健康

【獣医師監修】猫に引っかかれると危険?かかる可能性のある病気と対処法を詳しく解説

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はじめに

猫に引っかかれた際に軽傷だから大丈夫と考える方も多いと思います。

しかし、猫の引っかき傷は病気がうつる場合もあり、軽視してはいけません。病気が進行した場合、最悪命を落とす可能性もあるのです。

今回は、猫に引っかかれた場合の対処法について紹介します。

かかる可能性のある病気や症状について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

猫に引っかかれたり噛まれたりすると危険?

猫に引っ掻かれたり噛まれたりすると、人間の体に悪影響を及ぼす可能性があります。猫による傷がなぜ危険なのか詳しく紹介しますので、必ずチェックしてください。

傷口から細菌やウイルスが入ることがある

猫に引っかかれたり噛まれたりすると、傷口から細菌やウイルスが侵入するリスクがあります。

猫の爪や歯には、様々な微生物が付着しているため、傷口から感染する可能性が高いです。

特に、猫の口内や爪にはパスツレラ菌などの細菌が多く存在し、人間の体内に入ると感染症を引き起こす場合があります。

猫ひっかき病やパスツレラ症などの病気は、猫との接触でよく見られる感染症です。

また、ウイルス感染のリスクにも注意が必要です。例えば、狂犬病ウイルスは犬だけでなく猫も感染源となります。

狂犬病に感染した猫に噛まれた場合、人間は命を落とす可能性が高いです。狂犬病は一度発症すると治療が非常に困難であり、致死率が非常に高いため、早期の対応が求められます。

小さな傷でも軽く見てはいけない

猫に引っかかれたり噛まれたりした際、小さな傷であっても軽く見てはいけません。

傷が小さくても、感染のリスクは存在し、適切な処置を怠ると重大な健康問題に発展する可能性があるのです。

猫の爪や歯には、先述したように多くの細菌が存在しており、傷口を通じて体内に侵入する恐れがあります。

例えば、猫ひっかき病は、非常に小さな引っかき傷からも感染する場合が多いです。

小さな傷でも猫に引っかかれたり噛まれたりした場合は、適切な処置を行い、感染のリスクを最小限に抑えましょう。

猫に噛まれたり引っかかれたりすることでかかる病気

次に、猫に噛まれたり引っかかれたりすることでかかる病気を紹介します。

  • 猫ひっかき病
  • パスツレラ症
  • カプノサイトファーガ感染症
  • 破傷風
  • 狂犬病

それぞれの病気の症状や危険性を詳しく紹介するので、猫から傷を受ける前にチェックしておきましょう。

猫ひっかき病

まず、猫に噛まれたり引っかかれたりすることでかかる病気は猫ひっかき病です。

ほぼすべての猫が感染しているバルトネラ・ヘンセラ菌が原因

猫ひっかき病は、バルトネラ・ヘンセラ菌という細菌が原因で引き起こされます。

バルトネラ・ヘンセラ菌はほぼすべての猫が保有しており、特に若い猫や野良猫に多いです。

猫の爪や口に付着していることが多く、猫に引っかかれたり噛まれたりすると人間に感染します。

猫自身にはほとんど症状を引き起こさないため、見た目だけでは感染の有無を判断することは困難です。

猫の健康状態が良好であっても、引っかきや噛みつきによって人間に感染する可能性があります。特に、免疫力が低下している人や子供、高齢者は感染リスクが高いです。

感染した時の主な症状

猫ひっかき病に感染すると、引っかかれた部位に小さな丘疹が現れる場合があります。

丘疹は感染後3日から10日程度で現れ、その後2週間ほどで引っかき傷の周囲のリンパ節が腫れ始めることが一般的です。

そして、猫ひっかき病に感染すると、発熱や倦怠感、頭痛、食欲不振などの症状を経験する場合があります。

猫ひっかき病の症状は、風邪やインフルエンザと似ているため見過ごされがちですが、リンパ節の腫れが伴う場合は猫ひっかき病の可能性を疑いましょう。

重症化すると、肝臓や脾臓の腫れなどの合併症を引き起こす恐れもあるため、早期の診断と治療が重要です。

パスツレラ症

次に、猫に噛まれたり引っかかれたりすることでかかる病気はパスツレラ症です。

ほぼすべての猫の口の中にパスツレラ菌が存在

パスツレラ症は、パスツレラ菌によって引き起こされます。パスツレラ菌は、ほぼすべての猫の口腔内に常在しており、猫の歯や唾液に付着している場合が多いです。

猫が人間を噛んだり、引っかいたりする際に唾液が傷口に入ると、パスツレラ菌が体内に侵入し感染が起こります。

特に猫の噛み傷は深くなるケースが多く、細菌が体内に入りやすいため、パスツレラ症のリスクが高いです。

パスツレラ菌は、猫だけでなく犬などの他の動物にも存在します。猫自体は病気を引き起こしませんが、人間は注意が必要です。

感染した時の主な症状

パスツレラ症の主な症状は傷口の周囲の赤みや腫れ、痛みです。

パスツレラ症に感染すると傷口が膿んだり、触ると熱を持っていたりする場合があります。

さらに、感染が進行すると、発熱や悪寒、倦怠感などの全身症状が現れる場合が多いです。関節炎や骨髄炎などの深刻な合併症が発生する恐れもあります。

特に免疫力が低下している人や慢性疾患を抱えている人、高齢者などは重篤な感染症を引き起こすリスクが高いため、早期の治療が必要です。

カプノサイトファーガ感染症

3つ目に、猫に噛まれたり引っかかれたりすることでかかる病気はカプノサイトファーガ感染症です。

猫の口の中にいるカプノサイトファーガ属菌が原因

カプノサイトファーガ感染症は、カプノサイトファーガ属菌が原因で引き起こされます。

カプノサイトファーガ属菌は、猫や犬の口腔内に常在しており、健康な動物にも多いです。

特に猫の唾液中に存在し、噛まれたり引っかかれたりすると人間に感染します。カプノサイトファーガ属菌は、他の細菌と同様に、傷口から体内に侵入し感染を引き起こすのです。

カプノサイトファーガ感染症は自然に治癒すると言われていますが、免疫力が低下している人や慢性疾患を持つ人、高齢者などは注意しましょう。

早期の診断と治療が重要であり、適切な対応が遅れると深刻な合併症を引き起こす可能性があります。

感染した時の主な症状

カプノサイトファーガ感染症の主な症状は傷口の周囲の赤みや腫れ、痛みです。特に噛まれた部位に強い痛みを伴う場合があります。

傷口が化膿して膿が出る場合もあり、感染が進行すると発熱や悪寒、倦怠感などの全身症状が現れやすいです。

さらに、重篤な場合には敗血症や髄膜炎などの深刻な合併症を引き起こす恐れがあります。

カプノサイトファーガ感染症の症状は、免疫力が低下している人や慢性疾患を持つ人に見られ、迅速な治療が必要です。

感染の進行スピードが速いため、疑わしい症状が現れた場合には直ちに医療機関を受診しましょう。

破傷風

4つ目に、猫に噛まれたり引っかかれたりすることでかかる病気は破傷風です。

土の中にいる常在菌

破傷風は土壌中に広く存在する破傷風菌によって引き起こされる感染症であり、深い傷口や汚染された傷口で増殖します。

猫に引っかかれたり噛まれたりしてできた傷口が土壌や汚れに触れると、破傷風菌が体内に侵入し感染が発生するのです。

破傷風菌は、土壌だけでなく動物の糞便や汚染された物質にも存在するため、屋外での活動中に負った傷口は特に注意しましょう。

感染が起こると、破傷風菌が産生する強力な神経毒素が体内に広がり、神経系に影響を与えます。神経毒素は、神経伝達を阻害し、筋肉の硬直や痙攣を引き起こすのです。

感染した時の主な症状

破傷風に感染した時の主な症状は、傷口周辺の筋肉の痙攣や硬直です。顔面や喉が痙攣して、飲み込むのが困難になります。

感染が進行すると、背中や腹部、四肢の筋肉が硬直し、激しい痙攣を引き起こす場合が多いです。

さらに、破傷風の毒素が神経系に影響を与えるため、呼吸困難や循環器系の障害が発生するケースもあります。

呼吸筋の痙攣が起こると、呼吸が困難になり、命に関わる状態に陥りやすいです。重篤な場合、呼吸停止や心停止が引き起こされ、迅速な治療が必要になります。

狂犬病

5つ目に、猫に噛まれたり引っかかれたりすることでかかる病気は狂犬病です。

犬だけでなく猫も感染源になる

狂犬病は狂犬病ウイルスによって引き起こされる感染症であり、犬が主要な感染源とされていますが、猫も狂犬病ウイルスに感染する場合があります。

狂犬病ウイルスは、感染した動物の唾液中に存在し、噛まれた際にウイルスが体内に侵入して感染するのです。

狂犬病は世界中で発生しており、特にアジアやアフリカの一部地域では、狂犬病の流行が深刻になっています。

野良猫や野良犬が多く存在し、予防接種が十分に行われていないため、人間への感染リスクが高いのです。

日本では、狂犬病はほとんど見られませんが、海外旅行や輸入を介して感染する可能性があります。

人間が感染した場合の致死率はほぼ100%

狂犬病に感染した人間が発症した場合、有効な治療法はなく、致死率はほぼ100%とされています。なぜなら狂犬病ウイルスが中枢神経系に深刻なダメージを与えるからです。

感染後、発症する前であれば、暴露後ワクチン接種を行うことで発症抑制効果が期待できるとされます。

感染後の潜伏期間は数週間から数ヶ月に及ぶことがあり、適切な治療が行われなければ、発症後の治療はほとんど効果がありません。

初期症状は風邪に似ており、発熱や頭痛、倦怠感などが見られますが、進行すると神経症状が現れます。

具体的な症状は、興奮や錯乱、幻覚、恐水症などです。さらに、筋肉の麻痺や痙攣、意識障害が進行し、最終的には昏睡状態に陥ります。

猫に噛まれたり引っかかれたりした時の対処法

次に、猫に噛まれたり引っかかれたりした時の対処法を紹介します。傷が浅い場合と深い場合に分けて紹介するので、自分の状況に合わせて対処しましょう。

傷が浅い場合

猫に噛まれたり引っかかれたりした傷が浅い場合、下記の対応が必要です。

  • 流水で傷口をよく洗う
  • 腫れたり痛みが強くなったらすぐに病院へ

流水で傷口をよく洗う

猫に引っかかれたり噛まれたりした際は、まずは流水で傷口をしっかりと洗浄しましょう。

傷口を流水で洗うと、表面に付着している汚れや細菌を洗い流せます。傷口をよく洗うと、感染リスクを大幅に低減させることが可能です。

まず、清潔な手で傷口に触れるようにし、できるだけ早く流水で洗浄を開始します。

洗浄の際には、少なくとも5分から10分程度、水をかけ続けましょう。洗浄後、傷口を清潔なガーゼやタオルで軽く押さえて乾かしてください。

また、消毒液を使用して傷口を消毒することが大切です。消毒後は、清潔なガーゼや絆創膏を使用して傷口を保護しましょう。

腫れたり痛みが強くなったらすぐに病院へ

傷が浅い場合でも、腫れや痛みが強くなった場合は、すぐに病院へ行きましょう。

傷口が赤く腫れたり、痛みが増したりする場合、感染の兆候である可能性が高いです。感染が進行すると、発熱やリンパ節の腫れ、膿が出るなどの症状が現れる場合があります。

特に、免疫力が低下している人や慢性疾患を持っている人、小さな子供や高齢者は、感染症が重篤化するリスクが高いため、早めに診察を受けましょう。

医師の診察を受けると、適切な抗生物質の処方や傷の処置を受けることができ、症状の悪化を防げます。

病院に行く際には、猫に噛まれたり引っかかれたりした日時、傷口の状態、現在の症状などを詳しく医師に伝えることが重要です。

また、猫の健康状態やワクチン接種の有無などの情報も伝えると、診断がスムーズに進むでしょう。

傷が深い場合

猫に噛まれたり引っかかれたりした傷が深い場合、下記の対応をとりましょう。

  • 流水で傷口をよく洗う
  • なるべく早く病院へ

流水で傷口をよく洗う

傷が深い場合の対処法としても、やはり流水で傷口をしっかりと洗いましょう。

深い傷ほど細菌が入り込みやすく、感染のリスクが高まるため、迅速かつ徹底的な洗浄が必要です。

流水で傷口を洗うと、細菌や汚れを除去し、感染のリスクを低減できます。

まず、清潔な手で傷口に触れるようにし、できるだけ早く洗浄を開始しましょう。深い傷の場合は、特に傷口の内部までしっかりと水をかけることが重要です。

また、傷口が大きい場合や出血が多い場合は、圧迫止血を行いながら洗浄してください。

洗浄後は、清潔なガーゼやタオルで軽く押さえて乾かします。その後、消毒液を使用して傷口を消毒しましょう。消毒後は、清潔なガーゼや包帯を使用して傷口を保護してください。

なるべく早く病院へ

噛まれたり引っかかれたりした傷が深い場合、すぐに医療機関を受診する必要があります。

深い傷は感染のリスクが高く、神経や血管、筋肉などが損傷している可能性もあるため、専門的な治療が必要です。傷口の洗浄と消毒を行った後、できるだけ早く病院へ行きましょう。

医療機関では、傷の程度や感染の有無を確認し、必要な処置を行います。深い傷の場合、縫合が行われ、感染が疑われる場合は抗生物質の投与が行われる場合が多いです。

さらに、破傷風や狂犬病などの感染症のリスクがある場合には、予防接種や追加の予防処置が行われます。

病院に行く際には、猫に噛まれたり引っかかれたりした日時、傷の状態、現在の症状、猫の健康状態やワクチン接種の有無などの情報を詳しく医師に伝えましょう。

小さな傷でも念のため受診するのがおすすめ

猫に引っかかれたり噛まれたりした際にできる傷は、たとえ小さなものであっても油断せず、念のため医師の診察を受けることが重要です。

多くの方は、浅い傷や小さな傷は自己処置で十分と考えがちですが、実際には見えないリスクが潜んでいる場合が少なくありません。

猫の口腔内や爪にはさまざまな細菌が存在しており、傷口から体内に侵入すると感染症を引き起こす可能性があります。

紹介した細菌は傷が小さくても感染するリスクがあり、症状が現れるまでに時間がかかりやすいです。

症状が現れた時には、すでに感染が進行している恐れもあるので、小さな傷ができたらすぐに相談しましょう。

まとめ

猫に引っかかれると、傷口から細菌やウイルスに感染する恐れがあり、小さな傷でも軽くみてはいけません。

猫に噛まれたり引っかかれたりした場合は、猫ひっかき病やパスツレラ症、カプノサイトファーガ感染症、破傷風、狂犬病に感染する恐れがあります。

猫から傷を受けた場合は、流水で傷口をよく洗い、消毒と止血を迅速に行うことが大切です。

また、傷の深さにかかわらず早く病院に行くのが推奨されます。猫に引っかかれるリスクを理解し、すぐに対処できるようになりましょう。

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