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はじめに
猫の目が健康であることは、飼い主にとってとても大切なことです。
しかし、目やにが出てくるとその原因が何なのか気になることでしょう。特に白くてネバネバした目やには、異常なものではないのかと感じるのではないでしょうか。
どのような目やにに注意が必要で、どのような病気が隠れているのか、獣医師監修のもと、猫の目やにについて詳しく解説します。
猫の目は目やにが出やすい
猫の大きな目は愛らしさの象徴ですが、同時に傷や乾燥、ホコリの影響を受けやすい部分でもあります。猫の目は他の動物と比べて、細菌やウイルス感染のリスクが高いため、飼い主は注意が必要です。
目やには目から出る分泌物の総称です。
ホコリや結膜から分泌される粘液、まぶたからの老廃物、血液成分などが含まれます。人間と同じように、猫もホコリの多い場所に行くと目やにが出ることがあるのです。新陳代謝によって出る少量の目やには正常なため、心配する必要はありません。
猫の目は常に潤っており、涙は目の表面の乾きを防ぎ、ゴミなどの異物を洗い流す役割があります。これにより、目の健康は保たれていますが、異常な目やにには、感染症や他の健康問題の兆候となることを理解しておく必要があるでしょう。
目の病気が疑われる目やには?
猫の大きな目は、ゴミやホコリ、細菌やウイルスの影響を受けやすいのは事実です。猫の目は健康状態をわかりやすく示してくれます。
どのような目やにが病気を疑う必要のあるものなのか見ていきましょう。
茶色の目やには心配ない
猫の目やには、健康状態を示す重要なサインですが、全ての目やにに問題があるとはかぎりません。特に茶色の目やには、正常な代謝の結果としてあらわれることが多く、心配する必要のない目やにです。
猫の目はゴミやホコリの影響を受けやすいため、それらが涙とともに洗い流され、茶色の目やにのまま固まることがあります。これも老廃物の一部として正常な範囲です。寝起きに目頭についている茶色の目やには、猫の新陳代謝によるものなのでこちらも心配いりません。
茶色や赤茶色の目やにが、少量乾燥している場合は正常に猫の体が機能している証拠となるので安心しておきましょう。
白いネバネバした目やに・黄色い目やは要注意
目やに量が多くネバネバしている場合や、目をしょぼしょぼさせている場合、なんらかの病気の疑いがあります。特に、目やにが黄色〜緑色で量が多くネバネバしているときは、角膜炎や結膜炎などの目の病気の可能性があります。
そのほか発熱やくしゃみ、食欲不振などの症状が伴う場合は、感染症やアレルギーを疑われます。緑や黄色の膿のような目やには、ウイルス感染や細菌感染による炎症かもしれません。
また、涙が止まらずボロボロと流れ続ける場合や、ネバネバした白色や黄色の目やにが増える場合は、注意が必要です。
これらの症状が片方の目だけあらわれる場合、異物が目に入ったり傷ついたりしている可能性があります。
白いネバネバした目やにや黄色い目やには、猫の目の病気を示す重要なサインです。これらの症状が見られた場合は、早急に動物病院で診察を受けることをおすすめします。
目の病気の場合は他の症状も出ることが多い
猫の目の病気は、目やにのサイン以外にも、目をしょぼしょぼさせたり、目を気にしていたり、まぶたが腫れたりとそれぞれの病気によっていろいろなサインを出してくれます。
目やに以外にどのようなサインを出しているのかをしっかり確認し、病気を早期発見しなければいけません。
目やにが出るのはどんな病気?
猫の目やには、さまざまな病気のサインとなることがあります。目の健康を守るためには、どの病気がどのような目やにを引き起こすのかを知っておくことが重要です。この章では、猫に見られる代表的な目の病気と、それぞれの病気がどのような目やにを伴うのか詳しく解説します。
早期に異常を発見し、適切な対処を行うための参考にしていきましょう。
上部気道感染症
猫の上部気道感染症とは「猫風邪」のことで、人間の風邪と似た症状を引き起こす病気です。主に鼻や喉、咽頭の感染が原因で、くしゃみや鼻水、食欲不振などの症状があらわれます。目の症状も伴うことが多く、重症化すると目やにが固まり、まぶたが開かなくなることもあるほどです。
上部気道感染症は感染力が強いため、成猫はもちろん特に子猫や高齢猫に注意しなければいけません。
主な原因は猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルス
猫の上部気道感染症の主な原因は、猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスです。これらのウイルスは、目の充血や目やに、涙の増加を引き起こします。最初は目やにがサラサラしていますが、細菌感染してしまうと膿のようなドロっとした目やにに変化します。
ウイルス感染は、猫同士の接触や飼い主が持ち込んだウイルスによって広がるため、予防が重要です。
ワクチン接種することで感染が防げます。
結膜炎
結膜炎は、猫のまぶたの裏側にある結膜が炎症を起こす目の病気です。主に猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスなどの感染症が原因で発症します。結膜炎になると、結膜が赤く腫れて涙が出たり、目やにが増えたりするほか、むくみも見られます。症状がひどくなると、まぶたがくっついて目が開かなくなることもあるため、注意が必要です。
結膜炎の症状は、結膜の赤みや腫れ、涙の増加、目やにの発生、まぶたのむくみなどです。また、ウイルス感染のほかにもアレルギーやホコリ、ゴミなどの異物が目に入ることで発症することもあります。
細菌性結膜炎では、片目だけに症状があらわれることもあり、アレルギー性の場合は両方の目から透明な涙が出ることが特徴です。
結膜はまぶたの内側にある粘膜で、まぶたと眼球をつなぐ役割を果たしています。この粘膜が炎症を起こすと、猫は目を痒がったり、まばたきが頻繁になったりするので、猫からのサインとして覚えておきましょう。
結膜炎はウイルスの感染や異物の混入、アレルギーなどさまざまな原因で発症し、片目だけに症状があらわれることもあれば、両目にあらわれることもあるものです。
早期に異常を察知し、適切な対応を行うために、症状が見られた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
角膜炎
角膜炎は、猫の黒目部分を覆っている角膜が炎症を起こす病気です。主な原因は、猫同士の喧嘩による傷や、異物が目に入って角膜が刺激を受けることが挙げられています。
また、ヘルペスウイルスによる感染や目の怪我も引き金となります。
角膜炎になると、猫は目を痛がりしばしばさせ、涙や目やにで目の周りが汚れることが多くなります。さらに重症化すると、目が白く濁ったり、正常な角膜には見られない新しい血管が生じたりすることもあります。角膜炎は猫にとって痛みが強く、片目をつぶったり、しきりに目を気にしたりする様子がみられるので注意して見てあげましょう。
クラミジア感染症
猫クラミジアは、細菌とウイルスの中間くらいの小さな微生物が引き起こす感染症です(現在は細菌に分類される)。ネバネバした黄色い目やにが出る場合、慢性的な結膜炎を引き起こしている可能性が高く、感染後3〜10日後にくしゃみや咳が出始めます。片方の目の炎症が始まり、やがて両目とも炎症を起こすようになります。
重症化すると命に関わることがある
クラミジア感染症は、放置すると重症化し命に関わることがあります。ネバネバした目やにが見られた場合は、早急に動物病院に連れていきましょう。適切な治療を行うことで、症状の悪化を防ぎ、猫の健康を守れます。
クラミジア感染症はワクチン接種で予防できる
クラミジア感染症はワクチン接種で予防が可能です。定期的なワクチン接種により、感染リスクを大幅に減らせます。
飼い主としては、猫の健康を守るために、定期的な健康チェックとワクチン接種を欠かさず行うことが大切です。
マイコプラズマ性結膜炎
マイコプラズマ性結膜炎は、人間の子供によく見られるマイコプラズマが原因で、猫にも影響を及ぼす感染症です。特に、さらさらした涙と目やにが同時に出るのが特徴で、目全体が腫れて充血します。
また、咳が長引き、発熱が見られることもあります。
なお、猫のマイコプラズマが人に感染することはありません。
重症化すると肺炎になるため注意
マイコプラズマ性結膜炎は、重症化すると肺炎を引き起こし、命に関わることのある厄介な病気です。そのため、目やにの量がいつもと違う場合や、さらさらの涙と目やにが同時に出るような症状が見られた場合は、早急に獣医師に診てもらうことが大切です。
日頃から猫の目やにの状態をチェックし、いち早く異常に気付けるようになりましょう。
眼瞼内反症
眼瞼内反症は、下まつ毛が角膜を刺激するため、涙の量が増える原因となります。特に鼻が短い猫種や老猫によく見られ、まぶたの一部が内側に折り返されることで発症する病気です。毛の生えた皮膚が目の表面を刺激し、涙や目やにの量が増加しやすくなるため、角膜炎や結膜炎になりやすいと言われています。
点眼薬などの内科的対症療法が中心ですが、まぶたの形態そのものが原因の場合は、外科手術を行うことがあるものです。
逆まつ毛や極端な体重減少、慢性的な角膜炎や結膜炎による眼瞼麻痺などが原因で発症することもあります。
眼瞼内反症は、猫にとって強い痛みを感じるものです。
目の外に涙が溢れたり、目を気にするそぶりや、眩しいものを見た時に目を細める仕草が見られたりする場合、早期発見のために速やかに動物病院を受診しましょう。
ドライアイ
猫のドライアイは、涙を分泌する涙腺の機能が低下し、涙が角膜全体に広がらずに目の表面が乾燥してしまう病気です。この状態になると、角膜や結膜に炎症が起こり、白や黄色のネバネバとした目やにが多く出るようになります。最初の段階では、結膜炎や角膜炎と似た症状があらわれるため、鑑別が難しいことがありますが、目薬を使用しても改善しない場合はドライアイを疑わなくてはいけません。
涙の量が減少しやすい老猫は、ドライアイにかかりやすいので注意が必要です。
ブドウ膜炎
ブドウ膜炎は、猫の目の中にあるブドウ膜という黒っぽい膜に炎症が起こる病気です。この膜は瞳孔の周囲にあり、炎症が起こるとさまざまな症状があらわれます。
ブドウ膜炎の原因は感染症が多く、白内障や高血圧などの全身疾患が引き金になる場合も少なくありません。
ブドウ膜炎にかかると、瞳孔が小さくなったり涙が多くでて目やにの量が増えたりする症状がみられます。また、まぶたの腫れ、目の充血、瞳の中が濁るなどの症状もあらわれます。これらの症状は目だけにとどまらず、全身疾患の一部としてあらわれることがあるため、早期発見と治療が重要です。
猫に目薬をさす方法
猫に目薬をさすのは難しいことが多いですが、正しい方法を知っていればスムーズに行えます。まずは猫がリラックスできる環境を整え、無理なく目薬をさす準備をしましょう。
上手な目薬の差し方
猫に目薬をさすのは難しいですが、コツをつかめば簡単です。
1.優しく顔を支えて上まぶたを軽く引き上げる
猫の背後に回り、両手を使って猫の首元と頭をしっかりと支えます。片手で頭を支えながら、もう片方の手で上まぶたを軽く引き上げましょう。
2.猫の視界に入らないように後ろから目薬を近づける
目薬は猫の頭を支える手に持ち、猫が目薬を見えないように手のひらで隠しながら後ろから近づけます。やさしく声をかけながら行うと、猫がリラックスしやすくなります。
3.目から1cmほどの高さから目薬さす
目薬の先端が目に当たらないように注意しながら、目から1cmほどの高さから1滴ずつそっと点眼します。
猫が暴れてしまう時はどうしたらいい?
猫に目薬をさそうとすると、どうしても暴れてしまうことがあります。そんな時には無理に押さえつけるのではなく、猫が落ち着ける環境を整えることが大切です。
猫が暴れる時の対処法や、リラックスさせるための工夫を見ていきましょう。
両足の間に猫を挟んで固定させる
猫が暴れて目薬をさせない時には、両足の間に猫を挟んで固定させるとスムーズに目薬をさせます。
まずは猫の下半身を両足の間にしっかり挟み、猫を「伏せ」の体制にしましょう。これにより、猫は飼い主との密着感を感じておとなしくなりやすく、攻撃を防げます。
次に手で猫の上半身と顔を支えながら目薬をさしましょう。目薬をさすときだけでなく、爪切りをする際にも有効で、猫の胸元に手首を添えることで噛まれるのを防げます。
タオルにくるんであげる
抱っこが苦手な猫や、抱っこされても足をばたつかせる猫は、タオルにくるんでみましょう。この方法は、タオルに包まれることに安心する猫の習性を利用しています。
まず、タオルを広げて中央に猫をのせ、上半身を押さえながら前足を隠すようにタオルをめくってかぶせます。次に、タオルの両端を順番に猫の背にかぶせ、柔らかく包みながらタオルがたるまないように引き寄せます。
この状態で膝の上に乗せて目薬をさしてみてください。
猫は自分の匂いがするものに安心する傾向があるため、使用するタオルは普段から猫に触れさせておくと効果的です。
猫に人間用の目薬を使うのはNG!
愛猫の目に異変を感じた時、人間用の目薬を使用するのは絶対に避けましょう。たとえ同じ成分が使われている場合でも、人間用の目薬と猫用の目薬では含まれる成分の量が異なります。人間用の目薬を使用すると、悪化や炎症を引き起こし、最悪の場合には失明の危険もあります。
また、市販の猫用目薬も自己判断で使用せず、必ず動物病院で診察を受け、適切な目薬を処方してもらうことが大切です。
まとめ
猫の目やにが示す健康状態について詳しく解説しました。
目やには猫の健康を示す大切なサインであり、注意深く観察することが必要です。正常な目やにと異常な目やにを見分けることで早期に異常を発見し、適切な対応が取れます。
愛猫の健康を守るために、日常的な目のチェックと異常があれば速やかに動物病院を受診しましょう。この記事が少しでも愛猫の目に意識を向けるきっかけになれば幸いです。