健康

【獣医師監修】猫に多い肛門腺炎とは?初期症状や治療法・予防するためにできることを詳しく解説!

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はじめに

愛猫の健康を守るために知っておくべき重要な病気の一つが、肛門嚢炎です。この不快な疾患は、猫に頻繁にみられる問題で、適切な対応が必要となってきます。

飼い主は初期症状を見逃すことなく、適切な治療と予防方法を理解しておくことで、愛猫を苦痛から守ることにつながります。

この記事では獣医師監修のもと、肛門嚢炎の原因や初期症状、治療方法、予防法について詳しく解説します。

肛門嚢炎とは?

肛門嚢炎は愛猫もなる可能性のある厄介な病気です。

猫の肛門周辺には特有の臭いを持つ分泌物を蓄える肛門嚢(腺)があります。これが何らかの原因で正常に機能しなくなり、炎症を起こすことで肛門嚢炎が発症します。

見た目にはわかりにくいこの状態は、愛猫が不快な症状に苦しむことにつながる厄介なものです。

肛門嚢炎の基本的な知識として、何が肛門嚢炎を引き起こすのか、そして猫がどのようにしてこの状態に至るのかを詳しくみていきましょう。

肛門腺からの分泌物は通常は排便などで自然に出る

猫の肛門腺は通常、排便時や興奮した時に自然に分泌物を排出します。この分泌物は肛門嚢に貯蔵され、猫が排便する際に一緒に押し出されることが多いです。

そのため、健康な状態の猫では特別な手入れを必要としないことが一般的といわれています。

肛門腺に炎症が起きると肛門嚢炎になる

肛門腺の分泌物がうまく排出されない場合、肛門嚢で細菌が繁殖しやすくなり、炎症が発生します。これが肛門嚢炎と呼ばれる状態です。

炎症が起こると、肛門周辺が赤く腫れ上がり、痛みや不快感を伴うこともあります。

初期は見た目では分かりにくい

肛門嚢炎の初期段階では外見上の変化が少ないため、症状を見逃しやすいです。しかし、猫がしきりに肛門周辺を舐めたり、床にお尻を擦りつける「お尻歩き」をしていたりする場合は、肛門嚢炎を疑った方が良いでしょう。

肛門嚢炎が疑われる初期症状6つ

肛門嚢炎がひどくなる前に、初期症状を見逃さないようにしなければいけません。猫の行動や体の変化を見極めるのは難しいことですが、初期症状を理解しておくことで、病気の早期発見と対処が可能になります。

ここでは肛門嚢炎を疑うべき6つの典型的な初期の症状をご紹介します。愛猫が、もしもの時に素早く対応できるようにしっかり理解しておきましょう。

肛門を頻繁になめる

肛門嚢炎による不快感や痛みが発生すると、猫は違和感を和らげるために肛門部分を頻繁に舐める行動を見せます。この行動は、肛門嚢内に分泌物が異常に溜まっているサインかもしれません。舐めることによって、一時的に痛みや痒みを抑えるためにしていることがあるため、長期間続く場合は治療が必要です。

お尻を床などに擦りつける

肛門嚢炎による痒みや違和感を感じると、猫はお尻を床やカーペットに擦りつける行動を取ることがあります。

「お尻歩き」とも呼ばれるこの行為は、お尻に違和感があるときに見られる行動です。ただし、これにより皮膚がさらに刺激されてしまうこともあるため、早めの対処が求められます。

お尻歩きをする

猫が肛門嚢炎を発症している場合、お尻を地面に擦りつけて歩くことがあります。この行動は、肛門嚢内の圧迫感や痒みを少なくしようとすることから生じるものです。

肛門嚢内の分泌物が適切に排出されず、刺激が続いている証拠なので、注意しなければいけません。

痛みを訴える

炎症が進行すると、肛門嚢炎は猫に強い痛みを引き起こします。猫が急に飛び上がったり、お尻を触られるのを嫌がったりする行動をした場合、痛みを訴えているサインです。

痛みにより排便を避けるようになることもあり、その結果、便秘を引きおこすこともあります。

食欲がなくなる

肛門嚢炎による不快感や痛みは、猫の全般的な健康状態にも影響を与えます。

痛みが激しい場合、猫は食欲がなくなり、食事を摂ることが少なくなってしまうのです。食欲不振が長く続く場合、炎症が進行している可能性があり、獣医師の診察が必要です。

元気がなくなる

猫が普段と違い元気がなく、活動量が減少したり、隅に隠れることが多くなったりするのは、肛門嚢炎による影響かもしれません。痛みや不快感が原因で、猫が通常の活動を控えるようになることがあります。元気がない状態が続く場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。

肛門嚢炎の治療法は?

愛猫が肛門嚢炎に苦しむ姿は、飼い主にとって何より辛い光景です。しかし、適切な治療法を理解し、早期に対応することで、愛猫の苦痛を軽減し、健康を取り戻せます。

この章では、肛門嚢炎の効果的な治療法について解説します。

肛門絞り

肛門嚢炎の治療において「肛門絞り」はとても重要です。肛門絞りは肛門嚢内に溜まった分泌物や膿を効果的に除去するために行われます。

獣医師や訓練された専門家が、猫の肛門の左右に位置する肛門腺を適切に押し、固まった分泌物を外に出します。

家庭での肛門絞りも可能ですが、技術を身につけるまでは時間がかかることが一般的です。猫によっては肛門腺の位置が異なり、絞りづらい場合もあります。

また、痛みを伴うことがあるため、不快な経験になってしまわないためにも、飼い主が行う場合は、獣医師の指導により適切な方法を学んでから自宅で行うことをおすすめします。

また、分泌物が特有の強い臭いを持っているため、手袋や消臭剤を準備しておくと良いでしょう。

肛門嚢が破裂している場合は肛門嚢内を洗浄

肛門嚢が破裂してしまった場合、治療はより慎重に迅速に行わなければなりません。

破裂によって肛門嚢内の分泌液が周囲の組織に漏れ出し、深刻な感染や組織の壊死を引き起こす可能性があります。

このような状態になった際には、まずは獣医師が肛門嚢内を丁寧に洗浄します。洗浄には、細菌感染を防ぐための消毒液を使用して、感染が拡大するのを抑えるとともに、すでに発生している炎症を鎮める目的があります。

肛門嚢内の洗浄は、肛門嚢の出口が詰まっている場合に特に重要です。詰まりを解消するため、細いカテーテルを用いて分泌物の通り道を確保することがあります。これにより、猫の不快感を和らげ、治療を進められます。これにより、猫の痛みを軽減しつつ、感染のリスクを最小限に抑えるための措置となります。

さらに、肛門嚢の破裂が繰り返される場合や、通常の治療で改善が見られない場合は、肛門嚢の摘出を検討することもあります。この手術は、再発を防ぐための最終手段として考えられており、猫の将来的な健康を守るために行われます。

肛門嚢が破裂した場合の治療は複雑で繊細なケアが求められるため、専門の獣医師による細かな診断と適切な治療計画が必要です。

抗生剤や消炎剤などを投薬

肛門嚢炎の治療において、抗生剤や消炎剤の使用は炎症の抑制と感染防止に重要です。

炎症がある場合、抗生剤は細菌感染をコントロールするために内服や注射で投与されます。消炎剤は炎症による痛みや腫れを和らげる目的で使用されることが多いです。これらの薬は猫の快適さを保ちながら治療を促進するために必要です。

肛門嚢が破裂したり、膿を含んでいたりする場合、単に洗浄するだけでなく、抗生物質や消炎剤を直接肛門嚢に注入することもあります。これにより、感染の拡大を抑え、早期の回復につながります。また、症状に応じてこれらの薬剤を直接肛門嚢に塗布することもあります。

その場合局所的に薬剤が効くため、効果が早くあらわれることが期待できるのです。

肛門嚢炎の治療では、これらの薬を継続して使用することが求められます。獣医師の指示に従い、処方された抗生剤や消炎剤は炎症が完全に落ち着くまで正確に投与し続けることが大切です。

適切な管理と継続的なケアが、猫の健康を回復します。

肛門嚢疾患を何度も繰り返す場合は手術も

肛門嚢炎が頻繁に再発する場合や、薬物治療による改善が見られない状態が続く場合、最終的な治療として肛門嚢の摘出を検討することがあります。

この手術は、肛門嚢を完全に切除することにより、炎症や痛みを根本的に解消し、再発を防ぐ目的があるものです。

肛門嚢の摘出手術は、分泌液の過剰な蓄積や慢性化した炎症が原因で、繰り返し問題が発生する場合に推奨されることが多いでしょう。また、肛門嚢にしこりや異物が形成された場合や、摘出が困難なほどの肛門嚢が硬化している場合にも、この手術が行われることがあります。

手術をすることで、肛門嚢の機能を失いますが、一般的には猫の生活の質を向上させるためのものであり、寿命に影響を与えることはありません。手術により、猫は痛みや不快感から解放され、より快適な日常生活を送ることが可能になります。

肛門嚢疾患の手術は高額な治療費がかかることがあるため、早期の段階で適切な診断と治療が行われることが望ましいです。手術の必要性や効果については、獣医師と十分に相談し、愛猫の状態に最適なものを選択しましょう。

再発を繰り返す場合は、手術を検討することを頭に入れておくと良いかもしれません。

肛門嚢炎を予防する方法はある?

肛門嚢炎は猫にとって不快で痛みを伴うものですが、適切な予防策をとることで発症のリスクを減らせます。

日常的なチェックから定期的なケアについても詳しく解説します。

定期的に猫の肛門をチェック

定期的に猫の肛門をチェックすることは、肛門嚢の早期発見につながるため非常に重要です。猫の肛門は普段尻尾で隠れているため、異常を見つけるのが難しい部分といえます。しかし、肛門周りの濡れや異常な臭い、お尻を気にする仕草やお尻歩きなどの行動が見られた場合は、肛門嚢疾患の兆候である可能性が高いです。

飼い主は、猫の日常のグルーミング時に肛門周りを優しく拭き、清潔に保つことが大切となってきます。これにより、便やそのほかの汚れが肛門嚢に詰まるのを防げます。また、長毛種の猫はお尻周りの毛が長いため、便が毛に付着しやすいです。そのため、定期的にバリカンで気を短く刈り込むことも有効です。

さらに、猫の食事や体重管理にも注意することが重要となってきます。肥満は肛門嚢の問題を引き起こしやすくするため、適切な運動とバランスのとれた食事を提供し、健康的な体重を維持することが望ましいです。日々のケアが、肛門嚢炎予防には不可欠となってきます。

異常を見つけた際は、すぐに動物病院を受診しましょう。定期的なチェックと早期の治療が、猫の苦痛を軽減し健康を維持するために効果的です。

月に1回肛門絞りをする

猫は排便と一緒に分泌物を排出しているので、肛門絞りは必要ないことが多いです。しかし、分泌液がたまりやすい猫の場合、肛門絞りを月に1回行うことが望ましいといえそうです。定期的に行うことで、猫も徐々に肛門周りを触られることを嫌がらなくなるでしょう。

自宅でもできる肛門絞りですが、不適切なやり方で行った場合、肛門腺が破裂するリスクもあります。不安な場合は獣医師にお願いした方が良いでしょう。

肛門絞りのやり方

肛門絞りは猫の肛門嚢炎の予防に有効な方法です。しかし、正しい技術が求められます。

肛門絞りを始める前に、使い捨ての手袋、消臭スプレー、ティッシュ、封ができる袋などを用意してください。絞り中に分泌物が飛び散るのを防ぐためや作業後の清掃を簡単にするために必要です。

猫の尾をそっと持ち上げて、肛門腺のある、肛門の下側の4時と8時の位置に指を当てます。人差し指と親指で肛門腺を優しく押さえ、下から上に向かってゆっくりと圧力を加えましょう。これにより、肛門腺の分泌物が肛門から押し出されます。一度に完全に絞り出せない場合は、数回に分けて優しく絞りましょう。

絞り終わったら、分泌物の匂いを抑えるためや、肛門周りを清潔に保つために、消臭スプレーを吹きかけたティッシュで猫の肛門周りを拭き取ります。

肛門絞りは、猫が快適に過ごすための予防の一つです。継続的に行うことで、肛門嚢炎のリスクを減らし、猫の健康を守れます。

自宅で対応が難しい場合は動物病院でしてもらう

猫はデリケートな部分を触られることに対して非常に敏感で、肛門絞りを嫌がることがあります。猫が肛門絞りに対して怒りや不安を示す場合、無理に自宅で行うと、猫がストレスを感じるだけでなく、怪我をする恐れもあります。

また、正しい肛門絞りは特定の技術が必要です。分泌物が固い場合や、肛門腺が絞りにくい位置にある場合などは、余計に自宅での対応は難しいでしょう。不適切な方法で絞ると、肛門腺が破裂するリスクがあり、状況を悪化させてしまうこともあります。

獣医師は肛門絞りの専門知識と経験を持っています。そのため、自宅で肛門絞りが難しい場合は、猫の安全と健康を考慮して、動物病院で処置してもらう方が良いでしょう。

獣医師による肛門絞りは、猫にとってもストレスが少なく、より安全な方法です。特に、過去に肛門嚢の問題を経験している猫は、定期的に獣医師によるチェックが推奨されています。これにより、肛門腺の分泌液が適切に管理され、将来的な問題の発生を防げます。

まとめ

この記事では、猫の肛門嚢炎について原因や初期症状、治療法、そして予防策について詳しく解説しました。

肛門嚢炎は猫の肛門の左右に存在する肛門嚢の炎症でおこる病気です。飼い主は初期症状である、肛門周りを異常に気にする行動や、お尻を床に擦り付ける行動などに早期に気付く必要があります。

治療法も飼い主自らできる肛門絞りをはじめ、適切な洗浄や抗生剤や消炎剤の投与、頻繁に再発する場合には手術なども存在します。

治療法のある病気ですが、猫にとって不快な症状に悩まされるこの病気は早めに対処しなければいけません。

愛猫が快適な生活を送るために、肥満の防止や適切な食事、肛門絞りといったケアで予防していきましょう。

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