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【獣医師監修】猫が涙を流すのはどんな時?疑われる病気と病院を受診した方が良い症状を解説

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はじめに

あなたの愛猫が涙を流した姿を見たことがありますか。その涙は自然なものなのか、それとも病気のサインなのか心配になることでしょう。涙は目を保護するために必要ですが、過剰な涙や頻繁な涙は異常を示すことがあります。

この記事では、猫が涙を流す理由や考えられる病気、病院を受診すべき症状について、獣医師監修のもと詳しく解説します。

猫も悲しいときは涙を流すの?

猫が涙を流す姿を見て「もしかして悲しいのかな」と感じる飼い主もいるかもしれません。人間は感情的な理由で涙を流しますが、猫も同じように感じるのでしょうか。

この章では猫が涙を流す理由が感情によるものなのか、あるいは別の原因があるのかを探っていきます。

猫は悲しいなどの感情で涙を流すことはない

猫が涙を流す姿をみて「悲しいのかな」と心配になる飼い主もいることでしょう。しかし、猫は感情によって涙を流すことはありません。

猫が涙を流すのは、涙の分泌が過剰になったり、涙が鼻涙菅にうまく流れなかったりするためです。ごはんを食べるときにほこりやフードの香料に刺激されて涙を流したり、あくびをして顔の筋肉が大きく動いて涙腺が刺激されたりして涙を流します。

このように、猫の涙は目を保護する役割が大きく、人間のように感情表現として涙を流すことはないのです。

涙が出ているときは目への刺激や病気の可能性

猫が涙を流す原因として、目にゴミが入るなどの刺激が原因となることがあります。これは生理現象で、涙腺から涙がたくさん分泌されるためです。

涙は目を潤し、外部からの刺激から保護し、角膜に酸素や栄養を届ける役割を持っています。涙は目頭と涙点という穴から鼻涙管を通り、鼻の奥へと流れていきます。

通常、涙は涙点を通じて排出されるため、目から涙が溢れることはありません。しかし、涙が常に流れている場合は、病気の可能性が考えられます。一時的な涙であれば大きな問題ではありませんが、長期間続く場合は注意が必要です。

涙が止まらず、目から溢れる症状が見られたら、獣医師に相談しましょう。

猫が涙を流すときに疑われる病気は?

猫が涙を流すときは、目の異常や病気が原因かもしれません。涙が頻繁に出たり、目から溢れていたりする場合、何かしらの健康問題を疑う必要があるでしょう。

病気は早期発見と適切な治療が必要です。具体的にどのような涙の出方に注意しなければいけないのかを見ていきましょう。

両目から涙を流しているときは体の異常

猫が両目から涙を流している場合、体全体の異常が原因のことが多いです。アレルギーやウイルス感染、細菌感染などが考えられます。

アレルギーによる場合、両目から透明な涙が出ることがあり、くしゃみや鼻水などの症状も伴うことがあります。また、猫風邪と呼ばれるウイルス感染も涙の増加の原因となり得ます。

片目だけ涙を流しているときは目の異常

片目からのみ涙を流している場合、目の異常が原因であることが多いです。目にゴミや異物が入ったり、ケンカなどによる外傷が原因になったりすることがあります。

結膜炎や角膜炎などの目の炎症も、片目だけに涙が出る原因です。また、鼻涙管の閉塞や睫毛異常なども考えられます。このような場合、目の異常を早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。

常に涙を流している場合に可能性のある病気

猫が常に涙を流している場合、流涙症と呼ばれる状態が考えられます。流涙症は、さまざまな病気や異常が原因で引き起こされるものです。この章では、どのような病気の可能性があるのかわかりやすくまとめていきます。

まつ毛が角膜に触れてしまう「睫毛異常」

睫毛異常は、まつ毛の生え方が原因で起こる病気です。異所性睫毛は、本来生えるべき場所と異なる部分からまつ毛が生える状態を指します。一方、睫毛乱生は角膜に向かってまつ毛が生える逆さまつ毛のことです。

これらの状態により、まつ毛が角膜に触れて涙の分泌が増え、重症化すると角膜潰瘍を引き起こす可能性があります。特にペルシャなどの鼻ペチャの猫は、顔の構造上、鼻涙管が圧迫されて涙が出やすい傾向があります。

常に涙が出る、片目から大量の涙が出る、目の縁が涙やけをしている、目をしょぼしょぼさせているなどの症状が見られたら、睫毛異常の可能性を疑いましょう。

下瞼の縁が内側に入り込む「眼瞼内反症」

眼瞼内反症は、下瞼の縁が内側(眼球内)に入り込む状態を指します。

この異常はまつ毛が角膜を刺激し、涙の量が増える原因となるのです。特に鼻が短い猫種や老猫に見られ、まぶたの一部が内側に折り返されることで発症します。

毛の生えた皮膚が目の表面を刺激し、涙や目やにの量が増加しやすくなり、角膜炎や結膜炎になりやすいともいわれています。

治療は点眼薬などの内科的対症療法が中心ですが、まぶたの形態そのものが原因の場合は外科手術を行うこともある病気です。鼻の低いペルシャ猫やヒマラヤンなどは遺伝的にこの病気にかかりやすい傾向があります。

眼瞼内反症は、逆さまつ毛や極端な体重減少、慢性的な角膜炎、結膜炎による眼瞼麻痺などで発症することもあります。

目の外に涙が溢れたり、目を気にするそぶりや眩しいものを見たときに目を細める仕草が見られたりした場合には、早期発見のために速やかに動物病院を受診することが重要です。

鼻涙管が閉じてしまう「鼻涙管閉塞」

鼻涙管閉塞は、涙の通り道である鼻涙管が閉じることで、涙が溢れてしまう状態です。この閉塞は、生まれつきの場合と後天的な場合に分けられます。

生まれつきの場合は、鼻が短い品種の猫に多く見られ、鼻涙管の構造に問題があります。後天的な場合は、目の炎症や細菌感染によって引き起こされることが多いです。

鼻涙管が詰まると、鼻に排出されるはずの涙が目元に溢れることが、目元が常に濡れる原因です。この状態が続くと、細菌が繁殖しやすくなり、皮膚の荒れや感染症を引き起こし、特に白い体毛の猫では、涙やけによって毛が茶色く染まってしまうこともあります。

治療は原因の除去が基本です。感染や炎症が原因の場合は、抗生剤や消炎剤を投与します。また、生まれつきによる閉塞の場合、日常的に目元を清潔に保つことが重要です。涙を拭いてあげるなどのケアを日頃から行いましょう。

角膜に傷が付いてえぐれる「角膜潰瘍」

角膜潰瘍は、角膜に深い傷が付き、えぐれてしまう状態です。喧嘩や睫毛異常、異物の混入、感染などが原因で起こり、痛みから涙の量が増えます。また、アレルギーや細菌、ウイルス感染、結膜炎や緑内障なども原因となることがあるほか、角膜が傷付くと、猫は目を痛がり、涙や目やにで目の周りが汚れやすくなります。

傷が深くなると、角膜の透明な部分が白く濁り、血管が新しく生まれ変わることもあります。

治療はまず目を洗い、抗生剤や消炎剤の目薬を使います。必要に応じて内服薬や注射の併用もあるでしょう。重症の場合は、保護用コンタクトの装着や、外科的手術が必要です。

治療が遅れると目が見えなくなる可能性

角膜潰瘍の治療が遅れると、角膜の傷が深まり、視力に大きな影響を及ぼすことがあります。場合によっては目が見えなくなる可能性もあるほどです。

そのため、早めに獣医師に相談し、適切な治療を受けることが重要となってきます。

ハウスダストやノミなどに対する「アレルギー」

猫はハウスダストやノミ、特定の食べ物に対してアレルギー反応を引き起こすことがあります。アレルギーの主な症状は皮膚炎やかゆみですが、目の周りに症状があらわれると結膜炎を引き起こし、涙の量が増えることがあります。

アレルギーが原因の場合、皮膚炎やかゆみ以外にも、くしゃみや鼻水、涙などの症状が見られるでしょう。

猫のアレルギーは、ハウスダストや花粉、ダニ、カビ、キャットフードやおやつに含まれる食材など、さまざまな要因で発症するものです。アレルギーが疑われる場合は、早めに動物病院で血液検査を受け、適切な対処をすることが重要です。

目をこすると角膜潰瘍を起こす場合も

アレルギーによるかゆみで猫が目を頻繁にこすると、角膜潰瘍を引き起こすことがあります。角膜潰瘍は、角膜に傷が付き、深くえぐれてしまう状態です。これにより、角膜が刺激を受け、涙の量が増え、目を痛がるようになってしまいます。

重度の場合、角膜は白く濁り、血管が新しく生まれ変わることもあります。治療が遅れると、視力に影響を及ぼすことがあり、場合によっては目が見えなくなる可能性もあります。

早く病院に連れて行った方が良い症状は?

猫が涙を流している姿を見ると、飼い主としてはとても心配になります。しかし、どの症状が緊急性を持っているのかを判断することはとても難しいことです。

ここでは、早急に病院に連れていくべき症状について詳しく解説します。愛猫の異常を見逃さないために、症状をしっかり頭に入れておきましょう。

目の下が常に涙で濡れている

猫の目の下が常に濡れている場合、病気の可能性を疑いましょう。

涙は本来、目を保護するために分泌され、鼻涙管を通じて鼻の奥へと流れていきます。しかし、何らかの理由で涙の循環がうまくいかず、目からこぼれ落ちる涙で、目の下が常に湿った状態になり、毛が変色したり皮膚病を引き起こしたりしてしまいます。これを涙やけと言います。

涙やけは、結膜炎や角膜炎、鼻炎などの病気によって引き起こされることが多いです。

結膜炎は瞼の内側と白目を覆う粘膜の炎症で、ウイルスや細菌の感染が原因です。

角膜炎は黒目の部分を覆う粘膜の炎症で、外傷や異物、感染が原因となります。

鼻炎は鼻の粘膜の炎症で、ウイルスや細菌、アレルギーが原因です。

これらの病気により、涙や目やにが増え、目の充血や痛みが生じます。特に、鼻の短い猫は鼻涙管が圧迫されやすいため、涙が溢れやすいでしょう。

目の下が常に濡れている場合、放置せず、早めに動物病院で診察してください。

白目が充血している

猫の白目が充血している場合、病気や外傷が原因であることが多いです。

結膜炎は瞼の内側と白目を覆う粘膜が炎症を起こす病気で、猫風邪や細菌、ウイルス感染が原因で発生します。涙や目やにが増え、目が充血する症状が見られ、進行すると目が腫れたり、痛みを伴ったりするものです。

喧嘩や異物、ウイルス感染が原因で起こる角膜炎も、目の痛みや違和感、涙などの症状に加えて、充血の症状も見られます。

花粉やハウスダスト、食物に対するアレルギーも、白目の充血を引き起こすものです。

アレルギーによる炎症は強いかゆみを伴い、猫が目をこすることで症状が悪化することがあります。目だけでなく、目の周りも赤くなりくしゃみや鼻水の症状もあらわれます。

猫同士の喧嘩や物にぶつかったりすることで目に外傷を負うことがあり、この場合も外傷による目の充血が見られるでしょう。

また、ヘルペスウイルスやクラミジアなどの感染も、白目の充血を引き起こします。感染が進行すると、慢性的な結膜炎となり、常に涙が出る流涙症になることもあります。

黄色い目やにが出ている

猫の目やにが黄色〜緑色で、ネバネバしている場合、角膜炎や結膜炎などの目の病気が疑われます。

角膜炎は猫風邪や外傷、異物の混入が原因で発症します。

猫風邪は猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス、クラミジアなどの感染で起こり、外傷や異物混入は喧嘩やトゲ、ゴミが目に入ることで発生することが多いです。最初は涙が増え、炎症が進むと細菌感染を引き起こし、目やにが黄色から緑色に変化します。

角膜炎の症状は目やにのほか、涙がたくさんでる、片目だけ目やにがでたり瞑っていたりする、眩しそうにしているなどが見られるでしょう。

結膜炎は、目やにのほか、同じように涙がたくさんでたりするだけでなく、目を痛がる、白目の部分の充血、まぶたの腫れの症状がみられます。このようなウイルス性の目やには他の猫に感染することがあるため、多頭飼いや外に出る猫には特に注意が必要です。

適切な治療をせずに放置すると、角膜潰瘍に進行し、視力に影響を及ぼす恐れがあるため、黄色い目やにをみたら早急に動物病院を受診しましょう。

目を細めている

猫が目を細めたり、しょぼしょぼさせていたりする場合、目に痛みがあるサインです。結膜炎や角膜炎、目に異物が入っていることが考えられます。

まずは、目やまぶたの裏に異物がないか確かめましょう。異物が見つかった場合は、人用のヒアルロン酸点眼薬で洗い流すのも一つの方法ですが、それでも取れない、または異物がないのに痛がっている場合は早めに動物病院に連れていきましょう。

感染症の場合、両目に症状が出ることが多いですが、片目だけ細めている場合は目に傷や炎症がある可能性が高いです。

早期の治療で目薬だけで治ることもありますが、重症化すると抗生剤の投与が必要となることもあるため、早めの対処が重要となってきます。

目をよくこすっている

猫が頻繁に目をこすっている場合、目に異常があるのかもしれません。目をずっとこすり続けたり、目が赤く腫れていたり、涙や目やにがでている場合は、結膜炎や角膜炎などの目の病気が疑われます。猫は人間より角膜の感覚が鈍いため、目に異物が入ってもあまり反応しません。

そのため、目をこすっている場合は、よほど大きな違和感があると考えて良いでしょう。さらにアレルギーによって目の周辺の皮膚にかゆみがある場合も、目をこする行動が見られます。

このような症状が続く場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

まとめ

猫が涙を流す原因には、結膜炎や角膜炎、アレルギー、鼻涙管の閉塞などさまざまな病気が考えられます。

これらの病気は、目の痛みや炎症を引き起こし、涙の量が増えることから判断できることが多いです。このほかに、目を細めたり、頻繁にこすっていたりする場合も、早めの受診が必要となります。

早期の診断と適切な治療が猫の健康を守るために重要です。異常を感じたら、速やかに獣医師に相談し、愛猫の目のケアを怠らないようにしましょう。

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