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はじめに
猫の口臭は、食事の影響や加齢による口腔内環境の変化が原因の場合もありますが、重大な健康上の問題を示す可能性もあり、決して無視できる問題ではありません。
本記事では、「猫の口臭がひどいのは病気?」かどうかというテーマを掲げ、「考えられる原因と対処法」について、口臭の背景にある要因を多角的に解説しています。
猫の口臭が気になる?
猫の口臭は単なる不快感を与えるだけでなく、重大な健康上の問題を示唆する可能性があります。
腐敗臭のような強烈な口臭が発生するなど、猫の口臭が気になるときは、早めに獣医師に相談して原因を特定することが重要です。
猫の口臭に関する病気以外の主な原因
病気以外にも、猫の口臭の主な原因として以下のようなことが考えられます。
- 口腔内のケアが足りない
- 口の中が乾燥している
- 直前に食べた食べ物の影響
次の項目で、それぞれに関して具体的な原因や注意事項などを交えながら、配慮するべきポイントについて詳しくまとめました。
口腔内のケアが足りない
猫の口臭の原因として、口腔内のケア不足が大きく関係していることが指摘されており、原因としては以下のようなことが考えられるでしょう。
定期的な歯磨きやブラッシングを怠ると、口腔内に残った食べ残しが歯垢として蓄積され、それが原因となって細菌の温床となることが、口臭の原因の1つです。
歯垢の中の細菌が原因で歯肉に炎症が起こり歯肉炎を発症すると、腐敗臭のような強烈な口臭が発生します。
やがて歯垢が歯石になり、歯に固着すると取り除くことが非常に難しくなり、歯石の隙間に細菌が残り続けることが、腐敗臭のような強い口臭がする原因です。
歯石が原因で歯肉に炎症を起こして歯周病が進行すれば、さらに強烈な口臭が生じ、歯肉から出血したり膿が溜まったりすると、生臭い腐敗臭が発生します。
歯石は細菌の温床となり、口臭の大きな原因に直結するため、毎日の歯磨きやブラッシングを怠らないよう、適切な口腔ケアの実施が重要です。
口の中が乾燥している
口の中が乾燥していると、以下の理由から口臭の原因になります。
唾液には口腔内を洗浄し、細菌の増殖を抑える自浄作用があります。
唾液の分泌が低下すると口腔内が乾燥するため、それに伴い自浄作用も低下し、細菌が繁殖しやすい環境になることが口臭の原因の1つです。
多くの細菌は、タンパク質を分解する酵素(プロテアーゼ)を産生しており、これらの酵素がタンパク質を小さなペプチドやアミノ酸に分解します。
タンパク質がアミノ酸やペプチドに分解されると、悪臭物質を発生する硫黄化合物を生成する可能性があり、それが口臭の原因になるのです。
また歯周病菌などの病原性細菌は強力なプロテアーゼを産生するため、口腔内のタンパク質が過剰に分解され、その分解産物が口臭の原因となる可能性があります。
したがって細菌の増殖を抑制することは、タンパク質の過剰な分解と口臭の発生を予防する上で重要です。
口の中を乾燥させないようにするためには、以下のような対策が推奨されます。
常に新鮮な水が飲めるように複数の給水器を設置し、十分な水分補給を確保することで、唾液分泌が適切に保たれて口腔内の乾燥を未然に防ぐことが大切です。
また食事を与えるときは、ドライフードだけでなく、ウェットフードや猫用チュールなども上手に組み合わせることで、唾液分泌の促進に期待できます。
慢性的な脱水や唾液分泌低下の原因となる病気がないか、獣医師による定期的な健康診断を受けることも大切です。
直前に食べた食べ物の影響
猫の口臭と食べ物の関係について、まず特筆しておくべき点があります。
直前に食べた特定の食べ物が、猫の口臭に影響を与えるかどうかは科学的な根拠が乏しく、現時点では、この2つを直接的に関連付ける研究結果や事例報告がほとんどありません。
一般的な見解によると、人間を対象とした場合であれば、たとえば「ニンニク」や「ニラ」など独特の強い臭いを持つ食べ物を食事として摂取した後は、一時的に数時間ほど口臭が発生します。
猫を対象にした場合の「ニンニク」や「ニラ」を与えた場合の検証はされておらず、もとよりこれらの食べ物には猫に有害な成分が含まれているため、絶対に食事として与えてはいけません。
ネギ類(ニンニク、ニラ、タマネギ、長ネギなど)を猫が食べてしまうと、赤血球を破壊して溶血性貧血を引き起こすなどの中毒症状を引き起こしてしまうため、非常に危険です。
初期症状としては「おう吐」「下痢」「食欲不振」「倦怠感」「易疲労感」「発熱」などが見られます。
重症化すると「衰弱」「体重減少」「脱水症状」「可視粘膜蒼白」「黄疸」「呼吸促迫」「頻脈」「心雑音」などの症状が見られ、悪くするとショックを起こして意識がなくなり失神を起こすこともあります。
ネギ類に関しては、口臭がするかどうかを気にするよりも、猫の食事としてネギ類を絶対に与えないように注意することが重要です。
万が一、猫がネギ類を食べてしまった場合には、すみやかに獣医師に相談して適切な処置を受けてください。
猫の口臭がひどい場合に考えられる病気
強い口臭が持続する場合、何らかの病気の徴候である可能性が高いため、早期に獣医師に相談し、原因を特定することが重要です。
猫の口臭がひどい場合に考えられる病気としては、以下のようなものが挙げられます。
- 歯周病
- 口内炎
- 便秘
- 腸閉塞
- 糖尿病
- 腎機能不全
- 肝機能不全
- 口腔内腫瘍
次の項目で、それぞれに関して具体的な原因や注意事項などを交えながら、配慮するべきポイントについて詳しくまとめました。
歯周病
口臭の主な原因の1つは「歯周病」です。
唾液中の成分が歯の表面に付着することで細菌が繁殖し、歯垢が形成されます。
歯ブラシなどで歯垢を落とさないと蓄積し、次第に固まって歯石になります。
歯垢中の細菌が歯肉に炎症を引き起こし、歯肉が赤く腫れ上がってしまいます。これを歯肉炎と呼び、口臭の原因となります。
歯肉の炎症が深部まで進行すると、歯を支える組織が破壊されて歯がぐらぐらしたり抜け落ちたりして、腐敗臭のような強い口臭が発生します。このように歯肉炎が進行したものを歯周病と呼びます。
歯周病の予防と対処のポイントとしては、日常的な歯ブラシによる歯垢除去が最も重要です。
猫用の「デンタルブラシ」「指サック」「デンタルシート」「歯磨きジェル」「デンタルケア用のガム」「歯みがきスナック」「口腔ケアサプリ」などを活用しましょう。
歯周病は全身の健康にも影響するため、予防が重要であり、定期的な獣医師による歯科検診と日頃からのケアが大切です。
口内炎
口臭の主な原因の1つに口内炎があります。
口腔内の粘膜に腫れや炎症を起こし、重度になると潰瘍が生じ出血や痛みを伴うことがある病気です。
痛みや違和感を強く感じることで食欲低下を生じ、悪化すると摂食困難に陥り衰弱して死亡することさえあります。
口内炎の原因はさまざまで、重度の歯周病や歯肉炎が原因で口腔内の衛生状態が保たれず、口内炎を引き起こしてしまう可能性があることも原因の1つです。
一般的には、口内炎の主な原因は猫カリシウイルスや猫ウイルス性鼻気管炎ウイルスの感染症によるものが多いとされています。
また猫エイズ発症による免疫不全、腎臓病による血中尿毒素の上昇、糖尿病による血管炎などが原因で、二次的に口内炎を発症することもあるようです。
口内炎の症状には、「口腔内に炎症がある」「口臭が強くなる」「唾液の量が増える」「血の混じった唾液が出る」「口をクチャクチャさせる」「口周りを触られるのを嫌がる」「毛繕いをする頻度が減る」「毛並みが悪くなる」「食欲低下」などの症状が見られます。
ただし、これらの症状だけで口内炎と断定することはできず、歯周病や口腔内腫瘍などでも似たような症状が見られます。
口内炎を疑うような症状が見られたときは、すみやかに獣医師に相談し、原因を特定して適切な治療を受けましょう。
口内炎の予防と対処のポイントとしては、定期的に混合ワクチンを接種し、日常的に歯みがきを実施することにより口内環境を清潔に保つことが大切です。
口内ケアには、猫用の「デンタルブラシ」「指サック」「デンタルシート」「歯磨きジェル」「デンタルケア用のガム」「歯みがきスナック」「口腔ケアサプリ」などを活用しましょう。
便秘
人間の場合は、便秘により腸内環境が悪化することで悪玉菌が増え、発生した腐敗ガスが血流を通じて肺に運ばれて、呼気から口臭として漏れ出るというメカニズムが指摘されています。
しかし猫の場合は、便秘が原因で口の中の細菌増殖や口臭物質の発生を引き起こすことはなく、口臭の原因になることは少ないことが考えられるため、便秘と口臭の関連性は低いでしょう。
猫の口臭の主な原因は、「歯周病による細菌の増殖」「消化器系の疾患」「代謝異常」「食べ残しの腐敗」などが考えられ、便秘そのものが直接の原因にはなりにくいことが推測されます。
ただし、長期的な便秘は猫の健康状態を悪化させるため、便秘が長引くことで間接的に口臭の一因になることも考えられ、二次的な影響で口臭が生じる可能性があります。
便秘が続くと腸内環境が悪化することで有害な細菌が増殖し、その結果、腸内の発酵臭や腐敗臭が口から漏れ出すことで、口臭が発生する恐れがあるでしょう。
便秘で体調を崩したことにより、食事量が減り水分補給が不足することで、唾液分泌が低下するに伴って口腔内の自浄作用も低下し、細菌が繁殖しやすくなることで口臭が発生するかもしれません。
便秘による不快感が続くことにより、ストレスから免疫力が低下し、口内炎や歯周病が起こりやすくなることで、それに伴って口臭が発生することが考えられるでしょう。
つまり、便秘そのものが直接の原因ではありませんが、便秘が長期化することで二次的な影響が原因となり、口臭が強くなる可能性があります。
便秘になったときは放置せず、すみやかに獣医師に相談し、原因を特定した上で適切な対処と予防策を講じることが大切です。
腸閉塞
腸閉塞は腸が詰まる状態のことで、内容物が排泄されないため腸内で便が腐敗し、強い腐敗臭や便臭が口から漏れ出ることが、口臭の主な原因の1つです。
腸閉塞の原因には、腸管内が物理的に塞がれてしまい通過障害が起きる「機械的閉塞」と、腸管内に物理的な閉塞は見られないものの通過障害が起きる「機能的閉塞」の2つがあります。
機械的閉塞は、「異物の誤飲」「重度の便秘」「捻転(ねんてん)」「腫瘍」「ポリープ」「腸ヘルニア」「手術後の癒着」などが原因です。
機能的閉塞は、「消化管の炎症」「感染症」「代謝性疾患」「薬剤の作用」「腹膜炎」「血栓」「ストレス」などが原因です。
腸閉塞の症状には、「おう吐」「腹痛」「便秘」「排便困難」「腹部膨満」「食欲不振」「倦怠感」「易疲労感」などの症状が見られます。
通過障害が軽度であれば症状も軽いことが多いですが、放っておくと血行不良を引き起こし、腸が壊死してしまうこともあるため、症状が悪化すると非常に危険です。
また腸が完全に閉塞している場合や、腸粘膜を損傷している場合には、腸内細菌の毒素が血液中に入り込んでショック状態に陥ることもあります。
腸閉塞を予防することは難しいですが、いくつかの対処法が提示されており、まず一番には、猫が誤って異物を飲み込まないように注意することが一般的な対処法です。
食事に関しては、ドライフードだけではなくウェットフードを適度に組み合わせて与えることで、腸閉塞の予防に役立つ可能性があるでしょう。
食物繊維の多いドライフードを与えることで便通を良くし、水分補給にもなるウェットフードを与えることで便を柔らかくすることにより、腸閉塞のリスクを下げる効果が期待できます。
運動管理も大切で、適度な運動を促すことで腸の運動を活発化させ、便秘が続かないよう注意することも、腸閉塞にならないための予防の1つです。
またストレスは免疫力の低下を招いて、腸の炎症や腫瘍などの原因となり、腸閉塞を引き起こすリスクがあるため、ストレスを与えないよう配慮するとともに、リラックスして過ごせる環境づくりに努めましょう。
異物の誤飲防止、適切な食事管理と運動管理、ストレス対策、定期的な健康診断など総合的な予防対策に努め、腸閉塞が疑われるような異常が見られた場合は、早期に獣医師に相談して適切な治療を受けてください。
糖尿病
糖尿病は口臭の主な原因の1つです。
糖尿病によって体内のインスリンが不足すると、高血糖により腎臓から水分などが失われ、細胞内にブドウ糖が取り込めなくなるとエネルギー不足が生じます。
そのため、体は脂肪を分解してエネルギー源とするようになり、この脂肪の分解の際にケトン体が生成されます。
このケトン体には独特の甘酸っぱいにおいがあり、血液中に溜まったケトン臭が口から漏れ出ることが、口臭の原因です。
重症化すると、「倦怠感」「易疲労感」「食欲消失」「おう吐」「下痢」「呼吸促迫」「意識の低下」「意識混濁」「昏睡状態」などの症状が見られ、糖尿病性ケトアシドーシス(糖尿病性昏睡)の危険があります。
糖尿病は進行すると治療が難しい病気なので、糖尿病の初期症状(多飲、多尿、体重減少など)に気づいたら、すみやかに動物病院を受診して早期発見・早期治療に努めてください。
腎機能不全
腎臓の機能低下により起こる腎不全は口臭の主な原因の1つです。
腎臓が尿素などの老廃物を十分に排出できなくなると血中に蓄積し、この尿素が分解されてアンモニアが生成されることで、アンモニア臭が口から漏れ出ることが口臭の原因になります。
腎不全が進行すると、代謝性アシドーシスを起こしやすくなり、この際に生じるケトン体の分解物も口臭の原因となります。
腎不全になると免疫力が低下し、口腔内の細菌感染症が起こりやすくなるため、細菌の増殖が口臭を悪化させることも口臭の一因です。
腎不全は腎機能低下に至る経過によって、急性と慢性に区別されます。
猫の急性腎不全は、数時間から数日で急激に腎臓の機能が低下する深刻な病気です。
急性腎臓病は、「腎臓自体の障害」「腎臓への血流低下」「感染症」「中毒」などが原因とされており、尿道閉塞や尿管結石などで排尿が上手にできないときにも発症するケースがあります。
急性腎不全の主な症状は、「食欲不振」「倦怠感」「易疲労感」「おう吐」「脱水」「尿量の極端な減少」「無尿」、進行すると「意識障害」「けいれん」などの症状が現れます。
猫の急性腎不全は緊急事態であり、致死率が高いことから治療介入が不可欠なため、初期症状を見逃さず、すみやかに動物病院を受診してください。
慢性腎臓病は、長い年月をかけて腎臓の機能がゆっくりと低下していく病気です。
腎臓がダメージを受けて十分に機能しなくなる状態が「腎不全」と診断され、腎不全が長期間にわたり続いた場合に「慢性腎臓病」と診断されます。
腎不全の原因は明確になっていない進行性の病気で、一度損なわれた腎臓の機能は元に戻らないため、腎不全そのものを完全に治すことは困難です。
食事やサプリメントなどを摂取することで残存する腎機能の負担を軽減し、点滴や薬物療法などで体内の老廃物を排出させ、病気を治すのではなく症状の進行を遅らせることが、治療の主な目的となります。
腎機能不全の初期症状(多飲、多尿、体重減少など)に気づいたら、すぐに獣医師に相談し早期発見に努め、適切な治療と管理を続けることで、一定期間における健康的な生活を支えてあげましょう。
肝機能不全
肝臓に障害を受けることで引き起こされる肝機能不全は口臭の主な原因の1つです。
肝臓が老廃物を適切に代謝・排出できなくなると、アンモニアなどの有毒物質が血中に蓄積し、このアンモニアが唾液中に溶け出すことで、アンモニア臭が口から漏れ出ることが口臭の原因になります。
肝不全が進行すると、代謝性アシドーシスを起こしやすくなり、この際に生じるケトン体の分解物も口臭の原因となります。
肝不全になると免疫力が低下し、口腔内の細菌感染症が起こりやすくなるため、細菌の増殖が口臭を悪化させることも口臭の一因です。
肝不全は肝臓の機能不全を意味しており、肝臓がその役割を果たせなくなった状態のことです。
肝不全は、重症の肝炎が原因で引き起こされる場合がありますが、肝硬変や肝臓がんなど他の肝疾患が原因となることもあります。
肝不全には、数日で急激に発症し致死率が高い「急性肝不全」と、長期間で徐々に進行する「慢性肝不全」の2つがあります。
急性肝不全は、肝臓の機能が急激に低下して重篤な症状が現れる深刻な病気で、主な特徴は以下のとおりです。
原因は「ウイルス性肝炎」「薬物または化学物質による中毒」「自己免疫性肝炎」などが挙げられています。
症状には「皮膚や粘膜が黄色くなる黄疸」「意識障害や昏睡などの肝性脳症」「倦怠感」「食欲不振」などが見られます。
猫の急性肝不全は緊急事態であり、肝細胞が大量に破壊されることで肝臓の機能が極端に低下して、有毒物質の蓄積により脳症や多臓器不全が生じるため、致死率が高い病気です。
初期症状に気づいたら、すみやかに動物病院を受診し、原因特定と適切な治療を受けてください。
慢性肝不全は、肝臓の機能が徐々に低下していく進行性の病気で、主な特徴は以下のとおりです。
原因は「感染症」「代謝異常」「脂肪肝」「毒物や薬物の中毒」「自己免疫性肝炎」「先天性の肝臓疾患」「原因不明」などが挙げられています。
初期症状は「無症状」または「非特異的症状(食欲不振や易疲労感など)」、次第に「黄疸」「腹水」「出血」などの症状、最終的には「意識障害や昏睡などの肝性脳症」などが見られます。
慢性肝不全は徐々に進行するため、初期症状に気づきにくいのが特徴です。
定期的な健診診断と血液検査を実施して早期発見に努め、適切な治療と管理を続けることで、一定期間における健康的な生活を支えてあげましょう。
また肝炎は、「感染」「中毒」「寄生虫」などが原因で肝細胞の障害や炎症が起きる病気で、肝不全と同様に口臭の主な原因の1つです。
肝炎が進行すると、肝臓の機能が低下して老廃物であるアンモニアが血液中に蓄積し、このアンモニアが唾液に溶け出すことで、強いアンモニア臭の口臭が生じる可能性があります。
感染性肝炎の主な原因となるウイルスには、「猫白血病ウイルス」「猫免疫不全ウイルス」「猫感染性腹膜炎ウイルス」が挙げられ、これらは比較的よく知られているウイルス性疾患です。
猫白血病ウイルスは肝臓にも影響を与えることがあり、持続感染する場合には慢性肝炎を起こし、肝硬変や肝不全に進行する可能性があります。
猫免疫不全ウイルスは、免疫不全の状態で肝臓への感染が起こりやすく、肝臓への直接的な障害よりも免疫不全に伴う肝障害が問題とされている病気で、キャリア猫では肝機能障害が高い確率で見られるようです。
猫感染性腹膜炎は肝臓への直接的な感染および障害を起こす病気で、肝臓に肉芽腫ができ、肝硬変や肝不全に進行することがあります。
感染性の肝炎は初期症状に乏しいため、定期的な健康診断とワクチン接種を受けることが大切です。
また感染を広げないよう注意し、適切な飼育環境の確保および感染猫との接触防止などの予防対策に努めてください。
猫の様子に異常が見られるときは、すみやかに動物病院を受診し、獣医師の指示に従って原因を特定した上で適切な治療を受けましょう。
中毒性の肝炎の主な原因は、「リリー、アマリリス、ツツジなど植物の中毒」「薬物の副作用」「薬物の過剰投与」「特定の抗生物質」「解熱鎮痛剤」「家庭用洗剤」「駆虫薬」「殺虫剤」「有毒カビの胞子」「重金属中毒」などが考えられます。
中毒による肝障害は急性肝不全を引き起こす可能性があり、致死率が高くなるため、異常が見られたら早期に獣医師に相談してください。
寄生虫性の肝炎は、「トキソプラズマ症」「回虫症」などの寄生虫が肝臓に感染することで引き起こされる肝臓の炎症のことです。
トキソプラズマ症は、トキソプラズマ原虫が肝臓に寄生することで発症する病気で、免疫力が低下した猫に多く見られる傾向があり、「発熱」「食欲不振」「黄疸」などの症状が出ます。
回虫症は、回虫の幼虫が体内を移行する際に肝臓を通過し、肝臓に損傷を与えることで肝炎を発症することがあり、「下痢」「体重減少」などの症状が見られます。
寄生虫による肝炎は、初期には無症状のことが多く、症状が現れた場合には既に進行している可能性があるため、定期的な健康診断と検査で早期発見に努めることが重要です。
口腔内腫瘍
口腔内腫瘍は口臭の主な原因の1つです。
腫瘍(しゅよう)が大きくなり内部の細胞が壊死すると、その部分が潰れて潰瘍(かいよう)ができ、そこから細菌感染を引き起こすことで強い口臭が発生することがあります。
腫瘍による出血や壊死組織が原因で口臭がする場合や、腫瘍が大きくなることで食べ残しが溜まり、それが腐敗して口臭の原因となる場合もあります。
口腔内は、悪性および良性を問わず腫瘍が非常によく発生する部位で、猫においては扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)の発生が最も多いと言及されており、次いで線維肉腫(せんいにくしゅ)が好発するようです。
猫の口腔内にできる腫瘍は悪性のことが多く、約80%から90%が悪性腫瘍であることが明らかになっています。
扁平上皮癌は口腔内腫瘍の中で最も発生頻度が高く、周囲の組織に広がる速度が早いため完治が困難な悪性腫瘍です。
発生原因は明確になっておらず、発生部位は「舌」「上顎の粘膜」「下顎の粘膜」など、口腔内のあらゆる粘膜に発生します。
症状には、「潰瘍による出血や痛み」「舌の運動障害による食べ物の嚥下(えんげ)困難」「腫瘍の増大による開口障害」「上顎発生例では目や鼻への影響」などがあります。
扁平上皮癌は進行が早く、悪性腫瘍が転移すると全身状態が悪化するリスクもあるため、定期的な口腔内チェックを実施することが大切で、迅速な対応と全身管理も求められます。
線維肉腫は、原因は明確ではないが免疫力の低下やストレスが関与する可能性が指摘されており、ワクチン接種が発症のリスク因子の1つとも考えられているようです。
結合組織が存在するあらゆる部位に発生する可能性があり、全身のどの部位にも発生するリスクがあるため、定期的な観察が推奨されます。
主な発生部位は、「四肢」「口腔内」「体幹部」「頭頚部」「乳腺」です。
猫が線維肉腫を発症した場合は、「ワクチン接種部位(頚部、肩甲骨間部、大腿部など)」「四肢(特に肢端部)」に発生することが多いとされています。
線維肉腫は扁平上皮癌と同様、悪性度が高く転移リスクがあるため、早期発見と適切な治療介入が不可欠で、定期的な観察と発見時の迅速な対応が重要です。
猫の口臭を予防するにはどうしたらいい?
猫の口臭を予防するための対策としては、定期的な歯磨きと口腔ケアに加え、水分補給や定期健診を欠かさず、異常があれば早期対応することが大切です
- 毎日の歯磨きを習慣化する
- 定期的に口腔内をチェックする
- 水分補給をしっかり行う
- 定期検診を受ける
次の項目で、それぞれに関して具体的な方法や注意事項などを交えながら、配慮するべきポイントについて詳しくまとめました。
毎日の歯磨きを習慣化する
歯磨きを毎日習慣化するためには、以下のようなポイントに注意し、配慮することが重要です。
飼い主さんの就寝前など、他の習慣と組み合わせてルーティン化し、特定の時間に猫の歯磨きをすることで、習慣が身につきやすくなります。
最初は短時間から行うようにして、徐々に時間を延ばしていき、もし嫌がる様子があれば無理強いをせず、別の日に試みるようにしてください。
また歯磨きをした後は、おやつを与えたり、おもちゃで遊んであげたりして、ご褒美を与えることによって、歯磨きを嫌がらなくなる可能性があります。
猫専用の小さなヘッドの柔らかい「デンタルブラシ」を用意し、猫用の「歯磨きジェル」を使って歯磨きすることで、抵抗が少ないでしょう。
どうしても慣れない場合は、ペット向けのデンタルケア用の「指サック」や「デンタルシート」の使用を推奨します。
猫の反応を見ながら無理のない範囲で行い、補助的に「デンタルケア用のガム」「歯みがきスナック」「口腔ケアサプリ」なども活用しましょう。
定期的に口腔内をチェックする
猫の口臭予防のための定期的な口腔内チェックには、以下のようなことが含まれます。
- 歯垢や歯石が溜まっていないか
- 炎症やただれなどの症状がないか
次の項目で、それぞれについてチェックポイントを交えながら、具体的な方法や注意事項などを詳しくまとめました。
歯垢や歯石が溜まっていないか
口臭の主な原因の1つとして、挙げられます。
歯垢を放置すると歯石に変わり、歯石には歯垢が付着しやすい傾向があるため、この悪循環が歯垢や歯石が蓄積する原因です。
不十分な口腔ケアにより歯垢や歯石が蓄積すると、歯垢は細菌の温床となり歯肉炎や歯周病を引き起こし、それが強い口臭の原因になります。
歯垢や歯石が溜まっていないかをチェックすることで、歯垢や歯石の付着を防ぎ、口臭の原因となる口腔内の健康を維持することが重要です。
チェックする方法としては、歯の表面に白い付着物(歯垢)や硬い茶色い付着物(歯石)がないか、口腔内をよく観察してください。
定期的な歯磨きで歯垢を取り除き、口腔内を清潔に保つことで、猫の歯周病や口臭を予防することにつながります。
歯垢は歯磨きをすることで取り除くことが可能ですが、歯石は歯ブラシでは落ちないので、獣医師による専門的な歯石除去が必要です。
注意点としては、猫は基本的に口を開けさせることを嫌がるので、無理強いはせず、優しく対応することが大切です。
口腔内に異常が見つかった場合には、早めに獣医師に相談しましょう。
定期的な口腔内チェックと歯磨きで、歯垢や歯石の付着を防ぎ、口腔内の健康を維持することが、猫の口臭予防につながります。
炎症やただれなどの症状がないか
口腔内の炎症やただれなどの症状は、猫の口臭の主な原因の1つです。
口内炎や歯肉炎は、口腔内の細菌感染によって引き起こされる炎症で、細菌が増殖してタンパク質が分解されることで臭気物質が発生し、強い口臭が生じます。
歯周病は、唾液の流れが悪くなり自浄作用が低下するため、歯肉組織の炎症や壊死が原因で発生した臭気物質が口腔内に残りやすくなり、強い口臭が生じます。
口腔内で炎症が起きたり粘膜にただれや潰瘍ができたりすると、細菌感染が進行し強い口臭が発生するため、定期的な口腔内チェックと適切なケアが重要です。
猫の口腔内に炎症やただれなどの症状がないかをチェックする際は、以下の点に注意してください。
猫は基本的に口を開けさせることを嫌がるので、無理強いはせず優しく対応し、おやつなどで誘導して口を開けさせるとよいでしょう。
歯肉が赤く腫れていないか、出血していないか、舌や口内粘膜などに潰瘍や腫瘤がないかをチェックして、異常が見られるときは、すみやかに動物病院を受診してください。
強い口臭が発生するときは、歯周病や口腔内疾患の兆候である可能性があるため、早めに獣医師に相談しましょう。
また食べることを嫌がったり涎(よだれ)が多かったりする場合には、口腔内疾患による痛みが原因の可能性も考えられるため、早めに獣医師に相談してください。
水分補給をしっかり行う
口の中が乾燥していると、「口腔内の自浄作用が低下する」「細菌が繁殖しやすくなる」「歯垢が付着しやすくなる」などの悪影響を及ぼし、歯周病や口内炎のリスクが高まるため、口臭が発生しやすくなります。
口臭を予防するためには、「自浄作用を高める」「唾液の分泌を促進する」「口腔内を湿潤状態に保つ」「細菌を洗い流す」「細菌の繁殖を抑える」ことが重要です。
水分補給をしっかり行うことで、口腔内環境を良好に保つことができ、細菌の増殖が抑えられるため、口臭予防として有効な手段となります。
水分をたくさんとってもらうための工夫
猫に十分な水分をとってもらうための工夫としては、以下のようなことが挙げられます。
できれば「猫の頭数+1個以上のウォーターボール」を用意しましょう。
猫は縄張り意識が強く、1つの水飲み場を独占しがちになるため、複数の水飲み場があれば、猫同士で争うリスクが下がります。
多頭飼育の場合は特に、「猫の頭数+1個」もしくは「猫の頭数×2個」のウォーターボールを用意することが理想的とされています。
ウォーターボールは定期的に洗浄し、1日に数回は水を交換することを心がけて、新鮮な水を常に提供するようにしてください。
縁の広い浅めのウォーターボールが適していますが、流水が好きな猫には噴水型の自動給水機を推奨します。
水飲み場は、騒がしい場所や人の往来が多い場所を避けて、猫が落ち着いて水が飲めるよう、静かな場所に設置しましょう。
多頭飼育の場合は、「猫の頭数+1箇所以上の水飲み場」を用意して、一か所にまとめて設置するのではなく、色々な場所に分散して設置することが推奨されています。
猫は本来あまり水を飲まない習性があるため、水分含有量の高いウェットフードや缶詰を与えることでも、水分補給の補助になります。
ただし水分補給の補助には有効ですが、ウェットフードや缶詰を単独で与えるだけでは水分補給としては不十分です。
あくまでもウェットフードや缶詰は補助であり、複数の水飲み場を設置して新鮮な水を常に提供することで、水を飲む習慣をつけさせることが重要です。
定期検診を受ける
猫の口臭予防のために、定期的な獣医師による健診を受けることが重要です。
獣医師による健診では、歯の表面に付着した歯垢や歯石の有無のチェックなどが行われ、口臭の原因となる口腔内の問題を早期発見・早期治療につなげることができます。
歯垢や歯石が多量に付着していると歯周病のリスクが高まるため、獣医師による専門的な処置(超音波スケーラーを使って歯の表面の歯垢や歯石を除去する施術)を受けて、口腔内の健康を保つことが重要です。
また歯の検診を受けるときには、歯肉が赤く腫れていないか、出血していないか、口内粘膜に炎症や潰瘍などがないか、強い口臭が発生していないかなどもチェックしてもらい、異常が見られるときは獣医師の指示に従って適切な治療を受けてください。
獣医師による専門的な処置と、飼い主による日常的なデンタルケアを組み合わせることで、猫の口腔内の健康を維持しましょう。
まとめ
猫の口臭の原因には、「歯周病」「消化器系の疾患」「腎臓病」など、さまざまな病気が口臭の背景にあり、重大な健康上の問題を示す可能性があります。
対処法としては、「定期的な歯石除去」「疾患や体調に合った食事療法」「獣医師による検査と適切な処置」などを組み合わせた総合的なアプローチが重要です。
口臭は深刻な病気のサインの可能性があることを理解し、適切に対処することで改善が期待できる場合もあります。
愛猫の健康的な生活を守るためにも、当記事の情報を基本的な知識として吸収し、ぜひお役立てください。