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はじめに
医療が発達し高齢化した現代では、老衰によって亡くなる方が増えています。これは猫の世界でも同様で、以前に比べて平均寿命も延び、長生きする猫が増えたことにより老衰で亡くなる猫が多くなっています。
老衰まで長生きしている猫のなかには、自分で今までできていたことができなくなってしまうこともあり、飼い主さんも若い頃とは違った飼い方や、環境作りをしなければならないことも出てくるでしょう。
そのためにも、猫の老衰について正しい知識を知って準備しておくことが、とても大切です。
今回は、猫の老衰について、猫のライフステージなどとあわせてご紹介していきます。
猫の老衰とはどういう状態?
老衰という言葉はよく聞くと思いますが、実際にはどのような場合が老衰なのか、高齢の猫を飼っている飼い主さんは、ご自分の愛猫はどのような状態なのか、気になるところでしょう。
猫の老衰に関する一般的な定義について、解説していきます。
徐々に身体機能が低下して自然に死を迎えること
猫の老衰は、人間の老衰と同じように加齢により、身体機能や臓器の機能が衰え、病気などを発症せずに最期には自然に亡くなることを指します。
高齢になった猫が、特に原因もないまま亡くなったときには、亡くなった原因は老衰死と判断されます。
病気を伴っていないため、亡くなった原因が老衰の場合には、かなり長生きをした高齢の猫であったということが推測できます。
どれほど元気に長生きをしている猫でも、いずれ死に直面することになります。医療や食事などの発達により、今後さらに寿命が伸びることにより老衰で亡くなる猫は増えていくでしょう。
老衰に対する治療法はない
老衰は病気ではありません。そのため、積極的に治療する方法はありません。老衰が進行していくことで日常生活に支障が出たときなど、症状を和らげるための延命治療などは実施されることがあります。
猫のライフステージと平均寿命
ライフステージとは、生まれてから生涯を終えるまでを、いくつかのステージで分けてあらわしたものです。
人間同様に幼児期から青年、成人となり、老齢期に入るまでにはさまざまな変化がみられるようになります。
そこで、猫のライフステージについて、順を追ってみていきましょう。
猫のライフステージ
猫のライフステージは子猫期から老猫期まであります。一般的にこの年齢になるとつぎのような変化が起きると考えられるので、参考にしてください。
6ヶ月まで:子猫期
生まれて間もない子猫は、授乳期のため母乳や猫用のミルクを飲み、まだ自分で活発に動きまわる時期ではありません。3週間を過ぎると、歯も生え始め離乳期となり、少しずつフードを食べるようになってきており、生後8週間ごろにワクチンの接種の時期となります。
3ヵ月を過ぎる頃になると、活発に動き回るようになり、骨格もしっかりとしてきます。食欲も旺盛で、急激に体が大きくなるのもこのころの特徴です。
人間や、ほかの猫との接し方など社会性を身につける時期でもあり、噛み癖などの悪い習慣をつけさせないためのしつけなどもおこなうようにしておきましょう。
7ヶ月〜2歳:青年期
生後半年をすぎて青年期を迎えたら、性成熟を迎えるため、発情行動が始まり、オス猫はマーキング行動をみせるようになります。
この時期になると、去勢・避妊手術が可能になるので、繁殖の計画がない場合には、病気の予防や発情行動の抑制、望まれない繁殖などを防ぐために手術を検討したほうがよいでしょう。
肉体的にも精神的にも大人になってくるので、子猫期に比べ、性格も落ち着いてきます。
体も大きくなり、それにともない、運動量も増えるため、室内飼いでも運動できるスペースを確保してあげるのが望ましいです。
1歳を過ぎると病院へ行くことも少なくなりますが、継続的な健康管理のためにワクチン接種と年に1、2回程度の健康診断はおこなってください。
3〜6歳:成猫期
このステージは完全な大人となり、体重、体長を含めた体力や健康状態がピークを迎えます。性格も本来その子が持ち合わせている気質が確立されて、飼い主にべったりとくっついて離れない子や、ある程度距離を保って自分のテリトリーを大切にする子など、さまざまな個性がみられるようになります。
健康面では、運動量が若干少なくなってくるため、肥満に注意して食事を含めた健康管理をする必要があります。
年齢を重ねていくほど、代謝が落ち、体重が落ちにくくなるので、次のステージに備えて適度な節制が求められます。
成猫期も、ワクチンと健康診断は欠かさずにおこなうようにしましょう。
7〜10歳:壮年期
壮猫期は人間でいうところの40代〜50代くらいの中年期を指します。肉体的に元気な猫だとまだこのステージでは元気に動くこともでき、成猫期とさほど変わらない子もいますが、徐々に高齢期に近付いており、反射神経や、運動能力に陰りが見え始めます。
健康面でも、徐々に病気などにかかる子も出てくるため、成猫期からの微妙な変化を見逃さないためにも飼い主さんは日々の行動や健康状態をしっかりと観察しておかなければなりません。
11〜14歳:高齢期
高齢期に入ると、見た目にも変化が現れるようになり、筋力が落ちて細くなる場合や、被毛が白くなる猫が多くなります。
行動も遅くなり、あまり動かないことが増えてきます。今までどおりの生活が難しくなる可能性もあるため、猫の老化に合わせて生活環境の見直しをする必要があります。
健康面では、加齢により病気をする猫が増えて、猫に多く見られる泌尿器系の病気や甲状腺疾患などを発症することがあります。
若いときのように年1回程度の健康診断ですと、病気を見落としてしまう可能性があるため、少なくとも半年に1度は病院で診察を受けるようにしてください。
15歳以上:老猫期
老猫期は、平均寿命を超えた長生きの猫になり、1日のほとんどを寝て過ごすことが多くなります。
活動量も減り、場合によっては人間のサポートが必要になるケースもあります。
食事に関しても、歯が弱くなりこれまで食べていたフードを受け付けなくなることがあるので、やわらかくして与えるなどの工夫が必要です。
このステージは、いつ愛猫の体調が変化してもおかしくない年齢のため、何かあったときに適切な治療を受けることができるよう、かかりつけの病院を持ち、体調に異変がみられたらすぐに病院を受診するようにしましょう。
猫の平均寿命は15.62歳
2022年の調査では猫の平均寿命は15.62歳となっています。
一般的に、平均寿命の年齢に差し掛かってくる頃には老衰を迎える可能性を考えておかなければなりません。
猫の寿命は昔より延びている
近年は猫の飼育環境の変化や、医療、フードの進歩により昔よりも平均寿命は延びています。2012年の猫の平均寿命が14.45歳に対し、前述したように2022年には15.62歳となっており、わずか10年の間に1.17歳も平均寿命が変化しています。
ペットとして飼われている猫が、完全室内飼いで飼育されていることが増えたのも要因の1つといえるかもしれません。
メス猫のほうが寿命が長い傾向がある
平均寿命が延びている猫のなかでも、メスはオスより寿命が長い傾向があるといわれています。なぜメスの方が長生きすることが多いのか明確な理由はわかっていませんが、人間でもそうであるように、一般的にはメスのほうが長く生きることが多いようです。
しかし、あくまで平均寿命であり、猫の種類などによっても寿命は変化するためあくまで参考程度にとどめておきましょう。
猫の老衰でよく見られる症状
猫も年齢を重ねれば、老化現象がやってきます。これまでできていたことができなくなったり、異常行動をみせたりするようになります。
高齢の猫が、老衰してくるとよく見られる症状について解説いたします。
食事の量が減る
高齢になると、消化機能の低下や、運動量の減少などにより食欲が落ちるため、1日の食事の量が減ってきます。食事量が減ると体に必要な栄養素が不足するため、筋肉や免疫力など、さまざまな機能が低下してしまいます。
筋力が落ちて、食べる量も減るので、体重も減少し、痩せてしまう猫が多くなります。
身体能力が低下する
筋力の低下や、関節の炎症により、今まで登ることができていた高い場所などに登ることができなくなります。
全体的に動きもスローになり、おもちゃなどに飛びついてじゃれることもなくなり、じっとしている時間が増えます。
睡眠時間が長くなる
猫はもともと睡眠時間の長い動物ですが、加齢とともにさらに睡眠時間が長くなります。これまでなら遊んでいた時間や、飼い主に甘えていた時間も眠っていることが多くなりますが、老猫にとって自然なことなので、そっとしておいてあげましょう。
歯周病が悪化する
猫は老化により、歯の状態が悪化してきます。歯周病も悪化し、場合によっては歯が抜け落ちてしまうこともあります。
猫は歯が抜けても、食事自体には大きな支障をきたしませんが、丸飲みを避けるためにも食事はやわらかくふやかすなどして与えるようにしてください。
粗相や夜鳴きが増える
脳の機能の低下により、認知症を発症することがあり、トイレの場所がわからなくなり、粗相をしてしまうことが増えるようになります。
ほかにも認知症の代表的な症状として、夜鳴きが増え、家の中を徘徊するようになります。
毛質や毛並みが悪化する
食事の量が減り、栄養が不足するために、毛質や毛並みが悪化するのも老化の特徴です。また、若い頃には当たり前におこなっていた毛づくろいの回数が減ってしまうことで、毛並みが悪くなってしまいます。
飼い主への要求が減る
加齢とともに飼い主への要求も減ってくることがあります。眠っている時間が長くなることや、体を動かすことができなくなってきているので遊びの要求などをすることが減ってきます。
ただし、要求が減ったからといって、飼い主に対してまったく興味がないわけではないので、様子を見ながらこちらからコミュニケーションを取ってあげることが重要です。
呼びかけへの反応が鈍くなる
視覚や聴覚が弱くなるため、名前を呼んでも反応が鈍くなってしまうのも高齢の猫の特徴です。またものが見えづらく、音も聞き取りにくくなるため、環境への適応力も衰えてくるので、できる限り静かで安全な場所で過ごせるようにしてあげることが大切です。
猫が老衰してきた時にしておきたいこと
老衰の兆候がみられたら、これまでとは生活環境を変えてあげる必要が出てきます。
できれば、10歳を超えて高齢期に入ってきたら、今後訪れる老猫期に向けての準備を始めていきましょう。
愛猫が安心して暮らせるように、飼い主さんはできる限り環境を整えてあげてください。
段差をできるだけ少なくする
高齢の猫は、運動能力が衰えるため、今までまったく問題のなかったところで思いもよらずケガをすることがあります。
特に高いところから下りるときや、お部屋の中の段差などには注意が必要です。
キャットタワーを低いものに替える
キャットタワーも年齢に合わせて低いものに替えてあげるとよいでしょう。高いキャットタワーのままにしておくと、登ることを怖がり躊躇してしまい、運動をしなくなることもあり、仮に昇れたとしても、降りる際にケガをする危険性があります。
若い頃でしたら、まったく問題ないものでも、老猫にとっては危険なため、できれば交換をおすすめします。
トイレの高さを低くする
運動能力や反射神経、視力の衰えから、少しの段差を感じ取ることができなくなることがあります。
そのため、トイレの段差がわからずに、そのまま粗相をしてしまうことがあります。もし高さのあるトイレを使用しているならば、高齢の猫でもきちんと排泄ができるような低いトイレに交換してあげてください。
フローリングで滑らないように工夫する
フローリングなどは、足腰の弱った猫にとって、ケガのリスクが高くなります。たとえ元気であっても高齢になれば関節などが弱くなり、一度痛めてしまうとなかなか治らずに、場合によっては動けなくなってしまうこともあるので、ケガをしないための環境作りに工夫が必要です。
足腰の筋力が低下して滑りやすくなる
高齢になるとどうしても足腰の筋力が低下するため、歩行に支障をきたすことが多くなります。踏ん張りも利かなくなるため、特にフローリングなどでは滑ってしまいケガをすることも考えられます。
滑り止め用のマットを敷くなどの対策をする
加齢によって、足腰の筋力が低下し、踏ん張りがきかずに滑ってしまうことがあります。
猫の歩行に不安を感じるようになってきたら、滑り止め用のマットやカーペットなどを敷いて安定して歩ける環境を作ってあげましょう。
狭い範囲で生活できるようにする
若い時と同様に、家の隅々まで自由に行き来できるようにすると、飼い主さんの目の届かないところで思わぬ事故が起きてしまう可能性があります。
老猫の場合には、いつどこで具合が悪くなるかわかりません。そのため可能な限り飼い主さんが猫の行動を見守ってあげる必要があります。
長い距離の移動が負担になることがある
猫自身も、動くことがつらくなることが増え、部屋から部屋へ移動するだけでも大きな負担になることがあります。危険な場所に柵などを設置して、食事やトイレ、寝床などを狭い範囲に集めて無理をさせず安心して過ごせるようにしてあげることも検討しましょう。
まとめ
どのような猫でも、いつかは必ず老いはやってきます。特に近年は医療や食事の発達、生活環境の向上によりペットの平均寿命も伸びています。
長い時間をともに過ごせることは喜ばしいことですが、高齢化による問題もいろいろと出てきます。
老衰は、愛猫との別れが近いことを感じさせてしまいますが、それだけ長生きをしてくれた証でもあります。
飼い主の責任として、最後まで安心して猫が暮らせるよう、正しい知識を持つことと、快適な環境作りのための準備を怠ってはいけません。
いずれ訪れるかもしれない猫の老衰について、当記事を参考に今から考えていただけたら幸いです。