健康

【獣医師監修】猫には生理がない?出血したら考えられる病気6つ

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はじめに

猫に生理(月経)があるか気になる方は多いと思います。

ただ、驚くべきことに体の構造上猫には生理がありません。

そのため、猫が陰部から出血している場合は病気を疑う必要があります。

生理だと問題ないと思っていると病気が悪化する可能性があるのです。

今回は、猫の体のしくみや生理について詳しく紹介します。

出血した場所ごとに考えられる病気や発情期のサイン・発情期の対策法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

猫には生理がない?

先述した通り、猫には生理がありません。

そのため、猫は人間や犬とは異なる流れで妊娠・出産をしているのです。

猫の体の仕組みやそもそもの生理について紹介しますので、ぜひチェックしてください。

生理(月経)とは

生理とは、妊娠・出産を通して生物が生存するために必要な生命現象や生体機能のことです。

具体的には、約1ヵ月に1回、卵巣から卵子を排出する排卵が起こり、子宮内膜を厚くします。

しかし、卵子が受精しなかった場合は、子宮内膜がはがれて体外に排出されるのです。

そして、生理は周期的に繰り返されます。

ただ、生理は人間などの限られた哺乳動物にしかなく、猫には生理がないのです。

猫は交尾排卵動物のため生理はない

次に、猫に生理がない理由を具体的に紹介します。

猫が他の哺乳類と異なって生理がないのは、交尾排卵動物だからです。

交尾排卵動物は、猫が発情期に交尾すると排卵が起こります。

具体的には、猫は交尾による外陰部と膣への刺激によって排卵がおこるのです。

したがって、猫は月経周期(生理)を持ちません。

通常の哺乳類では、毎月の定期的な周期で子宮内膜が厚くなり、その後排卵が起こると受精卵が着床する準備が整います。

一方で、猫はメスが発情してオスとの交尾で排卵が引き起こされるので受精しやすいのです。

そして、受精が起こると受精卵が子宮内に着床し、妊娠が始まります。

猫は妊娠の仕組みが人間と異なるので妊娠しやすいと覚えておきましょう。

陰部からの出血は病気の可能性

ここまでは、猫に生理はないとお伝えしてきました。

従って、猫は生理による出血もありません。

そのため、猫が陰部から出血する場合は病気の可能性があるのです。

具体的には、尿路感染症や子宮蓄膿症・子宮内膜症・子宮や卵巣の腫瘍・外傷などさまざまな可能性があります。

猫が陰部から出血する場合は、速やかに獣医に相談するのが重要です。

飼い主だけではわからない健康状態を評価し、適切な治療を行ってくれます。

詳しい病気や症状は後述しますので、猫の健康を維持するためにも必ずチェックしてください。

生理に似た出血で考えられる病気

次に、猫が生理に似た出血で考えられる病気を紹介します。

出血した場所ごとに病気と具体的な症状を詳しくまとめているので、どの病気の可能性があるか判断できるようになりましょう。

陰部からの出血

まず、陰部からの出血で考えられる病気を紹介します。

  • 子宮内膜炎
  • 子宮蓄膿症
  • 子宮癌

出血した場合は、3つの病気の可能性を考え、すぐに病院に連れて行きましょう。

子宮内膜炎

はじめに、陰部からの出血で考えられる病気は子宮内膜炎です。

猫の子宮内膜炎は、感染によって引き起こされます。

メス猫は発情期になると、子宮の頸部が普段よりも開いた状態となり、免疫力が低下して感染しやすいのです。

子宮内膜炎になると、猫は通常の排尿時に黄色や緑色などの異臭のする分泌物を排出します。

また、排尿時に苦痛を示し、頻尿や排尿困難を引き起こす場合も多いです。

さらに、子宮内膜炎の猫は、食欲が低下し、体重が減少することがあります。

他にも子宮内膜炎は、腹部の不快感や腫れを引き起こす場合があるのです。

そのため、子宮内膜炎は緊急性の高い疾患であり、症状が見られた場合は速やかに獣医の診察を受けましょう。

治療する場合は、抗生物質の投与や手術などを行います。

子宮蓄膿症

次に、陰部からの出血で考えられる病気は子宮蓄膿症です。

猫の子宮蓄膿症は、子宮内膜炎が発生し化膿性の蓄膿を伴う場合に発生します。

そのため、症状は子宮内膜炎と似ている場合が多いです。

例えば、子宮蓄膿症の猫は排尿時に苦痛で頻尿や排尿困難になったり、膿や血液が混じった異常な分泌物を出したりする場合があります。

また、子宮蓄膿症の不快感から、猫は食欲不振や体重減少になる場合も多いです。

さらに、子宮蓄膿症で炎症による発熱が起こり、猫の体温が通常よりも高い場合があります。

そして、これらの症状で猫は活動量が低下し、興味や関心が失われるのです。

子宮蓄膿症の症状が見られた場合は、速やかに獣医に相談して治療を受けましょう。

治療には抗生物質の投与や子宮摘出手術が必要となる場合があります。

子宮癌

最後に、猫が陰部から出血している場合、子宮癌が考えられます。

子宮癌では、メス猫の子宮内の組織で悪性腫瘍ができるのです。

子宮癌は、避妊手術をしていないメス猫によく見られ、ホルモンバランスが影響していると言われています。

子宮癌の猫は、陰部から異常な出血が出る場合が多いです。

また、出血は排尿時やその他の日常活動中に見られます。

そして、子宮癌は腫瘍が子宮内に成長するため、特徴的なのは腹部の腫れです。

さらに、腫瘍による身体への影響から猫は食事を拒否する場合もあります。

他にも、子宮癌が子宮近くの器官に圧迫をかける場合、排尿困難や尿路の問題が発生するケースも多いです。

子宮癌は重篤な疾患なので、症状が見られた場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。

子宮癌の治療では、子宮の摘出や放射線療法・化学療法などを行います。

尿路からの出血

次に、尿路からの出血で考えられる病気を紹介します。

  • 尿路結石
  • 膀胱炎
  • 腎臓からの出血

それぞれ具体的な症状を紹介しますので、病気の可能性を考え獣医に伝えられるようにしましょう。

尿路結石

尿路からの出血で考えられる病気の1つは尿路結石です。

尿路結石は、体質、栄養の過不足、ストレスなどが原因で発症します。尿のphバランスが悪化要因となることもあります。

尿路結石は、猫にとってよく見られる問題であり、尿道結石・膀胱結石・尿管結石などが起こる場合があります。

尿路内の特定の部位に尿中のミネラルが沈着し、石灰化してできるのが結石です。

尿路結石になると、血液が尿中に混じってピンク色や赤色になる場合があります。

また、猫は排尿時に痛みや不快感が伴うのが特徴的です。

さらに、痛みを和らげるために腹部やしっぽを舐める行動が増えたり、食欲不振になったりします。

尿路結石は、腎不全などの重篤な合併症を引き起こす可能性があるので、早期の治療が必要です。

尿検査や画像診断などを行い、結石の種類や大きさを確認し、状態に応じた適切な治療を受けましょう。

膀胱炎

次に、尿路から出血する場合に考えられる病気の1つは膀胱炎です。

膀胱炎は、膀胱内の炎症によって引き起こされる疾患で、尿路からの出血が特徴的です。

膀胱炎は、細菌感染や結石の存在によって引き起こされます。

細菌が膀胱に侵入すると、膀胱壁が炎症を起こし、尿路からの出血が生じるのです。

また、結石が膀胱の壁を刺激することも出血を引き起こす原因となります。

猫が膀胱炎の場合、通常の尿の色とは異なりピンク色や赤色のケースが多いです。

そして、猫は排尿時に痛みや不快感を覚えています。

膀胱炎を放置すると腎臓に影響を及ぼす可能性があるため、気になったら病院で相談しましょう。

膀胱炎の場合、適切な抗生物質や炎症を抑える薬を処方して治療します。

腎臓からの出血

最後に、尿路からの出血で考えられる病気は腎臓からの出血です。

腎臓からの出血は、腎臓の病気や損傷によって生じます。

出血は腎臓組織内にある血管の損傷や炎症によって引き起こされる場合が多いです。

また、腎臓が出血すると尿中に混じって、尿が赤色や茶色になります。

そして、猫が頻尿になったり排尿困難になったりするのです。

さらに、腎臓の出血で猫は体力の低下や食欲低下がみられます。

腎臓からの出血の原因は、腎臓結石・腎臓感染症・腎臓腫瘍・腎臓損傷などの場合もあり注意が必要です。

腎臓からの出血が疑われる場合、速やかに獣医師に相談しましょう。

放置するとさらに深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、早期に診断を受けてください。

出血がみられたらすぐに動物病院へ

猫が出血する場合、何かしらの問題が起きている可能性が高いです。

外傷・感染・病気などさまざまな原因で出血している恐れがあります。

問題ないと放置すると、状況が悪化して命に関わるケースもあるのです。

そのため、出血が見られた場合はすぐに獣医師の診察を受けてください。

獣医の診断と検査を受けると、出血の原因を特定できます。

そして、出血の原因に応じて適切な治療を受けられるのです。

また、出血が見られた場合、パニックに陥ることなく冷静に行動して獣医に状況を伝えましょう。

猫の発情期はいつ?発情期を迎えた時のサイン

次に、猫が発情期のタイミングと発情期を迎えた時のサインを紹介します。

猫の妊娠や出産に関して発情期は非常に重要ですので、猫が発情期を迎えたタイミングを見逃さないようチェックしましょう。

猫の発情期

猫の発情期はオスとメスで若干異なります。

オスとメスがどのように発情期を迎えるか理解して対策できるようにしましょう。

メス猫の場合

メス猫は性成熟期に入る生後6ヶ月から1歳以降に発情期を迎えるのが一般的です。

ただ、性成熟期に達したメス猫は発情周期が始まりますが、迎える月齢には個体差があり毛の種類や生まれた環境によって異なります。

メス猫が発情するのは日照時間が14時間を超えた春から夏にかけてです。

メス猫の発情周期は、発情前期・発情期・発情後期があり、約2週間から3週間続きます。

そして、発情後期を終えると発情休止期に入り、約5〜16日経つと再び発情期に入るのです。

オス猫の場合

オス猫もメス猫同様に、性成熟期に達すると発情期を迎えます。

一般的に、オス猫は生後8ヶ月から1歳以降に発情する場合が多いです。

オス猫は生後3ヶ月頃から性成熟が始まり、生後5〜6ヶ月頃には精巣が発達します。

そして生後8〜12ヶ月には交尾ができる体への準備が整い、発情するのです。

ただし、オス猫も個体によって性成熟するまでの時間には変動があります。

オス猫はメス猫と違って発情周期はありません。

メス猫の香りや鳴き声を聞くと、オス猫はメス猫を認識して発情するのです。

発情期を迎えた時のサイン5つ

次に、発情期を迎えた時のサインを5つ紹介します。

  • 大きな声で鳴く
  • スプレー行動が激しくなる
  • 地面や床などに体を擦り付ける
  • 頭を下げお尻を高くして足踏みする
  • 落ち着きがなくなる

それぞれ具体的に紹介するので、発情期を迎えたサインを見逃さないようにしましょう。

大きな声で鳴く

まず、猫が発情期を迎えた時のサインは大きな鳴き声です。

発情期に入った猫は、通常よりも大きな声で鳴く場合があります。

鳴き声は、求愛や相手の注意を引くのが目的です。

大きな鳴き声は、一般的にメス猫がオスを呼ぶために行われます。

また、メス猫は発情期に入ると、特に夜間にこのような行動をとる場合が多いです。

自然にとる行動なので健康上は問題ないですが、うるさい場合は避妊手術などを検討しましょう。

スプレー行動が激しくなる

次に、猫が発情期を迎えた時のサインはスプレー行動です。

発情期に入った猫は、周囲の物や場所に尿をスプレーする行動が増える傾向があります。

これは、他の猫にメッセージを送ろうとし、自分のテリトリーを主張しているのです。

特にオス猫は、メス猫を引き寄せたり、競合するオスに自分の存在を示したりするためにスプレー行動を行います。

スプレー行動は、壁や家具の角、ドアの近くなど、猫がよく通る場所で行われる場合が多いです。

発情期の猫は尿に含まれるフェロモンによって、自分の存在やメッセージを他の猫に伝えようとします。

地面や床などに体を擦りつける

3つ目の猫が発情期を迎えた時のサインは、地面や床に体を擦り付ける行為です。

発情期の猫は、自分の匂いを残すために、周囲の物や場所に体を擦り付けます。

特に顔や頭・体の側面など、自分の匂いが残る部分を使って独自の匂いを残そうとするのです。

発情期の猫は自分のテリトリーを主張したり、他の猫にメッセージを送ったりするために擦り付けを行います。

頭を下げお尻を高くして足踏みをする

4つ目の猫が発情期を迎えた時のサインは、頭を下げお尻を高くして足踏みをする行為です。

発情期の猫は性的興奮状態なので、頭を下げお尻を高くして後ろ足で地面を軽く叩くような足踏みを行います。

この動作は、猫の繁殖行動や求愛行動の一部であり、他の猫に性的興奮や関心を示すために行われるのです。

そして、メス猫が足踏みする行為はオス猫に向けて行われます。

落ち着きがなくなる

最後に、猫が発情期を迎えた時のサインは落ち着きがなくなる状態です。

発情期の猫は通常よりも興奮しやすくなり、落ち着きがなくなります。

じっとしていることが少なく、より活発に動き回ったり、よく鳴いたりする場合があるのです。

また、発情期の猫はしばしば集中力が低下し、部屋の中をウロウロしたり、窓の外を見つめたりする場合があります。

発情期の対策

次に、猫が発情期の場合の対策について紹介します。

去勢・避妊手術が最も有効ですが、手術以外の工夫もご紹介するので、猫の発情期に悩んでいる方はぜひ実践しましょう。

去勢・避妊手術

猫の発情期の対策として有効なのは、去勢・避妊手術です。

去勢手術は、オス猫の精巣摘出手術であり、発情行動やホルモンが関連する病気のリスクを軽減します。

去勢手術を受けたオス猫は、発情期の行動が抑制されてスプレー行動や攻撃性が減少し、穏やかに生活できます。

また、去勢手術は、腫瘍や前立腺疾患などの病気のリスクを低減するにも効果的です。

そして、避妊手術は、メス猫の子宮摘出手術であり、発情期の管理と避妊を目的として行われます。

避妊手術を受けたメス猫は、発情期のストレスや不快感の軽減が可能です。

さらに、避妊手術は繁殖を防止する効果があり、望まない妊娠や子猫の誕生を防ぎ、過剰な猫の増加を制御できます。

病気のリスクや発情期の行動を抑えられるので、対策の1つとしてぜひ検討しましょう。

手術以外の方法

次に、猫の発情期は手術以外の方法でも対策できます。

まず、発情期の猫には安心できる環境を整えましょう。

静かで安定した環境を整えると、猫のストレスを軽減できます。

また、発情期の猫には運動がストレス解消にも効果的なので、十分な遊びや運動を提供してエネルギーを発散させましょう。

さらに、猫のリラックスを促すために、マッサージや撫でる行為を行ったり、落ち着く音楽や自然の音を流したりするのも効果的です。

他にも、発情期の猫にはフェロモン製品が役立つので、使用して猫の不安を軽減しましょう。

まとめ

猫は人間と異なり交尾型排卵動物なので生理がありません。

そのため、出血が見られたら病気の可能性があるのですぐ病院に連れていきましょう。

実際に出血があった場合に考えられる病気は下記の6つです。

陰部からの出血

  • 子宮内膜炎
  • 子宮蓄膿症
  • 子宮癌

尿路からの出血

  • 尿路結石
  • 膀胱炎
  • 腎臓からの出血

また、猫の妊娠は生理では判断できないので、発情期に合わせて対策をとる必要があります。

発情期を迎えた猫は下記の行動が見られるので必ずチェックしてください。

  • 大きな声で鳴く
  • スプレー行動が激しくなる
  • 地面や床などに体を擦り付ける
  • 頭を下げお尻を高くして足踏みする
  • 落ち着きがなくなる

去勢・避妊手術をしたり過ごしやすい環境に整えたりして発情期の対策をし、猫との快適な日々を過ごしましょう。

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