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はじめに
レントゲン検査といえば、みなさん一度は経験があるのではないでしょうか。体のどこかに不調があるときや、定期的な健康診断などで検査を受ける機会は多いと思います。
レントゲン検査を通じて、異常を見つけ出し、治療に役立てていくことは、猫の世界でも変わりません。
動物病院でも、検査のなかでレントゲン検査を取り入れており、すでに飼っている猫もレントゲン経験済みという飼い主さんも多いでしょう。
しかし、まだ愛猫のレントゲン経験のない飼い主さんにとって、猫のレントゲンとはどのようなものなのか不安になってしまうこともあると思います。
そこで、今回は猫のレントゲンについて、費用がいくらくらいかかるのか、どのようなときにレントゲン検査をおこなうのか、どのような方法を用いて検査をするのか、などレントゲンに関する疑問を1つずつ解説していきます。
すでに健康診断などで経験済みの飼い主さんも、愛猫の万が一のときに備えてあらためて猫のレントゲンについて確認していただければと思います。
猫のレントゲン検査とは?
レントゲン検査は「X線検査」とも呼ばれており、こちらの名称も聞いたことがある方は多いでしょう。
具体的には、X線を患部に照射して、体の外側から体内の様子を調べることのできる検査です。
対象となるのは「胸部」「腹部」「足」など広範囲に渡り、全体像が把握しやすいため体のどこかに異常があった場合の最初の画像診断として多くの病院で検査を実施しています。
X線を用いて体の内部を画像化する検査
X線を用いておこなわれるレントゲン検査で撮影された画像は、白黒で表示されます。X線が通りにくい箇所は白く映り、通りやすいところは黒く写るのが特徴で、実際のレントゲンを確認すると、骨は白く映り、X線が通りやすい肺は黒く、その他の臓器は灰色をしているのが一般的です。
レントゲン撮影をおこなうと、全体がはっきりと映し出され、骨折などの骨の異常や、臓器の位置、形までしっかりと確認することができます。
レントゲン検査でわかることは、肺炎、心拡大、胸水、腹水、結石、腫瘍、骨折などさまざまな疾患や、体の状態が確認できます。
猫のレントゲンにかかる費用はどれくらい?
実際にレントゲンを撮るための費用はいくらくらいなのか、おおよその目安は知っておきたいところです。
ここでは一般的な撮影枚数や、かかる費用に関して解説していきます。
撮影方法や撮影する枚数によって違う
レントゲンにかかる費用は病院ごとに異なりますが、撮影方法や撮影枚数によって変わる病院が多くなっています。
枚数で料金を設定している場合や、腹部、足など部位別に料金を設定しているところがあります。
一般的な撮影枚数としては以下のようなものがあります。
- 胸部・腹部
左右横になって各1枚、仰向けで1枚の計3枚 - 足
患部を左右各1枚、仰向け1枚、屈伸状態で1枚の計4枚
実際に何枚の画像が必要なのかは医師の判断によるので、あくまで参考としてください。
また、撮影方法によっても費用は異なりますし、抵抗して撮影ができない場合には鎮静処置をおこなうこともあり、その費用が追加されるケースもあります。
自費のため病院によって金額が異なる
診察費用は動物病院が個々に設定しているため、すべての病院が同一料金でレントゲン検査を実施しているわけではありません。
どうしてもレントゲン費用を安く抑えたい場合には、いくつかの動物病院で確認するとよいでしょう。
少しでも費用を安く抑えるのか、かかりつけの病院に任せるのか、飼い主さんの判断が必要となります。
費用の目安は5000円~1万円以上
各動物病院の自由設定で費用は決まりますが、それでもおおよその目安として、1回のレントゲン検査で5,000〜10,000円以上が目安となります。
病院により、レントゲン撮影にかかる金額は異なるため、それぞれの病院で確認が必要ですが、ご紹介した目安に近い金額でおこなっていることがほとんどです。
ただし、造影剤を用いた、より詳しい検査や、鎮静剤を使用しての撮影をおこなった場合には、さらに追加費用がかかります。
また、保険適用に関してですが、ペット保険に加入している場合では、病気やけがなどのなんらかの症状がある場合のレントゲン検査は保険適用になり、契約に準じた金額が支払われることが多いでしょう。
健康診断などでおこなわれる検査に関しては、保険適用外になるものがほとんどです。
加入している保険によって補償内容は異なるため、念のために事前に契約書や保険会社に確認しておくことをおすすめします。
猫がレントゲン検査をするのはどんな時?
あらゆる疾患を確認できるレントゲン検査ですが、どんな時に実施されるのでしょうか。
実際に、猫の様子がおかしいときに動物病院へ連れていくと、以下のような場合にレントゲン検査をおこなうことがあります。
骨折が疑われるとき
人間でもレントゲン検査の対象として多く利用されているのが、骨折などのケガが疑われるケースです。
患部が腫れていたり、痛がっていたりして歩行にも影響が出ている場合などには、まず治療方針を決めるためにも、レントゲンで患部を撮影し、骨折の有無を調べます。
骨折のなかでも、安静にして経過観察できるものから、重症で手術を必要とするものまで正しい診断をするために、レントゲン検査をおこない治療方針を決定していきます。
また、ケガ以外でも先天的な骨格異常があり、歩行などに影響を及ぼしている場合にも、正確な判断材料としてレントゲン撮影をおこなうことがあります。
異物を誤飲してしまったとき
猫が遊んでいるなかで、つい異物を誤飲してしまうことは珍しい事ではありません。もし誤飲してしまって様子がおかしい場合には、動物病院で処置してもらうことになります。
その際に、具体的にどのようなものを誤飲したのか、体内のどこに残っているのか正確な情報を収集する必要があり、そのためにレントゲン検査をおこなうことがあります。
ただし、異物の誤飲に関しては、レントゲンではすべての異物を正確に映すことが難しいため、さらにエコー検査などをおこない、内視鏡での治療に進むこともあります。
臓器に異変が起きていないか確認するとき
愛猫の体調がおかしくなって、異物を誤飲したようすもないときには、診断を確定させるために臓器などに異常が起きていないのか確認するためのレントゲン検査をおこないます。
胸部レントゲン検査でわかることは心臓の大きさ、形状、気管、気管支、肺の状態や肺水腫の診断にも用いられます。
咳が出ているときや、呼吸がおかしいとき、心臓疾患の検査などは胸部レントゲン検査を行います。
呼吸器の疾患により肺炎になると、レントゲンに写る色が正常なときとは変わってきます。本来、空気を含んでいる肺は、レントゲンでは黒く映りますが、肺炎になった肺は炎症によって白く映ります。
腹部レントゲン検査では、お腹の中にある臓器(胃、小腸、結腸、肝臓、脾臓、腎臓、膀胱など)の形状や位置におかしなところがないか、消化管の様子や、体内にガスが溜まっていないか、腫瘍や結石、腹水などを確認します。
腫瘍の検査では、腫瘍があると形が変化するので、通常時との違いをレントゲンによって判断します。
猫のレントゲン検査の方法
レントゲンの種類や、撮影方法にはどのようなものがあるのかご紹介します。
レントゲン検査には2種類ある
レントゲン検査には、レントゲンフィルムとデジタルレントゲン検査の2種類があります。この2つの違いについて解説いたします。
レントゲンフィルムを用いる検査
レントゲンフィルムでの検査はかつて一般的な検査方法でした。レントゲン検査で撮影したものを大きなレントゲンフィルムに現像して、裏から光を当てる専用の装置にセットして画像を確認していたのをご存じの方も多いでしょう。
現像にも時間がかかるため、レントゲン写真ができあがるまで、待たされることもしばしばありました。
かつてはほとんどの病院が、このレントゲンフィルムを保管して使用していました。
デジタルレントゲン検査
現在、多くの病院で使用されているのはデジタルレントゲン検査です。
これまでのレントゲン検査とのおおきな違いは、撮影したデータをフィルムに現像するのではなく、データとして保存することができ、撮影後すぐにパソコンの画面で確認できるため、診察の待ち時間の軽減につながっています。
また、画像の拡大ができるため、患部の状態をより詳しく見ることができます。
2方向からレントゲン撮影を行う
レントゲンは基本2方向から撮影をおこなうことが多いです。
理由は、立体の体を平面の画像としてあらわすためで、胸部や腹部だと右側を下にして1枚、仰向けやうつ伏せで1枚と最低2枚の撮影が必要です。
また、骨のレントゲンでは、異常がみられる側と正常な骨の両方を撮影し、比較して診断するため最低3〜4枚は必要になります。
撮影時間は数分程度
レントゲンの撮影にはそれほど時間はかからず、数分程度で終了します。しかし、正しい位置決めに時間がかかる場合には、もう少し時間を要します。
それでも全体で10分〜15分ほどで終了することがほとんどです。
撮影部位に合わせて身体を保定する
正確な患部の状態を撮影するために、身体を保定しておかなければならず、怖がりな猫や、警戒心の強い猫だとなかなか落ち着いてレントゲン検査を受けてくれない場合が多いので、必要に応じて、鎮静剤を使用することもありますが、麻酔をかけたりするようなことはありません。
暴れる場合はエリザベスカラーをつけることが多い
どうしても暴れてしまい、撮影に支障が出そうな場合に、エリザベスカラーをつけることがあります。理由として、視界が狭くなり見えない部分が気にならなくなることがあることが多く、レントゲン撮影など動いてはいけない検査などに役立っています。
造影剤を使用する場合の検査方法
造影剤とは、消化管や尿管などの内部に薬剤を投与してレントゲン撮影をおこなうことで、造影剤が体内を流れている様子が確認できるようになります。
造影剤を入れた後に数分間隔で撮影する
造影剤を用いた撮影の場合には、投与して数分経過してから撮影します。
消化管造影
消化管造影は、レントゲンに写らない異物の確認や、消化管内部の閉塞などの異常を発見するために使用されます。
異物や、閉塞があり、管の流れを止めてしまっている場合などに造影剤を使用すると、通常レントゲンでは写ることのない部分もはっきりと確認できます。
尿路造影
尿路造影では、尿管の位置や機能などを確認でき、膀胱の状態や、閉塞を造影剤により確認することができます。
猫によくみられる結石などで、尿路を塞いでいる場合にも、造影剤を用いることで、一般的なレントゲン写真よりもより鮮明に症状を確認できます。
猫のレントゲン検査は安全?
レントゲン検査の安全性に関してですが、X線は放射線の一種であり、大量に放射線を浴びれば体に影響を及ぼすこともありますが、レントゲンはごく微量の放射線のため、危険ということはありません。
レントゲン撮影は猫に苦痛を与えるものではない
レントゲン検査自体は、人間のレントゲン検査同様に、猫の体を痛めつけるものでもなく,
少しじっとしていなければならない状況に多少のストレスを感じる程度で、苦痛を与えるようなものではありません。
微量の放射線が含まれるが体に影響はないと考えられている
放射線は一度に大量に浴びてしまうと体に悪影響を及ぼします。
危険といわれている被ばく線量は一回で100~200ミリシーベルトといわれていますが
、1回のレントゲン検査での被ばく量は0.05〜0.2ミリシーベルトと微量なため、健康を害する心配はほとんどありません。
妊娠中はレントゲン検査を避けることが多い
人間のケースでは妊娠中は、レントゲン検査での被ばくの影響を考えてレントゲン検査を避けることが多いですが、猫の場合にも飼い主さんの意向でレントゲンを避けることも珍しくありません。
しかし、猫の場合には一度に数匹の猫を出産するため、妊娠の状況を把握しておく必要があるので、レントゲン検査を受けることがあります。
妊娠40日以降にレントゲン検査をおこなうと、赤ちゃんの骨が写るのでお腹の中に何匹の赤ちゃんがいるのか事前に把握できます。
事前に赤ちゃんの数などを把握しておけば、出産の際に、何匹生まれてくるのか、今回の出産にはどれくらいのリスクがあるのかを踏まえたうえで、準備を進めることができます。
実際に出産が始まったあとでも、「すべて生まれてきたと思っていたが、お腹の中にまだ1匹残っていた」ということがなくなります。
もしお腹の中に、赤ちゃんがいる状態で、猫のお産が終了してしまうと、赤ちゃんが死んでしまうだけでなく、母猫も命を落としてしまうこともあるので、このようなトラブルを回避するために、出産前にレントゲン写真を撮っておくことがあります。
妊娠している猫がレントゲンを撮る際の気になる被ばく量ですが、実際にはそれほど気にする必要がないくらいの微量な被ばくであることがわかっています。
まとめ
猫のレントゲンについて解説してまいりました。
ひと言にレントゲンといっても、胸部、腹部では、臓器の状態や結石、腫瘍の確認など、足などの撮影では、骨折をはじめとするケガの診察にとても重要な役割を果たしています。
デジタルレントゲンの普及により、患部の状態を拡大画像などでより鮮明に確認できるようにもなっています。
また、費用に関しては、撮影枚数や鎮静剤を使用した場合などで異なりますが、5,000円〜10,000円くらいとなっています。
簡単に検査ができ、猫への負担もとても少ないうえに、体内のあらゆる症状をチェックできるレントゲンは、人間だけでなく、動物にとってもいまや欠かせないものになっています。
なにか心配な症状がみられたら、レントゲン検査を活用して大切な愛猫の健康を守ってあげましょう。