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はじめに
それまで元気にしていた愛猫が、突然けいれん発作を起こしてしまったら、初めて見た飼い主さんはびっくりしてパニックになってしまうと思います。
一体何が原因でけいれんを起こしているのか、まず何をすべきか考える余裕もないはずです。
しかし、そのような状況でも、けいれん発作には大きな病気が隠れていることがあるので、落ち着いた適切な対処が重要です。
そこで、当記事では、もし愛猫がけいれん発作を起こしても、落ち着いて対応ができるように、けいれん発作の原因や対処法について、くわしくご紹介します。
猫のけいれん発作の症状は?
けいれん発作とは、簡単にいうと突発的に体の一部や、全身の筋肉が強く収縮することです。
猫が寝ているあいだに無意識に体をピクっと動かす姿を見たことがあるかもしれませんが、それもけいれんの一種なのですが、これに関してはあまり心配はいりません。
しかし重度のけいれん発作になると、意識を失い、全身をこわばらせ、寒さなどで震えているのとも明らかに違う様子になります。
猫がけいれん発作を起こした場合の、具体的な症状について解説します。
体がけいれんする
けいれん発作は、眠っているときや、じっとしている状態のときに、本人の意思とは関係なく、突然筋肉をビクビクと動かし、手足を伸ばし力が入っている状態になります。
この発作は、数秒から数分で治まることが多く、何事もなかったようにしていることもありますが、けいれん発作を一度でも起こしたのであれば、念のため病院へ連れていったほうがよいでしょう。
また、以下のような症状をみられる場合には重度のけいれん発作の可能性があります。
- けいれんしながらよだれを垂らしている
- 1日に2回以上けいれんを起こす
- けいれんしている時間が5分以上続く
- けいれんしたまま意識が戻らなくなる
- 治まったあともけいれん前と明らかに様子が違う
このような症状がみられたときは、緊急性が高いため、そのまま様子を見ることはせず、夜間休日問わず、すぐに動物病院を受診してください。
意識を失う
けいれんを起こしているときや、治ったあとに意識を失ってしまうことがあります。寝ているあいだに無意識に体を震わせている程度であれば、けいれん発作が終わると意識を取り戻すことが多いですが、けいれんの前後に、失神状態のような形で意識を失った場合には、なんらかの疾患を疑った方がよいでしょう。
人間も同様ですが、突然失神するようなときは、ショック状態に陥っている可能性が高く、そのまま放置するのは大変危険です。
特にけいれんによる意識喪失状態が長く続いている場合には、命に関わることがあるので、すぐに病院へ連れていってください。
このようなときは、けいれんにより意識を喪失した際の様子や、意識を失っていた時間などを記録して詳細を説明しておくと治療にたいへん役立ちます。
発作前に異常な行動をすることも
けいれんは突然起こると思われがちですが、発作前に普段と違う異常行動をみせていることがあります。
ふらふらとしてまるで目が見えていないように歩いていたり、興奮状態や不安そうな様子をみせたりして、明らかに異常な鳴き声を出すこともあります。
急な転倒や、突然失禁をしてしまうような場合には、発作の前兆である可能性があることを覚えておきましょう。
猫のけいれん発作の原因は?
けいれん発作にはそれほど心配のない突発性のものもありますが、ほとんどのけいれんはなんらかの病気が原因となっていることが考えられます。
その原因は多岐に渡るため、けいれんを起こした場合に原因となる可能性のある病気を紹介します。
てんかん
てんかんとは脳の異常な活動により、けいれんなどの症状を起こす病気です。
脳は神経に電気信号を送ることでさまざまな情報を伝達しますが、その機能に異常が起きて急激に電気信号が発生し、脳機能が乱れて情報伝達などがうまくできずにてんかん症状を起こします。
てんかんには体の一部のみけいれんを起こすものから、全身を大きく震わせるけいれんまで様々な状態があります。
軽度のてんかんは比較的短い時間で治まり、そのあとは何事もなかったようにしていることが多いですが、キャットタワーなど高いところでてんかんを発症してしまうと、落下してケガをすることもあるので、その点には注意が必要です。
また、てんかんは、一度発症しても、その後、まったく起きない子もいますが、何度もてんかんを起こしてしまうようならば、てんかんが進行している可能性もあります。
ほかにも、てんかんによるけいれんが長引くケースや、発作が治まっていないうちに次の発作が始まるなどするときは「てんかん重積」と呼ばれる重度のてんかんになってしまっているおそれがあります。
このような場合には、非常に危険な状態であり、一刻も早く病院に連れていってください。
脳腫瘍
一般的に脳腫瘍は高齢の猫に多いとされていますが、腫瘍の種類によっては若い猫にも脳腫瘍が確認されています。
初期段階での症状では、元気がなくなり、寝ていることが増え、起きているあいだもじっとしていることが多くなり、進行するとふらつきや、視覚障害、同方向への回転を繰り返すなど明らかな異常を見せるようになります。
重度の脳腫瘍になるとけいれんや震えを起こし、長時間このような状態が続く場合には、緊急性も高く危険な状態です。
脳腫瘍は初期段階での症状がわかりにくいため、けいれんする時点ではかなり進行している可能性があります。
水頭症
脳や脊髄の周辺には、脳脊髄液とよばれる液体が流れており、脳の内部にある脳室に脳脊髄液が過剰に溜まることで、脳を圧迫し、正常に機能せず神経症状を起こします。
これを水頭症といいます。
おもな症状はふらつきや運動失調で、頭部がドーム型に大きくなり、壁や物によくぶつかるようになったら視覚障害を起こしている可能性があります。
さらに進行すると、四肢が麻痺して歩行障害になり、けいれんや震えを起こすことがあり、重度の水頭症は手術が必要になることがあります。
原因は遺伝による先天的なものが多いですが、後天性の場合には、脳腫瘍などの疾患が原因で、脳脊髄液の流れを止めてしまうケースも確認されています。
脳炎
脳炎は、細菌やウイルス、寄生虫などの感染症により脳に炎症が起きる病気です。
初期症状は、食欲低下や発熱などですが症状が進行し、神経障害が出ると歩行障害や麻痺を起こしけいれんや震えがみられるようになります。
けいれんなどを起こすと一見てんかんと間違えてしまいますが、脳炎の場合には治療方法が異なるので、正しい治療を受けるためにも病院へ連れていきましょう。
中毒
猫が中毒症状を起こす主な原因は誤食です。
猫が中毒症状を起こすのは、薬品など明らかな有害物質だけではありません。
人間が普段、何気なく口にしているものや、家の中や庭にある植物で重度の中毒を引き起こすことがあります。
食品では代表的なものに、チョコレートやネギ類全般があり、植物にいたってはかなりの種類が中毒の対象とされています。
なかでもユリ科の植物を口にすると命にかかわることがあるので、できるだけ猫のいる部屋には植物も置かない方がよいでしょう。
中毒になると、けいれんや震え、呼吸困難や腎機能障害などを起こし大変危険です。
そのため、誤食により愛猫の様子がおかしいときは、すぐに病院で適切な治療を受けてください。
低血糖
低血糖とは、血糖値の低下により神経障害や意識障害を起こす病気のことです。
主な原因として、絶食状態や糖尿病治療中のインスリン過剰投与が挙げられます。
特に子猫は糖を肝臓に貯蔵しておく機能が未発達なため、糖のもとになる栄養は食事から摂るしかありません。
そのため、子猫の場合には長時間の絶食を避けるために、決められた時間に食事を与える必要があります。
成猫は多少の絶食では低血糖になることはありませんが、空腹のまま過度な運動をすると低血糖になることがあります。
また、糖尿病治療中の猫が、インスリンの投与量を間違えた場合や、空腹状態を続けてしまうことで発症することもあります。
低血糖になると、けいれんや震え、意識がもうろうとしてふらつくなどの症状がみられるので、極端な空腹状態などは避けるようにしてください。
腎機能不全
腎機能不全は、腎臓の機能低下により老廃物や毒素が排出されずに、体内に溜まりさまざまな臓器に影響を及ぼす病気です。
もともと飲水量の少ない猫は、高濃度の尿を排泄するため、他の動物に比べて腎機能不全を起こしやすいといわれています。
おもな症状は、多飲多尿になり、体重の減少、けいれんや震え、嘔吐などがみられます。
腎機能不全には急性腎不全と、慢性腎不全があり、急性の場合には早期発見で治療をおこなうことで腎機能が回復することがありますが、慢性になると食事療法や投薬により腎臓への負担の軽減は可能ですが、失われた機能は回復しません。
肝機能不全
肝機能不全は肝臓のさまざまな疾患により、肝臓本来の働きができない状態のことをいいます。
症状は、けいれんや震え、嘔吐などがみられ、さらに悪化すると黄疸が出て危険な状態になります。
肝機能不全になると、体内の老廃物や毒素の分解、タンパク質の合成ができなくなるため、進行すると命に関わることがあり、治療も難しくなるため、早期の治療が重要です。
遺伝的な要因
一部の猫には遺伝的な神経症状が要因でけいれんのリスクが高まることがあります。
このような、病気などの明らかな原因が見つからないけいれんは、特発性てんかんと診断されることがあります。
猫のけいれん発作の治療法
猫がけいれん発作を起こした場合、病気の可能性を考えて、早期に動物病院の受診をおすすめします。可能であれば、けいれんの様子を動画撮影しておくと、診察時の参考になります。
もし、けいれんが治まって何事もなく過ごしていても、病気が原因の場合には再びけいれんを起こすことも考えられるので、原因の特定はしておく必要があります。
けいれん発作を起こした際の一般的な治療法について解説します。
血液検査や画像診断などで原因を特定
けいれんの要因が頭の中にあるものなのか、心疾患や代謝性のものなのか確認するためにも、血液検査やレントゲン、画像診断、必要に応じてMRI検査などで原因を特定します。
けいれんの原因が特定されたら、それぞれの症状に合わせた治療に進みます。
緊急性の高いケースもあるので、けいれん発作を起こしたらすみやかに原因の特定をおこなったほうがよいでしょう。
注射や薬などで薬物療法を行う
獣医師が必要と判断したら、注射や内服による薬物療法がおこなわれます。
治療には原因となる病気を根本的に治療する「根本的治療」と症状を抑え緩和させる「対症的治療」があります。
基本的には、病気に対して根本的治療を施しますが、心疾患や突発性てんかんの場合、根本的治療が困難となるため、対照的治療が中心となります。
けいれんを誘発させにくい生活環境を作る
毎日過ごしている環境がけいれんを誘発させていることもあるので、猫の過ごす生活環境の見直しも重要です。
猫が落ち着いて暮らせるよう、部屋の中で過度な刺激や強いストレスを感じさせないよう、見直しをおこないましょう。
また、食事療法が治療に有効な場合もあるので、普段与えている食事について病院を受診した際に、獣医師に相談してみると必要な療法食を提案してもらえるかもしれません。
猫がけいれん発作を起こした時の対処法は?
けいれん発作は、突然起こることが多く、飼い主さんもパニックになってしまうかもしれませんが、愛猫のためにも落ち着いて対応することが大切です。
まずは発作を起こして頭や体をぶつけてしまわないよう、周りのものを片づけておきましょう。
注意しておきたいのが、けいれん中は意識を失っているか、意識はあっても体の自由がきかないことが多いため、けいれんしている間は無理に体を起こすようなことは控えてください。
けいれん発作を起こしたときに、飼い主さんがとるべき対処法についてみていきましょう。
静かな場所に移動させる
けいれん発作は、通常数分で治まります。
発作が治まったことを確認したら、猫が落ち着いて休める静かな場所へ移動してください。
キャットタワーなどの高所で、けいれんを起こしてしまった場合、落下の危険があるので、けいれん中は落ちないよう静かに見守って、治まったタイミングで移動するようにしましょう。
発作を起こすと猫もパニックになっていることがあるため、移動の際に口の付近に触れると噛まれてしまう危険性があるので、口の周りには触れずに移動してあげましょう。
けいれんしていた時間を測る
けいれん発作を起こしたら、治まるまでの時間を測ってください。
病院を受診した際に、どれくらいの時間、どのような状態であったかなど問診されるので、その際に発作の時間は治療をおこなううえで大きな情報となります。
また、時間だけでなく、あわせて動画の撮影もしておくとよいでしょう。
発作にもさまざまな種類があり、素人では判断できず、口頭ではうまく説明できない場合でも、動画を見せることで正しい治療を受けられる可能性が高くなります。
動物病院に連れて行く
けいれん発作を起こしたら、たとえ治まったとしても念のため動物病院に連れていき、診察を受けてください。
けいれんの原因にはさまざまなものがあり、病気のサインである可能性も高いので安静にして様子をみておけば問題ないものなのか、治療が必要なものなのか獣医師の正しい判断を仰いでください。
病院で伝えるべき内容
病院では問診の際に以下の内容を伝えましょう。
- どのような状況で発作が始まったのか
- もともと病気を持っているか
- 治まるまでの時間
- 発作中の様子
以上の内容を詳しく説明すれば、原因を特定し正しい治療を受けられる可能性が高くなります。
治まるまでの時間はできるだけ正確に、体感時間ではなく時計で測るようにしてください。
また、発作中の様子を口頭で詳しく説明するのは大変難しいことなので、動画を撮影しておくと診察をスムーズに受けることができます。
何回もけいれんする場合や時間が長い場合はすぐに病院へ
病院へ連れていくのは発作が治まってからが望ましいですが、繰り返し発作を起こしたり、発作の時間があまりにも長かったりした場合は、緊急性が高いためすぐにでも病院へ連れていく必要があります。
まずは、落ち着いてかかりつけの動物病院へ連絡をして、医師の指示のもとできるだけ刺激しないよう静かに病院へ連れていきましょう。
まとめ
猫のけいれん発作について解説いたしました。
突然、愛猫がけいれんを起こしてしまったら、飼い主さんはパニックになってしまうと思います。
しかし、けいれんは数分で治まることが多いので、愛猫がけがをしないようそっと見守りながらけいれんが止まるのを待ちましょう。
ただし、けいれんの時間が長く、発作を繰り返すような場合にはすみやかに動物病院を受診してください。
けいれん発作はさまざまな病気で起こりえるため、治まったらたとえ元気を取り戻しても検査は受けておいた方がよいでしょう。
大切なことは、いつけいれんを起こしても、大切な愛猫を守るために飼い主さんが正しい知識を持ち、冷静に対処することです。
そのために、当記事を参考にけいれん発作の対処法や原因などを知っていただければ幸いです。