘍の性質のチェックと治療を行って、猫の健康をサポートしましょう。