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はじめに
猫も人間と同じように、生理現象や病気をした際にくしゃみをすることがあります。ホコリや水を吸い込んだときや、寒暖差などにより鼻腔を刺激してくしゃみをします。
人間もくしゃみをするので、「鼻になにか強い刺激を感じたのかな?」「体調がわるいのかな?」といったようにイメージがしやすいと思います。
しかし、猫は時折、鼻をブーブー鳴らしながら、くしゃみのような仕草をみせることがありますが、よく見ると息を連続して吸い込んでいることが確認できます。
このようなことは人間ではあまりみられないため、病気の可能性も含めとても心配になります。猫のこの現象は「逆くしゃみ」といい、われわれがイメージするくしゃみとは少し異なります。
今回は、猫の逆くしゃみについて、その原因や病気の可能性についてもくわしく解説いたします。
猫の逆くしゃみとは?
逆くしゃみといってもあまり馴染みがないため、どのようなものかイメージがつかないと思います。
ここで猫の逆くしゃみについてみていきましょう。
鼻から空気を勢いよく吸い込む呼吸のこと
逆くしゃみとは、鼻から空気を勢いよく吸い込む呼吸のことで、発作性呼吸とも呼ばれています。
通常のくしゃみは人間と同じように、鼻腔が刺激を受けることによって、空気を思い切り吐き出す現象ですが、その反対に空気を吸い込むことで発生する現象が逆くしゃみになります。
ときには鼻をブーブーと鳴らしながら連続して空気を吸い込んでいる様子を目撃すると「突然発作を起こして苦しそう」と思ってしまい、見慣れていない方は大変驚いてしまうこともあります。
発作性呼吸と呼ばれているほどなので心配になりますが、発作自体は数分で治まり、その後はケロっとしていることが多いので、このケースの場合にはそれほど心配する必要はありません。
原因としては生理的な反応によるものが多く、冷たい空気やなんらかの刺激が鼻腔に加わって逆くしゃみが発生します。
くしゃみを吸い込んでいるように見える
逆くしゃみは、見慣れていない人には一見すると区別がつかないこともあります。ただ実際によく観察していると、空気を吐き出すくしゃみに対して、逆くしゃみはくしゃみを吸い込んでいるように見えます。
猫が逆くしゃみをする原因
猫の逆くしゃみの原因ですがはっきりとした原因は特定されていません。それでもおもにこのようなケースで逆くしゃみをすることが多いというものをご紹介します。
粘膜への刺激に対する生理的な反応
逆くしゃみのおもな原因として考えられているのは、鼻腔などの粘膜になんらかの刺激が加わることで、反射的に起こる生理的な反応と考えられています。
特に冬場に冷たい空気を鼻から吸い込むと、鼻腔の粘膜を強く刺激するため、突然発作を起こしたように逆くしゃみを発生させることがあります。
また、ほこりや異物などを吸い込んでしまった場合や、アレルゲンによるものなど、くしゃみと似ている原因がほとんどであり、長引くようでなければさほど心配いりません。
また、それ以外のときでも以下のようなことが原因で、逆くしゃみを発生させることがあるのでみていきましょう。
毛づくろいをしているとき
猫の被毛には、ほこりやダニ、花粉などあらゆるアレルゲンが付着していることがあります。毛づくろいをすることで、鼻の粘膜を通じてアレルゲンを体内に取り込んでしまい、逆くしゃみが発生することがあります。
日々のブラッシングで、アレルゲンの除去や抜け毛を減らしてあげましょう。
食事をしているとき
食事をしているときも逆くしゃみをすることがあります。ドライフードなどを慌てて食べたりすると、食べると同時に大きく息を吸い込むことで引き起こされます。
また、食べ物が気管に入ってしまいむせるなどすると、食べ物を吐き出すための動きと呼吸をするための吸い込む動作が同時に起きてしまい一種の発作状態になることもあります。
いずれにしてもこの場合の逆くしゃみのような状態は、短い時間で治まることがほとんどで、それほど心配する必要はありませんが、食事のたびに毎回繰り返すようでしたらフードの見直しや、慌てて食べないよう食事中は飼い主さんが近くで観察しておくことをおすすめします。
水を飲んでいるとき
猫は、一気に大量の水を飲むことは少ないため、水を飲むことによる逆くしゃみは頻繁には起きにくいですが、鼻や喉への刺激で逆くしゃみを引き起こすことがあります。
この場合も、一過性のものが多く数分で治まることがほとんどですが、念のため、近くで逆くしゃみが止まるまで観察してあげてください。
ほとんどの場合は一時的な症状なので心配ない
愛猫が逆くしゃみによって、鼻をブーブーと鳴らし、連続して息を吸い込む様子をみれば飼い主さんは慌ててしまうと思いますが、数分すると症状が治まりケロっとしていることがほとんどです。
逆くしゃみは、粘膜への刺激に対して起こる生理的な現象であるため、ほとんどの場合は一時的な症状で、病気の心配や治療の必要はありません。
特に何もしなくても自然に治まることがほとんどですが、どうしても苦しそうに見えて止めてあげたい場合には、喉の付近や背中を撫でてあげたり、水を飲ませてあげたりすると、落ち着いてくることがあります。
それでも長い時間止まらない場合には、生理現象とは違う要因で起きていることも考えられるので、念のため動物病院を受診してみるとよいでしょう。
その際に、医師に実際の症状を確認してもらうために動画を撮影しておくことをおすすめします。
逆くしゃみと咳の見分け方
普段から逆くしゃみをする猫だと、発作のような症状をみせても「数分で治まるので問題ない」と考えてしまいますが、もしその症状が咳だった場合は、病気の可能性もあるので逆くしゃみなのか咳なのか見分けなければなりません。しかしなかには見分けるのが難しい子もいます。
逆くしゃみと咳は空気の向きが反対
見分け方の難しい逆くしゃみと咳ですが、空気を強く吸い込む逆くしゃみと強く排出する咳では空気の向きが反対になるため、同じように見えてそれぞれの違いを理解することで見分けることができます。
逆くしゃみと咳の見分け方として、音が出るタイミングの違いがあります。逆くしゃみは息を吸い込みお腹が膨らんだところで音が出るのに対し、咳は息を吐き出しお腹がへこんだところで音が出ます。
また、逆くしゃみは吸い込む動きのため、口を閉じていることが多く、咳のときは吐き出す動きのため、口を開いていることが多くなります。
逆くしゃみと吐きそうな時の見分け方
次に逆くしゃみと吐きそうな場合の見分け方についてですが、実際に体内の内容物を吐き出した場合には見分ける必要はありません。
しかし、吐きそうな仕草だけだと少しわかりづらいことがあります。
腹筋を使っているかどうかを観察する
逆くしゃみと、吐きそうにしているときの見分け方として、腹筋の動きを観察するとよいでしょう。
人間でも同じような行動になることがありますが、嘔吐をするタイミングでは、「オエ」と声を出しながら腹筋を上下に動かしてから吐き出します。
逆くしゃみでは、息を吸い込むことでお腹が膨らむことはありますが、腹筋を上下するような動きをみせることはありません。
逆くしゃみは治療が必要?
愛猫が逆くしゃみをするのを見ていると、苦しそうに見えて心配になってしまうでしょう。逆くしゃみは治療をする必要はあるのでしょうか。
逆くしゃみをすることは病気ではない
通常の逆くしゃみであれば、治療は必要ありません。
逆くしゃみとは、粘膜への刺激に対する生理現象であり、数分の症状で治まることがほとんどです。
くしゃみの場合には、頻繁に起きる場合や鼻水が出るようなときには風邪が疑われるときもありますが、逆くしゃみではそういったこともありません。
逆くしゃみによる発作を起こしても、数分後に何ごともなかったように普通に過ごしていたら、特に心配する必要はないでしょう。
自然に止まることが多い
前述しましたが、猫の逆くしゃみは何もしなくても数分で治まる生理現象です。もし数分で止まらず徐々に苦しんでいる様子が見受けられる場合には、ほかの要因が考えられるので、念のため病院を受診しておくと安心です。
このように、発作が始まってから止まる時間でも治療の有無を判断できます。
逆くしゃみでも病気の可能性がある?
逆くしゃみは一過性のものであり、鼻腔を刺激して起きる通常のものであればあまり心配する必要はないでしょう。
しかし、なかには病気が原因で、逆くしゃみのような症状が出ているケースもあります。
その場合には、長時間放置せずに病院へ連れて行った方がよいこともあるので注意が必要です。
動物病院に連れて行ったほうが良いケース
動物病院へ連れて行ったほうが良い逆くしゃみのケースとはどのような場合なのか解説します。
今まで逆くしゃみをしたことがなかった場合
本来の逆くしゃみは病気ではありません。そのため幼いころから症状が出ていることがほとんどです。
いきなり中高齢期になって、年齢が原因で逆くしゃみが始まることはありません。
大人になるまで逆くしゃみの症状がなかったにも関わらず、ある日突然逆くしゃみが始まるような場合には鼻腔などに異変が生じている可能性があります。
逆くしゃみの頻度が増えた場合
逆くしゃみの頻度が増えた場合にも注意が必要です。
特に室内飼いの猫で、冷たい空気を急激に吸い込むことや鼻腔内に異物が入ることなどが、1日のなかでそれほど連続することは少ないでしょうから、もし気になるほどの回数で逆くしゃみをするようなことがあれば、病気の可能性も考えられます。
また、逆くしゃみは喉のあたりをさすってあげることで緩和することが多いですが、それでもまったく止まる様子がなければ、原因は違うところにあるかもしれません。
呼吸がおかしい場合
逆くしゃみのような症状でも、明らかに呼吸がおかしく苦しそうにしていることが続くようなときは、病気の可能性があります。
逆くしゃみだと思っていたら、実は咳で、気管や肺、心臓などに異変が生じていることもあります。
呼吸がおかしく、苦しそうにして元気がないようならば体に異変が起きていることも視野に入れてまずは動物病院を受診した方がよいでしょう。
動画を撮影しておくとわかりやすい
動物病院を受診する際に、症状をうまく説明できないことがあります。逆くしゃみと咳などを口頭で説明するのはわかりづらく、もし本来すべき治療と異なってしまった場合に、かえって猫の体調がおかしくなってしまうこともあります。
対策として、心配な症状が出たときに動画を撮影しておくとわかりやすく、診察もスムーズに進みます。
特に逆くしゃみや咳などの場合には、発作の状況や音がとても重要な判断材料になり、言葉で説明するよりも有効なので、ぜひ活用してください。
逆くしゃみで考えられる病気は?
逆くしゃみは病気ではないとご紹介しましたが、中高齢期になって突然症状が出た場合や、1日に何度も逆くしゃみをするときには病気の可能性も考えられます。
また、逆くしゃみだと思って放置していたら、実は別の病気であり見過ごしてしまうことで悪化させてしまうこともあるので、少しでも異常を感じたら注意しなければなりません。
鼻や喉の粘膜を刺激するような病変
逆くしゃみは鼻や喉の粘膜を刺激することで起きる生理現象ですが、同じような症状の出る病気も存在しています。
咽頭炎や鼻腔内腫瘍などがこれにあたります。
咽頭炎は、鼻の奥から食道へとつながる咽頭部分に炎症が起きる病気で、ウイルス感染や口内炎、鼻炎などを原因として発症します。
咽頭炎単体で発症している場合には、抗生剤や消炎鎮痛剤、抗ウイルス薬などの服用で改善することが多いですが、ほかの病気と併発している場合には原因となっている病気の治療をおこなう必要があります。
鼻腔内腫瘍は90%が悪性といわれており、腫瘍のうちの半数はリンパ腫です。
外から発見しづらいため、気付いたときには病気が進行していることがあります。
逆くしゃみや通常のくしゃみ、鼻血などの症状がみられ、さらに進行すると鼻の中の腫瘍が大きくなり、顔が変形することもあります。
このような症状がみられたら、少しでも早く病院で画像診断や組織検査を受けてください。
呼吸器疾患の悪化
呼吸器疾患が悪化した場合にも注意が必要です。逆くしゃみは吸い込む動作であり、呼吸器疾患に直接結びつくことはないかもしれません。
しかし、注意しなければならないのは、普段から逆くしゃみをする猫の様子がおかしくても、「逆くしゃみだし少しすれば止まる」と思い放置してしまい、実は咳やくしゃみなどの重要な病気のサインを見落として悪化させてしまうケースです。
猫は犬に比べると逆くしゃみと咳の見分けがつきづらいといわれており、肺炎などの発見が遅れて重症化してしまうこともあります。
肺炎を起こすほど重症化している場合には、細菌やウイルスに感染していることが多く、検査によってくわしい病原体を検出して取り除かなければなりません。
呼吸器疾患が悪化するとくしゃみや咳だけでなく、明らかにゼーゼーと呼吸を苦しそうにさせて、鼻水などもみられるので、いつもの逆くしゃみと様子が異なり、判断に迷うときは放置せずに、獣医師の判断を仰いでください。
まとめ
猫の逆くしゃみについて解説いたしました。
通常のくしゃみは知っていたけれど、逆くしゃみの存在をご存じなかった方も多かったと思いますが、今回ご紹介したことで、逆くしゃみとはどのようなものかおわかりいただけたのではないでしょうか。
通常の逆くしゃみは一過性のものであり、それほど病気を心配する必要はありません。
しかし、中高齢期になってから逆くしゃみをするようになったり、1日に何度も発作を起こしたりして、時間が経過しても症状がおさまらないような場合には、なんらかの病気を疑う必要があります。
また、逆くしゃみと咳の区別をしっかりとしておかないと、重篤な病気のサインを見逃してしまうことにもなります。
逆くしゃみ自体はあまり心配いりませんが、咳やくしゃみなどときちんと見分けられるようにしておくことが大切です。